『読みました』報告・海外編Part.3

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456書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
久々にH・R・ハガード「洞窟の女王」を読んだ。
初読の時は、アフリカが舞台ということもあって秘境冒険小説を期待して
読んだところ、怪奇冒険小説と称した方がふさわしい内容に、
少し外された感じがしたものであった。
純然たる冒険は、黒人の顔をした奇怪な岩、ライオンとワニの死闘等、
トンデモなエピが散りばめられた前半の川上り探検のくだりと
終盤にある生命の炎の洞窟への旅の部分とを併せても、
全体の3分の1も無いのではないか。
むしろ、謎の洞窟に君臨する女王アッシャと主人公たちとの交流、
これを彩る怪奇、かなりえぐいエログロに相当な頁数が割かれている。
ミイラの焚き火、全裸で炎に身を投じる女王等々、書かれた時代を考慮すると、
大久保康雄先生の抑制された上品な訳文で読んでも、かなり過激的である。
(ただし、古い翻訳であるため差別用語は満載。これも今では「いけない刺激」
となって読む者に迫る)
現代の洗練された冒険小説と比較すれば、古臭ささは否めないのは仕方がないが、
ある意味で人生の達人とでも称すべき、絶世の美女、女王アッシャの唯物論を
思わせる人生語り、神秘的な女王という言葉から想起するイメージからは
想起出来ない多弁ぶりは、予想を裏切ると共に、本作における最大の読ませどころ
ともなっている。
そして、アッシャは超人的な存在ではなく、意外や、女性共通の賢さ、狡さ、可愛さ等も
あるキャラとして描かれているのが非常に面白く、この辺は今は見当たらなくなって
しまった完全大人向きのファンタジーという感がある。