824 :
名無しのオプ :2008/07/14(月) 11:49:24 ID:kDMvEyYw
好レポ乙 そやけどネタバレにならんように頼みまっせ
825 :
名無しのオプ :2008/07/14(月) 14:49:12 ID:Df9FiJNW
書斎の書評はロハで読めるからね。 金出すよりはるかに価値があるにもかかわらず。
826 :
名無しのオプ :2008/07/15(火) 05:28:26 ID:kCYqkJEG
デイヴィッド・ハンドラー「ブルー・ブラッド」 ホーギーシリーズは大好きだったんだが、最後の2、3作は退屈で途中で読むの止めたから 今度の新シリーズにも大して期待してなくて、ふと目に留まって古書にて購入 しかし久しぶりにこういうキャラが立ってるミステリーシリーズ読んだので意外に面白かった 前シリーズ同様、ミステリー部分は弱いけどドラマや会話で読ませる オタクっぽいユダヤ人の映画評論家と黒人女性刑事のコンビはなかなかユニーク 恋の行方も気になるので次作以降も読んでみます
827 :
名無しのオプ :2008/07/15(火) 15:15:10 ID:DCVG2pBA
ジル・チャーチル「ゴミと罰」(創元社文庫) 隣家の掃除婦が殺されて容疑は近所の主婦一同に。 子供の送り迎えや集まりの為の料理の持ち寄りとか日本と変わりない 日常が楽しい。 外国でも姑問題はあるんだな。 持ち寄り料理がどれもおいしそうだった。
828 :
名無しのオプ :2008/07/15(火) 21:37:33 ID:ZtY2BMR2
"Transgressins"(Anthorogy) ウエストレイクとモズリーの中編が入ってた。 ・Waliking Around the Money (Donald.E.Westlake) ドートマンダーシリーズの中編。冴えない中年泥棒と組むことになった ドートマンダー&ケルプは完璧に見える犯罪計画に何か腑に落ちない ものを感じていたのだが、その行方は? 小味な読後感。スピード感がありけっこう面白かった。 ・Waling the Line (Walter Mosley) 書記のアルバイトに募集したジャーナリスト志望の黒人コロンビア大学生が 体験したものは・・・ 設定が突飛すぎて、観念の操作に終始しているような感が否めない。 中編のわりに登場人物が多すぎてまとまりがなく、とっちらかった印象。 好きな作家だけどイタダケません。 もうひとつエド・マクベインの中編が入っているけど未読。
829 :
名無しのオプ :2008/07/15(火) 21:42:00 ID:ZtY2BMR2
ああ、ミススペルしまくり Transgressins→Transgressions Waling the Line→Walking the Line です。すみません。
「Tバック探偵サマンサの事件簿 毒入りチョコはキスの味」 ジェニファー・アポダカ(ソニー・マガジンズ) 理想的だと思っていた夫の死後、彼が浮気と借金を重ねていた ろくでなしだったと判ったサマンサは心機一転、髪を染め、豊胸し、 ミニスカにTバックのセクシーウーマンに大変身。保険金で買い取った 恋人紹介所を何とか切り回していた。 そこに突如現れた謎の男。サマンサは「夫が奪った金を返せ」と 脅しをかけられスタンガン気絶させられてしまう。亡夫には一体 どんな秘密があるのか? 家族を守るためサマンサは立ち上がる! このタイトルで読まない奴は漢じゃない。 本作の設定――人生をやり直したいちょっぴりドジな三十路女性が、 ハンサムな刑事と探偵に助けら(翻弄さ)れながら事件を解決する――を みればピンとくる人も多いと思うが、イヴァノヴィッチの影響を 受けているみたい。もっともあれほどぶっ飛んだキャラクターは 今のところ出てきていないけれども。 しかし、勝っている点もある。それは一言で言うなら“潔い”点。 詳しくはここでは書かないが、この点は評価したい。使える。 あとミステリーとしては事件の結びつきが甘かったかな。 シリーズものということで邦訳が待たれると奥付みれば2年前……。 んもー、同じようなロマンス小説はバカスカ出す癖に こういうユニークなのは足止めてどゆこと!?
