448 :
書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :
2007/07/22(日) 09:27:48 ID:1rNHedW3 トマス・ハーディ「日陰者ジュード」を読んだ。 ハーディの最後の小説にして代表作でもあるが、「テス」と比較すると今ひとつ という感がある。 社会派小説(当時)としても、ダブル三角関係を描いたメロドラマとしても読める作ではあるが、時代の波に圧されてゆくヒロインに焦点を絞って書き切った 「テス」と比較して、メーンキャラがタイトルに冠された石工ジュード、その最初の妻であり農民上がりの酌婦アラベラ、 ジュードの従兄妹であり後に恋人となるスー・ブライドヘッド、 スーの夫である年輩の教師フィロットソンと主要人物が、それぞれにかなりのボリューム を物語に占めており、(実際、主人公ジュードが脇に配され、あるいは、殆ど登場しない章 が相当数存する)、ストーリーに変化をもたらす効果は上げているものの、 語りが散漫になっている面は否めないものがある。
449 :
書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :2007/07/22(日) 09:30:17 ID:1rNHedW3
また、テーマの面でも教会・結婚・大学という21世紀となった 現代にも通じる社会制度問題(非キリスト教徒である我々にも後2者の問題は切実な問題として迫って来るものではあるが)を 全て取り上げてしまったため、各問題に関する掘り下げがそれぞれに浅くならざるを得なかったきらいがあるのが惜しまれる。 なお、「ミステリ的読み」としては、スーのキャラ分析の興味に尽きる。 彼女のキャラそのものが、まさに「ミステリ」なのだが、それは安っぽい謎の女の類ではなくして、 正に人間存在の根源に関わるものなのだと言える。 作品中に書かれざる、明示されざる「ミステリ」を読み解くこと、 さてミスオタにこれが出来る否かだな(w
あぼーん
451 :
名無しのオプ :2007/07/27(金) 10:51:28 ID:bne64hn6
『殺人症候群』/リチャード・ニーリィ を読んだ 国産ミステリ読んでる人はすぐにトリックわかっちゃうね ただ最後の2,3行の意味はわからなかった 主人公がアレ切っちゃうのはトリックと何か関係あるのか?
452 :
書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :2007/07/28(土) 20:11:40 ID:3VA4mKZg
ポール・アルテ「狂人の部屋」を読んだ。 絨毯の謎の濡れ、本邦のタクシー怪談を想起させるようなネタだが、 この作者にしては地味な感がある謎の提出ではある。 後半に入り新たな事件が発生、不可能趣味が炸裂して来る。 ただし、訳者あとがきにあるアルテ最高傑作というのは言い過ぎ、 とにかく死者甦りネタの真相がお粗末過ぎるのである。 また、真相は検死でわからないという前提で話を進めているようだが、 (その旨の記述もあり)、現代法医学の書を参照すると疑問である。 それとも英国あるいは作者の母国であるフランスの検死制度は、 少し前に話題となった本邦の検死制度以上にザルなんであろうか。 全体的にはジョンの悪しき影響というかツンデレなラブロマンスが、 物語を退屈、かつ、テンポを悪くしているのが頂けないものがある。 アルテの魅力は先人ジョン以上のストイックさ、簡潔さ等であったというのに。
453 :
名無しのオプ :2007/07/30(月) 20:50:45 ID:EATLI7qJ
リチャード・ノース・パタースン『子供の眼』(上下) (2000→2004、新潮文庫)【8.5点】 弁護士テリは駄目夫リッチーとの離婚を決意し、娘の監護権を争う。 ボスである弁護士クリスを頼り親しい関係となるテリーザだが、旅行中に 夫リッチーが死体で発見された。自殺か殺人か、真相は深い闇の中・・・・ 『ラスコの死角』『罪の段階』に続く弁護士クリス・パジェットもの。 できれば『罪の段階』は読んでいたほうが良い。リーガルサスペンス+ 家族ドラマというありきたりの設定だが、クリスが何やら怪しい行動を とるのでどこに着地するか予断を許さない。文庫上下巻本だが、一気読み。 とくに手に汗握る法廷シーンは圧巻。前作よりもおもしろい。 テリとキャロラインと女精神科医のキャラが一緒だとか、終わり方がくどいとか 欠点もあるが、傑作の名に恥じない。とりあえず、リッチーは死んでザマミロ。
454 :
名無しのオプ :2007/08/01(水) 18:49:15 ID:sDOAx0AG
トニー・ケンリックの「スカイジャック」(1972)を読んだ。 既に読んだつもりになっていたが、実は今回が初読だった。 (昔買ったけれども、そのまま積読状態でした。) ジャンルは、ユーモア・ハードボイルドになるらしい。 360人の乗客を乗せたジャンボジェット機が突然 レーダーから消えた。 さらに、2500万ドルのダイヤモンドを要求する手紙が舞い込む。 普通なら、FBI捜査陣 vs 犯人グループ、の図式になると思うのだが、 ここでは、開店休業中のしがない弁護士元夫婦のカップルが主人公。 笑いあり、サスペンスあり、冒険ありの絶妙の一品でした。 文庫版のカバーに 「─そして、最後には、あっと驚く結末が…」 とあるのに、納得www
「エジプト十字架の秘密」エラリー・クイーン(早川書房) 父と地方へ出かけたエラリイは奇妙な殺人事件に遭遇する。 道路の突き当たりにある標識に首無し死体が結びつけられていたのだ。 検死審問には参加したもののさしたる行動は起こせないまま 帰途に着いたエラリイだったが、数ヶ月後別の場所で再び 首無し死体が発見される! 果たして二つの事件の関連は!? 瀬戸川猛資も絶賛の国名シリーズ白眉と呼び声高い本作ですが、 それほどとは思えず。前作「ギリシャ棺の秘密」の持つ重厚かつ 濃密な構成には及ばない。犯人の見当も付きやすいし。 一番不満なのは(メル欄)。特に(メル欄2)。 気に入った箇所は二度目の事件におけるロジック。これはやり過ぎると ノックスみたいにわざとらしくなりがちだけど良い案配だったかと思う。
456 :
書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :2007/08/04(土) 16:32:07 ID:4keRLVJ6
久々にH・R・ハガード「洞窟の女王」を読んだ。 初読の時は、アフリカが舞台ということもあって秘境冒険小説を期待して 読んだところ、怪奇冒険小説と称した方がふさわしい内容に、 少し外された感じがしたものであった。 純然たる冒険は、黒人の顔をした奇怪な岩、ライオンとワニの死闘等、 トンデモなエピが散りばめられた前半の川上り探検のくだりと 終盤にある生命の炎の洞窟への旅の部分とを併せても、 全体の3分の1も無いのではないか。 むしろ、謎の洞窟に君臨する女王アッシャと主人公たちとの交流、 これを彩る怪奇、かなりえぐいエログロに相当な頁数が割かれている。 ミイラの焚き火、全裸で炎に身を投じる女王等々、書かれた時代を考慮すると、 大久保康雄先生の抑制された上品な訳文で読んでも、かなり過激的である。 (ただし、古い翻訳であるため差別用語は満載。これも今では「いけない刺激」 となって読む者に迫る) 現代の洗練された冒険小説と比較すれば、古臭ささは否めないのは仕方がないが、 ある意味で人生の達人とでも称すべき、絶世の美女、女王アッシャの唯物論を 思わせる人生語り、神秘的な女王という言葉から想起するイメージからは 想起出来ない多弁ぶりは、予想を裏切ると共に、本作における最大の読ませどころ ともなっている。 そして、アッシャは超人的な存在ではなく、意外や、女性共通の賢さ、狡さ、可愛さ等も あるキャラとして描かれているのが非常に面白く、この辺は今は見当たらなくなって しまった完全大人向きのファンタジーという感がある。
457 :
名無しのオプ :2007/08/04(土) 19:16:43 ID:q68cUUom
読後感と書斎では、はっきり差があるな。感想文と論考の差と言うべきか。
458 :
名無しのオプ :2007/08/04(土) 19:18:14 ID:q68cUUom
読後感と書斎では、はっきり差があるな。感想文と論考の差と言うべきか。
459 :
名無しのオプ :2007/08/04(土) 19:19:25 ID:v+IoMWZM
論考(笑)
「凶運を語る女 ムルマンスク、2017年」ドナルド・ジェイムズ(扶桑社) 内乱が終息してから2年。妻と共に暮らしていた警官コンスタンチンは とある占い師から、妻の影に蠍の様な男がいると言われ、動揺する。 そしてその後夫婦で行ったパーティーの会場で妻は姿を消してしまう。 必死に妻の行方を追うコンスタンチンだが――。 前作を読んだのはもう何年も前だけど読後の印象は強烈で、 ここまできっちりした小説があったのか、と思った。ところが 続編があるという。これ以上は蛇足ではないかと読まないでいた。 が、観念して読んだ。まず妻捜しというのが「芸がない引きだ」と 思った。妻の描写が少ないのも気になった。彼女は前作にも 出ているわけで今更淡白にして見せたってちぐはぐなだけ。 この違和感は真相が明かされた後も変わらず。何故こんな味気ない 話を書いたのかと首を捻った。 しかも中盤で読書意欲がガタ落ちする出来事があり読殺するのが 手間だった。やっぱ前作で止めとくべきだったかも。 追伸:(メル欄)が放置されてるのはわざと含みを持たせてるのか?
「狂人の部屋」ポール・アルテ(早川書房) 屋敷に代々伝わる開かずの部屋。ある日封印を破った当主はその部屋の 窓から転落死を遂げ、程なくそこへ入った妻も何故か白眼を剥いて 失神してしまう。そして暖炉の側の絨毯は濡れていた。 開かずの部屋に伝わる忌まわしい言い伝えの通りに……。 さらに次々と的中する恐るべき予言の謎も相まって事件は混迷するが――。 今回は密室ではなく、肝となる様なトリックもない。 プロットで見せるタイプの話。展開の妙でなかなか読ませるが、 カー作品でよく指摘される弱点(クリスティにも言えるが)がそのまま 本作の弱点になっておりそれがとても残念。 ただ、ある重大な事実が明かされないことについての理由付けは 良かったと思う。 でもあまり本格が根付かなかったフランスで今アルテやコナンが 人気なのも不思議な話だ。
462 :
書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :2007/08/18(土) 12:04:51 ID:HAwtwyui
マルキ・ド・サド「ソドムの百二十日」を読んだ。 序文+4部構成だが、2〜4部は草稿の段階に過ぎず邦訳頁数でも100頁強に過ぎない。 未完という点を考慮すれば、他作と比較するのはいかがなものかとは思うが、 稀代のピカレスク、究極のクライムノベルと言い得る「悪徳の栄え」には遠く及ばない という感がある。 本作がスイス山中の館というクローズドサークルにおける有閑階級の性的な狂宴を描いた ものなのに対して、美女ジュリエット(このネーミングにも作者の皮肉と悪意を感じ させるものがある)の欧州大陸を舞台にした悪徳の遍歴を描くという舞台設定の差が ストーリーの起伏に大きく影響し、これが即、エンタメとしての面白さの差となって 反映していると思われる。
463 :
名無しのオプ :2007/08/19(日) 19:49:53 ID:wKTo8EV2
ケン・フォレット『ハンマー・オブ・エデン』 (2000→2004、小学館文庫)【8点】 州知事に対し「人為的に地震を起こす」という脅迫を行った“プリースト”ら。 「エデンの鉄槌」。ヒッピー・コミュニティの存続を賭け、かれらメンバーは、 地震を起こすことに成功。しかしFBIらの捜査は着実に身辺に及んでくる・・・ 「地震」を武器にするという突飛なテロ集団とFBIとの対決が焦点で、 矢野さんの翻訳がテンポよく物語を読ませる。細かいことを言わなければ、 一気読みの楽しい読書が出来る。 だがFBIが知力の限りを尽くしてヒッピーを追い詰めるというよりは、 25年間森の中にこもっていたヒッピーのリーダーの軽率な行動により 勝手に自滅してしまうという点が、ちょっと残念。
464 :
書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :2007/08/25(土) 17:59:54 ID:xSiSc9Cf
スティーヴン・ハンター「極大射程」を読んだ。 翻訳刊行当時は、このミス、文春等で高く評価された作ではあるが、 今読むと、本作に対する高評価はイコールミスオタのローレベルを実証するものだと 言われても致し方ないものがあると思うほどの「つまらなさ」であった。 ベトナム戦争で輝かしい戦績を上げた伝説的なスナイパーと 暗い過去を持つ不器用だが真面目なFBI捜査官の2人を主人公にし、 敵役にCIAと攣るんだ軍人グループ、性犯罪歴がある天才的な心理学者、 主人公2人に絡むスナイパーの戦友(戦死)の美人妻とFBIの美人若手職員が ヒロイン役として配される。 ここまで書けばわかるとおり、展開に強引な御都合主義が多い漫画ちっくというか 劇画的な作であり、映画「ダイハード」あたりを喜んで見ているような厨房好みの作 とも言い得る。 特に女性陣が犯罪者として追われている主人公たちに全く恐怖を感じておらず、 協力的でさえあるのは、あまりに現実感を欠くものがあり、 読んでいてうんざりした。これぞハリウッドB級テーストとでも評したいものではあるが、 近年映画化されたのは御存知のとおり。 ミステリ的には、ダイイング・メッセージねた(「ROM DO」)は、わかり難いもの であり、終盤のリーガル・サスペンス的展開で判明する主人公が仕掛けた「トリック」は、 軽い短編に使用する程度のネタに過ぎない等、魅力は乏しい。 ミステリ関係のランキングでは異常なまでに高く評価されながらも、 当初から文庫での刊行、一般では殆ど話題にならなかった等の点に本作の真の評価を 見る気がする。
465 :
名無しのオプ :2007/08/25(土) 20:54:14 ID:dV1gJlBX
____ /∵∴∵∴\ /∵∴∵∴∵∴\ /∵∴∴,(・)(・)∴| |∵∵/ ○ \| |∵ / 三 | 三 | / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |∵ | __|__ | < うるせー馬鹿! \| \_/ / \_____ \____/ヽ __ _____ / >、__,r‐ツ./ヽ´-‐ ' "´r",.-、, \ _.. -‐''フ|フヽr-‐ ''''フ./´ /(_.人 ヽ._ ヽ . ‐ '7 く/|〉-rへ. / ./ l ゝ. \ / / /|/ L / | ,( \ ノハ
466 :
名無しのオプ :2007/08/25(土) 21:07:10 ID:aA3CGWBJ
今日は週末にしては忙しかったので、読んだ字は「うるせー馬鹿!」だけだった。 成る程そのとおりかとも思ったが、余りの内容の薄さに辟易した。
467 :
名無しのオプ :2007/08/25(土) 21:52:15 ID:X8qvmFy4
____ /∵∴∵∴\ /∵∴∵∴∵∴\ /∵∴∴,(・)(・)∴| |∵∵/ ○ \| |∵ / 三 | 三 | / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |∵ | __|__ | < うるせー馬鹿! \| \_/ / \_____ \____/ヽ __ _____ / >、__,r‐ツ./ヽ´-‐ ' "´r",.-、, \ _.. -‐''フ|フヽr-‐ ''''フ./´ /(_.人 ヽ._ ヽ . ‐ '7 く/|〉-rへ. / ./ l ゝ. \ / / /|/ L / | ,( \ ノハ
468 :
名無しのオプ :2007/08/27(月) 08:45:51 ID:aqxzaCql
>>464 >特に女性陣が犯罪者として追われている主人公たちに全く恐怖を感じておらず、
協力的でさえあるのは、あまりに現実感を欠くものがあり、
現実の女を知らないね。
刑務所の連続殺人犯にラブレターを書く女もいるのを知らないの?
女は「悪い男」が好きなものなんだよ。
469 :
書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :2007/09/01(土) 16:39:22 ID:OR4vzIyb
ジョゼフ・ウォンボー「ハリウッド警察25時」を読んだ。 大ヴェテラン、ジョゼフのなんとポケミス初登場(既刊も全て早川だが、 ハヤカワNV、文庫、ハードカバーで刊行されている)、久々の翻訳新刊である。 今また、この警察小説のマエストロの新作が翻訳されるに至ったのは、 このミス1位等輝いた警察小説(というか婦警小説) ローリーの「あなたに不利な証拠として」が好評だったゆえであろう。 あとがきでも指摘されているとおり、エドほど軽くないジョゼフ(作品)の ユーモア含みの独自のハードタッチの魅力は健在、多彩な登場キャラ(時代性ゆえか 女性警官がメインで何人も登場する)もそれなりに立ってはいるものの、 本作と同傾向の「センチュリアン」(ジョゼフのデビュー作)と比較すると、 軽く創りものめいた感が否めない(特に終盤の警官大集合的展開はB級映画、 安手の刑事ドラマ風で頂けないものがある)のが残念である。 取材対象には事欠かないのであろうが、作者が現場から離れて久しい(40年近く) ためか、肌感覚による臨場感が比較にならないのである。 また、「センチュリアン」が3人の新人警官をメーンとした警察サイドの視点で一貫 していたのに対して、犯罪者サイドの視点にも多くの頁が割かれているのが大きな 相異と言えるが、これは小説としての興を惹く効果がある反面、 ドキュメンタルな迫力を殺ぐ構成となってしまっている。 ただし、ボリューム感はあるものの、過去のジョゼフ作品群と比較して会話文が 多く読み易いのは利点か。 「刑事コロンボ」でも有名なLA市警だが、相次ぐ不祥事により連邦の監視下 にあり、これでは名探偵物語の舞台足り得なくなってしまったのはわかる気がする。 同じメガシティであっても、NYとLAの状況(地形、人工動態等)の違いによる 警察捜査の異なりに関するコメントなども興味深く、作中に散りばめられた この辺の現場の薀蓄はジョゼフ作品らしい面白さではあった。
470 :
名無しのオプ :2007/09/01(土) 16:55:03 ID:ZEXj2KQn
ひ・まじんww
471 :
名無しのオプ :2007/09/02(日) 22:45:33 ID:SA+xZi/f
Donald E. WestlakeのWATCH YOUR BACK!読みました。 まあ感想といってもこのシリーズは全部面白いと思ってるので当てにはならないかもしれませんが。 酒しか出さないO.J. Bar & Grillの常連達の法螺話から始まるのはいつもと同じ。 ところが今回は療養帰りの故買屋アーニーからぼろい仕事の話が来て、さあ集まるぞというところでO.J.売却の危機、 またもや本来の仕事に加えて厄介事が降りかかってくるという話。 ドートマンダーとおなじみの中年オヤジたちに加えて、高校を卒業したばかりの新入り、 アーニーよりひどい性格の金持ち、O.J.のオーナーも登場します。 話の展開自体はいつもどおりの 儲け話 ↓ ドートマンダー参加、プランは完璧 ↓ 邪魔が入って仕事が増える ↓ 全部解決して仕事に戻る ↓ あわや逮捕 ↓ 報酬減少 のパターンで、安心して読めました。 細かい笑いも健在。個人的にはO.J.乗っ取りを企むギャングの親子がFuckを連呼するのがツボでした。
472 :
名無しのオプ :2007/09/03(月) 00:28:45 ID:j/YaQjr6
書斎魔神とやらの文章が、飛び抜けて(笑)くだらない、 他人の書評を写してるだけなのが、丸見え。
473 :
名無しのオプ :2007/09/03(月) 21:44:26 ID:SUsKpLCL
>>468 書斎魔神は、50歳の童貞男ということですね。
474 :
名無しのオプ :2007/09/04(火) 11:47:09 ID:43PNXPer
>>472 そうか?
書斎魔神の書評は正鵠を得ているものばかりだと思うが。
そのまま出版社に持っていけば、一流の批評として評価されるだろう。
それを2ちゃんでロハで読めるんだから、むしろありがたいと思うべきでは
475 :
名無しのオプ :2007/09/04(火) 12:12:58 ID:rp+at5Uw
>>474 泡沫ライターでも、書斎の、品格も、ウィットも、知性も、論理性も感じさせない、
だらだら駄文よりは、はるかにまし、これじゃあ泡沫プロにすらなれないわけだ、
くねってるだけの書斎は、アマチュアですらない、
彼は、きちんとした作品も評論集も、書籍として販売したことがないのだから。
2ちゃんねらーが、ネット上で話したり、感想を言い合ったりするのは、
かまわない、そうゆう前提で作られた、コミュニケーションの場なのだから。
しかし、書斎は、自分はプロの作家だと主張し、私達、2ちゃんねらーに対し
キメ台詞の「愚民諸君!覚悟したまえ!」等の暴言を吐く男である、
(吉村 昭スレのスレッド数の多いほうを見てください)
それだけ、自分の優越性を主張するなら、もう2ちゃんに来ないで欲しい、
ここで、口調を変えよう!
私たちは、貴方に言わせると、愚民だそうなので、優秀な魔神さんとは、
会話が成り立たないでしょう、啓蒙して頂かなくても結構です、
自分らで、啓蒙し合います、貴方は、一刻も早く、自費出版ではない、
一流の書籍会社から、出版して下さい、私たちは、それを読んで、
あなたと言う人間のプロフェッショナル性を判断します、
早く、きちんとした、書籍を出版して下さい、それがプロの知識人・作家・評論家を
自認する貴方に我々が、求める事です、
御自慢の支持者の皆さんに取材の助っ人をたのむぐらいは、いいんじゃないですか?
とにかく、推理小説でも、スリラー(冒険小説)でも、ポリティカル・フィクションでも、
軍事サスペンスでも、ホラーでも、SFでも、評論集でも自分の名で、
出版して下さい、泡沫ライターとしての参加は、いやなんでしょ、
それまでは、2ちゃんにこないで結構です、
私達は自分達でやっていけますので、おせっかいは、やめてください
476 :
名無しのオプ :2007/09/04(火) 12:36:23 ID:6CnleLYs
477 :
名無しのオプ :2007/09/04(火) 13:11:25 ID:rp+at5Uw
478 :
名無しのオプ :2007/09/05(水) 08:06:40 ID:kJ4thqTH
過去ログ見ずに言うけど、 書斎魔神て人のコピペやパクリや文体の稚拙さ云々よりも、 新刊紹介スレの「1と仲間達」の空気がキモイよ。 あそこは1の専スレなのか? あっちからここに来た奴って実は多いんじゃないか?
479 :
名無しのオプ :2007/09/05(水) 08:31:39 ID:2yk/WwTj
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| | 次でボケて!!! | |________| ∧∧ || ( ゚д゚)|| / づΦ
480 :
名無しのオプ :2007/09/05(水) 09:53:33 ID:sybDRc+1
このスレも「書斎魔神と仲間達」 スベった
「くたばれ健康法!」アラン・グリーン(東京創元社) 5000人の信者を抱える健康体操のカリスマがホテルの一室で射殺された。 だが奇妙なことに弾丸は仰向けになった死体の背中から 撃ち込まれており、しかもその上に着ていたパジャマには 弾丸の痕がなかったのだ。犯人は一体どのようにして撃ったのか? しかし「ボディを見てから驚け!」って酷い邦題だよなぁ。 付けた奴もGOサイン出した奴も頭大丈夫かしら。 バウちゃんがカーの某作と並んでユーモア本格の代表作だと 言ってたらしいが、どこが? キャラは全然経ってないし ドタバタもないし至ってフツーの、というかむしろ無味乾燥な本格って 感じなんだがな。と、思ってたら終盤にとって付けたような ドタバタ騒ぎが出てくる。しかし事件となーんの関わりもない ただの騒動ってだけ。 まあ殺人のトリック自体はユニークではあるんだけど、その周囲に 不備が目立つ。(メル欄)とか(メル欄)とか。 トリック的にはマイルストーンかも知れないが読んで楽しい本じゃない。
482 :
名無しのオプ :2007/09/06(木) 00:21:31 ID:1TtUC9PD
この、読後感 ◆VkkhTVc0Ug 氏は、書斎魔神の新しいペンネームか? ぶっ壊れた文章はそっくりなのだが?
483 :
名無しのオプ :2007/09/06(木) 01:16:25 ID:Rw7PngV8
とりあえずageでマルチまでして訊くことじゃないな 読後感が“新しいペンネーム”かどうかなんてスレ見りゃ 簡単に判ることだし
484 :
名無しのオプ :2007/09/06(木) 01:28:17 ID:ZiS09dqz
まあユーモアセンスは書斎と同じレベルだけどな
485 :
名無しのオプ :2007/09/06(木) 01:34:31 ID:5K47B/+j
『タルタロスの審問人』面白かった!! 初めて小説読んだけど夢中で最後まで読んでしまった!!
2
487 :
名無しのオプ :2007/09/06(木) 17:19:52 ID:PzTZSbXn
488 :
名無しのオプ :2007/09/08(土) 04:49:58 ID:AuMV7/P4
ホームページ! ホームページ! アドレス!アドレス! 教えて!教えて!教えて!!!!!!!!!!!!書斎さんw
489 :
名無しのオプ :2007/09/08(土) 08:22:55 ID:hzyKPK0e
490 :
名無しのオプ :2007/09/08(土) 17:32:46 ID:f0qkLd4R
>>489 489←481
めくらがめくらを導くと、溝に落ちる
491 :
名無しのオプ :2007/09/12(水) 18:28:36 ID:4ElP10EP
// ヘ,(◎◎)y'^ 極大射程を読んだ・・ 、 _L_;二;_.j_ , \\  ̄ ト、~Y~,/| ̄ ,|yΛ=スイ|、 ' | | !;∀Y i| ` |イYト〉イY.| レYy'`vレ| Vy V' ヨコハマクズウンチクゼミ
492 :
名無しのオプ :2007/09/13(木) 00:09:00 ID:o7SILb8t
// ヘ,(◎◎)y'^ 書斎叩きにも同様の・・ 、 _L_;二;_.j_ , \\  ̄ ト、~Y~,/| ̄ ,|yΛ=スイ|、 ' | | !;∀Y i| ` |イYト〉イY.| レYy'`vレ| Vy V' ヨコハマクズウンチクゼミ
「この男危険につき」ピーター・チェイニー(論創社) 大金持ちのフーテン令嬢を追ってアメリカからイギリスに やって来たおれ、レミーはロンドンで厄介な奴に捕まっちまった。 そいつはマフィアの大物で令嬢を誘拐する片棒を担げと言ってきた。 脅されたおれは奴の計画に一枚噛むことにしたんだが……。 時折入るB級ハードボイルドがいいアクセントになってると思うね。 本格だけの叢書なんて堅苦しくっていけねえ。 全体的に文章が雑で如何にも書き飛ばした観があるのがまた B級ぽくて良いw 主人公は目的のためなら殺人含む暴力も辞さない男なのもマル。 それから後半にはどんでん返しがあって驚いた。 フランスで人気だったらしい。あの国は本格もハードボイルドも かなり需要はあるのにあまり自給出来てない珍しい国だね。
「善意の殺人」リチャード・ハル(原書房) 嫌われ者の富豪が列車内で死に、使用していたかぎ煙草入れから 青酸カリが検出された。同じ村に住む者は誰もが被害者を嫌っており、 その中から特に怪しい行動を取っていると思われた者が逮捕される。 そして裁判が始まった――。 既訳の2作を読んで「芸域の狭い作家」とややディスっていましたが、 新しくこの叢書に入れるぐらいだから今までとは違う良作なのだろうと 期待をして読みました。 内容は法廷劇と事件の捜査とのカットバックで進行するというもので、 被告の名は終盤まで明かされません。よって被告の正体、裁判の行方、 事件の真相と3つの謎がキモとなるかなと思ったのですが、 はっきり言って不発気味。被告の正体が判る場面が効果的ではないし、 裁判の真相自体も弱いです。 まあ、先行2作に比べると多少頑張ったねとは言えますけど、 評価が劇的に改まるには至らず。解説みたいに技巧派呼ばわりするのは 抵抗がありますなあ。
495 :
名無しのオプ :2007/09/14(金) 17:11:49 ID:zPGQDNi3
大した感想だ
496 :
名無しのオプ :2007/09/15(土) 11:44:16 ID:Zy7wFhX9
「猿きたりなば」エリザベス・フェラーズ 古本屋でよく見るんでなんとなく買ってみたんだが、予想外の当り。 文章も面白いし読みやすい。ストーリーの運びもキャラクターも好み。 ただ推理小説としては……
497 :
書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :2007/09/15(土) 11:52:32 ID:moZivBgC
H・R・ハガード「ソロモン王の洞窟」を読んだ。 ハガードを一躍人気作家足らしめた作だが、エンタメとしては神秘的な美貌の女王が 強烈な存在感を示す「洞窟の女王」と比較して色気不足(魔女ガグールは不気味、かつ、 ユーモラスであり強烈な印象を残すが、このキャラはアランも記しているとおり問題外、黒人美女ファゥラタも登場するが出番は少なく印象は薄い。 そもそも第1章で語り手であるアランが若い女の子は登場しない物語だと語っている) のうえ、ボリューム感も劣り、読み応えは今ひとつである。 しかし、小男だが射撃の名手、金銭面で抜かりなく、はったりも効き、 意外にヘタレな面もある語り手の冒険家アラン・クォーターメンは人間臭い魅力に富み、こういうキャラを中心に持って来るあたりが、ファンタジックでありながらも 「大人の読物」という感がある。 キャラだけ見た場合には、後の現代冒険小説の主人公(マクリーン、バグリイ等)は 清廉過ぎるヒーローと化し、面白みを失ってしまうのである。 「洞窟…」でも秘境冒険小説と言えるのは、実質3分の1程度であったが、 本作も同様な展開であり、象狩り、酷熱の砂漠横断や峻険な山岳(シヴァの乳房)登頂を 経てククアナ国到着後の中盤以降は、主人公たちが王位を巡る内紛に巻き込まれてゆく 時代劇風戦争冒険小説へと変貌してゆくが、今読んでも凄惨な迫力に富む戦闘シーンは、「洞窟…」にはないものではある。 本作は、ジュブナイルも存在したが、大久保訳で見る限り、差別的表現(土人、きちがい等々の用語、原住民の未開さを強調する描写等)、残酷描写(象狩り、魔女の人狩りの儀式、 そして激しい戦闘シーン等)等が連発、これを抜いて成立し得ないような物語なのだが、 果してどう構成したのか興を惹かれるものがある。
498 :
名無しのオプ :2007/09/15(土) 19:52:47 ID:Q+sFId5y
「暗い鏡の中に」ヘレン・マクロイ 幻の一冊として名高いミステリ… うーん…しかし、残念ながら定価以上の価値はないかと… 解決編を読んでも「本当にそんなこと可能なのか?」と疑問ばかりが先に立つ。 古本相場だと5000円前後らしいけど、 その値段で買ってたら憤死するデキ
499 :
名無しのオプ :2007/09/16(日) 00:03:19 ID:f2SQuDd3
ヘレン・マクロイ て人気ある(あった?)のか・・・。 「一人で歩く女」ちゅうのをタイトルに騙されて買った。 途中で飽きた。読み終えるまで船から下りられないのか?
