『読みました』報告・海外編Part.3

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552書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
ジャック・リッチー「クライム・マシン」を読んだ。
2006年度このミス海外部門1位作品だが、
これが1位になるイヤーとは、
当時の本誌主筆ミスターXの「不作なり」の一言が極めて納得がゆくものがある。
勿論、悪い作品集ではなくベスト10の下位(8位、9位あたり)にランクイン
したのであれば、文句無いほどの出来ではあるのだが、やはりこれの1位は無かった
のではないか。
表題作などは、J・DやE・D(解説によれば彼氏はこの作者を高く評価していたとのこと)
の読者なら、それなりに面白く読めるやもしれぬが、いかんせん主人公がプロの
ヒットマンにしては注意力に欠け間抜け過ぎるという感を否めない。
本作を見ると、スーパーナチュラルは書かない作家かと思いきや、
カルトムービー「ウイッカーマン」を想起させるような「縛り首の木」のような作も
収録されていたりして、バラェティに富んではいるものの、この作者の持ち味とはいえ、全体としてあまりに軽過ぎるという感がある。
553書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2007/10/21(日) 14:25:28 ID:WHjSIcqO
マイケル・イネス「アプルビイの事件簿」を読んだ。
論理で読ませるエル風の作あり、奇抜なトリックが売りのジョン風の作ありで
結構楽しめるシャーロック・ホームズのライヴァルシリーズのひとつとして刊行された
本邦オリジナルの短編集である。
解説でも触れられているが、一部には退屈冗長な作風という評もあるこの作者の作だが、
本作品集を見る限りでは、中・短編に関してはこの懸念は不要と言い得る。
では、大好評につき収録作品全話講評逝ってみよう!
「死者の靴」
タクシー乗場の偶然性が気にかかるが、怪奇性を排した論理的作風の一編。
まあ、そこそこに楽しめる作ではある。
「ハンカチーフの悲劇」
「オセロ」ねたを巧く活かした教養人好みの作。
小品ながらハンカチ絡みの謎解きも巧く決まっている。
「家霊の所業」
ジョンならいらぬロマンスを導入して通俗にしてまったかもしれぬ名家の廃屋敷を
舞台にした怪奇性高い作。なかなかムーディで読み応えあり。
「本物のモートン」
裏焼きねたを巧く活かした好SS。
「テープの謎」
これは推理に無理有り過ぎな作か。スパイ小説まがいの展開も不調和で頂けない。
554書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2007/10/21(日) 14:30:08 ID:WHjSIcqO
「ヘリテージ卿の肖像画」
後半のアクションが白ける一編。謎解きミステリとしての見るべき点がほとんど無いのが
致命的な作。
「ロンバート卿の蔵書」
アイデアが面白いSS。創りが実に巧い。
「罠」
探偵しか知り得ない手がかりがポイントというアンフェアな一編。
この作者らしいハムレットねたも十分に活かされていない。
「終わりの終わり」
論理で読ませるかと思いきや、ジョン風のトンデモトリックが炸裂する一編。
飄々としながらもシニカルな結末も良し。
これも根がヤンキーのジョンなら通俗ロマンス仕立てにしてしまったような作だが、
さすがにイネスは渋く決めてくれる。