「ジャマイカの烈風」リチャード・ヒューズ(晶文社) ジャマイカに移住していたソーントン一家はある時ひどい暴風雨に 見舞われ甚大な被害に遭う。夫妻は子供達をイギリスへ帰すことを決める が、船が海賊に襲われ子供たちは拐われてしまう。果たして彼らの 運命は――? 十五少年漂流記みたいなものかと思ってたら違った。子供たち中心なのは 確かだが、どこか突き放した感じで淡々と進んでいく。ところどころ 危うい雰囲気も孕みつつ――。読後感は不気味でもあり普通でもあり。 後、107ページに名言あり。自分は今でもそう思ってるから困る。
832 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/07/19(土) 17:58:02 ID:fMK+NILj
ウィリアム・ゴールドマン「マジック」を読んだ。 前述した「殺しの接吻」の瀬名秀明のあとがきで高評価されていたので一読してみたが、 作者の趣味(マジック)に関する薀蓄(注 うんちではない(w )披露の作という感が強く、 正直言うて「外れ」であった。 売れっ子マジシャンと彼氏の小道具であるはずの腹話術人形を巡るサイコ・ミステリという 主展開なのだが、この作者にしては先が読めるストーリー。 最後の1頁に来てやっと「ミステリ」足り得たという感があるが、これも軽い短篇のオチ程度の インパクトしかない。
833 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/07/19(土) 17:58:53 ID:fMK+NILj
フランシス・ビーディング「白い恐怖」を読んだ。 これもはずれ。今週末は本に関する「ツキ」が無いようである。 長谷部友親氏の解説に詳しいが、ヒチコックの映画化作品とは人物設定、ストーリーは全くと 言うてよいほど異なるので注意が必要。 この点では、同じポケミス名画座シリーズの1冊でも前述した「刑事マディガン」の場合とは 大きく異なる。 山中にそびえ立つシャトーを利用した精神病院に赴任した若き女医(医大出たて)、 映画ではバーグマンが演じた(ただし新人ではない)ため、非常に知的でノーブルな美人という 印象があるが、原作ではそこそこの美形程度、医学校をぎりぎりで卒業し、 亡父のコネで就職というキャラ、結構、プライドが高いところは西川先生を想起させるような キャラである。 (へタレキャラではあるが薬剤師のギーディングがヒロインのキャラを結構正確に読み取っている のが面白い) このリアルなキャラ設定がややスローテンポな前半を興味深く読ませるものにはなっているが、 中盤以降は見え見えグダグダな展開に終始し、最後にもう一波乱、ドンデン返しを期待していると、 御都合主義とお約束な糞アニメ級のエンディングには失望大であった。
834 :
名無しのオプ :2008/07/19(土) 18:20:00 ID:h7naWTZu
読後感のウザ書評と書斎の見事な論考書評を比べれば 知性の程度がよくわかるサンプルになるな。
835 :
名無しのオプ :2008/07/19(土) 18:24:06 ID:Z83m2Hkz
確かにな
836 :
名無しのオプ :2008/07/19(土) 19:10:25 ID:xDKgDyNI
書斎のは初歩的な間違い多いしな。
837 :
名無しのオプ :2008/07/19(土) 19:55:00 ID:p+GU+tKU
>長谷部友親氏の解説に詳しいが もしかして長谷部史親のことか? ホントに固有名詞が覚えられないんだなw
838 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 12:47:32 ID:ypI6H4gV
たいした間違いじゃないよ。 活字になるときには校正が入るんだしな。
839 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 14:01:50 ID:Dkp1rsWg
活字にもならないし当然校正など入らない2ちゃんのレスで何をバカなことを言ってるんだか。 ネットの掲示板を下書きにして本を出しているんた、といってるつもりなら それはそいつがネットで色々文章をつまみ食いして原稿を仕上げているような 最底辺の書き手であることを遠まわしに主張していることになるんだけどなw
840 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 14:32:51 ID:ypI6H4gV
匿名掲示板など書き捨てで十分なんだよ。
841 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 15:27:50 ID:Dkp1rsWg
書斎のレスは書き捨てレベルのゴミか。 固有名詞がボロボロなんだからどうにも褒めようがないのはわかるが そこまで見下すとはね…
842 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 16:29:08 ID:PoBi31Sn