「反射」ディック・フランシス(早川書房) しがない騎手フィリップはある時絶縁状態の祖母に呼び出され 行方不明となっている異父妹の捜索を頼まれる。そんな折り 知り合いのカメラマンが死に、彼の家に強盗が入る事件が発生。 偶々遺品を譲り受けたフィリップにも何者かの魔の手が……。 4冊目だけど絶対タイトルから内容を連想できなくなるな。 主人公の設定が気に入り、読み安かった。写真に纏わる暗号も 興味深い。キャラクターも多面体で好印象。 でも(メル欄)が解らなかった。 アベレージヒッターではあるかも知れないがもてはやされ過ぎな気も。
「消された時間」ビル・S・バリンジャー(早川書房) 喉を切られ裸で歩道に倒れていた男。一命を取り止めたものの、 自分が誰なのかも判らない記憶喪失。文字通り自分探しの旅に出る。 それと並行して語られるもう一つのストーリー。歩道で喉を切られた 死体が発見され刑事達が事件を追う。同じ場所で同じ――。 二つのストーリーは どう交わるのか? こないだのハル以上にディスってる作家です。よく「叙述トリックの 名手」みたいな触れ込みで紹介されたり(折原一も言ってた)するのは ものっそい違和感があります。全作合わせても「アクロイド殺し」に 遠く及ばないでしょう。こんなもんただの(メル欄)――しかも 破綻してる――で「叙述トリック」なんて呼ぶことすら おこがましいです。 問題 上の粗筋から考えられる最もしょぼい真相を考えてください。 考えましたか? 考えましたね? はい正解! 読む価値なし!
502 :
名無しのオプ :2007/09/20(木) 02:10:03 ID:NNoAirPp
E・S・ガードナーの「緋の接吻」を読んだ。 レスター・リースもの2編、ペリイ・メイスンもの2編の短編集。 有名作家だけど、恥ずかしながら初読。期待を裏切らずかなりおもしろかった。 レスター・リースは、警察の手におえない難事件を独自に解決し、犯人が不正に儲けた金やお宝を掠め取る怪盗。 警察もそれには気づいてるが尻尾をおさえられず彼を逮捕できない。 マヌケな刑事部長がリースの先手を取ったとぬか喜びしたところで 見事に切り抜ける痛快さと小気味良いユーモアに笑ってしまう。 話のメインはそこなんだろうけど、前フリの難事件の謎解きもしっかりしてる。 ペリイ・メイスンは弁護士。法廷ものかと思いきやそうでもなかった。 1編は種明かしの場が法廷に移っただけ。もう1編は裁判すら起きない。 表題作の「緋の接吻」は、ちょっと凝ったプロットだったが、何か物足りないのは先にリースの方を読んでしまったからか… ペリイ・メイスンが作者の代表的な探偵らしいけど、笑いもありなレスター・リースにハマっちまってます。 あと、文章が軽妙で海外物とは思えないほどグングン読ませるのが良い。まだ読んだこと無い人オススメ。
503 :
書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :2007/09/22(土) 14:41:38 ID:Ic8sUadm
ダシール・ハメット「コンチネンタル・オプの事件簿」を読んだ。 本書の訳者でもある小鷹信光氏編による本邦オリジナル作品集。 おれは(オプ風に(w )ハメットの短編も読んではいたが、 創元の稲葉明雄訳によるものであり、長編も創元で親しんでいたため、 小鷹訳のハメットを読むのは本書が初、90年代の新訳だが小気味良い訳文は健在だ。 オプ初登場作品「放火罪および…」、異色短篇として銘打たれている 「ジェフリー・メインの死」、オプ最後の事件となる「死の会社」の3編は出来の差は あれど、一応、謎解きミステリしているのだが、 連作「ターク通りの家」と「銀色の目の女」、中篇連作「血の報酬」(第1部「でぶの大女」 第2部「小柄な老人」)は、大乱歩が引いてしまったのがわかる原初ハードボイルドの典型、 (連作と「血の・・」の第1部と第2部の終盤の繋ぎの展開が同様なパターン、 メーンの敵役キャラの逃亡になっているのは、初出が雑誌掲載ということもあって、 読者の興を惹くためと思われだ) 内容的には、ハードボイルド・ミステリというよりは完全に探偵が出て来るノワールと 化している感がある。 これらの作を読むと、ハメットの後継はレイモンドでもロスマクでもなく、 ゴアズやスタークでもなく、エルロイなのではないかという説に同感せざるを得ないもの がある。(この点は、長編の場合も「マルタの鷹」「ガラスの鍵」を読んだ後に「血の収穫」を読んだ場合の同様な感ありか) いずれにしろ、萌えアニメ画のような新書を耽溺しているアホなミスオタの覚醒剤代わりに突き付けて読ませたい書とは言い得る。
504 :
名無しのオプ :2007/09/22(土) 17:01:31 ID:AugPDczH
そうですね、こなたたんが脳内彼女のミス住さんには強烈かもしれませんね、 ハメットスレの69の台詞の原典は、何だかわかります?w
505 :
名無しのオプ :2007/09/22(土) 20:05:20 ID:AugPDczH
まあ70に、答えが書いてあるので、 どんな馬鹿でも、わかりますがねw
506 :
書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :2007/09/23(日) 10:59:09 ID:6GgopRoo
小鷹氏の「私のハードボイルド」を読んだ余韻抜け切らず、 書斎からジェイムズ・クラムリー「酔いどれの誇り」文庫版を抜き出し、久々の再読。 正直言うて、この作品の良さは刊行当時は今ひとつわからず読了した記憶がある。 主人公の探偵ミロドラゴヴィッチを 当時のHMC顧問ミスターX氏が「汚れた街を行く孤高の騎士ならぬ、 汚れた街を行く汚れた男の中の男」と妙な賛辞をしたのが懐かしく思い出される。 ストーリーは、舞台が米西部の中規模な街ということもあって、派手な展開は無く、 ミロを筆頭とした酔いどれキャラ(?)を中心に、ひとりの青年の失踪事件を発端にして地味に人間ドラマが繰り広げられてゆき、ロスマク的な人間悲劇の結末を迎える。 (実際、「さむけ」を意識したような終章の対決(?)シーンである) 70年代ハードボイルド・ミステリの代表作のひとつである点は間違いなく、 それなりの読み応えはあり、ミロをはじめ魅力的なキャラが複数登場するものの、 今読むと、ミステリとして謎解きの伏線が無く、御都合主義の展開に走り過ぎているの が気にかかる。 「当時」だからこそ「高評価」された作であり、「古典」というには弱い作というのが 現在時点における妥当な評価かと思う。
507 :
名無しのオプ :2007/09/23(日) 12:01:36 ID:wW64cLBg
>>506 チャンドラーの短編のオススメは「待ってる」だっけ?
508 :
名無しのオプ :2007/09/23(日) 14:05:35 ID:zuvnb0Qy
>>506 ハメットスレの69の台詞の原典は、何だかわかります?w
まあ70に、答えが書いてあるので、
どんな馬鹿でも、わかりますがねw
509 :
名無しのオプ :2007/09/23(日) 14:07:20 ID:zuvnb0Qy
ミスターX氏 だって! ゲラゲラ
510 :
名無しのオプ :2007/09/23(日) 15:09:29 ID:v6FHL5Jo
ミスターX … ハート泥棒か?
511 :
名無しのオプ :2007/09/23(日) 15:39:52 ID:UzZBvEDV
>>503 作家名の表記はラストネームに統一しろよ。
それすら出来ないという時点で、まともに論考として取り上げられるわけがないんだがw
まともな媒体に発表したことがないのがバレバレだなw
512 :
名無しのオプ :2007/09/23(日) 17:03:24 ID:LNis0pIJ
まあ、らき☆すたの泉こなたが、俺の脳内妻だ〜っ!と叫んでる書斎さんですから、 まともな文章を書くのは無理だと思われます。 (親方のポエムを読みたい人は、吉村 昭 で、2ちゃん検索して下さい 驚異の世界が、待っていますw)
513 :
名無しのオプ :2007/09/23(日) 17:07:16 ID:LNis0pIJ
あと、読後感 ◆VkkhTVc0Ug うざい、書斎と同レベル、ネタバレやめろ、 誰も読んでない、ひっこめ!
514 :
書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :2007/09/23(日) 17:16:06 ID:7DzvL4XB
ジョゼフ・ウォンボー「ブルー・ナイト」を読んだ。 タイトルは「青い夜」ではなく、当時のLA市警の制服のカラーから想起した 「青い騎士」の意。警察小説ならぬ警官小説のマエストロであるウォンボーが 「センチュリアン」に次いで著した作だが、前作と同様に現在では入手難となっている のが惜しまれる。 本作の主人公は、勤続20年、早期退職を間近に控えたベテラン警官(巡査) バンパー・モーガン、このバンパーの退職予定日前(正確には退職前の休暇に入る前) 3日間の行状を描いたものである。 彼氏は、喩えではなく、まさに「汚れた街をゆく孤高の男(騎士?)」なのだが、 管内では滅多に自腹を切って飯を食ったことがないという現物支給(?) が身についたひとりの警官でもある。 (大食漢であるバンパーの食事風景(日本料理、アラビア料理、メキシコ料理等様々)には詳細な描写がなされており、文字どおり食指が動くものがあり、 本筋には関係無いものの読み所のひとつと言える)
515 :
書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :2007/09/23(日) 17:27:14 ID:7DzvL4XB
「センチュリアン」の新人警官たちなら眉をひそめるかもしれぬが、 バンパーはたかり体質が身についた悪徳警官ではない。 むしろ、多くの街の住民からは頼りにされ、親しまれてさえいるし、 身銭を切って情報屋を操り、犯罪摘発にいそしむような仕事熱心な警官という面が あるのだ。 さすがに警官出身の著者だけあって、このあたりのキャラが綺麗事に走らずリアルに 活写されている。 ただし、パトロール警官バンパーの日常(単独行)を描く内容のため、 複数主人公の前作「センチュリアン」のような視点の広がりは欠き、 ロス暴動のような大きなクライマックスとなる見せ場は存在しない点は物足りない ところか。 また、原書の責めに帰すべきものではないが、わりと古い翻訳作品ゆえ、訳文や注に疑問を残す面が目につくのは難。 例えば、オーバー・イージー・エッグを「卵の半熟フライ」と訳すのはいかがなものか?
516 :
名無しのオプ :2007/09/23(日) 21:16:01 ID:LNis0pIJ
はいはい、よかったね
517 :
名無しのオプ :2007/09/23(日) 21:21:42 ID:yFAquFhz
>>512 吉村昭で検索して読みました。
こちらがずっと面白いですね。
何よりも生き生きと書いてます。
ジジイの加齢臭プンプンする馬公など問題外です。
518 :
名無しのオプ :2007/09/23(日) 22:07:32 ID:LNis0pIJ
>>517 親方ウオッチャーの輪をひろめましょうw
519 :
名無しのオプ :2007/09/23(日) 22:23:14 ID:hcT/oHoX
わざわざそんなことをしなくても、目につくでしょw
520 :
名無しのオプ :2007/09/24(月) 01:36:19 ID:ChtJnsxH
それもそうだね、でも、吉村 昭スレ(ふたつあるので注意)の 親方のブログ(?)&ポエムは、必見ですよw 大爆笑
521 :
名無しのオプ :2007/09/24(月) 02:23:21 ID:ChtJnsxH
こんな事書いてますw 97 :ミステリ板住人:2007/08/31(金) 23:04:39 明日は女と食事する予定だ。 その後はお決まりの"まぐわい"であろう。 俺様にはこなたタンという婚約者がいるが 男の心情と股間は別物である。 しかし、こなたタンを裏切りたくない。 そこで一計を案じた。 俺様直筆でこなたタンお面を作って、女に被せてエッチ。 俺様が抱いてる女はこなたタン!決して君を裏切った訳ではない。 この計画を食事の最中に切り出そうかと思う。 明日は頑張るぞ。 愚民諸君、心しておけ!
522 :
名無しのオプ :2007/09/24(月) 02:39:12 ID:SveJfEPk
もういい加減気違いの話は他所でやってくれないか
523 :
名無しのオプ :2007/09/24(月) 03:08:26 ID:ChtJnsxH
粘着してるオッサンに言ってくれ
524 :
名無しのオプ :2007/09/24(月) 11:16:45 ID:vRmJTlkw
>>523 アンタも馬同様スレ違いなんだよ
空気嫁
525 :
名無しのオプ :2007/09/25(火) 17:23:14 ID:5ZgFo96I
異次元宇宙生物・書斎魔神でおま
526 :
名無しのオプ :2007/09/27(木) 13:15:51 ID:Jq8IOH9P
147 :書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :2007/09/26(水) 22:05:44 ID:loWIESfZ
評価という問題で思い出すのは、清張先生のキャノン機関に関する記述。
これは過大評価とする声が多い。
清張説に従えば「ミッション・インパサブル」まがいの凄い謀略機関なのだがw
148 :名無しのオプ:2007/09/26(水) 22:12:00 ID:a9L6xwK7
>>147 あーあ、またお得意のw
149 :名無しのオプ:2007/09/26(水) 22:30:59 ID:lZ76rrUG
ミッション:インポッシブル Mission:Impossible (スパイ大作戦)ですよ
書斎のだんな
527 :
名無しのオプ :2007/09/27(木) 18:45:29 ID:LpXWg250
「ナインスゲート」読了。 映画を先に見てしまい、大した期待もせずに読んだが、なかなか歯応えがあった。 でも、三銃士とデュマに関する知識は前提条件として必要かな。 それがないと、「ミレディー」「ロシュフォール」などの概念が理解しにくいだろうし。 蘊蓄だらけで展開が遅いこともあり、万人にはおすすめできない。 まだ未読だけど、「ダンテ・クラブ」もこんな感じなのかな?
528 :
名無しのオプ :2007/09/28(金) 15:06:48 ID:ugJs7288
uraaaaaa! ,,,,,,,,,,,, [|,,,★,,|,] ミ゚Д゚,,彡 ┯==∩=⊂ン~ )ニヌ  ̄ ̄ ̄ i==|=[]j /_/ヽ___i し' \) シベリア自警団
529 :
書斎魔神 :2007/09/29(土) 19:07:31 ID:Tr2C5Wpj
ヘンリー・ライダー・ハガード「二人の女王」を読んだ。 「漏れだけのアラン・クォーターメン、キター!」とアホな冒険小説オタの如く叫び たくなるような一編ではある。(原題はそのものズバリ「アラン・クォーターメン」だ) さほど期待しないで読んだら意外な面白さであった。 創元推理文庫では、「洞窟の女王」の続編が「女王の復活」、そして「ソロモン王の洞窟」 の続編がこの「二人の女王」である。 (余談ながら、二人の女王の白い方=ニレプタのおっぱいポロリの表紙にそそられて、 思わず本書を手に取ったアホな冒険小説オタもいるのでないか(w ) おなじみベテラン探検家(狩猟家か)のアラン、親友のヘンリー卿、グッド元海軍大佐の 3人が英国での安穏とした暮らしに厭き(アランの場合は最愛の子息を失ったということもある)、当時の暗黒大陸アフリカの奥地に存すると言われる幻の白人国を目指して 冒険の旅に出る。 「ソロモン王…」の場合と異なり、行方不明の肉親探しや宝探しという現実的動機が 絡まず、『冒険のための冒険』という、冒険小説の原典のような創りとなっているものの、 著者の文明社会に対する辛辣な見解が随所に見て取ることが出来る作でもある。 (この点は序の部分から顕著)
530 :
書斎魔神 :2007/09/29(土) 19:10:35 ID:Tr2C5Wpj
19世紀の作家にしては、キャラ立ちさせるのが巧いハガードだが、 女っ気が殆ど無かった前作「ソロモン…」と比較して、美貌の2人の女王(姉妹)が 対照的なキャラとして存在感を示しているが、メーンキャラの3人と2人の女王にも 増して強烈な印象を残すのが、ズル族の老戦士ウンスロポガースだ。 戦争大好き、戦闘用斧を自在に操る殺人マシーン、 どこか憎めないところもあるとはいえ、敵役とするのが妥当なキャラだが、 あえてアランたちのサイドに置いて超人的活躍(文字どおり)をさせたのは、 物語の興趣を増す意味では成功している。 (途中から一行に加わるおとぼけのフランス人シェフ、アルフォンスも 作者のフランス人観を見るようでいて面白い。捨てキャラかと思いきや、彼氏が意外に 物語のキーマンとなる展開も面白い) 洞窟やソロモンと同様に、実質的に秘境冒険小説と言い得るのは中盤までであり、 後半は美貌の二人の女王にヘンリー卿が絡んだ色恋沙汰に端を発する戦争小説的展開へと発展してゆく。 戦闘シーンのグロ過ぎるほどの詳細な描写は、戦国時代を舞台にした時代小説好きにも 受けそうな感じである。
531 :
書斎魔神 :2007/09/29(土) 23:37:18 ID:yuVYUs0h
゙'. ,ト `i、 `i、 .、″ | .,.:/"" ゙‐,. ` / ` .,-''ヽ"` ヽ,,,、 ! 、,、‐'゙l‐、 .丿 : ':、 、/ヽヽ‐ヽ、;,,,,,,,,,-.ッ:''` .,"-、 ,r"ツぃ丶 `````` ../ `i、 ,.イ:、ヽ/ー`-、-ヽヽヽ、−´ .l゙`-、 _,,l゙-:ヽ,;、、 、、丶 ゙i、,,、 ,<_ l_ヽ冫`'`-、;,,,、、、、.............,,,,、.-`": │ `i、 、、::|、、、ヽ,、、. ```: : : ``` 、.、'` .|丶、 .l","ヽ、,"、,"'、ぃ、、,、、、、.、、、.、、、_、.,,.ヽ´ l゙ ゙).._ ,、':゙l:、、`:ヽ、`:、 : `"```¬――'''"`゙^` : ..、丶 .l゙ `ヽ ,i´.、ヽ".、".、"'ヽヽ;,:、........、 、、...,,,、−‘` 、‐ |゙゙:‐, ,.-l,i´.、".`ヽ,,,.".` `゙゙'"`'-ー"``"``r-ー`'": _.‐′ 丿 ,! j".、'ヽ,".、".、"`''`ー、._、、、 、._,、..-‐:'''′ .、,:" 丿 ゙l,"`"`''ヽヽ"`"` ```゙'''"ヽ∠、、、、ぃ-`''''": ` 、._./` ._/` `'i`ヽヽヽ`''ーi、、、: : 、.,-‐'` 、/` ``ヽン'`"` : `~``―ヽ::,,,,,,,,,,.....................,,,,.ー'``^ ,、‐'"` `"'゙―-、,,,,..、、 : ..,、ー'"'` : `‘"`―---------‐ヽ``"''''''""
532 :
書斎魔神 :2007/09/29(土) 23:42:44 ID:yuVYUs0h
゙'. ,ト `i、 `i、 .、″ | .,.:/"" ゙‐,. ` / ` .,-''ヽ"` ヽ,,,、 ! 、,、‐'゙l‐、 .丿 : ':、 、/ヽヽ‐ヽ、;,,,,,,,,,-.ッ:''` .,"-、 ,r"ツぃ丶 `````` ../ `i、 ,.イ:、ヽ/ー`-、-ヽヽヽ、−´ .l゙`-、 _,,l゙-:ヽ,;、、 、、丶 ゙i、,,、 ,<_ l_ヽ冫`'`-、;,,,、、、、.............,,,,、.-`": │ `i、 、、::|、、、ヽ,、、. ```: : : ``` 、.、'` .|丶、 .l","ヽ、,"、,"'、ぃ、、,、、、、.、、、.、、、_、.,,.ヽ´ l゙ ゙).._ ,、':゙l:、、`:ヽ、`:、 : `"```¬――'''"`゙^` : ..、丶 .l゙ `ヽ ,i´.、ヽ".、".、"'ヽヽ;,:、........、 、、...,,,、−‘` 、‐ |゙゙:‐, ,.-l,i´.、".`ヽ,,,.".` `゙゙'"`'-ー"``"``r-ー`'": _.‐′ 丿 ,! j".、'ヽ,".、".、"`''`ー、._、、、 、._,、..-‐:'''′ .、,:" 丿 ゙l,"`"`''ヽヽ"`"` ```゙'''"ヽ∠、、、、ぃ-`''''": ` 、._./` ._/` `'i`ヽヽヽ`''ーi、、、: : 、.,-‐'` 、/` ``ヽン'`"` : `~``―ヽ::,,,,,,,,,,.....................,,,,.ー'``^ ,、‐'"` `"'゙―-、,,,,..、、 : ..,、ー'"'` : `‘"`―---------‐ヽ``"''''''""
533 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2007/09/30(日) 17:39:04 ID:CeeH83xj
ジョゼフ・ウォンボー「クワイヤボーイズ」を読んだ。 ウォンボーの第3作、現職警察官を辞し作家専業となって初作品でもあった。 前2作(「センチュリアン」「ブルーナイト」)とは、がらっとタッチが変わった オフビートとでも称すべき異色作となっている。 ロス市警のとち狂った警官たちが織り成す集団ドラマ、しかも捜査よりも 聖歌隊(これがタイトルの「クワイヤボーイズ」)練習と称した公演での御乱行等に 相当の筆が割かれている。 彼に比較すれば、87分署の刑事連は超優等生、「センチュリアン」のロイら3人の 新人警官は模範生、「ブルーナイト」のバンパーは超真面目人間に見えてしまう ハチャメチャぶり、しかし、戦争や少年課勤務による重いトラウマを抱えた警官 (いずれも白人、彼らが終盤の物語キーマンになって来るし、冒頭には重要な 伏線となる部分もある)もおり、(反面、一般には差別される者に区分される黒人や日系の警官は非常に図太くたくましい感じで描かれているのが面白い) 全編にスラング満載のダーティジョークが散りばめられ、警官たちの公私渡るドタバタが描かれるものの、笑いの要素は少なく、読後も暗い印象が残ってしまう。 ウォンボーはやはり前2作のようなシリアス路線が性に合うのであろう。 本国での売れ行きは悪くなく、映画化もされたにもかかわらず、以後、本作のような タッチの作は書かれなくなってしまう。 (そして本邦では、早川書房がウォンボーは日本では売れないと判断するきっかけに なった作のように思う。日本でも劇場公開された映画の原作でありながら、 本作は文庫化もされなかったのだ) クワイヤボーイズの一味は残存者がいるので、カタルシスを感じさせるような続編を 期待したくもあったのだが、この点は残念であった。
534 :
名無しのオプ :2007/09/30(日) 21:16:48 ID:95bD/551
゙'. ,ト `i、 `i、 .、″ | .,.:/"" ゙‐,. ` / ` .,-''ヽ"` ヽ,,,、 ! 、,、‐'゙l‐、 .丿 : ':、 、/ヽヽ‐ヽ、;,,,,,,,,,-.ッ:''` .,"-、 ,r"ツぃ丶 `````` ../ `i、 ,.イ:、ヽ/ー`-、-ヽヽヽ、−´ .l゙`-、 _,,l゙-:ヽ,;、、 、、丶 ゙i、,,、 ,<_ l_ヽ冫`'`-、;,,,、、、、.............,,,,、.-`": │ `i、 、、::|、、、ヽ,、、. ```: : : ``` 、.、'` .|丶、 .l","ヽ、,"、,"'、ぃ、、,、、、、.、、、.、、、_、.,,.ヽ´ l゙ ゙).._ ,、':゙l:、、`:ヽ、`:、 : `"```¬――'''"`゙^` : ..、丶 .l゙ `ヽ ,i´.、ヽ".、".、"'ヽヽ;,:、........、 、、...,,,、−‘` 、‐ |゙゙:‐, ,.-l,i´.、".`ヽ,,,.".` `゙゙'"`'-ー"``"``r-ー`'": _.‐′ 丿 ,! j".、'ヽ,".、".、"`''`ー、._、、、 、._,、..-‐:'''′ .、,:" 丿 ゙l,"`"`''ヽヽ"`"` ```゙'''"ヽ∠、、、、ぃ-`''''": ` 、._./` ._/` `'i`ヽヽヽ`''ーi、、、: : 、.,-‐'` 、/` ``ヽン'`"` : `~``―ヽ::,,,,,,,,,,.....................,,,,.ー'``^ ,、‐'"` `"'゙―-、,,,,..、、 : ..,、ー'"'` : `‘"`―---------‐ヽ``"''''''""
535 :
名無しのオプ :2007/10/01(月) 19:09:28 ID:5ik4/y8V
゙'. ,ト `i、 `i、 .、″ | .,.:/"" ゙‐,. ` / ` .,-''ヽ"` ヽ,,,、 ! 、,、‐'゙l‐、 .丿 : ':、 、/ヽヽ‐ヽ、;,,,,,,,,,-.ッ:''` .,"-、 ,r"ツぃ丶 `````` ../ `i、 ,.イ:、ヽ/ー`-、-ヽヽヽ、−´ .l゙`-、 _,,l゙-:ヽ,;、、 、、丶 ゙i、,,、 ,<_ l_ヽ冫`'`-、;,,,、、、、.............,,,,、.-`": │ `i、 、、::|、、、ヽ,、、. ```: : : ``` 、.、'` .|丶、 .l","ヽ、,"、,"'、ぃ、、,、、、、.、、、.、、、_、.,,.ヽ´ l゙ ゙).._ ,、':゙l:、、`:ヽ、`:、 : `"```¬――'''"`゙^` : ..、丶 .l゙ `ヽ ,i´.、ヽ".、".、"'ヽヽ;,:、........、 、、...,,,、−‘` 、‐ |゙゙:‐, ,.-l,i´.、".`ヽ,,,.".` `゙゙'"`'-ー"``"``r-ー`'": _.‐′ 丿 ,! j".、'ヽ,".、".、"`''`ー、._、、、 、._,、..-‐:'''′ .、,:" 丿 ゙l,"`"`''ヽヽ"`"` ```゙'''"ヽ∠、、、、ぃ-`''''": ` 、._./` ._/` `'i`ヽヽヽ`''ーi、、、: : 、.,-‐'` 、/` ``ヽン'`"` : `~``―ヽ::,,,,,,,,,,.....................,,,,.ー'``^ ,、‐'"` `"'゙―-、,,,,..、、 : ..,、ー'"'` : `‘"`―---------‐ヽ``"''''''""
536 :
書斎摩神 ◆eZBM9E4bOU :2007/10/01(月) 19:17:02 ID:jANNWvhY
A・H・Z・カー「誰でもない男の裁判」を読む。 このミス6位、文春5位にランクインした作品集だが、 全体を通しての感想は「甘ったれるな!」、この一言に尽きるかと思う。 作者は同じカーでも、カレッジ中退の米国版司法崩れ、売文業以外にはまともな職歴が無い J・Dとは大違いのシカゴ大学学士号、コロンビア大学修士号を有し、 大統領経済学顧問まで務めた経済界では大成功したビジネスマンである。 しかし、この程度のものを書いているようではミステリという分野では駄目ぽ。 昨年の「歌うダイアモンド」「ヨットクラブ」にしても、一昨年の「壜の中の手記」 にしても、宝島社も文春も晶文社の海外作家の短編集に評価が甘過ぎる。 これでは、業界内のごっつあん相撲とか思われてしまうぞ。
537 :
名無しのオプ :2007/10/02(火) 17:36:02 ID:/9/oqSAv
゙'. ,ト `i、 `i、 .、″ | .,.:/"" ゙‐,. ` / ` .,-''ヽ"` ヽ,,,、 ! 、,、‐'゙l‐、 .丿 : ':、 、/ヽヽ‐ヽ、;,,,,,,,,,-.ッ:''` .,"-、 ,r"ツぃ丶 `````` ../ `i、 ,.イ:、ヽ/ー`-、-ヽヽヽ、−´ .l゙`-、 _,,l゙-:ヽ,;、、 、、丶 ゙i、,,、 ,<_ l_ヽ冫`'`-、;,,,、、、、.............,,,,、.-`": │ `i、 、、::|、、、ヽ,、、. ```: : : ``` 、.、'` .|丶、 .l","ヽ、,"、,"'、ぃ、、,、、、、.、、、.、、、_、.,,.ヽ´ l゙ ゙).._ ,、':゙l:、、`:ヽ、`:、 : `"```¬――'''"`゙^` : ..、丶 .l゙ `ヽ ,i´.、ヽ".、".、"'ヽヽ;,:、........、 、、...,,,、−‘` 、‐ |゙゙:‐, ,.-l,i´.、".`ヽ,,,.".` `゙゙'"`'-ー"``"``r-ー`'": _.‐′ 丿 ,! j".、'ヽ,".、".、"`''`ー、._、、、 、._,、..-‐:'''′ .、,:" 丿 ゙l,"`"`''ヽヽ"`"` ```゙'''"ヽ∠、、、、ぃ-`''''": ` 、._./` ._/` `'i`ヽヽヽ`''ーi、、、: : 、.,-‐'` 、/` ``ヽン'`"` : `~``―ヽ::,,,,,,,,,,.....................,,,,.ー'``^ ,、‐'"` `"'゙―-、,,,,..、、 : ..,、ー'"'` : `‘"`―---------‐ヽ``"''''''""
538 :
名無しのオプ :2007/10/02(火) 17:39:20 ID:/9/oqSAv
書「オーバー・イージー・エッグを「卵の半熟フライ」と訳すのはいかがなものか? 」 Q「じゃあ君ならどう訳す?」 書「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
539 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2007/10/06(土) 20:21:24 ID:h6RGAOu4
ジョゼフ・ウォンボー「デルタ・スター刑事」を読んだ。 ウォンボーの標準作といった程度の作。 前半はこの作者の作品ではおなじみのキャラ立ちした警官たちが行状が おもしろおかしく綴られるウォンボー節全開だが、 後半は、登場人物のひとりである殺人課刑事マリオをメーンとした娼婦転落死事件を 発端とする謎解きミステリとなってゆくが、 カルテックへの潜入捜査等、創りものめいた展開が目につき、謎解きそのものも 平板で面白いものではない(元々、パズラーというタイプの作家ではないから仕方ない面 もあるが) 警官物語に徹した従来の作から、 一捻り、新機軸を狙って「謎解きミステリしてみました」感がある作だが、 やはり柄にも無いことはするべきではなく、この試みは失敗に終わっている。 また、この部分に筆を割いたため、 小柄ながら元気印の婦警ドリーと相棒ののっぽのディルフォード、 死体大好きなへんてこ殺人課刑事チップとメロディ等のいつのまにかフェードアウト、 あるいは完全に脇に回ってしまい印象薄となっているのが非常に残念だ。 「クワイヤボーイズ」や「ハリウッド警察25時」の如く、集団ドラマに徹していれば 登場キャラを納まるべき位置に納めることも可能だったのではないかと思う。 (むしろ、ウォンボーがこの手の処理が巧い作家である)
540 :
名無しのオプ :2007/10/06(土) 21:43:51 ID:1AhfUgdE
↑ アドレスフリチン
541 :
名無しのオプ :2007/10/07(日) 15:49:17 ID:eY6me883
\ / \ / \ ./ \ ./ \ / \ ./ \ / 上、 \, ,/ ,エ `,ヾ ,;;iiiiiiiiiii;、 _ノソ´ iキ ,;;´ ;lllllllllllllii、 iF iキ' ,;´ ,;;llllllllllllllllllllii、 ナf !キ、._ ,=ゞiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii!! __fサ `ヾ=;三ミミミミヾ仄彡彡ミミヾ=`´ ,._Ξミミミミミヾ巛彡////iii_ ;if≡|ヾヾヾミミミミヾヾ、//巛iiリ≡キi if! |l lヾヾシヾミミミ川|ii//三iリ `キi ,if ,f=|l l lヾリリリリリ川川|爪ミミiリ=t、キi ;iナ,サ |l l l リリ川川川川|爪ミミiiリ キi キi iナ ;サ |l l リリリリ川川川川l爪ミミilリ キi キi iサ ;サ, |リ リリ川川川川川l爪ミミiリ ,キi キi iサ ;サ, | リ彡彡川川川川|爪ミミiリ ,キi :キ、 ,i厂 iサ, |彡彡彡彡ノ|川川|爪ミミリ ,キi `ヘ、 ,√ ;サ, |彡彡彡彡ノ川川|ゞミミミリ ,キi `ヾ ´ ;サ, |彡彡彡彡川川リゞミミリ ,キi ;サ, |彡彡彡彡リリリミミミシ ,キi ,;#, |彡彡ノリリリリミミミシ ,キi ;メ'´ !彡ノリリリリリゞミミシ `ヘ、 ;メ ヾリリリリノ巛ゞシ `ヘ、 ;メ ``十≡=十´ `ヘ、
542 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2007/10/07(日) 21:05:06 ID:dvFWqYD7
ダシール・ハメット「影なき男」を読んだ。 小鷹信光氏による新訳にて再読。 翻訳書においては作者と訳者の相性(文体等の嗜好性)が重要なことはあらためて 言うまでもないが、やはりハメットの訳はこの人に限るという感を強くした。 内容的には、いささか強引な面はあれど、意外に謎解きに重点が置かれているのが、 ハードボイルド・ミステリとはいえ「古典」らしいとは言える。 そして、このハメット作品中ではスマートな作風にもかかわらず、 横溝正史風のドロドロねた(「悪魔が来りて笛を吹く」を想起)まであるのは、 怪奇探偵ハードボイルド・ミステリとでも称すべき「デイン家の呪」の作者らしい と言えよう。 本作の探偵役ニック・チャールズに関しては、訳者みずから担当したあとがき(ネタばれ気味なのが気にかかるが)で、サム・スペードの成れの果て、引退したオプと評されて いるが、「プレイバック」後のマーロウ、そして朝から酒を手離さないアル中気味のニックには70年代の病的な後継たちの先駆けを見ることも可能であろう。 さらには、ニックの妻であり相棒でもある若妻ノラの精神面のタフさは、 後の女性私立探偵ものの走りとも読み得る。 なにはともあれ、あとがきの最後にもあるとおり、ハメット作品にしては洒脱な作には ややアンマッチな喩えかもしれぬが、スルメのように噛み続けると味が出て来る作という 評は極めて的を射たものと言い得る。 最後に、類型的・保守的な登場人物が多かった当時の本格ミステリを揶揄するかの如き、女性キャラたちのダーティな喋りも読ませどころであるが、 「サノバビッチ」は「下種野郎」の訳でOKとしても、「ボールズ」は「悪態」の意で コンテクスト的にはOKだとしても、「キンタマ野郎」のニュアンスを活かして 欲しかった気もしている。
543 :
支持者 :2007/10/07(日) 21:10:28 ID:BXKh4kZi
誰か書斎さんにレスをしてくれ! \ / \ / \ ./ \ ./ \ / \ ./ \ / 上、 \, ,/ ,エ `,ヾ ,;;iiiiiiiiiii;、 _ノソ´ iキ ,;;´ ;lllllllllllllii、 iF iキ' ,;´ ,;;llllllllllllllllllllii、 ナf !キ、._ ,=ゞiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii!! __fサ `ヾ=;三ミミミミヾ仄彡彡ミミヾ=`´ ,._Ξミミミミミヾ巛彡////iii_ ;if≡|ヾヾヾミミミミヾヾ、//巛iiリ≡キi if! |l lヾヾシヾミミミ川|ii//三iリ `キi ,if ,f=|l l lヾリリリリリ川川|爪ミミiリ=t、キi ;iナ,サ |l l l リリ川川川川|爪ミミiiリ キi キi iナ ;サ |l l リリリリ川川川川l爪ミミilリ キi キi iサ ;サ, |リ リリ川川川川川l爪ミミiリ ,キi キi iサ ;サ, | リ彡彡川川川川|爪ミミiリ ,キi :キ、 ,i厂 iサ, |彡彡彡彡ノ|川川|爪ミミリ ,キi `ヘ、 ,√ ;サ, |彡彡彡彡ノ川川|ゞミミミリ ,キi `ヾ ´ ;サ, |彡彡彡彡川川リゞミミリ ,キi ;サ, |彡彡彡彡リリリミミミシ ,キi ,;#, |彡彡ノリリリリミミミシ ,キi ;メ'´ !彡ノリリリリリゞミミシ `ヘ、 ;メ ヾリリリリノ巛ゞシ `ヘ、 ;メ ``十≡=十´ `ヘ、
544 :
名無しのオプ :2007/10/09(火) 20:11:58 ID:1yYrh97/
なんなんだよこのスレは!! 書斎もその安置も支持者も出てけ!! 見てるだけで気分が悪くなる!! マイクル・イネス「ある詩人への挽歌」を読んだけど、 感想書きこむのやめた
545 :
名無しのオプ :2007/10/10(水) 00:01:37 ID:1yYrh97/
「公園はおれのもの」 感想書きこもうと思ったが荒れてるのでやめる
ミネット・ウォルターズ『蛇の形』(創元推理文庫、2004)【6.5点】 ある雨の夜、近所の鼻つまみ者の黒人女性アン・バッツが路上で息絶えた。 彼女の死を看取ったミセス・ラニラは、警察の「事故死」発表に疑問を 抱き、20年後に独自の捜査を開始する。バッツの死の真相は? 主人公の捜査パートに、検視報告書やEメールが挿入される構成だが、 あまり効果があがっていないような気がする。登場人物がみな 「嫌な人間」であり、ネコ虐待の描写も読みにくさに拍車をかける。 世評は高いようなのだけれど、個人的に合わないミステリーだった。 読者の誰もが抱くであろう「ある疑問」はラストで氷解し、それが実に ぐっとくるのだが、それまでの道行きがつらかったのが正直な感想。
547 :
名無しのオプ :2007/10/12(金) 04:46:44 ID:nSke4W2L
840 名前:ミステリ板住人 :03/08/31 19:58 ID:XwSn+BQ5 仕事を辞めて無職になった直後は非常に居心地がいいのだが、 やがて無職であることに焦りを覚えはじめ、禁断症状に近い 苦しみが押し寄せてくる。毎日同じことの繰り返し、 家族の目も怖い、何にも無いことにまで気を使うようになってしまう… 全く無関係の板に延々とゴミ屑を撒き散らして 正常なコミュニケーションを妨害するこういうダニをいつになったら駆除するのかね? > 管理者 お仕事御苦労様です。御迷惑をおかけしてすいません。了解しますた。 スレを入れる気持ち良さ、これは射精と同じものがあり病みつきになってしまったです。 もしかしたら、ぼくは病気なのかもれないですがきっとそうです。 スレの人も削除人さんもぼくの話しを聞いてくれませんか ぼくはだめんぼ、だめおくん ありゃあれいてん とっちゃった そして共に語るにゃ(w 846 名前:ミステリ板住人 :03/08/31 20:15 ID:XwSn+BQ5 スーパーのバイトは慣れるまでが大変だぞ。 私も裏事情板にスレが立つ某大手スーパーで働いたことが あったが、疲労と忍耐の3年間だった。 65 名前:ミステリ板住人 :03/09/07 01:05 ID:3bJhnVU1 今後の人生についてナンニモ考えたことの無いDQNがw ここの連中に多い傾向だが、今後の人生について考え過ぎるだけ お前たちも、何かに向かって必死になってみろよ。 今のお前たちは、県内随一の馬鹿の高校を卒業したやつよりも下だぞ。 予備校に行って、10ヶ月集中して勉強すれば、有名大学には入れる。 まして、私立文科系は3科目ないしは2科目である。 俺様のフィアンセこなたタンに見せたら感動のあまり泣き出しそうだな。 「サイコーだよ〜、ありがとう、ありがとう、こんないいものを見せてくれて〜」 「わかるか、こなたタンもわかってくれるのか!」 泣きながら、抱き合う俺様とこなたタンの姿が目に浮かぶ こんな糞スレでリーダー気取ってる場合じゃないかな。 愚民諸君、心しておけ!
