『読みました』報告・海外編Part.3

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497書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
H・R・ハガード「ソロモン王の洞窟」を読んだ。
ハガードを一躍人気作家足らしめた作だが、エンタメとしては神秘的な美貌の女王が
強烈な存在感を示す「洞窟の女王」と比較して色気不足(魔女ガグールは不気味、かつ、
ユーモラスであり強烈な印象を残すが、このキャラはアランも記しているとおり問題外、黒人美女ファゥラタも登場するが出番は少なく印象は薄い。
そもそも第1章で語り手であるアランが若い女の子は登場しない物語だと語っている)
のうえ、ボリューム感も劣り、読み応えは今ひとつである。
しかし、小男だが射撃の名手、金銭面で抜かりなく、はったりも効き、
意外にヘタレな面もある語り手の冒険家アラン・クォーターメンは人間臭い魅力に富み、こういうキャラを中心に持って来るあたりが、ファンタジックでありながらも
「大人の読物」という感がある。
キャラだけ見た場合には、後の現代冒険小説の主人公(マクリーン、バグリイ等)は
清廉過ぎるヒーローと化し、面白みを失ってしまうのである。
「洞窟…」でも秘境冒険小説と言えるのは、実質3分の1程度であったが、
本作も同様な展開であり、象狩り、酷熱の砂漠横断や峻険な山岳(シヴァの乳房)登頂を
経てククアナ国到着後の中盤以降は、主人公たちが王位を巡る内紛に巻き込まれてゆく
時代劇風戦争冒険小説へと変貌してゆくが、今読んでも凄惨な迫力に富む戦闘シーンは、「洞窟…」にはないものではある。
本作は、ジュブナイルも存在したが、大久保訳で見る限り、差別的表現(土人、きちがい等々の用語、原住民の未開さを強調する描写等)、残酷描写(象狩り、魔女の人狩りの儀式、
そして激しい戦闘シーン等)等が連発、これを抜いて成立し得ないような物語なのだが、
果してどう構成したのか興を惹かれるものがある。