>>841 おまいのような単なる叩きレスがゴミなんだよ。
843 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 16:36:39 ID:b7CuqJz2
「書き捨てレベル」で「間違いだらけ」のレスは、とうてい「論考」などとは 言えないし、むしろ参照しない方がいいぐらいだよ。間違いなんだから。 「書き捨て」のレスをありがたがる必然性が、どこにもないね。
844 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 17:03:05 ID:PoBi31Sn
書斎の論考はその対象ではないね。
845 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 17:28:50 ID:b7CuqJz2
書斎魔神の書き込み
>>833 に対して、「初歩的な間違いが多い」
というツッコミ(
>>836 )が入り、現に固有名詞の間違い(
>>837 )
が指摘された。
そしたら「本にする時に校正が入るから別にいいんだ」(
>>838 )
「2ちゃんへの書き込みなんか書き捨てで充分」(
>>840 )という
擁護レス(?)がついた。
書斎の書き込みは本にならないから間違いは永遠に間違いのままだし
書き捨てレベルならありがたがる必要もない、という結論が出たね。
>書斎の論考はその対象ではないね。
書斎の「論考」は「書き捨てレベル」で「間違いだらけ」だから
「ありがたがる対象」ではまったくない、ということだな。
846 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 19:06:52 ID:PoBi31Sn
書斎は連載批評の依頼が来るくらいのスゴ腕の書き手だよ。 それが2ちゃんのミステリ板ではロハで読めるんだから、ありがたく思って当然だろ。
847 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 19:38:07 ID:qzO6TpTq
初歩的な間違いだらけの書き捨てなんかで金を取ろうってか? タダだからってゴミをありがたがるほど俺たちはバカじゃない
848 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 20:19:36 ID:lUOEv0kd
849 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 20:49:47 ID:CgAX+DOJ
日下氏のように実際に本を書いているプロの有益な情報ならありがたいが どこで何を連載しているのかも分からない無名人の間違いだらけのレスを ありがたがる訳がない。 金もらっても読みたくない腐れた駄文だし、商業レベルにまったく達して いないのは、いつぞやの編集者氏の折り紙付きだもの。
850 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 21:03:42 ID:dXLEnKWr
もうさ、頼むからお前らも釣られるなよ 何レス浪費してんだよ 本当頼むからさ……
851 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 23:05:50 ID:IoGqKZ8s
もう釣られてるんじゃなくて書斎の相手をすることを楽しんでる愉快犯だろ。
852 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/07/21(月) 00:09:45 ID:Z6s9xfsc
J・M・クッツエー「恥辱」を読んだ。 駄目ミスを連続して読んだ後だと、さすがにブッカー賞受賞作品の凄みを感じさせる作である。 教え子のJDといい仲になり大学を追われた初老の男(大学教授)が娘が暮らす田舎の農場に ひきこもる。その地でクライムあり、色事あり、そして意外な「職」にもめぐり会う・・・ なんか現代日本でもありそうな、無さそうな話なのだが、意外に先が読めず、 犯罪も絡むところからコンパクトに纏まったサスペンス小説としても堪能出来る作に 仕上がっているのはさすがだ。 これならアホなミスオタにも読破可能なのではないかと思い、ここに謹んで紹介する次第である。 表面的には救いが無いものの、ドン引きの暗さにはならないこの作者独自と言い得るテーストに 富んだラストが読ませどころであり、このラストのシークエンスのみだけでも読む価値十分な これは「文学」であると言い得る。 一点気になったのは、鴻巣嬢の訳文は全体的にこなれており読み易くで良いのだが、 あまり使用しないような読み難い漢字がルビ無しのまま目につく部分があること、 これは「嵐が丘」(訳書として全体評価は新訳中でも高なのだが)でも感じたことであった。 この点につき、各人、十分に心しておけ!