548 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2007/10/13(土) 14:30:49 ID:Q+v3vek5
「デイン家の呪」再読。 初読時にはなんとも思わなんだが、今読むと翻訳が古い感を強く抱いた。 エルの「Yの悲劇」に触発されたかのような呪われた血統ネタがメーンという 「影なき男」の評で言及したとおり、怪奇探偵ハードボイルドミステリとでも 称すべき異色作ということもあるが、 クラシックな本格ミステリ調であり、原初ハードボイルドであるハメット作品らしい 荒々しさを欠くのである。 ハメットスレでも指摘されているとおり、そろそろ新訳を期待したいところである。 ハメット長編5作中では、第3部で失速する感があり、解決そのものは強引に過ぎる点が目につくとはいえ、 最も謎解き色が濃いものであり、毎月のように粗製濫造されるお手軽過ぎる新書ミステリの類の追従を許すものではない。 各人、心して読め!
549 :
名無しのオプ :2007/10/13(土) 16:55:11 ID:nCsNHWEo
ヲマエモナ〜
550 :
ミステリ板住人 :2007/10/14(日) 00:14:39 ID:FpYrhv5r
幼女!幼女!!幼女〜!!! 白倉Pが俺様のためにキャスティングしてくれたのだろう。 これからも感謝しながら鑑賞しよう。
551 :
名無しのオプ :2007/10/15(月) 16:41:11 ID:gjK6TUhy
「バニー・レークは行方不明」イヴリンパイパー あまり自信ないんだけど、これ翻訳がへたくそな気がする。
552 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2007/10/20(土) 13:28:51 ID:7kZ4aNO6
ジャック・リッチー「クライム・マシン」を読んだ。 2006年度このミス海外部門1位作品だが、 これが1位になるイヤーとは、 当時の本誌主筆ミスターXの「不作なり」の一言が極めて納得がゆくものがある。 勿論、悪い作品集ではなくベスト10の下位(8位、9位あたり)にランクイン したのであれば、文句無いほどの出来ではあるのだが、やはりこれの1位は無かった のではないか。 表題作などは、J・DやE・D(解説によれば彼氏はこの作者を高く評価していたとのこと) の読者なら、それなりに面白く読めるやもしれぬが、いかんせん主人公がプロの ヒットマンにしては注意力に欠け間抜け過ぎるという感を否めない。 本作を見ると、スーパーナチュラルは書かない作家かと思いきや、 カルトムービー「ウイッカーマン」を想起させるような「縛り首の木」のような作も 収録されていたりして、バラェティに富んではいるものの、この作者の持ち味とはいえ、全体としてあまりに軽過ぎるという感がある。
553 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2007/10/21(日) 14:25:28 ID:WHjSIcqO
マイケル・イネス「アプルビイの事件簿」を読んだ。 論理で読ませるエル風の作あり、奇抜なトリックが売りのジョン風の作ありで 結構楽しめるシャーロック・ホームズのライヴァルシリーズのひとつとして刊行された 本邦オリジナルの短編集である。 解説でも触れられているが、一部には退屈冗長な作風という評もあるこの作者の作だが、 本作品集を見る限りでは、中・短編に関してはこの懸念は不要と言い得る。 では、大好評につき収録作品全話講評逝ってみよう! 「死者の靴」 タクシー乗場の偶然性が気にかかるが、怪奇性を排した論理的作風の一編。 まあ、そこそこに楽しめる作ではある。 「ハンカチーフの悲劇」 「オセロ」ねたを巧く活かした教養人好みの作。 小品ながらハンカチ絡みの謎解きも巧く決まっている。 「家霊の所業」 ジョンならいらぬロマンスを導入して通俗にしてまったかもしれぬ名家の廃屋敷を 舞台にした怪奇性高い作。なかなかムーディで読み応えあり。 「本物のモートン」 裏焼きねたを巧く活かした好SS。 「テープの謎」 これは推理に無理有り過ぎな作か。スパイ小説まがいの展開も不調和で頂けない。
554 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2007/10/21(日) 14:30:08 ID:WHjSIcqO
「ヘリテージ卿の肖像画」 後半のアクションが白ける一編。謎解きミステリとしての見るべき点がほとんど無いのが 致命的な作。 「ロンバート卿の蔵書」 アイデアが面白いSS。創りが実に巧い。 「罠」 探偵しか知り得ない手がかりがポイントというアンフェアな一編。 この作者らしいハムレットねたも十分に活かされていない。 「終わりの終わり」 論理で読ませるかと思いきや、ジョン風のトンデモトリックが炸裂する一編。 飄々としながらもシニカルな結末も良し。 これも根がヤンキーのジョンなら通俗ロマンス仕立てにしてしまったような作だが、 さすがにイネスは渋く決めてくれる。
「モンキー・パズル」ポーラ・ゴズリング(早川書房) 大学教授が殺され舌を切り取られるという殺人事件が発生。 病み上がりのストライカー警部補が捜査に当たるが、次に英文学部長が 耳を切り取られてしまい――。 アヒルが逃げる話だけ書いとけば良いと思う。どこが本格だっつうの。 推理もトリックもねーし、ふーんて感じで進んで逮捕されるだけ。 ろくに伏線が張ってないから何の感慨もないし。 それともう一つ、作者の持ち味であろうロマンスなんだけど、 こ れ は ひ ど い 。 ハーレクイン読者でも失笑すると思うわ。普通に犯罪だしね。 ただそんな本作にゴールド・ダガーを上げちゃうのが 毛唐のダメな所。誤審の次に。
「チムニーズ館の秘密」アガサ・クリスティ(早川書房) アフリカでガイドをしていた青年アンソニーは旧友の誘いに応じて 二つの仕事を引き受ける。一つはさる政治家の回顧録をロンドンの 出版社に届けること、もう一つはある女性に伝言をすることであった。 しかし、彼女の家を訪ねたアンソニーは思いもかけない事態に遭遇する。 単純に比較は出来ないかも知れないが続けて読むと差が如実。 冒頭からハートをがっちりキャッチ。ページを繰るのが楽しみで喃。 三国の探偵達に怪盗の陰もチラつく等様々な要素が絡まり合って 一本に集束する様は流石女王様だとオモタ。 しかしその濃い内容故に映像化するとダイジェストじみて来るという……。 でも、どうしたらアイリーンがバンドルになるのだらう。
「赤の女」ポーラ・ゴズリング(早川書房) 窓際に追いやられている中年領事館員チャールズの元に 殺人容疑で逮捕された英国人のフォローをする任務が回って来る。 強盗に入った男が殺されたという事件だったが容疑者は犯行を否認、 しかし被害者の息子は以前容疑者と共犯で詐欺を行なっており、 有罪宣告を受け護送中に事故死するという過去の経緯があった。 チャールズは容疑者の息子の元妻と一緒に行動を起こし始めるが……。 こうやってサスペンスを書けばそこそこ行けるんですよ。本格なんて 分不相応な物に手を出そうとするから良くなかったんですね。 謎とロマンスと活劇がわりかし良く絡まってて手堅く読める味でした。 こないだのはこれより新しいってのにあの体たらくで、 これが男なら離婚したのかと思う所だけどスケさんだし、ただの手抜きか。
558 :
名無しのオプ :2007/10/23(火) 19:11:29 ID:RYi34+JD
>556 どの本か忘れたんですが、クリスティの舞台らしきところを巡る本の中で、 バンドルには「ひっぱる」とかって意味があるそうで、 そこから勢いがよい云々って渾名になったとかって かいてあったんですが、本当なのか不明です
「弓弦城殺人事件」カーター・ディクスン(早川書房) 海沿いに佇む古城を二人の学者が訪れた夜、凶事は起こった。 城の主人が甲冑の展示室で奇怪な死体となって発見されたのだ。 隣室にいた学者の証言によると被害者が入室して以来死体が 見つかるまで誰も部屋には入っていないという。 一体彼はどのようにして殺されたのか? これ最初読んでて「うわ、バレバレじゃねーか」と思ったんですが 外れました(笑)。伏線もあからさまに張ってあったりしたのに 見抜けなかった馬鹿さに(^^)/▽☆▽\(^^) おかしな点もありますがミステリーとしてはなかなかでした。 ただ小説としては全く面白くないです。ストーリーなんて何もないし キャラクターも全然立ってません。そら一作で切られますわ。 お陰で読みにくうて。思うにこの頃カーは離婚(ry
>>558 成程。スペルは関係なかいのですね。情報どうも。
「もうひとりのぼくの殺人」クレイグ・ライス(新樹社) 目覚めたとき、ぼくは列車の中にいた。何故ここにいるのだろう? ぼくにはそれまでの記憶がなかった。ポケットには見知らぬ男の 名前が記された名刺と手紙が入っていた。傍らには新聞が置いてあった。 開いてみると殺人事件の記事があり、犯人の写真に写っている男は 僕だった。…… 短編「うぶな心がはりさける」以来。マローン物はある偏見が原因で 読む気がしないのよね〜。で・も! これはスルリと入れた。 探偵役が影薄いしね。 誰も自分を知らないという話や自分とそっくりの男に入れ替わられる話は 今までに読んだことあるけど、自分が別人になってしまうというのは…… あ、最近の国内物であったな、ひとつ。でも古典では寡聞にして 覚えがないや。閑話休題。 こういうの好き。突端の奇想は抜群。ただ、大き過ぎるはったりは どうしても話を解りやすくしてしまうため、どんでん返しの楽しみは薄い。 前作もいつか読むかいのう。 そういや金田一少年で似たカラクリの物があったやに思うが 当時未訳だったし流石にこれはパクっちゃいまい。
「聖女の遺骨求む」エリス・ピーターズ(社会思想社) 時は12世紀。イングランドはシュリーズベリ修道院の副修道院長 ロバートは修道院に権威を持たせるため、奉るべき聖人の遺骨を 探していた。そんな中、若き修道士コロンバヌスが夢で聖人の啓示を 得たと宣言。驚喜したロバートは早速一団を従え遺骨を掘り出しに 向かうが――。 初カドフェル。ファルコの方が良かった。比較したらめ? 何かね、プロットはミステリーなんだけどロジックがよちよち 歩きじゃ話になりませんよ(byアーノルド)。だから解明が強引で ガッカリする。ロマンスもやる気なしのやっつけ仕事。 後、セリフとセリフの間に発言者を示す文章が入るという文体に 違和感があ〜る〜♪
「殺人者と恐喝者」カーター・ディクスン(原書房) 催眠術実験の最中、被験者の女性が夫を殺害してしまう事件が発生した。 偽物のナイフがいつの間にか本物と摺り替っていたのだ。 しかも被害者には殺人を犯したらしい気配があり恐喝を受けていた という……。 やられたなあ。てっきりアイツだと思ってたのに……。 伏線も通ってるし見事な赤い鰊だ。 これは読んでもいいカア。ただ、トリックはかなり無理無理。
564 :
名無しのオプ :2007/10/24(水) 18:08:09 ID:CSPodH2H
>>562 カドフェルにロジック求めてもなあ
「遺骨」は第1作なので例のライバルはまだ登場してないし
ロマンス求めるのなら「死体が多すぎる」以後だし
ファルコは最初から本格を標榜してないから比べても意味ないし
565 :
名無しのオプ :2007/10/25(木) 00:09:24 ID:MAdeN1PC
カドフェルよりファルコを先に読んだ人がいるのに 驚いた。自分はカドフェルの新刊をわくわくして待ち望んで いた老人だが。
566 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2007/10/27(土) 11:41:55 ID:afQ8lDN7
クレイトン・ロースン「虚空から現れた死」を読んだ。 不可能犯罪ものの中編2作を収録。 探偵はクレイトン作品でおなじみのマーリニではなく、同じくマジシャンではあるが、 伊達男ドン・ディアボロである。 ディアボロの弟子の中国人青年、マジック助手の双子の美人姉妹をはじめとして 個性的なメンツが多く登場し、マーリニもの以上に軽快で華やかなアメリカン・ミステリの世界が展開され、 (こういった作風という点では、クレイトンは親友だった英国かぶれなジョンよりも エル(初期)に近いものがあるのだ) ディアボロの助手の名がチャン。チャンダラ・マンチュー、 俳優向けホテル<ドルリー・レーン>、ホームズ&ワトスン社の金庫等々、 ミステリファンの微笑を誘うようなお遊びも散りばめられている。 だが、内容面ではマジックはタネを明かしされると興醒めというケースが多いが、 マジシャンを本業とするクレイトン作品の読後感にもこれと共通するものがあるのが 残念ではある。 なお、直接ストーリーに関係はしないものの、主語がディアボロであったり、 ニック(ディアボロの愛称)とあったりと不統一となっており、 非常に読み難くなっている部分がある、こういった点は厳重にチェックして欲しいもの である。
567 :
名無しのオプ :2007/10/27(土) 18:52:37 ID:A7ZxE5sP
書斎と比べて読後感の無駄な駄文のことよ。
568 :
名無しのオプ :2007/10/27(土) 19:02:35 ID:bg6BdO9O
コテハン叩きはルール違反だと言う一方でコテ叩きをする卑怯な書斎w
「本番台本」ギャビン・ライアル(早川書房) かつて朝鮮で華々しい活躍をしたが今は中南米でしがないパイロットを しているカー。ある時彼は映画ロケの一行に雇われる。しかし、 飛行中突然軍用機に襲われたの始め様々な危険に見舞われる。 カーは自分の周りで何が起こっているのか探ろうとするが――。 こないだの真下正義で「深夜プラス1」の名前が出ましたね。 その「深夜プラス1」がオーソドックスなプロットだったのに対し 本作は飛行機という専門分野を扱ったもので、プラス中々事件が 起こらないのでナンダカナァと思いながら読んでいましたが 話が動き始めてからはこっちも入り込めました。 正直水準作という感じだけれどまあ読んでみても……。
「ダイアルAを回せ」ジャック・リッチー(河出書房新社) 第3短編集。流石にプロットのパターンが何となく掴めて来るけど、 作風が好きなので楽しく読めた。アームスカトロングに通じるものが あると思うんだよね。 いっち好きは「いまから十分間」かな。次は「殺人はいかが?」。 ヒッチコックが目を付けるのも解るような気がする。 後、「三階のクローゼット」は「のぞき魔バッド・ロナルド」を連想した。 それからターンバックルものも良い軽ミスで○。しかしカーデュラモのは イマイチ設定を活かせてない印象。
「象は忘れない」アガサ・クリスティ(早川書房) 探偵作家のミセズ・オリヴァはパーティーで知り合った老婦人から ある過去の事件についての調査を頼まれる。それは夫婦の心中と 判断されたもので、現場には二人の死体と一挺の拳銃が残されていた。 どちらが先に撃ったのか、それがミセズ・オリヴァの名付け子の 結婚を左右する問題らしいのだが……。 80を超えて書かれた作品で実質的にはポアロ最後の事件だそう。 以前「ブレイディング・コレクション」を読んだ時、本格度の低さに 作者の老齢を感じたことがあったけど、これも同じで他の部分は ともかくプロット自体は極めて単純で恐らく全盛期のクリスティなら 短編の場合でももう一捻りはしたはず。「物狂い」とかを許せる人なら どうぞ。
「虚空から現れた死」クレイトン・ロースン(原書房) 中編2作収録。 「過去からよみがえった死」 死後の世界から舞い降りたコウモリ男が殺人を繰り返すというような話。 はっきり言って期待外れ。これでもかってぐらい荒唐無稽な演出は 好きな方なのだがトリックがやっつけに過ぎる。泡坂読んで出直せ。 「見えない死」 特殊装置によって透明になった男が人を殺したり美術品を盗んだりする というような話。 こっちは良かった。トリックも相対的に言って納得の行くものだし 伏線も見事。 しかしまーた登場人物表が無い。
「これが密室だ!」ロバート・エイディー+森英俊(新樹社) 海外の密室アンソロジーと言えば、「密室殺人傑作選」 「密室殺人コレクション」「密室大集合」(未読)ぐらいしか 知らないが他にあれば教えを乞う。 本格系ばかりではなくサスペンス作家の作品も入ってるのが嬉しい。 ただこれ中には「どこが密室だ!」というようなものも結構あるし、 単行本未収録というコンセプトのせいで出来も粒揃いとは言い難い。 良いと思ったのは 「見えないアクロバットの謎」(エドワード・D・ホック) 空中ぶらんこ乗りが実演の最中に消失するというもの。単純で巧い。 「死は八時半に訪れる」(クリストファー・セント・ジョン・スプリッグ) 殺人予告を受けた大臣が十重二十重に警戒される中、 ジャストに殺されるという飛び切りの不可能犯罪ミステリ。 これもシンプルイズベストで良い。 「ささやく影」(ジョン・ディクスン・カー) 青年が見えない男から狙われるというラジオドラマ。巧くまとめている。 「危険なタリスマン」(C・デイリー・キング)はタラントの復活と 期待したがダメな方だった。
574 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2007/11/10(土) 17:04:48 ID:IjTaK5jq
シリル・ヘアー『英国風の殺人』を読んだ。 クローズド・サークルものにして法律ネタ(上院ネタ)という異色作。 派手なトリックは無いものの、関係者一同に会した場での名探偵による謎解きシーン等も あり、英国探偵小説らしい落ち着いた雰囲気が魅力な作である。 戯曲を小説化したもののせいか、描写がやや薄味なのが残念、 舞台となるカントリー・ハウスの情景、そこに集う登場人物をじっくりと書き込めば 非常に重厚なミステリ足り得たであろうと思われるのが惜しまれる。
575 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2007/11/11(日) 16:50:37 ID:jBcSaRMq
『P・G・ウッドハウス選集T ジーヴスの事件簿』を読んだ。 刊行当時はこのミス等にもランキングされた作品集であるが、厳密にはミステリとは 言い難い作も多く含む英国国民文学的位置付けにあるシリーズである。 訳文が上品かつ軽妙にして読み易く、落語的面白さに富む。 時代性もあって御都合主義的展開が目立つものの、本シリーズの場合は目くじら立てずに ゆったりと雰囲気を味わうべきものなのであろう。 しかし、ジーヴスという男、痛み入ります、とか言いながら、実に食えない男である(w
576 :
名無しのオプ :2007/11/11(日) 19:14:50 ID:0Gi1LYXt
在日韓国・朝鮮人対象の“住民税減額措置”を利用し、伊賀市の前総務部長が1800万円着服か…三重
17 名前:名無しさん@八周年[] 投稿日:2007/11/11(日) 11:31:58 ID:b287LWMGO
減額の方がよほど問題だよ!
