『読みました』報告・海外編Part.3

このエントリーをはてなブックマークに追加
533書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
ジョゼフ・ウォンボー「クワイヤボーイズ」を読んだ。
ウォンボーの第3作、現職警察官を辞し作家専業となって初作品でもあった。
前2作(「センチュリアン」「ブルーナイト」)とは、がらっとタッチが変わった
オフビートとでも称すべき異色作となっている。
ロス市警のとち狂った警官たちが織り成す集団ドラマ、しかも捜査よりも
聖歌隊(これがタイトルの「クワイヤボーイズ」)練習と称した公演での御乱行等に
相当の筆が割かれている。
彼に比較すれば、87分署の刑事連は超優等生、「センチュリアン」のロイら3人の
新人警官は模範生、「ブルーナイト」のバンパーは超真面目人間に見えてしまう
ハチャメチャぶり、しかし、戦争や少年課勤務による重いトラウマを抱えた警官
(いずれも白人、彼らが終盤の物語キーマンになって来るし、冒頭には重要な
伏線となる部分もある)もおり、(反面、一般には差別される者に区分される黒人や日系の警官は非常に図太くたくましい感じで描かれているのが面白い)
全編にスラング満載のダーティジョークが散りばめられ、警官たちの公私渡るドタバタが描かれるものの、笑いの要素は少なく、読後も暗い印象が残ってしまう。
ウォンボーはやはり前2作のようなシリアス路線が性に合うのであろう。
本国での売れ行きは悪くなく、映画化もされたにもかかわらず、以後、本作のような
タッチの作は書かれなくなってしまう。
(そして本邦では、早川書房がウォンボーは日本では売れないと判断するきっかけに
なった作のように思う。日本でも劇場公開された映画の原作でありながら、
本作は文庫化もされなかったのだ)
クワイヤボーイズの一味は残存者がいるので、カタルシスを感じさせるような続編を
期待したくもあったのだが、この点は残念であった。