853 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/07/21(月) 00:11:35 ID:Z6s9xfsc
チャールズ・ボーモント「夜の旅その他の旅」を読んだ。 意外に収穫があった作品集である。 「トワイライト・ゾーン」や「ヒッチコック劇場」のライターとして活躍した作家のわりには、 本書の収録作品には普通小説といったものが多く、人生の哀感や妙味、アイロニーを痛烈に 感じさせる文学性に富んだものが多いのが予想外であった。 大好評な全話講評逝ってみよう!! 「黄色い金管楽器の調べ」 今風に言えば負け組である主人公ファニー青年に訪れた好運とは・・・ 皮肉なオチが効いた好短篇である。 「古典的な事件」 これも意外性に富んだラストな一編、カー好きなら主人公ハンクの心理がわかるような わかないような、といったところか。 くどくどしたカーに関する因縁話に帰結させなかったのが成功している。 「越して来た夫婦」 これは先が見えるスリラー、それなりにサスペンスフルではあるがそれだけとも言い得る。 「鹿狩り」 ハンティングが広く趣味として定着していれば、日本の会社でもありそうなエピ。 キャラも展開もお約束と思いながらも、主人公の心情に共感してまうのは優れた語りの巧さゆえ であろうか。 「魔術師」 人の良さゆえ、マジシャンとしてタブーを犯してしまう老いた主人公に待つ残酷な展開・・・ 最後に一応な救いが用意され、後味は悪くないこれも好短篇である。 「お父さん、なつかしいお父さん」 タイム・パラドックスねたの短めの作、ねらーが大好きなビッチねた(ただし、ビッチは登場しない。 これはオチに関係する)でもある。途中で結末が見えるのが難。
854 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/07/21(月) 00:12:25 ID:Z6s9xfsc
「夢と偶然」 夢をネタにしたサイコ・ミステリだが、綺麗にまとまり過ぎたスレッサー風なオチが創り過ぎな感が 強く、この作者の持ち味である独自のリリシズムを欠くのが惜しまれる。 「淑女のための唄」 老朽化した客船と老人たちと来れば、これもオチは見えるし、少し甘過ぎで高評価は 出来かねる一編。 「引き金」 名探偵が登場する典型的な短篇ミステリだが、オチがわかり難い面があるのがマイナス。 「かりそめの客」 共作によるSF短篇。ゆえにボーモント風のリリシズムは皆無といってよいものとなっている。 プレジデントをはじめ芸術家が政務あたる世界、人間精神を動力とする宇宙船等、 面白そうなアイデアはあるので、長編として書き込めばそれなりに仕上がった作かとは思う。 「性愛教授」 セックスカウンセラーを主人公にしたエロねた。オチはまずまず面白いが、 副主人公である依頼主カビスンの声質が気になるところ、ここへ伏線を張って欲しかったもの である。 「人里離れた死」 中年ロードレーサーが主人公なこれもミステリとは言い難い作。 主人公の死を予想していると・・・哀愁に富んだラストが印象的。 「隣人たち」 Neighborsと言えば、ジョン・ランディスの不条理コメディの傑作が想起されるところだが、 同題の本作は、人種問題を背景に当時の社会状況を反映したかの如き作、 オチではなく作者の思想を反映したようなラストをエンタメの読者はいかに評価するかという ことであろう。 「叫ぶ男」 ドイツ(*これがミソ)の修道院を舞台にしたサスペンスフルなサイコ・ミステリ。 スケール感溢れるオチも面白い。 「夜の旅その他の旅」 これもミステリとは言い難い作だが、ズージャをやっている連中のビビッドな姿が鮮やかに描かれた表題作だけあって収録作品中随一の傑作である。 バンマスの「思い込み」がわかるような、わからないようなという微妙なところが 何とも巧さを感じさせるものがある。
855 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/07/21(月) 19:52:54 ID:bVGOsv/+