おかしいでしょ。
これ、日本人が差別されてる。
107 名前:名無しさん@八周年[] 投稿日:2007/11/11(日) 11:41:31 ID:iGQrDZNb0
>関係者によると、減額措置は、昭和30年代から40年代にかけ、
>旧上野市(現伊賀市)と地元の在日本大韓民国民団(民団)や
>在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)との交渉で始まったとみられ、
>納付額を半減するなどしていた。
黒幕は総連と民団。
たぶん全国でやってるぞこれ。
19 名前:名無しさん@八周年[sage] 投稿日:2007/11/11(日) 11:32:13 ID:WWwiKLKH0
在日特権は事実だったんだ…
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1054146.html 在日様は減税されて、日本人は増税って・・・・。
明らかに日本人差別・・・・。
577 :
名無しのオプ :2007/11/11(日) 23:40:14 ID:TC1TfD/2
『幼き子らよ、我がもとへ 上・下』ピーター・トレメイン 創元推理文庫 モアン王国内の修道院で、隣国ラーハンの尊者ダカーン が殺される。複雑な領土問題がからみ、タラの大集会での 裁判で、モアン王国側に責任のないことを示さないと、 モアンとラーハンの間に戦争がおきかねない。そのうえ、 王国内では疫病がはやり、国王が死の床についている。 モアン王国最大の危機を救うため、修道女フィデルマが故郷に 呼び戻され、真相究明にあたる。 本当におもしろかった。一気に読めました。 大集会までの解決というタイムリミットによる緊迫感、いつ感染する かわからない疫病への恐怖、戦争や疫病で親を失った子供たちを襲う さらなる悲劇とそれに対するフィデルマの激しい怒り。 前作よりフィデルマの人間味が増し、怒りによる失敗もします。 大集会での、モアン、ラーハン両国関係者を前にした推理披露は、 往年の本格推理の名探偵そのもの。 久しぶりに、超人的な名探偵の活躍を、堪能しました。
「レイトン・コートの謎」アントニイ・バークリー(国書刊行会) 資産家のスタンワース氏が自邸の書斎で射殺体となって発見された。 被害者の客の一人であった作家シェリンガムは殺人とみて 親友アレックと共に事件解決を目指すのだが……。 出た端からがっつくんじゃなく一通り出揃った処でゆるゆると 発表順に読んでいくというのが賢者の読み方です。スレは立てたけどw 読んでみれば真っ当な本格ミステリという印象でした。主人公は 天才でも凡人でもない言わば秀才型探偵といった風で特に違和感は ありません。プロットはそう複雑ではないのですが、犯人は 終盤になるまで気付きませんでした。これは風邪のせいです、はい。 あと(メル欄)が気になりました。 本作だけではまだ独創性を感じなかったので これからどう伸びていくのか楽しみです。
579 :
名無しのオプ :2007/11/14(水) 12:12:10 ID:JYe7QJf8
エラリー・クイーン「シャム双子の謎」 山火事に閉じ込められた山頂に立つ一軒の館で起こる連続殺人事件。 炎の脅威が迫り緊張しているのか、いつもより頭のキレが悪いエラリー。 親父のクイーン警視も失態を犯す。 山火事が強烈な緊迫感を演出し、論理ゲームが売りの従来のシリーズとは一線を画すドラマがある。
「雷鳴の中でも」ジョン・ディクスン・カー(早川書房) 中年画家ブライアンは知人の富豪から令嬢の説得を頼まれる。 彼女が誘いをかけられた女優に殺人容疑をかけられた過去があった からだったが、ブライアンは失敗し令嬢は誘いに応じてしまう。 そしてそのせいで彼女は殺人事件に巻き込まれることに……。 本作はある不可能状況が設定されているのだが、種明かしが余りにも 強引に過ぎ(バカミスとかじゃなく)、トリックの考案を放棄している のかとすら思えてしまった。ただプロットは中々良く出来ていたと思う。
581 :
書斎魔神 :2007/11/17(土) 22:08:14 ID:sa5qlxNN
デレック・スミス『悪魔を呼び起こせ』を読んだ。 幻の密室ものであり、国書刊行会により翻訳の陽の目を見たものの、 内容的には期待外れの感が強く、今は忘れ去られた感がある作で、 (本書の解説者は本作を高く評価しているが、 解説中に記された『不可能の解体、不思議の消滅とともに、作品の魅力もまた消え 失せてしまう場合』が多い密室ものの例外とは成り得ていない) 長く本邦未訳であった密室ものということであれば『魔の淵』方がまだその トンデモぶりが楽しめる分だけ良い気がする。 とは言うても、曰く因縁つきの先祖の死の言い伝えが絡む謎の密室殺人、 これに続く派出所における第2の密室殺人とジョンまがいの怪奇探偵小説 (ただし、本作はジョンであればロマンス成就のハッピー・エンディングであったろう) を意図した構成は、ミスオタなら見逃せないところではあろう。 ミスオタな素人作家の手になるものだけあって、名探偵が女に惚れっぽいイケメン、 ヒロイン(ガイシャのフィアンセ)がこの時代背景であればビッチと言われても仕方ない 『話がわかる』タイプ、ギディオンとヘンリーをミキシングしたような楽しい爺 (ヒロインの叔父)等々、同人誌風のキャラ構成が馬鹿馬鹿しくも楽しくはある。 それゆえにと言うか、理詰めを意図し過ぎて、突っ込み所も多く、 地味過ぎに終わった謎解きは今ひとつ物足りなさがあり、 ジョン作品(例えば『曲った蝶番』や『プレーグコートの殺人』等の如き)のような ある種突き抜けたようなトンデモ感が欲しかったところだ。
582 :
名無しのオプ :2007/11/17(土) 22:26:04 ID:x6cJwYjW
カッツェンバックの、精神分析医読みました。 上下巻とも厚くて疲れたけれど 良かった。 でもあれは、サスペンスなのかな。 ある日突然医師の前に不可解な手紙が。 14日間以内に自殺しないと、おまえの親戚を殺す。 そこで医師は、逃げたり名前を変えたり そういったことで過去の自分と向き合っていく。 読み応えありました。
583 :
書斎魔神 :2007/11/18(日) 21:35:45 ID:2s1YAiVL
レオ・ブルース『三人の名探偵のための事件』を読んだ。 真田啓介氏(注 真田幸村ではない(w )の解説に詳しいが、 密室トリック、多重解決、アントニイ風の名探偵パロディと探偵小説論等、 盛り沢山の本格ミステリで、最終的な解決(=真相)も面白く、かなり堪能出来る。 しかも300頁程度とコンパクトに纏まって読み易いのも良し。 作品内容を離れた意外性ということでは、作者がこのような洒落っ気がある遊び心が あるものを書く作者は、著名なプライベート・スクールからオクスブリッジ卒の インテリ上流階級の紳士かと思いきや、転校、転職を繰り返したDQNなプロファイルの 持ち主であることである。
584 :
名無しのオプ :2007/11/19(月) 20:35:03 ID:15n06iKH
>>583 魔神さん、英国でオックスブリッジに進学する贅沢な私立学校は
「パブリック・スクール」ですよ。イートンやラグビー、ハローなど。
585 :
名無しのオプ :2007/11/20(火) 03:23:50 ID:I0sk+pvT
>>583 調べたらレオ・ブルース(Rupert Croft-Cooke)はパブリック・スクールの
トーンブリッジとウェリントンカレッジで教育を受けたインテリみたいだよ。
ジャーナリストをしたり、古書店を経営したり、ラジオの心理学に関するシリーズ番組
に出演したり、兵士になったり、確かに職業は転々としているけど、DQNとは対極だろ。
586 :
名無しのオプ :2007/11/20(火) 06:10:32 ID:Ys+kHhg9
自演がウザいなあ・・・
587 :
名無しのオプ :2007/11/20(火) 14:24:34 ID:cz+LHEZR
コージーミステリーなんだけどクッキングママシリーズ読みました。 怒涛のように話がすすんでいく中で ややヒステリックなバツ一ママの気持ちや ドタバタとした登場人物たち、イライラしたティーンエイジャー その人たちの気持ちの描写や会話、話の流れ方、 とにかく読んでいるだけでどっと疲れる。 シリーズものだから仕方がないけど死体発見もワンパターン 唯一の魅力は落ち着いている警官のトムとレシピ、食事の描写 とにかく読んでいてすごく疲れるのでシリーズ揃えたのに捨てようか迷い中
588 :
名無しのオプ :2007/11/21(水) 00:31:19 ID:zxeKPekF
■■■書斎ミス住警報発令中■■■ 書斎は現在、全ての書き込みに対して 挑発的なレスを返してくる模様です。 ミス住の目的は、皆さんの感情を弄び、 板を機能不全に陥れて自己満足に浸る事にあります。 書斎の煽りに乗ってはいけません。 ミス住にマトモな返答を期待してはいけません。 ■ただひたすらに無視し続けて下さい■ ひとりでも反応すれば、書斎は大喜びで更に挑発してきます。 煽り耐性の無い方は、当分の間書き込みを控えて下さい。 ミス住撃退には、皆さんのチームワークが、何よりも大切です。 ご協力よろしくお願い致します。 ★★★基本に戻ろう★★★ ★ 書斎は、放置されるのが一番キライ! → ウザイと思ったらそのまま放置! ★ 放置されたミス住は寂しくなって、煽りや自作自演であなたのレスを誘います! → 釣られてレスしたらその時点であなたの負け! ★ 反撃は書斎の滋養にして栄養であり、ミス住が最も喜ぶことです! → 書斎にエサを与えないで下さい ★そんなミス住を見かけたら、 → 同情と哀れみの気持ちを込めて華麗に放置スルーしてあげましょう。
589 :
書斎魔神 :2007/11/23(金) 08:48:20 ID:9tsGmues
ジョン・スラディック『見えないグリーン』を読んだ。 エゲレスを舞台にしながらもメリケンの作家の手になるもののせいか、 テーストはライトなアメリカン・ミステリ、やや軽過ぎる感も受けるが、 逆に凄惨な連続不可能殺人のヘビーなムードを巧く中和する効果を上げているとも 言い得る。 第1の殺人はまさにジョン張りなトンデモトリックが炸裂して楽しめるオチだが、 第2の殺人はあまりに偶然性に頼った御都合主義が目立ち感心しない。 第3の殺人はS・Sやエル風の論理的な推理が展開されるが、 プロの殺し屋でもないのに必殺の一撃というのが、やや弱い(『悲鳴を上げないか』)感 がある。 しかし、全体を通じてはコンパクトに纏まった予想外に楽しめる作であり、 特に密室オタには必読である。なお、解説はマエストロ鮎(注 浜崎ではない(w ) が担当、相当に高い評価をしている。
590 :
書斎魔神 :2007/11/24(土) 10:42:45 ID:Ay2RLgCU
私の紹介によりこのスレでもおなじみになったH・R・ハガードだが、 『女王の復活』を読んだ。傑作『洞窟の女王』の続編(と言うても刊行は18年後とある)、 ゲットするのに苦労した一編なのだが、かなり不満が残る作であった。 例えば、チベットを舞台にしながらも秘境冒険小説としての内容は前半のみ、 全体の4分の1程度となっており、後は転生が絡んだ時空を超えた三角関係が メーンストーリーとなってゆく。 この辺は読者の嗜好も関係はするだろうが、初期の大冒険ものを期待していると、 外れという感が強い。 加藤夏希風のイラストが付されたヒロイン、アシュリの語りも前作と比較すると、 柔らか過ぎて、やや切れ味を欠くものがあり、 恋をして生まれ変わり(まさに字義どおりだが)キャラが柔らかくなったのか。
591 :
名無しのオプ :2007/11/24(土) 11:19:21 ID:ObDr/b+Z
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/books/1188048870/583 【コテ禁止】小説の匠 吉村昭5【コテ禁止】
583 :ミステリ板住人:2007/11/23(金) 20:31:22
オレも包茎だけど、カミサン喜んでむいてるよ。
むくだけむいてカリくびもって
シコシコしてくれる。単に皮が多少長いだけのこと、何の変わりもない。
ふろっ一緒に入って股開いてむいて洗わせてるよ。
オレも股を開かせてオマンコ
洗ってやってるけどね。初めはお互い恥ずかしかったけど、
いまはかみさんから
股を開いて要求するよ。
愚民諸君、心しておけ!
いや親方がカントン包茎だっていうのは、オレらみんな知ってるからさぁw
「嘘は刻む」エリザベス・フェラーズ(長崎出版) 旧友グレースに会うためイギリスの田舎町にやって来たエマリーは そこで殺人事件に遭遇する。目撃者の証言によると当日被害者宅には 赤い服の女と茶色い服の女が訪ねていたと言う。エマリーはその片方が グレースではないかと疑い、彼女のために事件を調査し始める。 検証シーンも結構ありミステリとしてはマル。だがストーリーがいまさん。 それにでっかいハッタリがあったりしてマイナス。あとなげーし。
「海中密輸ルートを探れ」クライブ・カッスラー(新潮社) エーゲ海にある米軍基地が突如襲撃を受ける。襲ったのは 第一次世界大戦で使用されていたドイツ戦闘機。SOSを受け 救援に向かったピット少佐は首尾良く敵を撃退させるが これは大事件の幕開けに過ぎなかった……。 シリーズ第一作。新規開拓に着手するも最初はダーク・ピットの暴力性に やや引く。何もしてない女を力一杯殴るとかどんだけDQNやねん。 中盤まではストーリーもシンプルで可愛いもんだと思っていたが、 そこからややツイストしてちょっと眉を上げた。 ま、次には繋がったな。
594 :
名無しのオプ :2007/11/27(火) 20:16:38 ID:OjYl079P
ピーター・トレメイン『蜘蛛の巣 上・下』 創元推理文庫 主役のフィデルマは王の妹で美人で法律家で修道女で馬も格闘術も達人並という完璧超人 ホームズやヴァンスや御手洗と違って性格もまともという凄さ 古代アイルランドが舞台なのだが、作者はその道ではかなりの権威らしい学者だそうで、 その時代へのわかりやすい偏見まみれのイメージを崩しまくる社会制度と法律が密に描かれていて そういう部分では大変面白かったし、ローマ教会に同化されていく中での宗教論争が折り込んであってそのあたりも興味深い ミステリとしては及第点止まりという感じだが、それを補って充分な作品ではあった ただ訳者が巻末の註でシリーズのネタバレをしまくっているのはどうだろう
「探偵術教えます」パーシヴァル・ワイルド(晶文社) 通信教育で探偵講座を受けている運転手モーランが一人前気取りで 犯罪事件を解決しようとする連作短編集。 「悪党どものお楽しみ」と本作でユーモアミステリーの書き手として 達者なのは良く判ったが、それが制約になって話がワンパターンに なってしまっている面も無きにしもあらぬ態にて候。 ここらで正当派の本格長編らしきミステリー・ウィークエンドを読みたい。 一番は「P・モーランと消えたダイアモンド」かな。 ネタバレ天国かも知れないが。
596 :
書斎魔神 :2007/12/01(土) 15:02:11 ID:8zQbFAKw
J・D・カー『囁く影』を読んだ。 定期的なジョン作品再読を怠らない俺ではあるが、出来栄えが芳しくないものが多い せいもあって、ギディオン・シリーズ中期から後期にかけての地味めの作などは どうも縁遠くなるものである。 本作はカーオタにはわりと評判が良い密室犯罪ものであるが、 訳者のノートと題されたあとがきにある、『・・・この作品の特に堅牢で緻密な構成は、 フェル博士登場の一連の作品の中でもずばぬけていると思われるが、どうだろう』 というヨイショに対しては、『それは違うだろう』としか言いようがない。 あとがきには、本作の手がかりの呈示の仕方を評価した部分もあるが、 トリックに関連した服装の件ひとつ見ても、これに気付けというのは無理というもので あるし、第1の殺人トリック(密室)はあまりに老人というガイシャのキャラを 考慮すれば説得力が無さ過ぎ、ふと映画『ディアハンター』を想起させる第2の事件の トリックの方が、まだ面白みがあるやに思う。 また、中期以降のジョンには珍しく吸血鬼ねたというオカルティズムを 導入しているが、初期のようなコテコテの怪奇色を施すわけでもなく、 あっさりと流されているのも、怪奇探偵小説好きとしては物足りないし、 ヒロインのフェイがハモンドに雇用される経緯その後の展開等、 いかに創り物を意図した謎解きミステリとはいえ、『小説』として無理が有り過ぎる感が ある。そもそも、バーバラというキャラは不要だったのではないか? 意外性を持ったのは、ラストがジョン作品らしい恋愛成就のハッピー・エンディング と思いきや、ビッチ(意外にもジョンは同情的)ねたを貫徹した点か。
597 :
書斎魔神 :2007/12/02(日) 12:05:13 ID:HQ+ylbHI
ジョン・スラディック『黒い霊気』を読んだ。 前に紹介した『見えないグリーン』が案外と楽しめたので手に取ってみたものの・・・ ジョン作品を想起させる交霊会絡みの怪奇探偵小説スタイルだが、 『見えない・・・』と同様に本作も英国を舞台にしながら軽快なアメリカン・ミステリの タッチが貫かれているのが特色、テンポ良く読み易いものの、 オカルティズムによる恐怖感、サスペンスの盛り上がりが弱くなってしまっている 恨みもある。 そして、本作の最大の弱さは、錯覚とミステリではおなじみの小道具を使用した不可能犯罪 (人間消失、空中浮遊等)のトリックがあっけなさ過ぎることである。 はっきり言うて、一時期ミステリ板でも人気があった『名探偵コナン』レベルの 謎解きであり、文庫化までには至らなかったのが納得がゆく出来と言える。
598 :
書斎魔神 :2007/12/03(月) 19:42:43 ID:p64dJF70
アトゥール・ガワンデ著「コード・ブルー」を読んだ。 著者はハーバード大学医学部・同大公衆衛生大学院卒。現在は外科研修医。 あの「ニューヨーカー」誌のスタッフライターでもある。 2ちゃんねらー風情から見れば、雲の上のそのまた上の人と言えよう(w ミスヲタ必読の章は、本書の第三部「不確定」第一章「乳児の死の謎」だ。 乳幼児突然死症候群(SIDS)とされた乳児10人の謎の連続死、 30年の歳月を経て母親が起訴されたが… 今流行の医学ミステリとなり得るネタが満載だ。 座して読め!
599 :
名無しのオプ :2007/12/03(月) 23:20:41 ID:ztPJuLzA
求職活動、乙!
600 :
名無しのオプ :2007/12/03(月) 23:26:33 ID:WO9Vy5As
中学校、いや小学校すら、お情けで卒業させてもらった書斎にとっては、 雲の上の上の上の上の上の上の上の上の上の上の上の上の上の上の 人と言う事かw なあ、書斎、お前の文書、文法が変だぞ 主語と述語の位置がメチャメチャだったり、接続詞や形容詞もみんな変だぞ パクッた文書の所だけ文法が正しくて、それ以外が、メチャクチャだから、 構成がまるわかりで、もはや喜劇だ、 その他の知識もみんな変、少しは勉強しろよ!
601 :
名無しのオプ :2007/12/03(月) 23:29:41 ID:WO9Vy5As
つまらん論考なんかやってないで、小・中学校レベル(特に国語の基礎)から やりなおせアホ!
「ウイッチフォード毒殺事件」アントニイ・バークリー(晶文社) とある実業家が毒殺され歳の離れた妻が逮捕された。このニュースを 知ったシェリンガムは発見された砒素の量が多すぎることから 事件の経緯に疑惑を持ち、友人アレックを誘い独自に調査を始める。 2作目。あくまでも「有罪とは言えないかも」という姿勢を取りながらも 段々推理に偏りが出てくるシェリンガムの人間味や、所々で開陳される 彼の価値観が印象深い。ただ、個人的にはもっと俗っぽさが欲しいところ。 今後に期待。 真相に関しては同時期のある作品を思い浮かべたが本作の方が 先と判りある作品にやや失望。本作の評価が上がった。 お尻ペンペンされて赤面するシーラタン(´Д`;)ハァハァ
「悪魔はすぐそこに」D・M・ディヴァイン(東京創元社) 横領疑惑をかけられ罷免の危機にあった大学講師が自宅で 中毒死を遂げた。彼は生前、過去に大学で起きたある醜聞の真相を 知っていることをほのめかしていた。そして程なく第2の殺人が起こり、 警察は前述の醜聞に関係の深い人物に疑いの目を向ける。 そんな中同じく醜聞に関わりのある若き数学講師や、公正を 旨とする法学部教授らが事件の解明に乗り出すのだが……。 ディヴァインキター!!!!! と思いきや最大の見所たる「復縁のロマンス」が無い! 仕方ない本格ミステリとして読むかと思ったが本作のロマンスも そう悪くは無かった。 本格としても流石の読み応えだが、フーダニットにこだわる余り アンフェアすれすれになっていると感じた。この真犯人、 自分は二人目に疑った人物なのだが、読み返して断念したのだった。 つまり不自然なんですな。記述の正誤という以前に存在がね。 この作者ならもっと巧くまとめられるんじゃないかとつい思ってしまう。 まあエンタメ度を重視すれば見過ごせる瑕瑾かも? 追伸 解説ののりりん、国内でDVD化されてる映画ぐらい観ときなよ。 追伸の自乗 このミス5位、ミス
チャ3位、本ミス2位だって。前2つはこれまで本格を無視 し続けて来た人達が何故か投票したということかね。 そんな奴ら皆まとめて死ねばいいのに。 本ミスが「死の相続」を1位にしなかったのは自粛かな? そう思おう。
606 :
書斎魔神 :2007/12/08(土) 17:05:42 ID:+HFCcWyf
クライド・B・クレイスン『チベットから来た男』を読んだ。 解説では絶賛状態(『謎・論理・意外な結末の三位一体を、独創的なストーリー とあざやかな雰囲気のなかでなしとげた、まさに本格好きの琴線をゆさぶる逸品と いえます』だそうである)だが、全集初期の刊行物だったこともあって売らんかなという 気持ちはわからぬではないものの、あまりに持ち上げ過ぎである。 全327頁の作品であるにもかかわらず、メーンなネタである密室殺人の発生する のは物語もとうに半ばを過ぎた第九章(224頁から)というのも気の長い話であり、 ここに至るまで、あくまで物語の装飾に過ぎない作者の仕入れたチベット密教ネタを たっぷりと拝聴させられることになる。 (ネタ本に『西蔵旅行記』まで挙げられており、その薀蓄は結構本格的なものに 思えるが、読書人ならぬ単なるミスオタにはきついものがあろう) そして、最大のセールスポイントである密室トリックもやや物理的小技過ぎるきらいが ある。ジョンならロマンス等もまぶしながらも、もっと切り詰めて書いたのではないか。 探偵役の歴史学者の爺ちゃんのキャラも地味過ぎでインパクトを欠く。 ただし、謎解き終了によるあっさりとした幕切れはしっこさがなくて良し。 97年の邦訳作品だが、黄色人種に対する作者の蔑視を感じさせるような 部分もあってか、この作者の刊行物は後が続かなかったようである。 (第十三章で探偵と警部が日本料理屋で食事するシーンは、ちょっと面白いものがある。 タマネギ、キノコ、スライスしたヒシの実入りのスキヤキとは・・・(w )
607 :
名無しのオプ :2007/12/08(土) 17:32:34 ID:ZRLLyXCV
608 :
名無しのオプ :2007/12/08(土) 19:03:54 ID:FBUrjkNj
やめろ・・・
609 :
名無しのオプ :2007/12/08(土) 20:38:07 ID:uMMdDQeS
さすが書斎。時間だけはたっぷりあるからなw
610 :
名無しのオプ :2007/12/09(日) 08:31:53 ID:tdb6cIkk
書斎の文は、よそのレビューサイトかたの剽窃だっていうのは 前にも指摘されていたよな。 いくつかのレビューサイトの文を混ぜて、かと思う、やに思う、感があるで 文末を締める文体に書き直すだけ。姑息ぅ〜〜!!
611 :
名無しのオプ :2007/12/09(日) 10:11:53 ID:NSsdqpbL
>>608 やめろも何も、もう投稿されたんだから手遅れだよ。
嫌なら削除依頼でも出せば?まずスルーされるだろうけどね。
612 :
書斎魔神 :2007/12/09(日) 13:59:17 ID:B+KBu3xU
トルーマン・カポーティの短編集「ミリアム」(新潮文庫)を読む。 カポーティ作品を「ミステリ」という文脈で語った例はあまり見かけないが、 クライム・ノヴェルの傑作「冷血」の著者なのは良く知られたところである。 表題作「ミリアム」は、伏線が十分に張られた短編サイコ・ミステリとしても 楽しめる作。しかし、そのテーマは奥深いものがある。 ミステリ板には、純文学と聞くと、「純文学キター!」とか絶叫して逃げ出す輩が 多いようだが、このような者たちにも突き付けて読ませたい作である。 そして、早くミステリのみが本ではないことを自覚して欲しいものである。
613 :
名無しのオプ :2007/12/09(日) 15:12:08 ID:qT4R2l9s
これくらいだったらパクらなくても書けるな。 てか、ほんとに読んでる感じがしないw
614 :
書斎魔神 :2007/12/09(日) 15:37:14 ID:7vONORbQ
ピーター・アントニイ『衣裳戸棚の女』を読んだ。 結局、真相(犯人)は禁じ手なんだが、こういうバカミス的使い方なら納得、納得 という感あり。 著名な戯曲家兄弟の共作ゆえ、会話体が多くスピーディに読めるが、その分重厚さを欠く のが難か。軽過ぎて未訳の他作を読みたい気がしない。 ジョンあたりが書けば、ロマンス(これに使える若い男女キャラもある) もまじえて勿体ぶって書き込むのではなかろうか。
615 :
名無しのオプ :2007/12/09(日) 16:43:49 ID:bT9gkpaP
>>610 いや、姑息なんていうレベルではないよ。
ハッキリ言って“盗用”だよ。
616 :
名無しのオプ :2007/12/09(日) 16:47:24 ID:bT9gkpaP
書斎魔神は、書斎盗人とでも改名するべきだな。
617 :
名無しのオプ :2007/12/09(日) 17:45:04 ID:R2g3yyFA
>>613 612なんて、ちょっと解説でも見れば読まなくても書ける程度のことだね。
いやむしろ本当に読んであの程度のことしか書けないのなら
わざわざここに書き込む必要なんかないよw。
618 :
名無しのオプ :2007/12/09(日) 17:48:30 ID:x8W9gCzm
あらすじ書いてくれるほうがまだマシw
619 :
名無しのオプ :2007/12/09(日) 19:31:29 ID:dAEJoDXh
今のスレの流れをみていると、感想を書き込む場合は「書斎魔神」を名乗るのが決まりになったのかと勘違いしそうだなw それとも、盗用練習スレになったのかw
620 :
名無しのオプ :2007/12/09(日) 19:36:36 ID:T+/Ahv4q
パクリがばれてあわててスレを流そうとしてるだけにしか見えないw
「恐怖の谷」コナン・ドイル(新潮社) ホームズの許にもたらされた一通の暗号文。 それは宿敵モリアティ教授の組織にいる“ディープ・スロート” ポーロックからの物であった。暗号を解いたホームズだったが、 時既に遅く、その中で予告されていた犯罪は起きてしまっていた。 田舎の古館に轟く銃声。書斎で見付かった惨殺死体。堀に囲まれた 巨大な密室から犯人は如何にして消えたか? 館の主人が口走った「恐怖の谷」とは? 長編の中で唯一読んだことも観たことも無かった話。事件の解決と 動機の物語という「緋色の研究」と同じ構成になっている。 しかし「緋色の研究」の後半が只のサスペンス小説だったのに対して 本作の後半は捻りが加えられており、また事件の解明においても 111pでホームズが言うように、最後までだんまりを通すのではなく 推理の過程をワトスン(=読者)に提示して進められている。 これらは本作が発表された1915年にはもう開幕していた黄金時代を 意識しての変化の様に思える。一方でデビュー作と同じ二部構成に したことはゲーム的なパズラーが勃興しつつある中で原点回帰を 唱えたのかも、とこれは考え過ぎか。 個人的には「緋色の研究」後半のサスペンスも犯人指摘シーンの 鮮やかさも大好きである。
「殺意のバックラッシュ」ポーラ・ゴズリング(早川書房) 警察官ばかりを狙った連続殺人事件が発生し、ストライカー達の 捜査は、被害者達の繋がりが全く掴めずに難行する。そんな中、 同棲中の恋人に男の陰がちらつき苛立ちを深めるストライカー。 しかし彼にも心を乱される女性が現れ……。 前作における主人公と恋人の出逢いはそれはもう酷かった。 ハワード・ブラウン風に言うなら“二日酔いのバーバラ・カートランド” てな感じで。しかし流石に4年経って頭を冷やしたのか幾分 冷静に二人の破滅的な関係を描写している様に見受けられた。 愛情以外共有物の無い二人にそれぞれ新しい異性が現れ――昔早川が 非情にもぶっちぎったジャネット・ニールという作家の作品を思わせる 展開にニラニラしながら読んだ。一応、ケリはつくんだけど、 「実はあの後……」なんてまだまだ後付けは可能だぞ牛頭! ミステリーとしても中々良かった。前作の様な古典を意識した 象牙の塔の殺人より、本作の様なスピーディーなサスペンスに 力を発揮出来る作家だと思った。シリーズ次作も読む。
623 :
名無しのオプ :2007/12/14(金) 00:49:17 ID:HjS5Jj74
「泥棒のB」 スー・グラフトン ハヤカワ 「たまには軽いのもいいけど、これってさすがに軽すぎるんじゃないの?」と 一生、読まない作家リストに入っていたんだが、ふと手にしてしまった。 主人公はご存知、キンジー・ミルホーン 失踪人探しの依頼から隠された犯罪に出くわすという ありきたりのストーリーながらテンポよく読ませてくれる。 強烈なキャラこそ出てこないが、みんなそこそこ楽しませてくれる。 やたらと女探偵というのを売りにしたシリーズかと危惧していたが そうでもなかったし結構楽しめた。
624 :
書斎魔神 :2007/12/15(土) 13:43:19 ID:TaMPCJbC
ジョエル・タウンズリー・ロジャース『赤い右手』を読んだ。 アベックを襲撃した殺人者は森に消えた・・・そして連続殺人が・・・ 10年以上前に初訳され、 ミステリとして、そのあまりの反則ぶり(叙述もストーリー展開も)に驚愕した作、 あまりに見え見えの展開にしないために、あまりに無理やりな展開になってしまった という感を強く受ける。つまり狙い過ぎたのである。 また、国書刊行会のシリーズ作品にしては、かなりエグくグロな描写も多い異色作 でもある。 (この作家は、文体、作風からは濃いキャラを前面に出したサスペンス系統の方が 向いているように思われる。実際、ピカレスク風の作も著しているようだ) 今思えば、ハーバード大卒・プリンストン大院中退な高学歴とはいえ、 単行本は数冊を刊行するにとどまったパルプ作家の手によるものだけに、 過大評価は禁物、気軽に読み飛ばすべきものだったのかとも思う。 つまり腹を立てたり、突っ込みを入れるだけ野暮っていうことである。 解説でも指摘されているとおり、時系列が錯綜する構成となっているが、 幸いにもこなれた明解な翻訳により読み難さは免れているのは幸いである。 細かい点だが、解説において、メーンキャラとなるコークスクリュー(あだ名)が、 ドクと自称していた点につき、全くコメントが無いのが気にかかった。 これも、まあ『アレ』なわけだが・・・
625 :
名無しのオプ :2007/12/15(土) 14:38:12 ID:80FRuaqz
>>624 盗用元のURLを記しておいてください。よろしくお願いします。
626 :
名無しのオプ :2007/12/15(土) 15:18:23 ID:FOvg2Is+
またアマゾンのピエロから盗みましたとさ
627 :
書斎魔神 :2007/12/15(土) 18:04:37 ID:vrDGVSbh
馬鹿野郎!!!!!!!!!!!!!!
