【俺の血は】大藪春彦の本を語る 6【俺が拭く】

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23書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
大藪春彦「挑戦者」を読んだ。
極端に個性的な作風ながらジュブナイルでも実績を上げた大乱歩や筒井堂でさえ、
成人向き作品で全開な「個性」(大乱歩の妖異・耽美、筒井堂の嗜虐・諧謔)は
抑えざるを得なかった。
しかし、本書に収録された作品を読むと、
大藪春彦だけは、ジュブナイルを書いてもあくまでもどこまでも大藪春彦なのが
わかって面白い。
「ぼくは、いきあたりばったりにラーメン屋にとびこんだ。五十円の大もりを注文して
すすると、ひえたからだに力がよみがえってきた」(「深夜の銃声」第一章「悪いなかま」)
この出だしからして、既に大藪節である
ただし、この「深夜の銃声」と「港の銃声」の主人公の少年が慕う理解者が
若い警察官という設定は、成人向き作品で繰り返される警察との大バトルを知る
大藪ファンにには違和感大ではある。
ここは1匹狼のタフな小学生という設定で行って欲しかったか(無理か)
傑作「ヘッドハンター」を想起させる典型的なハンティング小説「黒い死の影」と
「アイヌ犬の咆哮」も作者の嗜好に100%マッチした素材であるだけに、
迫力満点で読ませるものがある。
前者の完結、後者のシリーズ化を期待したいところであった。
「アイヌ犬…」などを読むと、大藪春彦という人は西村寿行のような動物小説も書けた
のではないだろうかと、ふと思うた。
(狩りの対象としての「動物」ではなく、彼ら彼女ら自身を主人公にしたような作である)