アントニー・バウチャー「タイムマシンの殺人」を読んだ。 日本ではミステリ評論家・アンソロジストとして著名な作者の作品集だが、 本書はダーク・ファンタジー・シリーズ中の1作として刊行されたためか、 ミステリよりもSFやファンタジー風の作が多いのが特色である。 USCとバークレーというカリフォルニア州を代表する、否、全米屈指の名門大学2校を優秀な 成績で卒業し、数ヶ国語に堪能であった名評論家の実作の方はどうかというと、 妙に理屈ぽく、あまり感心しなかったというのが正直なところである。 例によって、大好評な全話講評をいってみよう! 「先駆者」 冒頭に置かれたSSと言うてよいこの一編に関しては、スパイスねたで綺麗に決めている感じで まあまあの出来である。 「噛む」 ホラーだが、キングやクーンツを読んでいる現代の読者には古臭く面白みがないと判定されても 仕方なかろう。 「タイムマシンの殺人」 作者自身承知で書いたであろう掟破りのミステリ。 ドラえもん好きとかが読んだら面白い程度の出来かと思う。 やはり、タイムマシンの如きギミックのミステリへの導入は、やり過ぎで著しく謎解きの興を殺ぐ という感がある。 「悪魔の陥穽」 主人公が弁護士ということもあってか、結局、屁理屈なオチで解決というのも頂けない作。 古臭い三つのお願いネタを長々と読まされた感が強い。
856 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/07/21(月) 19:53:28 ID:bVGOsv/+
「わが家の秘密」 これも一応SFの装いはなされているものの、たわいないホームドラマを見せつけられた感がある。 「もうひとつの就任式」 インテリな作者らしい政治ねた、文学ねた、そしてカレッジ・フットの強豪USCのOBらしい フットボール好きを覗わせる理屈っぽいSFミステリ、凝り過ぎで読み難く、ゆえに推し難い感が ある。 「火星の預言者」 これは米作家らしい宗教ねた満載な作。オチもわかり難く、日本人にはフィットしない感あり。 「書評家を殺せ」 顔を影に隠した男の正体は何だったのか?これがミソでしょ。 理屈っぽい作が連続した後だと、気軽に楽しめる小品ではある。 「人間消失」 着衣だけ残して中身の人間消失、このトリックの解明(案)はジョン・スラディック風なバカミス として楽しめるが、肝心の本筋が今ひとつか。 「スナルバグ」 これも悪魔が登場するファンタジーだが、軽快な展開は買えるものの、 当時の新聞発行事情を知らないとオチそのものが楽しめないのが難、このマイナスポイントは大。 「星の花嫁」 読者の思い込みを狙ってオチへ持ってゆくことを狙ったと思われるSFショートショートや。 火星人=緑の肌という設定が時代を感じさせるものがある(バロウズの影響か) 「たぐいなき人狼」 収録作品中の最長作品。表題作にしてもよいくらいである。 魔法使いにより人狼に変身する術を会得した大学教授をめぐる奇想天外なストーリーで、 「有り得ねぇ」とか思いながら、語りの巧みさで一気に読ませはする。 他作に見られるような妙な理屈っぽさがない現代ファンタジーに徹しているのはグッド、 だが、「人狼」と「狼男」の概念は異なるのではないか? この点を才人バウチャーが混同している感がある点は気にかかった。
857 :
名無しのオプ :2008/07/21(月) 20:41:34 ID:IDS4Zuww
ミス住は速読法でもマスターしているんだろうな。たいしたものだ。
858 :
名無しのオプ :2008/07/25(金) 21:39:38 ID:xkBHetc4
Car Hiaasen "Nature Girl"(2005) 一般向けとしては「復讐はお好き?」に続く作品。ハイアセンの得意、というか ワンパターン?アホバカキャラが炸裂。もっともイカレ具合がいくぶん抑えられ 微妙な狂気みたいなのを感じさせる登場人物が多い。 例によってフロリダ物ではあるけれど、一応完結物みたいでアノ人物は登場せず。 関係なさそな登場人物が、徐々に交錯していくところは非常に面白いが、惜しいかな 後半ややダレた印象。自然保護の主張は露骨な形ではほとんどでてこないので 小説の進行としてはナチュラルなかんじでグッド。 アホキャラに見えた人物が実はdescentで調和の取れた人格だったという設定は 面白かった。