628 :
書斎魔神 :2007/12/16(日) 21:20:21 ID:/wa4VffF
C・デイリー・キング『タラント氏の事件簿』を読んだ。 個々の作品の出来栄えはともかくとして、不可能犯罪の凝った状況設定が なかなか楽しい作品集であった。 ただし、この作者、魅力的な謎の設定という点は長けているものの、 その解決部分は弱いというのが全体的な印象である。 大好評につき収録作品全話講評いってみよう! 『古写本の呪い』 NYのど真中にある博物館、呪いがかかっていると言われる古代アステカの古写本を 徹夜番という設定が面白い。 密室内からの写本消失の謎はこれしかないという意外にあっけないものでるあるのが難か。 『現れる幽霊』 ワトスン役(ジェリー・フィラン)のロマンスを中心に置いた怪談仕立ての一編。 新装家屋の幽霊談というのが異色だが、解決が御都合主義で機械的過ぎるのが難か。 『釘と鎮魂曲』 屋上のペントハウスを舞台にした凄惨な密室殺人ものである。 ガイシャ(絵のモデルである若い娘)と犯人のキャラを濃く書き込めば、 横溝風の怪奇・猟奇趣味溢れる読物になったであろうが、都会派デイリーは あっさりと語って謎解き(筋は通っているが、小技という感あり)してゆく。 『第四の拷問』 マリー・セレスト号事件の前ふりに始まり、終盤、いきなりB級パニックホラー的 展開となるトンデモな作、まあこの意味では楽しめる作とは言える。 探偵しか知り得ない事実が後で明かされる等のアンフェアな部分もあるが、 こういう点を問題視すべき作ではなかろう。
629 :
書斎魔神 :2007/12/16(日) 21:21:18 ID:/wa4VffF
『首無しの恐怖』 収録作品中唯一の非不可能犯罪もの。 時代性もあって人種偏見丸出しなネタだが、 ストーリーそのものは警察小説的な犯人探索のスリルに富む異色作。 『消えたハープ』 これも不可能犯罪もの、密室から消えたハープの謎。 『・・・もののけの仕業か』というタラントの台詞等のくだけた訳には笑える。 収録作品中では最長の作品で、書き込んである分、密室状態のサスペンスを感じさせる 作だが、謎解きは『やっぱりそれか』程度のもの。 『三つ眼が通る』 タイトルから笑える。真面目に訳しているんだろうか。 この作も人種偏見あり、ストレートなトリックの短かめの作。 『最後の取引』 これはトンデモというか・・・これを書くとミステリのシリーズとしては終わるしかない。 逆に終わらせるための作とも言える。 タラント氏は嫌味の無いジェントルな名探偵なので、 オカルト的な妙な人物におちょくられぱなしの感があるのは気の毒。
630 :
名無しのオプ :2007/12/16(日) 21:34:47 ID:z0UjmpPE
「SAS エチオピア皇帝の宝」ジェラール・ド・ヴィリエ(東京創元社) 貧乏貴族の雇われスパイ、マルコ殿下の今回の任務は独裁体制の下で 内戦状態になっているエチオピアで死んだ皇帝が隠したと言われる 莫大な黄金を捜し出しエリトリア人民解放戦線を支援すること。 マルコは現地のCIA工作員の助けを借り黄金に繋がる人物と コンタクトを取るが独裁政権の殺し屋にかぎつけられる……。 表紙の外人は当時来日してたモデルか何か? 「実はこの人が!?」的なサプライズがあったりして。 内容はまあお馴染みのセックスドンパチセックス拷問セックス みたいな感じで楽しめるよ。地理的に良く調べてるな、ってか 嘘かも知れんけど。 ただ、出てくる女が全員爆乳つうのはどうかと思う。一人でいい。 その方が興奮するから。 後半マルコが安らぎの象徴としてアレクサンドラ思い出すのワロタw まあ確かに比較すりゃマシだけどさ。
632 :
書斎魔神 :2007/12/20(木) 17:55:12 ID:2mDgZfXQ
ジョルジュ・ランジュランの作品集「蝿」を読んだ。 たいした作品ではないが「安楽椅子探偵」という犯人探しのミステリも収録されている。 表題作は、映画「ザ・フライ」の元ネタ(忠実な映像化ではない)。 70頁強程度の短編だが、比較的忠実に映像化された 英国ハマー・プロ作品のエッセンスの全てが原作にあったのだと良くわかる。 短いながら伏線も十分が効いたスリリングなSFミステリの趣がある原作が、 文学性の面から見てもはるかに上である。 作者ランジュランは既に忘れられた作家ではあるが、ロンドン育ちのフランス人 だけあって、英国の渋さと仏国のメランコリーが巧みに融合された独自のムード がある作風は忘れ難いものがある。 ただし、「蝿」以外の本書収録作品は、見え見えな展開が多い糞ばかりなのが残念だ。 まさに2ちゃんねらーレベルと言い得る。
633 :
名無しのオプ :2007/12/20(木) 18:19:40 ID:ULUikXVy
書斎さん、ID切り替え忘れてますよ。 コロンボスレでわめいてたのは書斎さんだったんですねw
634 :
名無しのオプ :2007/12/20(木) 18:22:38 ID:Yd/3Qt/9
馬鹿、ここに極まれりwwwwwwwwwwwwwww 494 名前:名無しのオプ[] 投稿日:2007/12/20(木) 14:04:58 ID:2mDgZfXQ 大学の非常勤講師だぞ、ミス住は。 497 名前:名無しのオプ[] 投稿日:2007/12/20(木) 16:01:02 ID:2mDgZfXQ 英米比較文学論と憲法学(日本国憲法) 504 名前:名無しのオプ[] 投稿日:2007/12/20(木) 17:50:50 ID:2mDgZfXQ 黙れ・・・
635 :
名無しのオプ :2007/12/20(木) 18:25:13 ID:kmFQDxFO
悔しかったんですね
636 :
名無しのオプ :2007/12/20(木) 18:37:33 ID:bu/6ep1u
「ジョルジュ・ランジュラン」でぐぐったら、 一番上にアマゾンの「蝿」のページがあったw
637 :
名無しのオプ :2007/12/20(木) 20:17:39 ID:Gd5MtgzT
「ハエ男の恐怖(1958)」でも「ザ・フライ」でも、 英国ハマー・プロ作品なんかじゃねえぞって、 何回注意されたら判るんだ?この阿呆は。
638 :
名無しのオプ :2007/12/20(木) 22:22:51 ID:ZbhOVkwt
>>637 日本公開された蝿男は、全部20世紀フォックスでしたね
親方の薄味頭の中にだけ、ハマー・プロ製の蝿男がいるのでしょうW
「無意識の証人」ジャンリーコ・カロフィーリオ(文藝春秋) 妻に逃げられて以来精神不安定で生きる意欲を失くしていた弁護士 グイードは少年を誘拐し殺した容疑をかけられた黒人男性の弁護を 引き受けることになる。己の抱える問題に悩みながらもグイードは 裁判に臨んでいく。 ディーヴァー絶賛の駄作。まず第一章が不要。この程度のことは 第二章に織り交ぜれば事足りる。それから本筋に関係ない観念的な 場面が所々に挿入されていて興を削ぐ。見せ場であるはずの法廷シーンも プロとは思えぬ躍動感の無さ。長々と証人の心理状態について 話してたりしてどさまぎに自説を垂れ流してるだけみたいな印象。 読んで損した。
640 :
名無しのオプ :2007/12/21(金) 01:42:26 ID:233G+REd
641 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2007/12/22(土) 16:53:49 ID:hIphPIKf
マイクル・イネス『アララテのアプルビイ』を読んだ。 冒頭は、船上を舞台にしたミステリと思わせて、非常に予想外の展開を見せる アプルビイ・シリーズの異色作である。 正直言うて、本格ミステリとしての面白さはゼロだが、 そもそもそれを意図していない作である。 英国は冒険小説もお家芸とする国だが、漂流、原住民の襲撃、宝探しの秘密、 スパイ、戦争の影等の伝統的な冒険小説ではおなじみの要素を盛り沢山にした作を、 極めて我流で文学趣味と機知に富んだ作風になっているとはいえ、イネスが書いていたという意外感は大きいものがある。 爽やかだが本格ミステリと異なり知性のきらめきという点では分が悪い冒険小説だが、 オクスフォード出身なプロフェッサーであるマイクルの『漏れならこう書く』という 意気込みが感じられはする。 細かい点だが、翻訳で気になったのは『リヴァイアサン』に『巨大魚。クジラという意味 もある。しばしば悪の象徴』との解説が付されているが(256頁)、 バイブルに由来するものである点にも触れておくべきであった。 読者の教養が読ませ、楽しませるという側面があるマイクル作品の場合、 こういった配慮には事欠くべきではなかろうかと思う。
642 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2007/12/23(日) 21:02:31 ID:MYHlwA5z
ロナルド・ノックス『サイロの死体』を読んだ。 著名な『陸橋殺人事件』は、謎解きミステリとは言うても癖のある変化球的作と 言い得るが、本作は怪奇、猟奇、エロ等の装飾が無いコテコテの英国本格探偵小説である。 最初は地味過ぎる設定、語りのテンポも緩く読むのが辛い面もあれど、 トリックはジョン級のものをかましてくれるゆえ、この点は十分に満足がゆくし、 謎解き部分における『手がかり索引』という手法も読者への挑戦とは異なる趣向で 面白いものがある。
643 :
名無しのオプ :2007/12/23(日) 21:18:30 ID:QeAjOkl4
読むならクイーン読んで出題に回答するべきだろお前はw
644 :
名無しのオプ :2007/12/23(日) 23:41:10 ID:Vl7WnzHQ
「ロナルド・ノックス」でぐぐってみたら、Wikiのページがトップにあったw
645 :
名無しのオプ :2007/12/24(月) 00:03:04 ID:g15bmCsw
それは別に珍しくないが
646 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2007/12/24(月) 12:05:17 ID:jsglOLPH
ジャック・ケルアック『オン・ザ・ロード』を新訳により再読した。 (旧訳の邦題は『路上』) 青春冒険小説とでも称すべき作であり、作品全体を覆う清新さは今も健在である。 米大陸を文字どおり西(西部・西海岸)へ行ったり、東(東部・東海岸)へ行ったり・・・ いつの時代にもこの手の作ではおなじみのドラッグもセクースも ミュージック(ビーバップ興隆の頃)も有りだが、大事件は皆無なストーリー、 ヒッチハイクとバイクという違いはあれど、 後の映画『イージー・ライダー』(69年公開)が念頭に浮かばずには置かないが、 本作の素材となった作者の米大陸放浪が40年代後半、作品の刊行が57年、 映画公開年にはジャックは鬼籍に入ってしまう。 キャプテン・アメリカたちの殺伐としたバイク放浪と比較して、ぼくとポン友デューイの ヒッチハイクは、なんともマターリ、まだ親切とホスピタリティが存在した 古き良きアメリカを感じさせるものがある。 そして時代は下り『ヒッチャー』(85年公開)に象徴されるようなヒッチハイク恐怖の 時代へとなってまう・・・ いずれの『時代』にも戦い続ける国メリケンの戦争の影を作品上に見るのは、 ひとり私だけではなかろう。 (言うまでもなく、ロードには第2次大戦、イージーにはヴェトナム戦争、 ヒッチには冷戦終結期)
647 :
名無しのオプ :2007/12/24(月) 13:46:50 ID:is6pIosM
またパクリかwww
648 :
名無しのオプ :2007/12/24(月) 14:10:37 ID:XTSFZtv+
「ジャック・ケルアック」でぐぐってみたら、 トップにWikiのページが、 その次にアマゾンのページが、 あったw
649 :
名無しのオプ :2007/12/24(月) 14:20:38 ID:XTSFZtv+
でもって、アマゾンのページにアクセスしてみたら、 「オン・ザ・ロード」が一番上に、 「路上」が二番目に、あったw 偶然だとしたら、ものすごいなw
650 :
名無しのオプ :2007/12/24(月) 17:15:45 ID:pQOa+t1l
<いないいないバーカ>
ケン・フォレット『針の眼』(1996改訳、新潮文庫)【8.5点】 大戦末期、ドイツ軍劣勢を覆す情報を掴んだ冷酷なスパイ(暗号名“針”)。 ロンドンを脱出しドイツへ向かう“針”と、英国情報部との暗闘は、 嵐の孤島で決着を迎えようとする。 フォレットの出世作を読んでみた。序盤から一気読みの面白さで、 これを29歳で書いたという作者にびっくり。Dデイを背景としたスパイ物で 題材的にはそれほど独自性はないが、孤島に住む若夫婦を事件に絡ませることで 物語を奥深くしている。 “針”の人物造形やエピソードにもうちょっと厚みがほしかったし、 ラストもちょっとあっけない気もするが、名作と呼ばれているのも納得。
652 :
名無しのオプ :2007/12/31(月) 21:33:22 ID:l//hlFiM
「オールダリー荘」シリーズの第三弾、ジェームズ・アンダースンの “The Affair of the 39 Cufflinks” を読んだ。 2度の殺人事件の後、「オールダリー荘にはいにしえのジプシーの呪いがかけられている」 とまで書きたてられて、今後、ハウスパーティーは開かないと宣言するバーフォード伯爵。 しかし、大伯母の葬儀と遺言状の公開のために、ソーンダーズ家の親戚たちが集まったその晩 またもや事件が。 登場するのは、犬猿の仲の国会議員と勅選弁護士、アメリカ帰りのファッションジャーナリスト、 いたずら好きの青年、おつむの軽いブロンド娘、継母にこき使われてきた故人の孫娘等々。 おなじみウィルキンズ主任警部が、犯行現場にばらまかれた39個のカフリンクの謎や 倒れた甲冑像の謎、盗まれた歯磨きチューブの謎などに挑む。 もちろん令嬢ジェリーもウィルキンスと探偵の腕を競う。 バーフォード伯爵の怪しげな行動ははたして殺人事件のストレスゆえか。 登場人物は、被害者を除いて憎めない人ばかりだが、それぞれに秘密を抱えていて それが明らかになっていく過程が楽しい。笑っているうちに、事態は緊迫していく。 前の作品(「切り裂かれたミンクコート事件」)から22年を経て書かれた本作だが、物語の中では ほんの数カ月しかたっていない。 作品としては3作中一番出来がいいように思う。 とにかく楽しくて、あっという間に読み終えた。 そのうち翻訳されるだろうが、英語も難しくないので、前作が気に入った人は原書で読んでみては。 伯爵には気の毒だが、ぜひ第四弾がでてほしいものだ。
653 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/01/02(水) 19:57:49 ID:mLA4FooI
スラヴォミール・ラウイッツ『脱出記 シベリアからインドまで歩いた男たち』を読んだ。 副題からもわかるとおり、まあ凄まじいまでの冒険ドキュメントである。 第2次大戦中、シベリアの強制収容所から脱走した著者(『終わりに』に記されているが、 正確には語り部)と六人の仲間、途中、孤児となったポーランド人少女も加わった七人は 自由の地英国統治下インドを目指し、逃げに逃げまくる・・・ フョードルの『罪と罰』や『死の家の記録』の舞台となった北シベリアから、あの『アーロン収容所』 の舞台ビルマ(ミャンマー)の隣国にまで及ぶのだから、そのスケールと苦難の大きさが推し測れ ようというものである。 筆者は、ハガードの冒険小説等に関して、秘境冒険小説的要素が全体の前半あるいは 3分の1程度にとどまる点につき不満を述べたことがあるが、時代を大きく下るとはいえ、 意外にもノンフィクションである本書によって十二分以上にその欲求を満たされる結果と なったのは意外であった。 本書の場合、全23章中14章がその逃避行の経緯の記述に当てられており、 極寒のシベリア縦断、酷暑のゴビ砂漠縦断、峻険なヒマラヤ越え(このリアルな書の終盤になって 雪男目撃談が登場するのには意外感があったが、このエピがあったがため本書刊行の契機と なったことが訳者あとがきに記されている)等々、 まさに息もつかせぬ展開の連続である。
654 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/01/02(水) 19:58:28 ID:mLA4FooI
また、前半も拘置所における凄惨な拷問(右の歯を叩き折られ、バランスを取ると称して 反対側の歯まで叩き折られるシーン、キシュカという立ちっ放しの独房への幽閉シーン等)、 家畜車両に押し込まれての強制所への大移動、その後のシベリア死の行進とでも称すべき 雪中シーン等迫力溢れる場面の連続であり、日本語訳で活字上下2段組あるいは 上・下巻分冊になるほど詳説しても良かったのではないかと思われるほどの重みがある 内容となっている。 (『はじめに』には『この本に書いた物語は、、いまは昔の1945年に私が片言の英語で、 最初は妻に向かって話し、その後ほかの人に話したことを、ごく短く約めたものである』 と記されている) ただし、読んでいて疑問に感じた部分も無くはない。 ・氷結したシベリアの河に落ちるシーンがあるが、ハートアタックや凍傷になってしまうのでは ないか? ・装備無しでゴビ砂漠やヒマラヤ山脈越えというのは現実的に可能性はあるのか? 等である。
655 :
名無しのオプ :2008/01/02(水) 21:33:21 ID:b9ytbZJM
パクリ感想乙
656 :
名無しのオプ :2008/01/02(水) 22:05:02 ID:mqn91Wvj
さすが書斎のセレクトは一味違う。 今年も楽しみに読ませてもらいます。
657 :
名無しのオプ :2008/01/02(水) 22:19:08 ID:AtTwbwOO
同感です。本当にすごいよ。新年から感激です。
658 :
名無しのオプ :2008/01/02(水) 22:59:31 ID:aUGZgGOI
自分で声援乙
659 :
名無しのオプ :2008/01/03(木) 06:06:09 ID:7UJ6eiSR
660 :
名無しのオプ :2008/01/05(土) 19:27:29 ID:6pPl8EC2
>>651 「針の目」が面白かったなら同じ作者の「鴉よ闇へ翔べ」もおススメ。
同じくDデイ裏話ものなんだが、いろいろな特技と経歴を持った6人の
訳ありの女たちが占領下のフランスに密かに潜入する、
という粗筋を聞くだけで「ナバロンの要塞」や「特攻大作戦」を想起して
期待に胸躍らせる人であれば読んで損はないと思う。
ちなみにフォレットは上記2作しか読んでないけど、「大聖堂」は面白いらしいね。
読むかどうかは判らないが。
661 :
651 :2008/01/05(土) 23:47:54 ID:M4MC3l8O
>>660 >「鴉よ闇へ翔べ」もおススメ。
あ、ちょうどそれ探してるところ
(びんぼ人なので主に古本派(ノ∀`) )。
初フォレットは『大聖堂』で、すごくおもしろかったよ。
ちょっと長いけど。
662 :
名無しのオプ :2008/01/09(水) 21:05:46 ID:oeQTVhEP
大聖堂、上巻最後のメ欄が苦痛で、ここから先がどうにも読めないんです。 おもしろいと評判なので、読まないのはもったいないかとは思うんですが。
「警視の接吻」デボラ・クロンビー(講談社) 人生に大きな転機を迎えることになったダンカンはジェマとの間に 溝を感じる様になる。そんなとき公園で美女の他殺体が発見され、 二人は地元警察と共に捜査に当たるが、浮かんで来た容疑者の中には ジェマの心を騒がす人物が……。 シリーズ第6作。最長かも知れないが、ミステリーとしての密度は あまり感じなかった。前作から変化を予期させていた二人の関係を シリーズとして見ていくのが正しい読み方なのかな。 ただジェマの酊露滅鬼がやっつけぽかったのが残念。折角長いのに。
「強盗こそ、われらが宿命 上・下」チャック・ホーガン(ヴィレッジブックス) 地元の仲間とつるんで強盗を繰り返していたダグは、ある時 押し入った銀行の支店長クレアにあろうことか一目惚れしてしまう。 情報収集にかこつけて彼女に近付いたダグはやがて恋人として 付き合うようになる。しかし事件を追うFBI捜査官フローリーは ダグ達に目星を付け、少しずつ輪を狭めていく。そして彼もまた 事情聴取したクレアに好意を抱いていた。恋人と生きるため ダグの取るべき道とは? あけまちんこおめでたまきんことしもよろしくとりいみゆきとけこんしたい ロマンススレで紹介されていたけどちっとも食い付きがなく、 保守的なスレだからなぁと思っていたところが読んだ上では あそこには合わないとの結論に。 ロマンス的には二人のシーンが思ったより少ないし、ヒロインが 主人公に釣り合ってない。結局主人公の潜在的な願いの一部としての “女性”が実体化しただけという感じ。ただミステリー的には (メル欄)という解釈も出来んこたないかも? 他に気付いたのは主人公の立場からみた“悪人”の数が少ない ということ。個人主義のアメ公にしちゃあ珍しい主人公。 別にお奨めはしない。
665 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/01/13(日) 21:16:17 ID:lJni/5CL
フィッリップ・マクドナルド『フライアーズ・パードン館の謎』を読んだ。 売れっ子女流作家が曰く因縁付きの屋敷の密室状態で謎の溺死を遂げた。 地元警察さえ超自然現象という結論に傾いていくのだが・・・ と俺が書くと面白そうではあるが、結論を言えば、現代において読む価値無し。 謎解きミステリ好きなら、アーヤやアリスの作を読んだ方がよかろう。 凶器(?)の処分にかろうじて面白さが感じられ、関係者一堂を会した名探偵の謎解きならぬ 降霊会という趣向は異色なものの、見え見えな犯人、安手なロマンスの導入等頂けない要素多し。 登場時点では探偵役はハードボイルドを想起させるようなクールな感じで良いのだが、 後半は古典的なナイト化してメロメロでがっくりさせられるのもマイナス評価大。
666 :
名無しのオプ :2008/01/16(水) 08:54:06 ID:eQv+PTQR
某掲示板の感想文。 「一言で言えば失敗作」 読みが浅い自分をさしおいて、 よくも簡単に書けるなあ___
「殺意の海へ」バーナード・コーンウェル(早川書房) 戦地で銃弾を浴び下半身不随となったヨット乗りニック。 彼は必死のリハビリで何とか歩けるまでに回復するが、2年ぶりで 戻った港には愛する船の変わり果てた姿があった。船の修理費用のため 自らのドキュメンタリー番組の制作を承諾したニックだったが、 それが国の行く末に関わる騒動に巻き込まれる端緒であった……。 雨様のエッセイに脅されて読めなかった幾星霜。「興奮」みたいなのを 読みたいとの思いが強まり漸く読んだがまあ主人公の気の毒なこと。 虐げられ殴られ貶められ舐められ騙され裏切られ踊らされ寝取られと マゾ大喜びの一冊。フランシスよりフランシスらしいんじゃないか。 冒険小説としても見事な出来。勧善懲悪やハッピーエンドを 覆えるだけの読み応えがある。著者初の現代もので、 その小慣れてないことが重厚さに繋がってるんじゃないかと。 後の『ロセンデール家の嵐』はもっと角が取れて丸くなってたもの。 読むのはその方が楽だけどね。 時々読みたい作家だ。
668 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/01/19(土) 14:00:20 ID:rbKU2/9L
シーバリー・クイン『グランダンの怪奇事件簿』を読んだ。 ワセミスの仁賀克雄氏(昔から怪奇・幻想作品のアンソロジスとしても著名)が 監修するコレクションの1冊、名探偵に相当するキャラは登場するとはいえ、 実態は怪奇小説そのもの、この板で紹介するのが少し躊躇されるぐらいである。 獣人、吸血鬼、悪魔、ルー・ガルー・・・全て怪奇は怪奇のまま描かれ、そして解決される。 これは掲載誌がWTゆえ、当然といえば当然か。 今読むと、漫画的な作が多く(「死人の手」「ウォーバーグ・タンタヴァルの悪戯」などは 笑うしかないような展開の典型と言い得る)、 この点では、少年誌のホラー漫画を愛読しているような輩には最適な読物と言えるやもしれぬ。 探偵役の仏人ジュール・ド・グランダン(医師・大学教授そしてファントム・ファイター)は、 ポワロもどきに会話にフランス語をまじえる(この部分の訳は読み難く、ストーリーの勢いを殺ぐ というデメリットあり)ファンキーなオヤジ、暗く、重くなりがちな物語群の救いになってはいる。 なお、著者略歴を見ると、ワシントン生まれ、ワシントン国立大学(現 ジョージ・ワシントン大学) ロースクール卒の弁護士、第1次大戦に従軍後、葬儀社の法律顧問、業界誌編集、法医学教授 を勤めるとある。オカルトに関する薀蓄に学識を感じさせる部分があるとはいえ、 学歴、キャリア共に十分に地元の名士と言うてよい人物がこんな漫画ちっくな作を書いていた というのにも驚いた。
669 :
名無しのオプ :2008/01/19(土) 19:32:38 ID:IeJOy/if
670 :
うざいと思いますが最終日なので宣伝させてください :2008/01/20(日) 04:08:28 ID:uiTOqtHV
2007年のベストミステリを投票で決める「2chが選ぶこのミステリーがすごい!」スレ
本日投票最終日です。まだ未投票の方は、ぜひ参加してください。
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1166286465/ 【以下のルールを守ってください】
・投票スレの
>>1-3 は無視してください。
・対象作品は奥付表記で2006年11月〜2007年10月の期限内に発行された広義のミステリー作品。
・6作品以内で順位をつけて投票すること。
・必ずしも6作挙げる必要はない。1作のみでも投票可とするが、上記に書いてるように順位はつけること。
・1位=10点、2位=9点〜6位=5点で集計。
・国内作品と海外作品は別々に投票する。
・一行以上の総評必須(ネタバレ禁止)
・宝島社の作品は対象内
テンプレです
1位,
2位,
3位,
4位,
5位,
6位,
<総評>
671 :
名無しのオプ :2008/01/20(日) 10:56:06 ID:h8Bh5YaL
>>668 漫画・怪奇物=低級 ミステリー=高級
開いた口がふさがらない浅薄な脳味噌の持ち主であることが一目でわかる
好文だな。それで自分が高級だと思ってるのが漫画にも使えんほど漫画的だわ。
(なにも仁賀本を持ち上げようってんじゃないが、こういうバカ見ると虫唾走るってだけ)
672 :
名無しのオプ :2008/01/20(日) 11:14:54 ID:Yu7OGiy/
放置がいちばん。
「クロエへの挽歌」マージェリー・アリンガム(新樹社) 私立探偵キャンピオンは頻発する嫌がらせに悩む売れっ子俳優 ステインから相談を受ける。訪れた彼の邸宅で癖のある女優 クロエや他の関係者達と顔を合わせたキャンピオンはステインの 妻リンダに穏やかならざる想いを抱く。その夜屋敷でリンダと 語らっていたキャンピオンの所へ慌てた様子のステインが現れ 人を殺したと告白する……。 「まだかクロエ!」「今読んでます!」 一昨年の年末は『屍衣の流行』を読んでたからおよそ一年ぶりか。 なんつーか、こう、探偵がストーリーを追って行くだけで あまり推理しないのがなぁ。心中チラチラおもんみるだけじゃなくて もうちょっと物証に基づいた演繹的な推理を開陳して欲しい。 あと小説の技巧として、見せ方が中途半端。これが例えばクロフツの 某作品みたいに力を入れて書いてあればもっと驚けたと思う。
マイクル・コナリー『ナイト・ホークス』 (上下、扶桑社ミステリー1992)【7.5点】 湖近くのパイプから発見された死体。ハリウッド署殺人課刑事のボッシュは、 被害者がベトナム時代の戦友だと知る。死体にいくつかの不審点を発見した ボッシュは、大掛かりな銀行強盗の事件で動くFBI、さらには警察組織の 監察官がボッシュを阻む。シリーズ第一弾。 世評高いシリーズに挑戦。一匹狼でベトナム時代の古傷を抱えるボッシュと、 FBI女捜査官のエレノアとの関係など、なかなか好調な滑り出し。捜査は 意外とオーソドックスな感じだが、伏線のばらまきも上手い。ディーヴァーや 逢坂剛的なあざとい意外性はないものの、つぼを押さえたテクニック。 終盤の展開はあるていど予想できたが、今後ボッシュがどのような運命を たどるのか楽しみ。
「ナツメグの味」ジョン・コリア(河出書房新社) 短編集。初訪韓だが“これぞ奇妙な味!”てな感じでハマれた。 『頼みの綱』や『魔王とジョージとロージー』の世界観とか好きだわ〜。 あと本書は“悪魔との対決”ものが多いのが特徴なんだけど、 この趣旨のアンソロジーってあるのだろうか? とふと思った。 一番印象に残ったのは『遅すぎた来訪』。ある階段の絵みたいな話。 コリア他のも読まんとなぁ。
676 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/01/26(土) 22:08:09 ID:C5R8q2+3
ハリントン・へクスト「テンプラー家の惨劇」を読んだ。 本名フィルポッツことアガサん家の隣の家のオサーンの作である。 邦題から「Yの悲劇」や横溝作品の如き怪奇探偵小説を期待すると、 大きく裏切られる。 フィルポッツ名義の「闇からの声」や「灰色の部屋」を見ればわかるとおり、 決して怪奇性等を忌避する作家ではないのだが、本作ではこの手の要素は皆無であり、 また、美少女は登場するものの、時代性もあって「萌え」の強調はあり得ない。 つまり、本作の実態は犯罪小説ちゅーか、終盤の犯人の一人語りが象徴的に示すように、 犯罪者小説とでも称すべきものであり、作者の主眼は謎解きなどではなくして、 (従って、犯人はすぐに見当がついてしまう構成である) 一種特異なキャラである犯人という「人間」を描くことにあると言い得る。 (この点では、不自然なまでに謎解きに傾斜した低俗なミステリよりは、はるかに「文学」に 近いものではある) しかしながら、作者十八番の田園小説のタッチによる悠々とし過ぎた語りは、21世紀の現代に マッチしたものとは言い得ず、ある種異様とも言い得るオタを除いて到底受け入れられるものでは なかろう。
677 :
名無しのオプ :2008/01/27(日) 14:23:47 ID:O1YWk8ac
つまらん
「ペンローズ失踪事件」R・オースティン・フリーマン(長崎出版) 骨董品収集家ペンローズが黙って出かけたきり行方知れずとなった。 彼はジャンルを問わず手当たり次第にコレクションを増やしている変人で 失踪後には何者かが保管室に侵入した形跡も発見された。 捜査を始めた警察はペンローズらしき男が怪我をして病院に運ばれたこと、そして 彼の車とその車に轢かれたと見られる死体を発見するが――。 短編と違ってこの人の長編はどうも残念な印象が拭えないのだが、 今回は失踪者の行く先を突き止めるというやや異色のストーリーで 掴みはOK。しかも相手は途中でアクシデントに見舞われており、 そのイレギュラー要素を物証主義のソーンダイクがどう処理するのか? とか引きは十分にあった。ただ読み終ってみるとフーダニット興味が 弱いのと、ペンローズの事件への関わり方に不満が残った。 まあ今まで読んだ長編の内ではマシな方かな。 しかし第一部は誰に対して?
