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書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :
ジョゼフ・ウォンボー「ハリウッド警察25時」を読んだ。
大ヴェテラン、ジョゼフのなんとポケミス初登場(既刊も全て早川だが、
ハヤカワNV、文庫、ハードカバーで刊行されている)、久々の翻訳新刊である。
今また、この警察小説のマエストロの新作が翻訳されるに至ったのは、
このミス1位等輝いた警察小説(というか婦警小説)
ローリーの「あなたに不利な証拠として」が好評だったゆえであろう。
あとがきでも指摘されているとおり、エドほど軽くないジョゼフ(作品)の
ユーモア含みの独自のハードタッチの魅力は健在、多彩な登場キャラ(時代性ゆえか
女性警官がメインで何人も登場する)もそれなりに立ってはいるものの、
本作と同傾向の「センチュリアン」(ジョゼフのデビュー作)と比較すると、
軽く創りものめいた感が否めない(特に終盤の警官大集合的展開はB級映画、
安手の刑事ドラマ風で頂けないものがある)のが残念である。
取材対象には事欠かないのであろうが、作者が現場から離れて久しい(40年近く)
ためか、肌感覚による臨場感が比較にならないのである。
また、「センチュリアン」が3人の新人警官をメーンとした警察サイドの視点で一貫
していたのに対して、犯罪者サイドの視点にも多くの頁が割かれているのが大きな
相異と言えるが、これは小説としての興を惹く効果がある反面、
ドキュメンタルな迫力を殺ぐ構成となってしまっている。
ただし、ボリューム感はあるものの、過去のジョゼフ作品群と比較して会話文が
多く読み易いのは利点か。
「刑事コロンボ」でも有名なLA市警だが、相次ぐ不祥事により連邦の監視下
にあり、これでは名探偵物語の舞台足り得なくなってしまったのはわかる気がする。
同じメガシティであっても、NYとLAの状況(地形、人工動態等)の違いによる
警察捜査の異なりに関するコメントなども興味深く、作中に散りばめられた
この辺の現場の薀蓄はジョゼフ作品らしい面白さではあった。