「高く危険な道」ジョン・クリアリー(角川書店) 第一次世界大戦で活躍したパイロット、オマリイはとある富豪令嬢から 依頼を受け、ロンドンから中国までの長距離飛行をすることになる。 彼女の父が将軍に人質にされており、期日までにある品物を届けないと 殺されてしまうのだ。オマリイは相棒を連れ彼女と共に遥か東方を目指し 飛び立った! 高速東遊記。面白い。 補給のために立ち寄る先々で一行にそれぞれ別個の苦難が襲いかかる。 その中でメンバーの増減もあり、歴史上の有名人とも出会う。 こういうの大好きだ。面白いに決まってるもの。 そんでまた一行のメンバーが、人目を引く美貌のアメリカ人、 人種差別するイギリス人、女たらしのドイツ人に寡黙な中国人と、 トラブルの匂いがプンプンの面子。内輪のゴタゴタも孕みつつ 旅をしていく。 ラストもお手軽ではなくきっちりしていて良い。 以前も言ったが良質な冒険小説を読む愉しさって言ったらないね。 ちなみにこれ映画化されてるみたいなのでそちらも観てみたい。 後他の作品も。
「ケンブリッジ大学の殺人」グリン・ダニエル(扶桑社) ケンブリッジ大学が長期休暇に入る朝、フィッシャー・カレッジ内で 守衛の射殺体が発見された。警察が被害者の身辺を洗う一方、 副学寮長サー・リチャードは違った観点から事件の調査に乗り出す。 そんな中、帰省した学生のトランクから第二の死体が現れた――。 扶桑社本格枠。評判はイマイチのようだったが、中々面白かった。 複数の探偵達が入れ替わり立ち代わり現れて独自の観点・手法で 捜査をし推理するという展開は読み応えがある。 ただ、大きなトリックや論理のアクロバットは無いので、 骨組みに対して肉付けが薄い印象を受けた。真相もふーんて感じ。 もう一つ言うと、ドラマが無い。こんだけ厚いんだからもうちょっと 小説味が欲しかった。ま、でも、アマのデビュー作にしちゃ良作です。 追伸 「奇術師の密室」は本格じゃないだろー。
リチャード・ノース・パタースン『最後の審判』 (2002、新潮社)【8点】 連邦判事の座が手に届くところまできたキャロライン。23年ぶりの故郷からの 連絡は、姪のブレットが殺人容疑で拘束されたという知らせだった。 家族との軋轢・昔の恋人との対立などに気後れしながら彼女が知った真相とは? いつもの三人称多視点が、今回はキャロラインの視点で固定されているので、 若干テンポが悪いところもある。とくに過去話は長すぎるなあと思った。 しかし終盤の裁判シーンでは畳み掛けるような展開で、軽いサプライズを織り交ぜる。 キャロラインという女判事のキャラはグンと深まったが、序盤〜中盤のもたつきと、 裁判シーンの短さがちょっと物足りない。またキャロラインのある行動にはさすがに 首を傾げたが、まあ、ああいう真相があったのなら仕方ないかな。
「ポドロ島」L・P・ハートリー(河出書房新社) ホラー短編集。以前「ロアルド・ダールの幽霊物語」を読んだ時、 一発目の「W・S」という短編にいきなり◎を付けた覚えがあるが、 その作者がハートリーだった。無論その話も入ってる。 が、んー全体としては微妙かも。話の持って行き方に違和感を覚える ことが多かった。後訳者の解題にも違和感が。表題作が「藪の中」って ことは無いと思うんだ。あのままで怖いよ。 ベストは「足から先に」。これぞホラーって感じ。 この叢書の短編集は今のところトゥーイと本書以外は◎。
「キーストン警官」ピーター・ラヴゼイ(早川書房) ドサ回りの芸人一座を抜けてハリウッドにやって来たイギリス人 イーストンは直談判ののち首尾よく撮影所に雇われ、映画の脇役の 仕事を得る。職場の連中たちとも打ち解けたイーストンはやがて 駆け出しの女優アンバーと割りない仲になるのだが、ある日突然 彼女は殺人事件の容疑者になってしまう。 初ラヴゼイ。だがイマイチ。何つーか事件が背景みたいになってて、 中盤ぐらいまで映画撮影の話がダラダラ続く感じ。しかもヒロインに 魅力がないから主人公に感情移入も出来ない。ミステリー部分にしても どうも道具立てが単純というか……。 「偽のデュー警部」に期待。
864 :
名無しのオプ :2008/08/01(金) 18:35:02 ID:2aIj4jMD
ラブゼイなら、個人的には「ダイヤモンド警視シリーズ」がおすすめ。 「最後の刑事」からどうぞ。
情報多謝!