「フランクフルトへの乗客」アガサ・クリスティ(早川書房) 呑気な外交官スタフォードは空港の待合室で出会った美女から懇願され 訳も分からないままパスポートとマントを貸してしまう。そして帰国後、 スタフォードは何者かに度々命を狙われるようになる。 その背後に潜むものとは……? うわぁ駄作じゃん。巻き込まれ型はお得意のはずなのに老耄したのか。 登場人物が延々抽象的な話ばかりして事件の背景が中々見えてこない。 恐らく当時隆盛だった韜晦趣味が横溢したエスピオナージュを 意識したのだろうが“元”が提示されないからただ空白なだけ。 だからやがて背景が見えて来ても不自然な印象を受けてしまう。 そして終盤、怒涛のやっつけ展開には目が点になる暇もない。 大体タイトルからしてズレてるもん。 後この主人公迂濶過ぎ。こんな奴即クビだろ。
680 :
書斎魔神 ◆vVXVsEKCZ. :2008/02/02(土) 21:05:35 ID:q4TTE16e
A・A・ミルン「四日間の不思議」を読んだ。 喩えていえば、品が良い赤川次郎といった感がある作である。 突然な叔母の事故死、 姪っ子ジェニーのちょっとした工作により事態は警察も巻き込んで大紛糾へ・・・ 正攻法な謎解きミステリの面白さを狙った作ではないためこの点の面白さは皆無であり、 ラストも見えている。また、本格ミステリのパスティーシュやパロディとしての趣向はあるものの、 アントニイ作品のようなビターなテーストではないため、この点の刺激も乏しい。 ならば、「本作はつまらないのか?」と問われれば、「さほどにもあらず」との答えになろう。 プーさんの作者らしいミステリ仕立ての現代メルヘンと把握し、アホなねらー風に言えば マターリ、マターリ・・・とその雰囲気を楽しめばOKかと思う。 ヒロインのデンパがかった美少女(ミステリも好き(w )ジェニー、同類の友人ナンシーと アニメ化したら活きそうなキャラである。 ただし、男性キャラ陣がピザでチビの流行作家アーチボルト、 彼の弟でヒーロー役のデリク(売れない画家)も30男、殺人事件の経験不足で迷走ばかりの マリゴールド警部等、ビジュアル的には弱いものがある。 この点の修整が要(デリクをビヨルン・アンデルセン風な美少年に設定する)か。 (ただし、ジェニーがデリクに惹かれるのは父性への憧憬(父親は逝去)もありそうで、 この辺のテーマが崩れてしまうが)
681 :
書斎魔神 ◆vVXVsEKCZ. :2008/02/02(土) 21:06:17 ID:q4TTE16e
ピーター・チェイニー『この男危険につき』を読んだ。 ハードボイルド風のノワールといった感がある作、人死が多いハードな展開ながら、 軽快なタッチのため、カーター・ブラウンほどではないが、気軽に読み飛ばせる。 ということは、ハードカバーで出すまでもなく、ペーパーバックに相当する新書あたりが 作品の格・雰囲気共に妥当ということなのだが。 現代では壊滅状態とはいえ、本作の作者チェイニーと並んでフランスで人気があった ハドリー・チェイスが、本邦ではスピレインブームが落ち着いた60〜70年代において、 刊行点数(殆どが創元推理文庫)等を見ても、翻訳通俗ハードボイルドの旗手と言い得る 時代がある。これに比較して、チェイニー作品の不遇さが目立つのはなぜか? 独自性を気取った読み難い文体で、内容的には大部分が事実・資料紹介にとどまっている 解説には大きな不満が残る。(名翻訳家にして粋な趣味人である田中小実昌氏をコミさんと 書くのも頂けない。自身の分を知れという感がある) チェイスにも言及するのであれば、本邦におけるこの辺の事情に触れてこそ意味があるのである。 ここは是非、小鷹信光御大の御出馬を願いたいところだったのだが、やはり予算の関係だろうか? (なあ、筆者は氏がチェイニーに関して書いているのを目にした記憶がない)
682 :
名無しのオプ :2008/02/02(土) 21:22:06 ID:r7x3lR+3
なあw
683 :
書斎魔神 ◆vVXVsEKCZ. :2008/02/09(土) 18:22:15 ID:3125sX7L
アントニイ・ギルバート『薪小屋の秘密』を読んだ。 ヒッチにより映画化(ただし、大幅に脚色)もされたフランシスの古典を想起させる青髭もの、 幽霊話も絡ませた怪奇探偵小説風の設定が期待を持たせるが、正直言うて期待外れな作、 97年の刊行だが、この後、この著者の作品翻訳が途絶えたのは致し方あるまい。 特に作者にはサスペンス盛り上げの意図があったのであろうが、 終盤の「ひっかけ」は今時は安手のテレビドラマでもやらないネタであり、がっかりさせられること この上ないものがあった。 茶色尽くめな弁護士探偵クルックは類が無い面白く個性的なキャラだし、 アガサ・クリスティ(ヒロインの名もアガサ)の名が出たり、おなじみシャーロックの格言(?)が 出て来たりとお遊びも楽しめる面はあるのだが、いかんせんメーンとなる謎が小粒過ぎる感があり、 これで邦訳300頁以上を繋ぐのはきついものがある。 250頁前後(邦訳換算)で収めれば、もう少しシャープなサスペンス・ミステリとして楽しめるものと なったかと思う。 ヒロイン像(孤独な中年女性)をはじめ、ロンドンのハイアウォサ・クラブの面々、 バディス荘の住人、そして家政婦ミセス・ハート等の登場する女性たちの姿が活写されている点を 評価する手もあるが、(つまりミステリにしては「人間」が書けているということ。あくまでミステリに してはということだが・・・)、くどい性格描写がミステリとしてテンポを阻害している恨みもある。
684 :
名無しのオプ :2008/02/09(土) 18:41:37 ID:FzmZefy8
「そして誰もいなくなった」から「スリーピング・マーダー」まで ハヤカワ・ミステリ文庫のクリスティ作品85作を全部読破した俺だが、 確かにフランクフルトが一番駄目だった。
685 :
名無しのオプ :2008/02/09(土) 18:49:07 ID:8I+4p2WD
>>684 全部読んだわけでないけど、読んだうちでは確かに駄作。
まあその最低水準レベルでも結構楽しんで読んだのだけど
686 :
名無しのオプ :2008/02/09(土) 19:05:37 ID:mcfr50Sj
>>684 同感。
そして二番目が「運命の裏木戸」。
687 :
名無しのオプ :2008/02/09(土) 19:52:02 ID:bAM+ndSv
俺は複数の時計かな つーかクリスティスレでやれよw
688 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/02/10(日) 20:37:59 ID:90wUJtbk
ジョンスレで低評価ゆえ、久々にJ・Dカー『喉切り隊長』を再読してみた。 うーん、謎解きミステリとしてはアレだが、 (特に一見不可能犯罪に見える柵内の兵士殺しのトリックはジョンにしては単純過ぎ) 「あの男」をラスボスというオチは西洋時代小説として読めば驚愕、 かつ、楽しいものではなかろうか ただし、西洋チャンバラを目玉にした「ビロードの悪魔」等と比較して、 アランとハンスのガチンコ勝負がない点などは不満も残ろう。 アランの諜報活動にも筆を割いたジョンらしからぬエスピオナージ的要素も 色濃い作だが、このため喉切り隊長捜索はメーンストーリーのひとつに過ぎないのが残念、 ここに焦点を置き、連続殺人者が暗躍する陣営における探偵談を中心としても、 非常にスリリングな作に仕上がったのではなかろうか。 ナポレオン戦争を背景に、ボニー御本人や怪人(?)フーシェ大臣が真の主人公とも見え、 熱い男たちの葛藤に絞って書いてもOKだったような作なのだが、 「・・・薄地の絹でつくった、ハイ・ウェストの夜会服を着ていたが、その下には、ほとんどなにもつけていない・・」という状態で全編活躍するマドレーヌ(アランの妻)、 直接描写はないものの、作品中で入浴するエキゾチックな美人スパイのイダ、 可愛い系キャラのルーシー(ホープウェル夫人)、年増系美人アンジェールと 女性キャラによる彩りは満載(注 野村萬斎ではない(w ) 55年という時代の制約もあってお色気シーンは抑制気味だが、ジョンのサービス精神、 ある種の好き者ぶりが伺える。
689 :
名無しのオプ :2008/02/11(月) 10:55:15 ID:JLGk/6/9
>>683 書斎はアントニイ・ギルバートという作家が分ってないな
A・ギルバートは基本的に純粋サスペンス小説を書こうとはしていない
あくまでも本格の作家だ
ただし歪んだ展開を見せる本格だけど
「薪小屋」にしてもサスペンス小説を書こうとして後半にオチを付け足した訳じゃない
最初から前半を青髭ものに見せかけているのは計算づくで
途中から普通の本格とは違う変な物語展開をしていくというのは
この作者の得意なパターンだ
「正義の四人/ロンドン大包囲網」エドガー・ウォーレス(長崎出版) 英外相に送り付けられた脅迫状。それには犯罪者引渡法案を 廃案しなければ殺すと書かれていた。送り主は世直しと称して 世界中で殺人を繰り返すテロリスト四人組。強気にはねつける 大臣だったが、第2第3の脅迫状が舞い込み……。 多作家なのに翻訳は少ないウォーレスの新訳。何かの後書きで 本作は懸賞付で発表されたが正解が殺到して版元アボーンと 紹介されてたがそういうタイプの話じゃないっぽいが……。 狙う側と狙われる側が交互に描かれスリリングな雰囲気を 演出しようとしているが、ヘマがヘマなのかヘマじゃないのか はっきりしない書き方のためイマイチエキサイトしなかった。 ラストの殺人方法は中々良かったかな。 しかしこの当時の防犯装置ってどんな仕組みなんだろう? 本書で第1期は終了したわけだが、装丁の謎解きが載ってなかった。
「切り裂かれたミンクコート事件」ジェームズ・アンダースン(扶桑社) 映画に目覚めたバーフォード伯爵はオールダリー荘をロケ地として 提供することにした。関係者が下見にやってくる週末、ちょうど 夫人の従姉妹夫婦も来ることになり、お転婆娘ジュリーは接待役として 2人のボーイフレンドを呼ぶ。さらに土壇場の客も舞い込んで来て 館は賑やかな週末を迎えることになるが、2日目の夜、再び 殺人の幕が――。 つい2作目から読んでしまったがネタバレは……それっぽいかなってのが 1ヶ所だけ(泣。 500後半と長めで、登場人物達の行動が細かく 描かれているが、伏線の香りを撒き散らしているので冗長に感じられず むしろ読みやすかった。 終盤の展開がややあざとく感じられ、フーダニットも難易度はそう 高くないが、まとまりはあって完成度は高いと思う。 当時は有名俳優と下層階級が普通に一つ屋根の下で過ごせたのかぁ。
「死を招く航海」パトリック・クェンティン(新樹社) 病気療養の為単身客船に乗り込んだ女性記者メアリは、残して来た 婚約者宛てに日記を書き始める。微に入り細をうがったその日記には やがて恐怖に彩られた事件の顛末が綴られることになるのだった……。 パトQの初めて読む本格は書簡体小説。富豪が毒殺され、存在しない 男の影がちらつくという話。「このページには重大な手掛りが!」 みたいなヒント表示もあり(ちなみに自分は「これだ!」と思ってた所、 見事にレパルスしたorz)。他にも人物位置やコントラクト・ ブリッジなるゲームの推移が図解されているのだが、巻末のルールを みてもはぁ〜さっぱりさっぱり〜。ま、こういうのって往々にして 大雑把な理解で良いことが多い気がするけどね。 作中で強調してある様に序盤のヒントに気付くかが犯人指摘の決め手に なるわけだけれど、負け惜しみじゃないがこれどうかな〜? 翻訳のせいかも知れないがちょっと決め手としては足りないと思う。 他には日記というより手紙の束みたいだとか、その他大勢の客に 殺人を秘すのは無理じゃないかとかいう点が気になった。
693 :
名無しのオプ :2008/02/18(月) 01:15:44 ID:ZjDpa/sa
ー−−−−−−−− | │ ◎│ | │ │ | ◎ │ │ │,.‐''"´ ̄ ̄``'‐.、 ,i ノ ,-、 ,.‐, \/ i´`、 / ││ ," | ヽ , 、 | i, │ ││ | | │ ノ ) i、 L、_ / ノ ,i `-´ │ ノ ノ、 ,i´ i,- ) Λ (_ ノ Λ / つ/ ) ( /´ヽ / / |\ Λ ヽ ( ``) ``、 `、 │ |│`'‐.、 ____,.,‐''´| | │ > i'' `:、 ヽ │ | | |_ノ、ノ i_ ノ-;´ノ │ / / ヽ ヽ │ | ゙i ̄ /  ̄\ / / / / / ゙i ゙i \`、゙i/ `v´ / ノ / / ゙i ゙i ゙ヽ ゙i、 / /"´ ノ / ゙i ゙i ヽ \__/| / / / ゙i `、 ヽ.ノ ノ / ` ``'--‐''" ‐''" ボッボッボクチン♪ 書斎魔神! プ〜
694 :
名無しのオプ :2008/02/20(水) 21:34:51 ID:hI4rasKl
ポケミス板が落ちたようだな まあ作品の感想はこっちで書けばいいか
695 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/02/23(土) 23:06:51 ID:jTHfnF/I
ウィルキー・コリンズ『白衣の女』を読んだ。 ミステリというよりは「スリラー」と称すのがふさわしい作。 ジョン・スレだったか、本作を面白いとか書いている不見識な者がいたが、 大時代的に過ぎる点は致し方ないにしても、極端な偶然性(その後のストーリーに不可欠な 物語の発端からして「これ」であり、白けることこの上ない)に支えられ、 見え見えなラストに至る展開は、到底、現代人の鑑賞に堪えるものではないと言い得る。 結局、当時としてはヒーロー&ヒロインの結末は「あれ」しかないのであって、 それに至る二転三転するジェットコースター的ストーリー展開を味わうべきなのであろうか。 であるのであれば、本作を評価する輩に私は言いたい。 「富士急ハイランドのジェットコースターでも乗ってろや(w 」と。
696 :
名無しのオプ :2008/02/23(土) 23:44:14 ID:MZ9wmGPB
>>694 もう一回立ててもいいかな?
感想だけでもないし
697 :
名無しのオプ :2008/02/24(日) 00:35:36 ID:nAhfBkqN
イラネ 海外は古典もそれ以外もスレあるし
698 :
名無しのオプ :2008/02/24(日) 00:49:18 ID:VkJRNkbw
富士急ハイランドのガンダム・ザ・ライドに乗って絶叫しすぎて、 酸素欠乏症になってしまった書斎魔神w
699 :
名無しのオプ :2008/02/24(日) 09:24:46 ID:YquhWQb+
>>695 様は「結論はわかっているから読む価値なし」ってことか。
そういう頭の悪い評価しかできないから八流にも値しないんだよ君はw
それにあの程度の展開スピードがジェットコースターねえ・・・
よっぽど小説というものを読みつけていないんだな八流クンは。
それとも自分の知らない本をあっさり取り上げることのできるカースレ住人に嫉妬して
とにかく貶してやろうというミジメで幼稚な嫌がらせが目的なのかい?
どちらにせよ「白衣の女」をたった一日で読みきれるかどうか考えてからレスするべきだったねw
700 :
名無しのオプ :2008/02/24(日) 14:25:17 ID:yFOQZtHS
コピペやめろ糞書斎
701 :
名無しのオプ :2008/02/24(日) 21:17:13 ID:+kQmv7uH
「ロジャー・マーガトロイドのしわざ」ギルバート・アデア(早川書房) 吹雪の山荘で雑誌記者が殺された。被害者は他のメンバー全員から 反感を買っていたが、殺人現場は密室状態であった。山荘の主人は 近くに住んでいる元警部を呼び、疑似捜査が始まった――。 舞台設定が不十分でなあ。密室トリックは取るに足らんもので、 それ以外にしてもやや大まかに言えば国内に先例がある。厳密には 違うけども、それにしたって強引で作り込みが甘い。防御のために (メル欄1)必要性が無いし、仮にあるとしても(メル欄2)なら 問題無いはず。 結局日本と違って本格がジャンルとして続いてるわけじゃなく、 時折気まぐれに書かれる程度だから全体としての精度も低く、 こうなってしまうのかも。もっとも、もっと各論的な古典と新本格との 違いに起因する問題かも知れないが。
「作者の死」ギルバート・アデア(早川書房) 名声を博した評論家の元に自伝を書きたいという女性が現れる。 自らを暴かれることに不快感を抱く評論家。そんな時、評論家の知人が殺害される事件が発生する。 何かよう解らんが究極のフーダニットととの煽りがあるからミステリーか? 事件が起こるのは半分過ぎてからだけど。 しかしこれを読んでこの作家の評価下がったなぁ。 まあ、去年出したミステリーの内容に淡い期待をしておく。
「記憶をなくして汽車の旅」コニス・リトル(東京創元社) 目を覚ました。 ここはどこ? 私は誰? どうやら汽車の中らしい。荷物を探ると数通の手紙が見つかった。 状況が掴み切れないまま私は途中で出会った親戚(?)や 偽の婚約者(?)と共にオーストラリア横断の旅を続けることに なるのだが、殺人事件が起きて容疑者になってしまい……。 44年作ということは立派な古典ですね。豪の作家と言えばヒューム、 マーシュ、アフォード、ブラウン、ロウ、ジェニングスを知ってる。 前二人未読。これを機に色々と紹介が進むと良いですね。 ただ本作の内容はイマイチでした。突端は「もうひとりのぼくの殺人」 みたいで惹かれるし、メルボルンからパースまで大平原の旅と いうのもロマンがあって良いけれども、ラストがかなり残念でした。 モロにHIBKな感じで……。それ早く言えよ!と。 いくらかあった謎が駆け足で解釈されているのも不満が残りました。 ともあれ、他作品が近刊らしいから、これ以上のものを期待しときます。
「死体が多すぎる」エリス・ピーターズ(社会思想社) 先王の逝去により後継者争いが勃発。シュールズベリの近くでも 城攻めが行われた。その犠牲者達を埋葬するべく城に入ったカドフェルは 死体の数が一体多いことに気づく。私的殺人の被害者が 紛れ込まされていたのか――。 発端の謎は良いがこれ、本来落ちなんだよなw そこから広げ様(閉じ様)が無いというか……。だからストーリーは 殺人よりも貴族の亡命に主眼が置かれているし、犯人を指摘するのも 論理によってどころか自白ですら無く唐突に決め手が出て来るという。 ロマンスについても描写不足でノれない。もっと面白味が無いとね。
「密偵ファルコ 青銅の翳り」リンゼイ・デイヴィス(光文社) 皇帝へ謀反を企んでいた貴族達の一人が殺された。容疑者は 同じ一味の家来とみられ、皇帝の密命を帯びたファルコは 地方に隠屯する他の一味へ警告するため旅に出る。 やっぱこっちのがオモロイな。カドフェルはストーリーが無い癖に 出ずっぱりだから密度が薄く感じられるのよね。その点こっちは ファルコのファルコによるファルコのための物語だからみっちり 読み込められる。 つうかヘレナタン(´Д`;)ハァハァ。 そらファルコンMにもなるわ。マルコ殿下もこの境地に到達すれば 随分楽になるのにw ぶっちゃけバカップルだと思うがそれもまた宜しからずや。 解説のラノベ作家はユマ・サーマンと言ってたが、小生は ガブリエル・アンウォーを推す。彼女正当派美人なのに何故か B級にばっか出て宝の持ち腐れなんだよなぁ。個性派と言って 不細工ばっか起用するハリウッドのフェミ偏重主義の犠牲者と言うか。 次点はシエナ・ギロリー。
「第四次元の小説」(小学館) 数学をテーマにした奇妙なアンソロジー。 文系の頭には細かい所はモンゴリアンダイナマイトだが、 大まかに見ると数学ネタありきでのアイデア小説が多くて ミステリー的にはもう一歩先の展開が欲しかったかな。
「漆黒の霊魂」オーダスト・ダーレス編(論創社) ホラー・アンソロジー。楽しく読んだ。こういうのはまずハズレがないね。 一部例外はあるけど。 一番怖かったのはホジスン「ミドル小島に棲むものは」。あと デニス・ロイド「緑の花瓶」も印象に残った。 スレッサーやボウモントも読むぞ。
「度胸」ディック・フランシス(早川書房) 若手騎手ロバートはある日同僚の自殺に出くわし衝撃を受ける。 死者には調教手との不和が囁かれていた。この事件を皮切りに他の 騎手達もトラブルに見舞われ勢いを失ってゆく。それはやがて 評判の良かったロバートの身にも振り掛って来るのだが……。 5作目にしてやっと「興奮」に近い筋立てに出会えた。ただあまりに 淡々と運び過ぎているきらいがある。もっと荒れていい。 ロマンスも大人しめで物足りないし犯行の杜惨さも気にかかる。 骨組みは良いのだが肉付けがイマイチ。次に期待。
710 :
名無しのオプ :2008/03/09(日) 17:25:12 ID:qF0qM3E+
「白衣の女」W・コリンズ(岩波文庫) これはスリラー小説であり、ミステリーとはちょっと違うけれど 広義のミステリーということでひとつ。 この小説は各章によって記述者が替わるという形式がとられており、 そのエピソードが起こったときその場にいた人物の日記や手記が用いられている。 この手法はこの作品にとってまさに最適なものであり、 記述者の感じた恐怖や危機感等が読者にダイレクトに伝わり 結末まで全く飽きさせない効果をあげている。 そしてその結末も、由緒正しき19世紀の大衆小説という感じで大へん結構でした。 ただしこの小説、良くも悪くも「19世紀の大衆小説」なので 人によっては退屈だと感じられるかもしれない。 現在のジェットコースター的スリラー&サスペンス小説に比べればやはり展開は遅いし、 ドンデン返しが乱発されるわけでもない。 しかも由緒正しき結末ということは、ある意味ありきたりでもあり、 「意外な結末」にこだわるような人はレベルが低いと見るかもしれない。 正直読書の幅があまり広くない人にはただ長いだけの退屈な代物に思えるだろう。 しかし様々な分野、さまざまな作風の小説を多く読んで経験を積み、 面白さの基準となる物差しを数多く持つようになったならば この小説を面白いと思えるようになることは間違いない。 追記 ただ「白衣の女」の正体はちょっとがっかりした。 某有名作品の某人物の正体ほど酷くはないけど、もうちょっと何とかしてほしかったかなw
711 :
名無しのオプ :2008/03/13(木) 22:36:41 ID:94TZHSld
「ホッグ連続殺人」W・L・デアンドリア まだ100ページ弱しか読んでいないけど、HOGの正体が判った、と思う。 (メール欄)だろうな。
「ブラックウォーター湾の殺人」ポーラ・ゴズリング(早川書房) 恋人ケイトと彼女の家の別荘がある島にやって来たストライカー警部。 そこには陽気だがある種排他的な人々がおり、彼らは非社交的な 新しい入居者に戸惑っていた。また、美しい画家ダリアは 別れた夫の陰に脅えており、彼女を想う保安官マットはその事に 悩んでいた。そんな中、惨殺体が発見される……。 シリーズ3作目だが、またイマイチな出来。 作者の見所たるロマンスとサスペンスが弱い。何でもっと 男女のシーンを書き込まないのか。サスペンスフルな展開もあまりなく そうなると後は本格に準拠した評価しか無くなる訳で。そうなると ろくに伏線も無い真相が不満に感じるわけで。……
「甘美なる危険」マージェリー・アリンガム(新樹社) バルカン半島にあるという小国の継承に関わる極秘任務を帯びた キャンピオンとその仲間達は継承者一族の住む田舎町へとやって来るが、 そこでは奇妙な印が散見されたり、野外で死体が発見されて しかもすぐに消えたりと不気味な現象が続発する。更に継承権を 奪おうとする悪の組織からの追っ手も現れ、彼らを阻むのだが……。 探偵ミーツ奥さんもの。出だしはやたらデカイ印象だが舞台は ほとんど田舎町から動かない。本格というより冒険小説のノリで 作者のこれまで読んだ作品の様な地味さや中途半端さは 感じられなかった。こういう作風が合ってるのかもね。 自分はいくつかの伏線(と思ったもの)から犯人の見当を付けた {(メル欄)}が考え過ぎだったみたい。これがレッドヘリングなら 凄いが。まあ違うだろう。上の「ブラックウォーター湾の殺人」と違い 舵取りが明白だからは減点対象にはならず。
「タイタニック号の殺人」マックス・アラン・コリンズ(扶桑社) 売れっ子のミステリ作家フットレルは、愛妻と共に乗り込んだ 豪華客船上で殺人事件に巻き込まれることになる。 密室状態の現場に全裸で倒れていた死体は何を物語っているのか? 直截に言ってガッカリした。自分も度々夢想していた設定だけに それなりに期待もあったのだが見事にすかされた。 古典本格の雰囲気が感じられるだけで、中身はスカスカ。謎も推理も ほとんどない。ただ順繰りに話聞いていって最後は自白させるだけ。 密室だってただのハッタリ。一瞬でもそう 銘打ちたかっただけとしか思えない不要設定だった。 解説でかなり逆褒めしていたが単純に書けなかっただけ なんじゃないかと。アンダースンはおろかアデアにも遠く及ばない。 所詮ノベライズ作家風情が分に過ぎた望みを抱いたのが間違い。 そのせいで今後この魅力的な題材は二番煎じの誹りを受けずに 使われることはなくなったし、扶桑社の貴重な本格枠も一つ失った。 この二重の浪費が二重に腹立たしい。 続編も確保しちゃったんで仕方なく期待して読む。
「ヒンデンブルク号の殺人」マックス・アラン・コリンズ(扶桑社) ドイツ―アメリカ間を航行中の大型飛行船内で乗客が忽然と 消失する事件が発生。たまたまその乗客と同室だったミステリ作家 チャータリスは船長達の要請を受け隠密捜査に乗り出すが……。 大惨事シリーズ2作目。 ちったぁましにと開いてみると章毎に二行の梗概が付せられており むむこれは力入ってまんなぁと期待して読んだらこの様。どの様? がっぽーーーん。 相変わらず推理もせんとアチコチうろつき童子でセックスしたりしよる。 いくら歴史的なことを丹念に調べたり登場人物も実在のみにしたり しても内容が詰まんなかったら糞だかんね。ハイハイボクちゃん よくできまちたね〜とでも言って欲しいのか? キモイんだよ! ただ終盤ようやっと些少な伏線を回収してそれなりに見せ場を 作ってたのは進歩とみれないこともない。 あとナチを悪者として安易なメイキングをしなかったのは評価する。 セイントの短編集出して欲しいなぁ〜論創や。
マイクル・コナリー『ブラック・アイス』 (扶桑社ミステリー1994)【8点】 モーテルの一室で発見された、ハリウッド署麻薬課の警官らしき死体。 生前の警官と面識のあったボッシュは、自分の抱える事件と警官とが関係する ことを知る。メキシコに飛んだボッシュに迫る、麻薬王のヒットマン・・・ 第一作『ナイトホークス』は若干期待値を下回ったが、二作目のこれはよかった。 死体から発見されたミバエを手掛かりに舞台はメキシコにまで及ぶが、 やや緩慢な前半に較べて後半は一気読みのおもしろさ。過度のケレンはないが、 終盤の展開も上手い。 しかし「メイクラブ」という訳語はどうにかなりませんか。
マイクル・コナリー『ブラック・ハート』 (扶桑社ミステリー1995)【9点】 左遷の契機となった4年前の連続娼婦殺人事件。ボッシュに撃ち殺されたはずの 猟奇的犯人“ドール・メーカー”から、その生存を示唆するようなメモが届く。 折りしも犯人とされる人物の遺族から告訴され、苦境に立たされるボッシュ。 ドール・メーカーは生きているのか? 模倣犯の犯行なのか? 裁判の行方は? リーガル+サイコ+犯人探しの贅沢な一冊。これは文句なしにおもしろい。 特に、“ドール・メーカー”が撃ち殺されたあとに殺害されたと思しき コンクリートの中の金髪女の遺体が出てきたりして、どう着地するのか 予想が難しい。上下巻だがハラハラドキドキの一気読みでした。 シリーズ第三弾ということで重複する登場人物やエピソードもあり、 順番に読んだほうが絶対に楽しめる。コナリーは本格好きにも受けると 何かで読んだが、その理由がわかった。単体で読むとどう評価されるか解からないが、 とにかくシリーズの先が気になる【9点】。
「フォーチュン氏を呼べ」H・C・ベイリー(論創社) 久々ライヴァルたち。 「黄色いなめくじ」や「死者の靴」等読んだが、何か毛色の変わった 作風でいまいち好きになれなかったのだが、今回も然り。 この人はあまり「隠そう」という意識が無いのではないか。 でも「気立てのいい娘」のラストや「ある賭け」のプロットは中々良い。
「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男」ウィリアム・ブリテン(論創社) パロディ+αの短編集。どれもミステリーとしてはK越えしている ものの、パロディということを考えると表題作が一番印象強いかな。 まあ、これはテーマの着眼点の違いに因るのかも。 純粋にミステリーとしては「うそつき」がベスト。この真相は他に 知らなかった。 「巨匠を笑え」と読み比べてみると良いね。テーマの処理の仕方はあっちのが上やも……?
「カスに向かって撃て」ジャネット・イヴァノヴィッチ(集英社) 前回の事件以来モレリの家に同居しているステフは偶然強盗を 目撃してしまい、そのせいか凄腕の殺し屋に命を狙われることになる。 しかもこの大事な時にモレリとケンカ別れをしたステフは ひょんなことからレンジャーの隠れ家を突き止め潜伏しつつ 仕事を続けるのだが……。 ここ数年本格出したり古典出したりマルコ復活させたりと 渋い仕事をしてきた扶桑社ですが、本シリーズに関しちゃ 完全に下手を打ちましたね。不手際過ぎ。 ただ、このシリーズも10作を数えてかなりマンネリ気味。 最初はミステリー要素が勝っていたのに今ではステフを巡る イケメン二人の三角関係を誤魔化し誤魔化し書いてる感じです。 もう展開無理からなのが明らかで読んでて微妙。某ラノベの二の舞か。 この際きちっとパートナーを決めて最初の作風に回帰して欲しいです。 ミステリーとしても駄目だし、ロマンスファンにも喜ばれないと 思います。案外保守的ですからね、彼らは。
ジェフリー・ディーヴァー『エンプティー・チェア』 (2001→2006、文春文庫)【8.5点】 手術の為ノース・カロライナに訪れたライムとアメリア。地元保安官の要請で、 女性2人を拉致して逃亡中の少年の足取り調査を依頼される。土地鑑がないまま、 地元のアウトロー・反抗的な保安官らに阻まれながら捜査を進めるライムだが・・ ライム物を読むのは久しぶりのせいか、くどいほどの大小のヒネリの連続にも 素直にしめた。南部の湖沼地帯の追跡劇も、終盤のアメリアの置かれた状況も どうなることかとハラハラ(まあ、アレだからアレになるとは分かっているんだけど)。 何にも考えずにハラハラドキドキして騙されたいときにはやっぱりディーヴァーというのを 再認識。
ケン・フォレット『ホーネット、飛翔せよ』(2004、ヴィレッジブックス)【7.5点】 第二次大戦中、イギリス空軍はドイツ軍が高性能レーダーを開発し、次々と 戦果を挙げていることを懸念。デンマークにスパイ網を形成し、なんとか ドイツの軍事機密をあばこうとするが露見。窮地打開はあるデンマーク青年に双肩に・・ 史実が元になってるらしいけど、それを考慮したためか小説としてあまり必要でない 人物もちょこちょこ出てきたりして、そのせいか、やや焦点がぼやけた印象がある。 個人的にはデンマーク青年ハラルドと恋人カレンの冒険活劇として楽しめた。 ドイツの手先となるデンマーク警察のペーターとの対立もいい。 すいすい読めるが、スパイものとしてはちょっと抜けてる人が多い。 一部のアレなシーンを除けば、大人の手前の青年とお転婆お嬢さんとの掛け合いが、 宮崎駿アニメの登場人物のようだなあと思った。
723 :
名無しのオプ :2008/04/15(火) 00:53:13 ID:ezx0jxQX
ブラッド・メルツァー『運命の書』読了。 全編通して本当につまらなくてビックリした。
724 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/04/19(土) 17:55:32 ID:J7lvVg0B
スコット・スミス「ルインズ 廃墟の奥へ」を読んだ。 帯には「息もつかせぬホラー・サスペンス」と銘打たれているが、実態は秘境冒険小説と言い得る。 あの「シンプル・プラン」のスコットの待ちに待った新作(第2作)であり、前作同様にプロットは 単純ながらも、畳み掛けるような語りと優れた筆力によるリアリティに富んだディテール描写 (「訳者あとがき」に作者は舞台となるメヒコへ行ったことがないとあるのにはびっくり、 密林等秘境の描写の迫力は秀逸であり、この作家の筆力の凄さを実感させるものがある)で 読ませるものはあり、ヒーロー不在、勧善懲悪を廃した展開は同じような特色を有する ジム・トンプスンのノワール作品とも全く異なる魅力に富んではいる。 ただし、メーンな敵役(?)が50年代アメリカB級ホラー映画まがいなのはさすがに脱力せざるを 得ないものがある。 せめてSF風のオチでも付けて欲しいところではあるが、この辺はスコットの守備範囲ではないと いうことか。
725 :
名無しのオプ :2008/04/19(土) 18:26:05 ID:1mb/fucW
「堕ちた天使――アザゼル」ボリス・アクーニン(作品社) 白昼堂々起きた不可解な自殺事件。被害者とおぼしき若者は 当日あちこちで目撃されていた。事件に興味を抱いた若き警官 ファンドーリンは独自に捜査を行うがやがて国際的な謀略が 浮かび上がる――。 1作目。最初は面白味が乏しくて読みにくかったが中盤からまあ読めた。 しかし後味ワルー……。 これが話題になるんだからロシアはよくよく娯楽に飢えた国だったんだな。 でも次で化けたかも知れないので読むわ。
「ノヴェンバー・ジョーの事件簿」ヘスキス・プリチャード(論創社) カナダのホームズこと樵探偵の短編集。 期待の割にフツー。でもこれはライヴァルたちに共通して言えること。 彼らの作者たちはホームズを意識し過ぎたあまり突飛な設定に しづらかったのかも。まあともあれ、ベストは……特にないや。アハ。
「グリンドルの悪夢」パトリック・クェンティン(原書房) のどかな田舎町に起こった少女の失踪事件。それに前後して ペットの犬や猿が襲われる事件も多発する。少女の父親は真相を 掴みかけたものの殺されてしまい、またも行方不明者が……。 シリーズものは物理的にも精神的にも読めないからせめて単発の新刊は 読み逃さないようにしたいと思うけどこれイマイチだなあ。 何かたらたら読み繋いでる感じだった。もちっとピリリとした 要素が欲しい。真相も退屈だし。ただラストの( ̄ー ̄)は良い。 ひがしのりにはこういう粋は無いね。 解説読んで登場人物表は敢えて付けなかったのかなとチラリと 思ったけど、そこまでしなきゃならん理由は無いし前科もあるから 怠惰決定。ちゃんと付けろ。
「道化の町」ジェイムズ・パウエル(河出書房新社) 奇妙な味というよりファンタジー本格ミステリ短編集みたいな感じ。 表題作のみマーシィのアンソロで読んでいたが、てっきりあの世界が 舞台の連作かと思ってたら違うのね。良かったそれで。この人の 世界観は「犯人は誰だ」というアンソロジーで都筑道夫が書いた話を想起させるなあ。 ベストは表題作かな。設定がプロットに良く練り込まれてる。 次点は「アルトドルフ症候群」。これは奇妙な味としても 本格としても○。最初の「最近のニュース」も切れ味が良くて 掴みに持って来い。それから「愚か者のバス」は設定が面白かったし、 「折り紙のヘラジカ」の極めて特異な状況設定も笑える。 ただ、いくつかの話は観念的というか展開が速すぎてついていけなかった。 解説で紹介されてた短編は読みたいな。
「雨の午後の降霊術」マーク・マクシェーン(トパーズプレス) 才能はあるのに不遇を囲っている霊能力者マイアラは夫と共に 思い切った行動に打って出る。資産家の子供を誘拐し、居場所を 言い当てることで自分の評判を上げようと企んだのだ。 いくつかのミスを孕みながらも計画は進んで行くのだが――。 この瀬戸川さんの出版社は厨房時代ポール・ジェニングスの 奇想天外な短編集に嵌った時にお世話になったけど、本書が含まれる 叢書もアームストロングの作品もあり中々興味深い。 でも本作は駄目。詰まらんかった。ちょっとオチが洒落てるだけの代物。 読んでて退屈だった。大して長く無かったから良かったけど。 甚一さんは罪なお人でありんすなあ。うじ虫もこんなんなら読まんわ。
リチャード・ノース・パタースン『サイレント・ゲーム』(上下) (2003→2005、新潮文庫)【8.5点】 恋人殺害の容疑者として地元から孤立したため、故郷を捨てたトニー・ロード。 親友サムが少女殺害の容疑者として苦境に立たされたことを知り、28年ぶりに帰郷。 弁護を進めながら、親友の言動に違和感を覚えるトニー。事件の真相は? そして28年前のあの夜、一体何が起こったのか・・・? 一応続き物らしいけど、本作だけでも特に問題なし。第一部のトニーやサムの 青春時代の物語はややスローペースだが、このときの人間関係が裁判シーンに 深く関係してくる。人種・宗教問題をからめながら、事件は混迷を深めていく。 事件としてはシンプルながら、親友に疑惑と後ろめたさを抱きながら弁護する、 弁護士トニーの苦悩と葛藤が読みどころ。とにかく一気読みのおもしろさ。 ラストの展開・真相にはちょっと物足りない点もあるが、満足できる読書。
リチャード・ノース・パタースン『ダーク・レディ』(上下) (2004、新潮文庫) 【8点】 麻薬犯専門弁護士が、女装・倒錯性行為の首吊り死体で発見される。 元恋人の検事補ステラは、人種問題・市長選挙戦に絡む別の殺人事件を追いながらも、 市中を牛耳る麻薬王らの犯罪事件に巻き込まれていく・・・ 『サイレント・ゲーム』で敵役をつとめた検事ステラ・マーズが主人公だが、 本作では作者お得意の法廷シーンはなく、後書きによれば「ポリティカル・サスペンス」。 市長選挙・人種問題・雇用問題・新球場建設問題など、やや固いテーマが出てくるが、 元恋人の謎の死をめぐるサスペンスはこれまでどおり。 ただ本作は、旧作にもましてスロースターターであり、上巻はやや退屈さも覚える。 もっとも下巻ですべての情報がひとつの犯罪に結びついていく手腕は健在で、 とくにあるビデオが登場する第4部の展開はページをめくらずにはいられない。
ヘニング・マンケル『殺人者の顔』(2001、創元文庫)【8点】 外国移民排斥の気運高まる90年代、スウェーデン南部の寒村で発生した老夫婦殺害事件。 虫の息の老妻が遺した「外国の……」という言葉と、見慣れないロープの結び方に 警察は戦慄する。さらに何者かに無関係の移民が殺害され、警察当局は苦境に立たされる・・ ここ数年気にはなっていたヴァランダー・シリーズの第一弾。 老夫婦の殺害が明らかになる冒頭ですぐに物語に引き込まれた。 やもめで中年の主人公のキャラや新任の美人検察官などキャラの配置はさほど目新しくなく、 事件の捜査も堅実で、地味な印象はぬぐえないが、読みやすい訳文もあいまって、一気読み。 もっとも事件の解決も真相も「けれん」は少なく、ちょっと物足りない気もするが、 それまでの地道な展開もあいまって「まあ現実はこんなもんだよな」と納得はいく。 本国では10年以上前に全9作で完結しているようだけど、これはぜひ読まねば。
734 :
名無しのオプ :2008/05/08(木) 12:42:55 ID:bL0xVrIQ
マンケルジャクソン
735 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/05/10(土) 16:32:40 ID:S2aiBuHJ
デズモンド・バグリイ「高い砦」を読んだ。 ハイジャックされアンデス山中に墜落した飛行機の生存者たち、 乗客のひとりである政治家(前大統領)の命を狙い一行への襲撃が繰り返される・・・ 反共的描写や南米のルーズな面に対するシビアな視線は、いかにも60年代の英国作家の手に なるものらしく、CIAに対する好評価など、その後(70年代以降)の国際情勢を見ると、 今では疑問に感じざるを得ないような面も多い。 まあ、この辺はスパイ小説でないから大目に見るとしても、 過去に非常に面白く読んだ記憶があったわりには、再読してみてガク−リという作であった。 中世風の手作りの武器(クロスボウ、カタパルト等)で迫り来る共産軍に対抗というメーンの アイデアは面白いのだが、今読むとそれだけで、ストーリーは御都合主義のヒーロー談に 過ぎないという感が強く、最初は少したそがれた感がある主人公オハラがランボー化してしまう 終盤は白けることこの上ないものがある。 救援を求めるため峻険な山越えに挑む副主人公格のフォレスターとローデの冒険談も、 マクリーン等と比較すると、デイテール描写が弱いのも難だ。 今時、これを読んで喜んでいるのは、深夜アニメを見呆けているオタぐらいなものであろうかと思う。
ヘニング・マンケル『リガの犬たち』(2003、創元文庫)【7.5点】 漂着した救命ボートから、外国人の男2名の銃殺死体が発見された。 やがてラトヴィア警察に捜査権が移った矢先、思わぬ別の殺人事件により 警部ヴァランダーはラトヴィアのリガに赴くことになるが・・・ スウェーデンのヴァランダー・シリーズ第二弾。冒頭の引き込みは前作同様、上手い。 前作が地元の殺人事件に対する地道な捜査・推理がメインだったのに対し、 本作は独立直後の共産国ラトヴィアの警察や犯罪組織との駆け引きが中心となる。 後半のリガへの潜入・逃避行なんかはそれなりに手に汗握るんだけど、 事件の黒幕候補が限定されてるせいか、「警察による捜査・推理」の要素は薄く、 そこを期待してたのでちょっと残念。さくさく読めたことは読めたんだけど。 あと、リエパ中佐との交流ももうちょっと書き込んでくれれば説得力増したかな。 ところでヴァランダーが前作同様、異様に惚れっぽいところと、 彼が警察署史料庫のゴミ箱に「残してきた」○○○の行方が気になる。
737 :
名無しのオプ :2008/05/11(日) 23:10:24 ID:+jz8T0pJ
「治療島」セバスチャン・フィツェック 読了 これくらいのどんでん返し、国内ミステリではよくあるじゃん こんなんでドイツではベストセラーになっちゃうんだなァという感想
738 :
名無しのオプ :2008/05/12(月) 00:00:37 ID:UkVSX+fH
別にどんでん返しだけで評価されたわけじゃないだろうに 737は本格ファンなのか?
739 :
名無しのオプ :2008/05/12(月) 10:02:45 ID:cHRtuu4q
どんでん返し=本格という発想
740 :
名無しのオプ :2008/05/12(月) 13:21:43 ID:XkwUILWV
どんでん返しだけで小説が評価されるわけじゃないからなあ。
>>737 の理屈だとカラマーゾフの兄弟も『この程度の謎解きなんて国内ミステリならざらにある。
こんなんでロシアでは文豪扱いなの?』ってことも言えてしまうわな。
741 :
名無しのオプ :2008/05/12(月) 21:54:21 ID:fNNczPJt
>>739 どんでん返しの巧拙だけで作品を評価するのは本格ファンが多いけどな
742 :
名無しのオプ :2008/05/13(火) 22:03:00 ID:9vERRO4o
現代海外ものを読むと 日本はミステリ先進国だなァと思う
「査問」ディック・フランシス(早川書房) 大方の予想を裏切りレースで2着になったケリイは八百長の疑いを かけられ査問会で免許停止処分を受けてしまう。何故か自らに不利な 証言や証拠が次々と現れたのだ。納得の行かないケリイは 不信と軽蔑の眼差しに耐えながら自分を陥れた人物を突き止めようとする。 これも前回の「度胸」と同じく「興奮」の系譜に連なる正統な ディスられもの。査問会のシーンなんか良い感じに煽ってくれます。 そして巻き返しが始まるわけですが、段々と復讐が尻すぼみに なっていくのは少し残念かなあ。敵の情状を酌量しちゃうとどうもね。 でもやっぱり主人公はカッコイイす。 しかし競馬界ってやなとこだなあ。特に馬主とはあんまりお友達に なりたくないや。
744 :
名無しのオプ :2008/05/15(木) 23:09:45 ID:1XqTGOyW
>>742 本格・変格モノに限ればそうかもね。特に変格は。
ハードボイルドやノワールとかエスピオナージュだとつらいけど。
ただ女性作家の本格はイギリスに負けてるな。
745 :
名無しのオプ :2008/05/16(金) 20:20:12 ID:TVy24JI9
あんなやつらに勝てるかよw
「ランドルフ・メイスンと7つの罪」メルヴィル・ディヴィスン・ポースト(長崎出版) 弱気を助け悪事を奨める弁護士の暗躍を描く連作短編集。 いやぁ待ってました! どう凄いのか読みたかった。確かに狙いは面白い。 話のパターンとしては、悪人というより心の弱い人に泣きつかれた メイスンが法の抜け穴を潜れる悪事を紹介してやるというもの。 冒頭の「罪体」は模倣犯が頻発して法改正に繋がったくらいと聞いて 楽しみに読んだだが、感想は絵空事だなという印象。このやり方によって 刑事は免れても民事で損害賠償されたり、罪名を切り換えて 逮捕されたりしそうだし、そもそもこんなにきっちり法律は 運用されて行かないよ。キムラ弁護士に読ませたら何ていうかな。 しかしアブナー伯父と対決したらどっちが勝つかな。あの人あんま 法律に忠実じゃなさそうだが。
「ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎」アントニイ・バークリー(晶文社) 従弟のアントニイと休暇旅行を楽しんでいたシェリンガムは 急遽新聞社の特派員としてある事件現場に赴くこととなった。 ある女性が崖から転落したのだが、その手には他人の服のボタンが 握り締められていたのだ。単純に見えても裏があると睨むシェリンガムは ヤードの腕利きモーズビー警部とある時は協力しある時は競いながら 真相を暴き出そうとする。 第3弾。頭は切れるが補正はかかってない探偵と、優秀な警官と、 お約束の騎士道精神に骨の髄まで毒された助手が 事件を蚕食していくと、そこには捻れが産まれ歪みが産まれ面白くなる。 やっぱバークリーはブルースより凝ってるね。良いのう。 でも、指紋調べりゃ解るんじゃないか?
748 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/05/18(日) 17:18:09 ID:xG/PLxMd
W・H・ホジスン「幽霊狩人カーナッキの事件簿」を読んだ。 勘違いして「おれだけのナッキーキター!!」とか絶叫したアホなミステリオタもいるかも、 ナッキーにあらずカーナッキである(w 全10編を読破した感は、天才ラブクラフトとの差を痛感した、というのが正直なところか。 ゴースト・ハンターものに限定しても、レ・ファニュ、ブラックウッドにも遠く及ばず、 低評価のクインとどっこいどっこいといったところか(どちらも独自の読み難さがある。 ホジスンはくど過ぎる感がある情景描写、クインはレトリックを多用した文体) 収録作品中、格別推すべきものは見当たらないものの、 カーナッキがママンと同居していた頃の怪異談「角屋敷の怪」は、 リットン卿の古典を想起させるオーソドックスな設定と展開なので、怪奇小説好きは一読してみても よかろうかと思う。 海洋怪談の名手というイメージがあっただけに、カーナッキが最後にトンデモ理論こねまくりな 「魔海の恐怖」には失望、同様にホジスン版「エクソシスト」という感がある「異次元の豚」には さらにパワーアップした同様な欠点があるため、「笑い」狙いでない限り読むのが厳しいものが あろうかと思う。実質的にシリーズのとう尾を飾るべき作で、これはなかろう。
749 :
名無しのオプ :2008/05/20(火) 01:47:48 ID:EFCJXYmj
>>736 >彼が警察署史料庫のゴミ箱に「残してきた」○○○の行方が気になる。
むかし「リガ」は読んだはずだけど、記憶にないな。
そんな印象に残るシーンだっけ。
750 :
名無しのオプ :2008/05/21(水) 03:53:31 ID:JTbePRV6
> 勘違いして「おれだけのナッキーキター!!」とか絶叫したアホなミステリオタもいるかも …
「チックタック」ディーン・クーンツ(扶桑社) ヴェトナム系アメリカ人のミステリー作家トミーは、深夜に帰宅した直後 玄関で奇妙な人形を発見する。それを居間に持ち込んだトミーだったが、 やがて人形が暴れ出し彼は家を脱出。途中で出会ったウェイトレスも 巻き込んで真夜中の逃亡劇が始まった! 初クーンツ。ハサミ男がスクリューボール・コメディだと言うから 読んだ。確かに途中から登場するエキセントリックなヒロインは かなり良いキャラクターで、二人の掛け合いも悪くはないのだが、 後半詰めが甘い。スクリューボールを標榜するのならもっと他愛もなく はっちゃけて欲しかった。真相も雑。 まあ読み捨てレベルかな。後どうでも良い誤りが2つ。 ガリバーは船医だし、「X-ファイル」を観ていたなら UFOを知らないはずはない。
752 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/05/25(日) 21:30:49 ID:FGNBHmEn
ミシェル・ビュートル「時間割」を読んだ。 新書ミステリに読み耽るアホなミスオタには無縁なミステリ的趣向に富んだ「文学」がここに1冊 あると言い得る。 霧と煤煙の町ブレストン(架空の町である)を舞台にした主人公ジャックの 肉体的及び精神的彷徨を謎の殺人事件を絡めて描き、最終的に「人間存在」というものを 問い詰めた作である。 文学板にさえ、本作及びこの作者のスレが存在しないのが2ちゃんねるの知的レベルの限界と 言い得るし、バイブル(ケインとアベル)とギリシャ神話(ミノス宮殿の冒険で有名なテセウス神話) を創作モティーフとした構成は、アホなミスオタには本作への敷居を高くしてはいるが、 まあ、本作を「読み得た」段階では全ての「ミステリ」を焚書し、訣別すべきであろう。 そして新しい道へ・・・ ただし、邦題は直訳とはいえ、内容的にはいまいち感があり、 内容的には「割れた時間」とた方が良かったと思われ。
「検死審問―インクエスト―」パーシヴァル・ワイルド(東京創元社) 大勢の客が招かれた人気作家ベネットの館で起きた殺人事件。 村では検死審問が開かれ、検死官と陪審員達が死因を特定するため 証人達から話を聴いていくのだが……。 かつて自分で勝手に『裁判3部作』等とくくっていたミステリーが ありました。『ベラミ裁判』『法廷外裁判』『検屍裁判』の3作で、 本書を読んだことにより全て読破しました。 面白さは、2>3≧1かな。こういう法廷劇っていうのは大体 似たり寄ったりの作りになるから数読むと天井が出来てしまうんですが、 それを打ち破った『法廷外裁判』は傑作と言って良いと思います。 閑話休題。本書も定石通りには面白く、殊に証人の一人である 芝刈り爺さんの語り口は読んでいて引き込まれました。 検死官と陪審員のやり取りがもっとあれば良かったのですが、 それは次作に期待します。 ガチの本格も読みたいな♪ それにしても敏弥はウハウハですね。
754 :
名無しのオプ :2008/05/28(水) 19:12:02 ID:Xf8C6c8g
「治療島」読んでるが挫折しそうだ…
「シロへの長い道」ライオネル・デヴィッドスン(早川書房) イギリスの言語学者カスパーはイスラエル大使館からの要請を受け、 現地へと赴く。そこで伝説の燭台の隠し場所を示す巻物が 見つかったのである。早速解読を試みるカスパー達だったが、 状態が不鮮明なことに加えて内容もいまいち要領を得ない。 隣国ヨルダンも同じ宝を目指しており、カスパーは助手として付けられた 女性将校と共に必死にイスラエルを駆け回るのだが……。 筋立ては良いと思う。巻物の謎解きや警備兵からの逃避行など スリルがある。ただ、ストーリーテリングが今一つ。所々文章の 繋がりが解りにくかった。 ヒロインとの交情について途中までは丁寧に描かれているのに いきなり表現をすっ飛ばす様にして進展させてしまうのは如何なものか。 キャラクターが一致せず戸惑った。主人公が女たらしなのもマイナス。
ジェフリー・ディーヴァー『石の猿』 (2003→2007、文春文庫)【8点】 蛇頭“ゴースト”の密航船がニューヨーク近海で爆破され、複数の密入国者が 上陸。“ゴースト”は逃げ出した密入国者を追い詰め、次々と殺害していく。 果たしてライムは“ゴースト”に先んじて密入国者の居場所を発見できるのか。 ライムシリーズ第4弾。ライムを「ラオバン」と呼ぶ中国人デカという魅力的な 脇役も出てきて、雰囲気や状況設定はいかにも映画っぽいんだけど、 前作『エンプティー・チェア』の連続ヒネリが印象強すぎて今回はやや拍子抜け。 取材もよくしてあると思うし、読めば十分におもしろいんだけど、 1〜3作と較べるとやや劣るかなあ。ディーヴァーへの期待値が高すぎるというのもあるけれど。
「バラントレーの若殿」ロバート・ルイス・スティーヴンスン(岩波書店) スコットランドの名門貴族デューリー家の次期当主ジェームスは 来るべき戦乱に身を投じ生死不明となる。やがて弟のヘンリーが 当主となり、兄の婚約者であった親戚のアリスンと結婚するのだが、 その一年後驚きの報が届く。ジェームスは生きていたのだ! そして運命は兄弟を対決へと導く――。 これ粗筋をみて序盤を読み始めた時に詰まんなそうと感じた。 だって兄貴が悪で弟が善なんだもの。何か座り心地悪そうな展開に なりそうじゃない? ところが! 読み進める内に徐々に 面白くなって来る。悪党兄貴の大胆不適な冒険譚とか、割と早くに起こる ガチンコバトルとか、そして物語は更にそこから新展開を見せていく。 メインの語り手たる執事のキャラも良い。 まあ傑作という訳じゃないけども、時代もの嫌いじゃないなら読めば。 あと登場人物がやたら叫ぶのは気になった。貴族は声を張り上げるもの なのか?
「ミステリ・リーグ傑作選 上」エラリー・クイーン他(論創社) たった4号で廃刊しちゃったという幻の探偵雑誌のダイジェスト復刻版。 クラシック新刊スレでは前評判悪かったみたいだけど、 どうしてどうして。クイーンのエッセイあり奇術の種明かしあり 投稿欄ありの中々バラエティに富んだ内容で結構楽しい。 中でも「パズル・デパートメント」の第3問、「フーディーニの秘密」、 クイーン好み、読者コーナー等が良かった。 ただ収録短編に関しては正直どれも今一つ。強いて挙げれば 「偉大なるバーリンゲーム」(ジョン・マーヴェル)くらいか。 しかし、ロスをベタ褒めしてるのはどうなんだw。推理クイズ大百科には リーとダネイがお互いマスクして貶しあったと書かれていたが……。
759 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/06/01(日) 00:19:50 ID:To8SA5DC
アゴタ・クリストフ「悪童日記」を読んだ。 双子の少年が主人公ということもあって、ジュブナイルまがいの健全な物語ではという先入観から 手付かずにしていたのが後悔される、正に一気に読ませる面白さ、 第一級のピカレスク小説と言うても差し支えない。 訳者あとがき(にかえて)にもあるとおり、 「子供を主人公としているけれどもハードな(「子供には読ませられない」)冒険小説とも見なすこと」 が出来得る作である。 第2次大戦末期、ハンガリーの小村を舞台に、夫殺しの噂がある魔女と呼ばれる老婆に 預けられた双子の兄弟が戦下の中を力強く生き抜いてゆく、と書くから「誤解」生じてしまうのだが、 この「力強く」がクセモノ、力強過ぎるというか(w 230頁強の中に、のぞき、恐喝、略奪、セックス、スカトロ、レイプ、殺人・・・人間の負の生き様が これでもこれでもかとばかりに詰め込まれ展開され、 正に「文字どおり」、両親の屍を乗り越えて生き抜いてゆく兄弟・・・ 内容と対照的に兄弟による日記という形をとる飄々、かつ、ユーモラスな語りが陰惨なイメージ を与えず、ファンタジックなイメージを醸し出す効果を上げているのも巧い。 しかし、「この親にしてこの子あり」とは言うが、本作は「この婆にしてこの孫あり」という感がある。
760 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/06/01(日) 00:20:33 ID:To8SA5DC
カズオ・イシグロ「日の名残り」を読んだ。 おなじみジーヴス・シリーズを執事ものに関するポジとすれば、ネガのような印象の作。 気がのらず長年手に取りかねていた1冊なのだが、血生臭いだけのミステリでは絶対に 味わえないしみじみした余韻が残る作、やはりブッカー賞受賞は伊達ではない。 ただし、刊行当時ではなく、良質なワインの熟成を待って寝かせておくが如く、 今読む方が感慨が深かったのではという感がある。 2回の大戦時に国際政治の舞台裏で活躍したダーリントン卿に仕えた執事スティーブンス、 その卿も亡くなり、今では邸宅はアメリカ人ファラディの手に渡った。 好人物ではあるが、あまりにアメリカ的な新しい主人に言い知れぬ違和感を抱くスティーブンス、 昔の同僚であるミス・ケントン(旧姓)から来た手紙を契機に、休暇を取り、 つかの間の自動車旅行に出るのだが・・・ 優れた作家に多い秀逸な情景描写、 カズオ(以下では「カズ」と略す)の場合は英国の田園描写、邸宅内の描写等は臨場感に溢れ 本作の魅力を高めるものとなっておる。 ミスオタには、英国の探偵小説では風景の一部と化している感がある「執事」についての知識 を深めるためにも一読を薦めておきたい(十二分に心して読め!!) しかし、あらためて30半ばにしてこの枯れた名作を書き得たカズオの力量には驚かざるを得ない ものがある。 「The Remains of the Day」を「日の名残り」と訳した邦題の妙にも感心、 本作のテーマを表して実に的確である。
761 :
名無しのオプ :2008/06/02(月) 10:31:05 ID:vKuSHdaO
>>753 自分で勝手に『裁判3部作』等とくくっていたわけだから
他人がどうこう言う筋合いではないかもしれんが
「検死審問―インクエスト―」はそもそも法廷での検察側と弁護側の
丁々発止のやりとりを繰り広げる場面とかを最初から狙ってないし
裁判小説でさえないかもしれない
検死審問は日本では馴染みの薄い制度だから分り難いが一般の裁判とは違う
それと挙げてるその三作『ベラミ裁判』『法廷外裁判』『検屍裁判』だけど
セシルは書かれた時代がずっと後で有利だから比較するのが不公平
デビューが1961年でもう法廷ものが書きつくされてそれを承知で書かれてるわけだし
『ベラミ裁判』『検屍裁判』と比べるなら書かれた年代を考えても
レイモンド・ポストゲイトの『十二人の評決』あたりの方が妥当だろう
「ミステリ・リーグ傑作選 下」エラリー・クイーン(論創社) 本書の目玉は「角のあるライオン」(ブライアン・フリン) でありましょう。 毒殺された上全身に切傷や骨折のある死体が2体次々に発見される。 被害者同士の繋がりは見えて来ず、捜査が難航している間に 第3の被害者が密室で殺される。一連の事件の陰に潜む 角のあるライオンとは一体――。 密室トリックは捻ってるとは言えショボいし、ミッシングリンクも 捜査ですぐ判りそうなものだと思いましたが、プロットは中々複雑で 読ませます。フーダニットもまあまあ。解説で触れられている ミスリードも巧いです。 ただ疑問点が2つ。何故弁護士の前で漏らしたのか、と、 何故葬式に行った(を知った)のか、です。 もう一つ収録されている「蘭の女」(チャールズ・G・ブース)は、 人気女優の誘拐事件を追う私立探偵を描いたハードボイルド。 本格味もあり良くまとまっています。ただ最後の1行は蛇足かな。 他の2長編もいつか読みたいです。
「密偵ファルコ 錆色の女神」リンゼイ・デイヴィス(光文社) 皇帝からの依頼にうんざりしていたファルコは久々に民間の依頼を 受けることに。その内容はある女性に纏わるもので、彼女がかつて 3人の夫を亡くしているという件につき調査をするというものであった。 折しも思わぬ臨時収入を得て上機嫌のファルコは恋人ヘレナとの 未来を夢見つつ、調査を進めていく。 シリーズ3作目。毒殺事件が絡んでちょこっと本格風味も。 セクシー熟女はハァハァしそう和気藹々の家族パーティーは楽しそう 料理も美味そうヘレナとのシーン……はもうちょっとツンだくでお願いします。 後いくらとか巻末に残額が表示されたりすると面白いかも。 増えたり減ったりしてね。 それしてもこの頃は皇太子と下層階級が交われる時代だったのかあ。
「残酷な童話」チャールズ・ボウモント(論創社) 奇妙な味の短編集だが、ジミー佐古田な印象。似通ったテーマに 基づく話が多くてバラエティ不足に感じた。1話目2話目読んだ時点では 期待したんだけどそこから先に繋がるものが無かった。 ベストを挙げるなら……表題作かなあ。
「リヴァイアサン号殺人事件」ボリス・アクーニン(岩波書店) パリのイギリス人富豪宅である夜在宅していた当主含む10人が 殺されるという事件が発生した。被害者が握り締めていたバッジから、 犯人はこの度処女航海に出る豪華客船リヴァイアサン号に乗るとみた パリ警視庁のゴーシュ警部は自ら船に乗り込み犯人を捕まえよう とするが――。 シリーズ3作目。飛ばしたのは作者の意向らしいがそういうお節介は 御無用に願いたいところ。 こないだとあるノベライズ作家が勘違いして書いたしょうもない 船上ミステリを読んじゃったもんで少々不安だったが、本作はちゃんと ミステリ仕立てになってて一安心。登場人物達が交替で視点になって 進んでいく手法も良い。 ただ、論理が弱い。警部も探偵役もいわゆる “ホームズ型当てずっぽう推理”だから余詰めが出来ていないため 説得力に乏しく作品のリアリティを欠いている。 でも宝物を示す暗号は面白かった。 疑問は2つ。125ページのある回答が回答になっていないことと、 (メル欄)を見つけたという場面が見当たらないこと。 ついでに何で帯が高村薫? この人ミステリーもあんま好きそうじゃない のに本格とか今までにちゃんと読んだことあんのかと思ったら 案の定惹句にもそれが表れてる。グランド(笑)・ミステリーだの ロシアで甦っただの、本格は日本でとっくに甦っとるわい。
766 :
名無しのオプ :2008/06/11(水) 04:51:59 ID:/tQbr+KO
「杉の柩」アガサ・クリスティー ポアロ18作目。 叔母ローラ・ウエルマンから莫大な遺産を受け継いだエリノアは、 ウエルマン家の門番の娘メアリイ・ジェラード殺害容疑によって起訴され、裁判にかけられることになった。 全ての状況が彼女が犯人であると示すなか、ある男がポアロにエリノアの無実を証明してくれるよう依頼する。 メアリイが死ぬまでの経緯を語った第一部、ポアロの調査を描く第二部、真相解明の第三部の三部構成となっている。 プロローグ以降第一部が終わるまでの150ページ近くは、ポアロが出てこないので人によっては退屈かも。 だが、第一部の登場人物の恋愛や遺産相続をめぐる人間模様はなかなか面白く、それがどのような形で プロローグで読者に突きつけられたメアリイの死に結び付くのか?と、ワクワクさせられる。 地味かもしれないが、面白さがジワジワと来る佳作。ただ、恋愛小説とか苦手な人にはむかないかもしれない。
767 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/06/14(土) 23:07:59 ID:QEzsIFIz
ジェイムズ・エルロイ「ブラック・ダリア」を久々に再読した。 (ハードカバー刊行以来ではなかろうか) 50年代LAにおける現実のお宮入り事件を題材に、 ミステリとして終盤で二転三転、後のサイコ・ミステリのムードもあって面白くないわけではないが、 暴力的で暗く陰惨で重い展開は胸焼け寸前といった感がある。 主人公はボクサー上がりの警官ブライチャート(出っ歯という設定が異色)、 同じくボクサー上がりでブライチャートをKOしたこともある相棒のブランチャード、 彼の恋人で犯罪者とのつきあいもあったケイが大きくストーリーに絡んで来る。 こう書くと、タフなハードボイルドタッチの警察小説を想起してしまいがちであるが、 (そのテーストは無きにしもあらずだが)、そこはエルロイ、 事件捜査に入れ込むあまりにブラック・ダリヤごっこ(読めば自明)にまで走ってしまう ブランチャード、幼少時に失踪(悲惨の結末が予想される)した妹のトラウマに囚われ暴走 してゆくブランチャード等々、他に登場する刑事・警官たちの行動も含めて、 そこには汚れた街をゆく孤高の騎士の姿には程遠く、87分署シリーズの刑事たちのような 律儀な職業観のようなものも全く感じられない。 つまり、肉体的にはタフな彼ら自身の心がもろく、病んでおり、この「闇」を作者は容赦無く抉って ゆく。時代もLAの街も病んでいた時代、定期的にエルロイ作品を再読してゆくつもりだが、 La四部作の冒頭を飾る本書だけでもお腹イパーイ感が無いでもなく、 書評家の「業」というものに考えを致す今日この頃である。
「絞首人の手伝い」ヘイク・タルボット(早川書房) 嵐の夜に孤島の館で起きた怪死事件。晩餐の席上で弟と口論をしていた 主人が呪いの言葉を投げ掛けられた途端、倒れたのである。 しかもその遺体は数時間の内に腐敗してしまう。それは呪いの力なのか? 中々楽しめた。上記の謎の他にも秋山みたいなヌルヌルの怪物が 跋扈してたりそれが密室で消えたり細かな伏線もあったり盛りだくさんで 久しぶりにメモしながら読んだ。仮に最後に萎むとしてもこの過程の ワクワク感はプライスレスだと思うなぁ。この人は「魔の淵」も こんな感じなのが 良かった記憶。フーダニットもフェアでは無いかも知れないが 盲点を突かれた思いがした。密室トリックはあまり感心しないが その周辺のある出来事の真相が秀逸。 ただ真相の一部にやや無理があるように見受けられた。 それにしても引用や比喩や掛詞を一々広い上げるのって大変だなぁ。 そういう推理の筋道なんかも特集して欲しい。いつかどこかで。
「十二人の評決」レイモンド・ポストゲート(早川書房) 莫大な遺産の相続人である少年とその後見人である義理の叔母との間に 起こった殺人事件。その裁判の為に集められた十二人の陪審員。 様々な人生を歩んできた彼らが議論の末に辿り着く結論とは? かつて自分で勝手に『裁判4部作』等と(ry そう言えば内3作は乱歩のベストテンに入ってますね。 最初にこのタイトルを知った時はてっきりあの映画の原作かと 思いましたが違いました。 まず、12人の爲人を丁寧に語っていき、それなりに各人の バックボーンを描いてから事件の概要が語られます。この流れは 良い趣向だと思うのですが、後がいけません。肝心の議論がとても短く、 ざっと各々の所見が述べられただけで強引にまとめに入ってしまう からです。前半あれだけページを割いて陪審員達の描写をしたのだから それを活かしてアクの強い議論が展開するかと思いきや、あっさり すかされてちょっとがっかりしました。オチもあまり ピンと来なかったです。 冒頭の言葉はある意味読者への挑戦かな?