「黄金の島」バーナード・コーンウェル(早川書房) 偉大な父親に反発し雇われ船長をしているニックは、ある時知り合いの 政治家から麻薬中毒の子供2人を更生させるためのクルーズを依頼される。 渋々引き受けたニックだったが、航海の途中麻薬の売人達が乱入し 船が破壊され船員が殺されてしまう。辛くも逃げ延びたニックに 更なる魔の手が襲いかかる! これはコーンウェルらしさが無かったなぁ。主人公のディスられ具合が 甘い。冒険小説としては佳作だと思うけど期待してたものとは違った。 ただ、作中のアメリカ富裕層の親バカに対する批判はGJだった。 たかが高校卒業ぐらいで高価なプレゼントするとか、生意気な子供を ひっぱたけないとか。物語の本筋でもそれが表れている。 もっとも現在ではこういう親は我が国含む世界中にいるだろうだけどね。
867 :
名無しのオプ :2008/08/02(土) 15:27:13 ID:n28MWnmi
コテハン占有スレとして削除対象だな、こりゃ。
868 :
名無しのオプ :2008/08/02(土) 22:24:24 ID:BLzsasZZ
エリー・クラインの収穫 エラリー・クイーンと間違えたという、しょうもない理由で手に取り、 最初のページでの、被害者が段々と死んでいく描写に引き込まれて買ったんだが 650Pも費やすほどの内容じゃなかったな いちいちうんこ出した描写まで入れんでも。 250Pぐらいで十分描ききれるもんだと思う。
869 :
名無しのオプ :2008/08/03(日) 08:31:52 ID:WbjHbmTo
ミッチェル・スミス好きなんだけど、ここ10年ばかり全然出ませんね。
870 :
名無しのオプ :2008/08/03(日) 10:14:32 ID:Z7+QpBYt
「聞いてないとは言わせない」ジェイムズ・リーズナー(早川書房) 田舎の農場を一人で切り盛りしている女性グレースと、農場へやってきた 青年トビーは周囲に何も無い状況の中やがて親密な仲になっていくが、 トビーには隠された目的があり、さらに謎の男達の乱入で事態は 一気に彼方へと動き始める……。 勘違いしないで下さい。僕は熟女が好きなわけではありません。 美熟女が好きなだけです。それが本作の粗筋を知り期待したわけ ですが……空かされた気分です。僕はてっきり寿行チックなストーリー かと思ったのにそんなんじゃなく、B級アクションの王道 と言った感じでした。読んだ内ではジェイムズ・カルロス・ブレイクに似てるかな? 向こうの方がより洗練されてますけど。 単純なプロットの末に意外な幕切れを迎えますが、これはちょっと 違和感を覚えます。これ今更問題視することなのかな? と。 それにどさくさ紛れに(メル欄)のは酷いと思います。 全く関係ないですし。
R・D・ウィングフィールド『フロスト日和』(創元推理文庫、1997)【8点】 退職パーティーに出席しようと勇んでいたフロストは、突如捜査に狩り出される。 公衆トイレで発見された浮浪者の死体。女性を狙う連続強姦犯。窃盗事件にひき逃げ事件。 数々の事件に振り回されながらも、フロストは着実に事件の真相に迫っていく・・。 フロスト第2弾。新刊が出たので積読本に手をつけてみた。 大小の事件を次々と発生させながら、過度に複雑化させずに物語を 組み立てていく構成は上手い。ただ、ちょっと間延びしたかなあ。 ユーモラスなフロスト警部の言動はもちろんんこと、 暴力事件で左遷されてきた元警部のウェブスター巡査が最初はフロストに 反感を抱きながらも徐々にその手腕を認めていく様がおもしろい。
873 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :
2008/08/09(土) 10:41:02 ID:Ou6IH+ss 「フロスト気質」を読んだ。 待ちに待った邦訳新刊である。 このシリーズでは初の上・下巻2分冊(各巻450頁前後)というボリュームであり、 じっくり味わって読むつもりが、面白さゆえ2日で読破してしまった。 以下に目に付いた点を記しておく、 ・フロスト警部にとってマレット署長と並ぶ天敵(?)アレン警部は 序盤に少し登場するのみなのが残念。(前作でも未登場であった) 過去の事件との絡みの関連もあって、代打的なキャラとして登場するのが 元デントン署勤務のキャシディ警部代行なのだが、おなじみアレンに比較して 存在感が弱い。 初期作では妻に先立たれたフロストの心情を慮るような人間的な面もかいま見せていたマレットが 前作あたりから、完全な敵役(メガネザル)として、嫌な奴キャラになってしまったのも、 エンタメとしての明解さはあるものの、小説としての「厚み」は落ちた感があるのも残念ではある。 ・これも前作から見られる傾向だが、複数の事件が終盤に来て一気に解決へとなだれ込んでゆく という展開ではなく、1件ごとに解決されてゆく展開、わかり易く読み易いが、ややカタルシスを 欠く感がある。 ・前から思うのだが、フロストはあんなだが、きちんとすれば「デントンのコロンボ」になれるタレント の持主なのではと思わせるシーン多し。 腐敗した死体にもかかわらず身元(前科者)を正確に割り出したり、 容疑者が玄関に出てくるまでの少しの間に着目し、これが最終的に誘拐事件の解決の 端緒となったり等々 確かに見込み違い、見当外れも多いが、これはあと少しの慎重さで回避し得るものではないか? ただし、フロストの下品、大胆なキャラを修整してしまうと、あのなんとも魅力的なフロストでは なくなってしまうわけだが。