770 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/06/16(月) 00:13:21 ID:4uyW66sG
アゴタ・クリストフ「ふたりの証拠」「第三の嘘」を一気読み、 いずれも前記した傑作「悪童日記」の続編で3部作を形成するものである。 第1作の「?」を感じさせるラスト(国境での別れ)の謎解き、 第2作でストレートな叙述トリック(ミステリ読みには何となく予想がつく展開ではあった) と思わせて、第3作でもう一捻りしエンディングとなる。 両作品共に世評は高く、確かに面白く人間も描けているとは言える。 ただし、結論から言えば、寓話的ピカレスクを貫徹した点に魅力があった第1作 「悪童日記」の世界観を壊す形になっているのが、何とも残念、 作者はあるインタビューでは、当初からは続編の構想は無かった旨を語っており、 第2作、第3作が存在しない「形」も文学的に十分に有り得たのではないか。 ミステリタッチどころか、3部作として読めば「ミステリ」そのものであるが、 原音ではあのミステリの女王に類似した発音となる作者の手になるミステリの「つまらなさ、 限界」を示唆した作とも読めるのがシニカルだ。
「ヘラクレスの冒険」アガサ・クリスティ(早川書房) ヘラクレスの難業に見立てた連作短編集。最初は割と単純な筋だが 中盤から捻りが効いてくる。鳥、馬、牛辺り。鹿は先輩作家の某短編を 意識しながら書いたのかも。良い。
「棄ててきた女」アンソロジー/イギリス篇(早川書房) アメリカ篇に引き続き詰まらない。SFにウェイトを置いたりだの 敢えて選んだりだのアンソロジーの私物化も甚だしい。 確かにオリジナル版の方にもSFはたくさん入ってますよ。しかしね、 あくまで娯楽として面白いのが大前提だし、それに本を開いて 最初にカプセル怪獣が目に飛び込んで来たら軽く失望するよ (もっともその話自体は比較的マシだった)。無理に鶴を探すとすれば、 「何と冷たい小さな君の手を」(ロバート・エイクマン)かな。
773 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/06/21(土) 13:42:02 ID:UlievxCU
ジョン・ル・カレ「パナマの仕立屋」を読んだ。 英国秘密諜報員が名物男ともいえるパナマの仕立屋へアプローチ、 彼氏の触れられたくない過去と金銭的な窮状につけこみ間諜に「仕立て」あげるのだが・・・ 刊行当時はタイムリーだったパナマ運河返還ネタ、ベルリンの壁崩壊、ソ連解体等 東西冷戦の完全終結により、今後のスタンスが注目されたスパイ小説の大家の手になる作、 このミス等でも高評価(大家への御祝儀の意もあったか)であったが、 結論から言えば、長過ぎ、地味過ぎ、ネタに馴染み薄過ぎ等で日本人には面白くない。 運河返還に絡んで日本人暗躍エピが登場するものの、メーンキャラで日本人が登場するわけ でもなく添え物に過ぎない感があるし、そもそもパナマはキューバあたりよりも更に日本人に とって遠い存在であり、帽子・運河・ノリエガ程度しか思い浮かばないのが通常であろう。 この国と複雑な利権絡みの歴史を持つ英米とは大きく事情が異なるのである。 また、ネタそのものはともかくとして、じっくり書き込み過ぎる点も現代スリラーには不可欠とも言い得るテンポを欠く因となっており、ル・カレが「古い作家」であることを実感させてしまう。 時代に迎合する必要はないが、ある程度は時代に合わせるのもプロのエンタメ作家のなすべき 仕事かと思う。更には読み辛い翻訳も難。
774 :
名無しのオプ :2008/06/21(土) 17:39:03 ID:4kI1UKM7
書斎と読後感では雲泥の差があるな。もちろん書斎の勝ち。
775 :
名無しのオプ :2008/06/21(土) 17:40:16 ID:BnPpK326
どう見ても書斎のほうが屑でしょ。
776 :
名無しのオプ :2008/06/21(土) 20:02:23 ID:3qo0iFVr
>>773 僕の読後感とだいたい同じなんだけど、ただひとつ、「読み辛い翻訳も難」だけはちょっと訳者に気の毒だという気がしました。
ル・カレの英語は、ネイティヴにとっても読みにくい代物で、読者層がホワイトカラーに偏っている作家です。
まあ、誰が訳しても超訳でもないかぎりあんなところじゃないでしょうかね。
777 :
名無しのオプ :2008/06/21(土) 20:23:58 ID:7EvQyTrs
また自演かw
778 :
名無しのオプ :2008/06/21(土) 22:15:15 ID:q0184CPe
まあ、英国ものスパイ小説は日本人になじみ薄いのしょうがないとは思う。 ル・カレは寒い国からとスマイリー3部作は神クラスだけど、他は並かな。
779 :
名無しのオプ :2008/06/21(土) 22:35:53 ID:+ZqxdL/7
急に荒らしを構う人が出てきてますね。 実に自然な風景だなあ(棒
780 :
名無しのオプ :2008/06/21(土) 22:53:46 ID:UzQEBreb
ホワイトカラーの読みものを読んでる→知識人→偉大だなあ ってことがやりたいだけですね 作家や読者の学歴や階層を無意味に指摘して差別したり誇ったりするのはいつもの手口だし
781 :
名無しのオプ :2008/06/21(土) 23:14:31 ID:SLWu0Sj9
で、荒らしをスルーできない人が書き込む、と
782 :
名無しのオプ :2008/06/22(日) 00:01:27 ID:LBmmP7We
|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|| || ○荒らしは放置が一番キライ。荒らしは常に誰かの反応を待っています。 || ○放置された荒らしは煽りや自作自演であなたのレスを誘います。 || ノセられてレスしたらその時点であなたの負け。 || ○反撃は荒らしの滋養にして栄養であり最も喜ぶことです。荒らしにエサを || 与えないで下さい。 Λ_Λ || ○枯死するまで孤独に暴れさせておいて \ (゚ー゚*) キホン。 || ゴミが溜まったら削除が一番です。 ⊂⊂ | ||___ ∧ ∧__∧ ∧__ ∧ ∧_ | ̄ ̄ ̄ ̄| ( ∧ ∧__ ( ∧ ∧__( ∧ ∧  ̄ ̄ ̄ 〜(_( ∧ ∧_ ( ∧ ∧_ ( ∧ ∧ は〜い、先生。 〜(_( ,,)〜(_( ,,)〜(_( ,,) 〜(___ノ 〜(___ノ 〜(___ノ
783 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/06/22(日) 09:44:57 ID:L1zieMWf
アラン・グリーン「くたばれ健康法」を読んだ。 健康体操の大家が密室状態で銃殺された。 プールからの閃光の目撃者いたが、なぜか人影は見ていない。 終盤で「お前はデューク東郷か!」風のジョン張り(ゆえに強引な御都合主義もある) のトンデモトリックが炸裂、呑ん兵衛同士の探偵談義もそれなりにクスリとさせはするものの、 全体評価した場合、ユーモア・ミステリとまでは言えるか否か、キャラ立ちしている人物は多いが、 さほど笑える要素は見受けられないのである。 これは007シリーズの翻訳者として知られる井上一夫氏の訳文が抑制が効いたスタイリッシュな もの(ただし、こなれた訳文で非常に読み易い)というせいも影響しているのだろうか? そう言えば、バウチャーがユーモアと本格ミステリ融合の成功例として本作と双璧として挙げている ジョンの「盲目の理髪師」(「訳者あとがき」によれば井上氏は本作は別なタイプと把握しているようである)も井上訳、ラストの道化役であるはずの警部の退場が妙にカッコ良過ぎる感があった。 NHK朝ドラ「わたしの青空」で結構周知されるようになったラブ・チャイルド(中盤から登場する 本作のトリックスター)というネーミングに関しても、翻訳時点では何らかの注釈を付すべきでは なかったろうか。
784 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/06/22(日) 09:45:36 ID:L1zieMWf
マーク・マクシェーン「雨の午後の降霊会」を読んだ。 恩田陸が推していたのを見かけたことがあるので手にしてみた。 「待ち受ける最終7ページの衝撃」の惹句にも期待したのだが、 たいしたことがないというのが印象。 ヒロインの霊媒マイラの特殊能力が犯罪を意図する動機となり、陥穽ともなるというオチで、 別に衝撃って程のものではない。 犯罪計画は緻密なほどサスペンスも盛り上がるのだが、マイラと年下の旦那ビルによる少女誘拐 は杜撰でその場しのぎの面が目立ち過ぎ萎えることこの上ないし、 後半のこの夫婦の鬼畜化してゆく展開もバッド・テーストそのもの。 ボリューム的にも文庫本230ページと、大きな期待は禁物な正に読み捨てミステリの典型であり、 本作の出来を見れば、現在は品切れ、他にも50冊以上ある(解説より)というこの作者の他作も 全く未紹介のままなのも当然至極と言い得よう。
785 :
名無しのオプ :2008/06/22(日) 11:03:11 ID:pU7B1kCV
まあ あれは植草甚一さんのおかげで題名が残ってるような作品だからなあ
786 :
名無しのオプ :2008/06/22(日) 11:05:22 ID:pU7B1kCV
776は荒らしじゃないんじゃないの? 実際にル・カレの英語は読みにくいよ、いまの日本人がアメリカ英語に慣らされてるせいもあるけど。
787 :
名無しのオプ :2008/06/22(日) 12:51:40 ID:Z6p6iY0k
788 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/06/28(土) 14:19:33 ID:BLlVpYML
「ジェゼベルの死」を読んだ。 定評がある本格ミステリの古典と言い得る作で俺が未読だったのでは本作ぐらいかと思う。 ポケミスは目にした記憶は無いし、文庫も品切れになって久しく、 今回、大規模古書店にてようやくゲットした次第である。 結論が言うと、入手難ゆえ高評価され過ぎているという感が無くも無い。 不可能犯罪トリック(無人のはずの塔での絞殺後の転落)もかなり強引な物理的小技であるし、 錯綜する多彩なキャラも解説が言うレッド・へリングを成すよりも、テンポの悪さを助長してしまって いるという感が強い(「はなれわざ」「緑は危険」等も読んだが、この作家はアガサのような 語り上手、ストーリーテラーではない) 最後に来て、横溝御大やジョン好きにはドロドロな動機、 グロなトリック(ジョンの短編でも指摘されているが「匂い」の問題が大いに疑問や)が 明らかにされるのが読みどころか。
789 :
名無しのオプ :2008/06/28(土) 14:35:02 ID:KgWaBPqr
中学生並みの読書力しかない八流ニートの林、いいかげん さんざん読んだ読んだと自慢していたフリーマンの倒叙型 推理小説と、コロンボの元になったクィーン作品は読んだのか? まともな人間はみんなお前を小学六年生並みだと認識してるぞw
790 :
名無しのオプ :2008/06/29(日) 16:21:21 ID:rABFgrMW
レオニー・スヴァン『ひつじ探偵団』(早川書房) アイルランドの寒村グレンキルで、羊飼いのジョージが殺された。 主人の無念を晴らすため、「世界一賢い」羊のミス・メイプル、 “鯨”のモップル、サーカス出身のオテロらが捜査を始めるが……。 羊ミステリ。作者はドイツ人。本国ではベストセラーだとか。 ここに出てくる羊は、極端には擬人化されていない。 人間の言葉を一部理解したりはするが、一応リアル路線だ。 そのため、彼ら独自の考え方、価値観で行動する。 推理がずれているのが端からわかる。 それがもどかしくもあり、まあ、可愛くもある。 謎ときのカタルシスは薄く、ミステリとしては凡作。 羊好きな人が、羊に萌えながら読むのが正しいかと。 個性的な羊がたくさん出てくるのはいいとして、少しくどく感じた。 少なくとも人間の視点パートと、羊の視点パートは分けてほしかった。 あちこち主体が移りすぎて何が進行しているのかよくわからない箇所もある。
「毒の神託」ピーター・ディキンスン(原書房) 灼熱の砂漠にそびえる異形の宮殿で起きた謎の“相打ち”事件。 これが種族間戦争の引金になりかねない事態を憂慮した心理学者モリスは 事件の鍵を握っているであろう女性テロリストと未開人を追って 相棒の天才チンパンジーと共に敵地へと乗り込むのだが……。 初ピーター。かなり異色な話だなあと読み始めたところが中々 座りが悪くて喃。特殊な土地柄で必ずしも論理性が重視されず、 それどころか言語表現すら未発達という有り得ないという状況下で 猿と幼女を抱え孤軍奮闘する「死の相続」以上の苦境に立ち向かう 主人公の冒険は見応えがあるけれども、中盤の探索行が長すぎてダレル。 もちろん事件解決に必要な面もあるが、それにしてももう少し 刈っとして貰いたい。独特な世界観や概念を構築する能力は作家にとって大事だと思うが それを全面に出されると時にウザく感じる。真相がショボいのも残念。 ヒロインや日本のスッチーは本来寿行的なのにそこはイギリス紳士 邪魔をした。
「シャーロック・ホームズの栄冠」北原尚彦編訳(論創社) 名だたる作家達によるパスティーシュ&パロディ短編集。 1編1編が短くて良い。ただ注釈をまとめるのは止めて欲しい。 各編のラストで良い。 テーマ毎に5篇に別れており、それぞれ味があるのだが、いかんせん シャーロキアンじゃないもので雰囲気で評価するには限界がある。 かと言ってミステリとして優れているものを選ぼうとしても結構難しい。 そんな中、アーサー・ポージスのシリーズはバカミスとしておもろ〜。 他にも赤ずきんの新解釈をする「おばけオオカミ事件」 (アントニー・バウチャー)、まさかの事件の顛末「第二の収穫」 (ロバート・バー)、同郷の英雄との厳しい対決を描く 「シャーロック・ホームズ対007」(ドナルド・スタンリー)、 そしてどこか幻想的で、かつ爽やかな余韻を残す奇妙な味の 「サセックスの白日夢」(ベイジル・ラスボーン)等が残心した。 ただ、「一等車の秘密」(ロナルド・A・ノックス)は18ページと 20ページの記述に矛盾があるやうな。 後他の探偵の語られざる事件も読みたいな。半パイントの小エビ 消失事件とか。
「ジェームズ・ディーン殺人事件」ロバート・S・レヴィンスン(扶桑社) ジェームズ・ディーン記念切手発売の式典にジェームズ・ディーン そっくりの男が乱入。ゲストの俳優を射殺して逃走した。 同じくゲストとして現場に居合わせた女優ステファニーは 友人の復讐に燃え元夫のコラムニスト、ニールを巻き込んで 犯人を追った! この21世紀にまさかの2作目スタート。シンジラレナ〜イ。 凄い多作家ならまだ解るが4作っきゃ出てないし、作者の意向でもないし、 特に日本向けの内容でもないし。何故当然のことが出来ないかね。 こんなイミフなことやってるからイヴァノヴィッチにも逃げられんだよ。 閑話休題。話は面白い。殊に主役の元夫婦カップルが良い。お互い 惹かれるものは十分残っていながら実体のない何かが障壁となって 微妙な関係に甘んじているというね。掛け合いも○。これは良い ニヤニヤ・ミステリー略してニヤミスを見つけたわい とほくそえんだところが冒頭に戻るわけですよ。ほんとにもンガー! 事件のプロット自体は大したことはないが前述のキャラクターと ハリウッドネタで読ませる。しかしこれ大丈夫なのかな……。 後ヒロインのサービスシーンなかもあり。色んな意味で楽しみな シリーズなのだが、刊行から一年半経ってるのにまだ続刊がない というのは不安だ……。 そういや以前早川から似たようなシリーズが出てなかったっけ。 女優と探偵の元夫婦もの。ロバート・ウェストブルックか。
「大聖堂 上中下」ケン・フォレット(新潮社) 12世紀のイングランド。王位を巡って内乱状態の中、敬虔な修道院長 フィリップは現実的かつ厳格な改革を進めようとするが、 それは強力な世俗権力と私利私欲に奔る上司との永い対決の日々の 始まりであった。一方、大聖堂を建てることを生涯の目的とする 建築職人トムはフィリップの元で仕事に励むことになるのだが……。 ミもフタもないことを言ってしまえば、この手の年代記と言うのは その形式である程度面白く感じ得る。ただ、本作はそれプラス キャラクターが良い。各々の属性が単純に固定されていないから ストーリーに広がりが生まれるし、特定の人物に感情移入することなく 場面場面を引いて眺めることも出来るわけである。例えばエロシーンで 心置きなく抜けるw ただ、巻を措く能はずという程のリーダビリティは無いかも。 長いスパンで読んで。 追伸 特殊な漢字を濫用する訳文がちとウザイ。やり過ぎると陳腐。 追伸の追伸 注釈でネタバレしてたのが? 読者は日本人だからね。
「薄灰色に汚れた罪」ジョン・D・マクドナルド(長崎出版) 親友タッシュの不可解な死に疑問を感じたトラヴィス・マッギーは 仲間たちやタッシュの妻と共にタッシュを追い詰めた権力者達に 復讐を敢行する。 元帥かジョンDかってぐらい。ツンデたはずの「濃紺のさよなら」が ドコジャイカに行ってしまったので飛ばして。 なんかノリにくい文章だなぁ。一人称が空回ってんだよね。 はよ本題入れやと。セリフ少ねーし。内容もハードボイルドかと思えば コンゲームもので、数字がダラダラと並んであんま面白くない。 もっとアクションが欲しかった。恋人との関係も掘り下げが足らないから 感じ入れなかった。
「ドイル傑作集T―ミステリー編―」コナン・ドイル(新潮社) ノンシリーズ短編集。フェアではない古いタイプの本格もの。 ベストは『時計だらけの男』。列車内で男の死体か発見されるが、 車掌は彼に見覚えがなく、逆に3人の乗客が消え失せていることが判る。 謎が魅力的だし語り手が仮説を披露したりするのも面白い。 他にも列車が丸ごと消失する『消えた臨急』や、真相が味わい深い 余韻を残す『漆器の箱』、感動のロマンス『五十年後』等があるが、 中でも『悪夢の部屋』にはびっくりした。ドイルがこんな話を 書いていたのか!
「偶然の犯罪」ジョン・ハットン(早川書房) 生真面目で厳格な教師コンラッドは気まぐれに女性を車に乗せたことから 殺人犯の疑いをかけられてしまう。折しも大事な面接を控えていた コンラッドは警察に偽証してしまい、それが彼を更に追い詰めていく。 典型的な巻き込まれ型サスペンスかと思いきや、微妙に異なる。 主人公は率先して疑いを晴らそうと動くわけでもなく、警察から 逃げ回るわけでもない。ただ、苦しい状況に翻弄されているだけ。 それに、騒動の発端となる行動がやや不自然に感じた。 主人公は上司からは嫌われ同僚からは足を引っ張られ妻は年下の男と 密会を重ねているという、出だしから下り坂。しかしミステリーで ある以上何かあるだろう。読んでいくとあっけない幕切れ…… と思いきや、「あっ」と思わせる仕掛けが。これは数年前話題になった ある作品の広義の先駆やも?
798 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/07/05(土) 15:31:35 ID:ArZazkVj
モーリス・ルブラン「ルパンの告白」を読んだ。 堀口大学の名調子によるルパン傑作集中の1冊、ルパンが怪盗ならぬ名探偵ぶりを見せる 短編集である。 南洋一郎によるジュブナイルも相当なイケイケだったが、 これに劣らない、否、それ以上にマイペースな訳はルパン好きにも評価が分かれるところかと思う。 正直言うて、このような作を手に汗握って読んでいるのは厨房臭さが抜けないアホだけだと断定 して差し支えなかろう。 では、大好評につき全話講評逝ってみよう!! 「太陽のたわむれ」 気だるい感があるタイトル良し、白昼が舞台にもかかわらずミステリアスなムード良しの作だが、 フランス語がわからないと謎解きが楽しめないのが難。 終盤のグロい展開は意外、ルパンの良い意味(?)でのタフな悪党ぶりもジュブナイルには 見られない魅力となっている。 回顧談とはいえ、ルパンの一人称がいきなり「わし」なのには思わず笑える。 「結婚リング」 人生の機知(注 キチイではない(w )を感じさせるちょっとモーパッサン風のオチが効いている 一編。 こういう粋なタッチの作を見ると、大衆作家とはいえ、やはりモーリスは仏作家なのだと実感させる ものがある。 「影の指図」 いわゆる宝探しネタだが、最後のアルセーヌの述懐が印象的。 謎解きは巧く「創り過ぎ」ている感が強いが、ラストへの展開がこの時代のフランス短篇小説 らしさがある。 「地獄罠」 ラストのアルセーヌの台詞をはじめ展開が本家よりもアニメ版ルパン三世風、 やはり自惚れの強さは爺さん譲りか(w
799 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/07/05(土) 15:32:11 ID:ArZazkVj
「赤い絹のショール」 メーンは残忍な事件の謎解き(タイトルもヒント)、ガニマールをおちょくり過ぎなアルセーヌ等、 意外に後味が良くなく、自分は好きくない作であった。 「うろつく死神」 これもラストのガニマールの扱いが気にいらない面もあるが、どんでん返しの興趣はある作。 「白鳥の首のエディス」 時代設定が古いとはいえ、漫画ちっくなどんでん返しが楽しめる作。 馬鹿に成りきって読み込めば面白く、楽しめるのではなかろうか。 「麦がらのストロー」 人間消失ネタ、正にジョンまがいのバカトリックが炸裂する。 ゆえに「ミステリ」をお遊びとして把握すれば面白かろう。 「ルパンの結婚」 ある意味でショッキング(?)なタイトル。 アニメ「カリオストロの城」の原初ネタか、真にアルセーヌが盗んでいったものは・・・というわけだ。 ただし、ヒロインはクラリスのような美しい生娘ではなく、 ロマンス小説を耽読するブサイコな独身30女、 ナウく表現すれば腐女子(ただし、目は綺麗で性格は良い)という設定が妙にリアルである。 人生の哀感を感じさせるようなラストがイカしている。
800 :
名無しのオプ :2008/07/05(土) 16:37:03 ID:zELpSEji
読後感氏の感想は読み甲斐があるよなあ 馬のとはえらい違いだw
801 :
名無しのオプ :2008/07/05(土) 17:00:37 ID:o+7eQHlT
いくら書斎がクソとはいえそれはない
802 :
名無しのオプ :2008/07/05(土) 18:23:53 ID:aSXkxTj7
馬人みたいに指導と称してアホな自己見解を押しつけてこない分 読後感のほうがマシだというレベルだな。
803 :
名無しのオプ :2008/07/05(土) 18:34:13 ID:XyrDLeFL
つうかイチイチ判りやすい反応してやるなよ
804 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/07/06(日) 15:19:28 ID:OEsCMH4i
ウィリアム・ゴールドマン「殺しの接吻」を読んだ。 ハリウッド稀代のライターの手になる作、ボストン絞殺魔事件という実話ネタ(「あとがき」より)が 存するとはいえ、64年当時に、これ程現代的なサイコ・ミステリを書いた才はさすがとしか 言い様がない。 犯人は勿論のこと、彼(と称して?)を追う刑事(探偵役とは言い難い役回り)もどこか病んでおり、 全ての事件の背景に母親との確執が存するという現代的な展開は、シナリオライターらしい 会話主体の無駄がない描写、手頃なボリューム等もあいまって一気に読了させるものがある。 終盤でこの作者の代表作であり映画化もされた「マラソンマン」(書かれたのは本作より後だが)を 想起させるようなスリリングな都会の追っかけエピが挿入されるのも、思わずニヤリとさせられる。
805 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/07/06(日) 15:20:05 ID:OEsCMH4i
マーヴィン・アルバート「セメントの女」を読んだ。 前記したW・G程メジャーな存在ではなかったが、この作者もハリウッドのライターである。 (「あとがき」に挙げられている作を見ると、「ゴーストタウンの決闘」「ガンクレイジー」 「砦の29人」「ザ・ファミリー」「ジェリコ」等B級の上程度の作が多い) シナトラ主演のB級探偵映画(としか言い様がない出来)を記憶している向きもあるやもしれぬ。 主人公は刑事上がりの私立探偵アンソニー・ロームことトニー、 ダイビング中、海底で足にセメントの重しを付けられて沈められた美女の死体と遭遇したことから、 奇怪な事件へと巻き込まれてゆく・・・ 原作プロパーな臨場感溢れるロームのマイアミビーチ逃避行は最大の読ませどころであり、 意外にも丁寧な取材の痕跡を感じさせる。 カーター・ブラウンの軽ハードボイルドをややハードタッチにした感があり、 ハメットあたりの大御所の作のような風格には程遠く、スピレイン作品程の迫力は無いものの、 気軽にぐいぐい読ませるだけのものはあり、 120円の缶カフェに大きな期待をする者はいないのと同様、それなりの面白さは保証された一編、 「ま、世の中こんなもんだ」とあるとおり、シニカルでちょっと洒落た結末が効いている。 各人、心して読め!
806 :
名無しのオプ :2008/07/06(日) 15:25:57 ID:fGn0PI4/
あとがきに書いてあることしか書かれていない件
807 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/07/06(日) 15:45:30 ID:OEsCMH4i
>>806 あまり甘やかすのもよくないようなので。
具体的に引用して批判してみ(w
出来なければ荒らし行為を謝罪し退場したまえ。
808 :
名無しのオプ :2008/07/06(日) 17:45:48 ID:aA/NQs0Q
>>806 今はNGにしてるからわからんけど馬の自称論考のことか?
それならいつものことだよ、珍しくもない。
俺も以前(NGに指定する前)にされに気付いたし、過去スレで誰か他の人も指摘していた。
ただあのアホウは後書きや解説をそっくりそのまま書き写すわけじゃなく
多少適当に改竄しているから元の文章とは一見違っているように見える。
そうすることで「全く同じというわけではないからパクリであるということにはならない」
といい逃れようとしているし、実際そういう言い訳をしていた。
奴の理論によれば、一字一句同じでなければパクリではないらしい。
809 :
名無しのオプ :2008/07/06(日) 18:01:26 ID:Enjo7FPw
問題はそんな(すぐにバレるような)ものを、自身の存在証明として コテハンで、それもわざわざageてまで書き込むことの意味不明さだな。 普通に読んで普通に感想上げればいいものを、とにかく数を挙げて いれば認められるとでも思ってるんだろうか。この板で己の痴態を 知らない人間なんて新財ものも含めて、まず存在しているはずが ないことくらいわかっていそうなものなんだが…
「スモールボーン氏は不在」マイケル・ギルバート(小学館) 弁護士事務所に保管されていた金庫から顧客の腐乱死体が発見された。 誰がどうしてそれをやったのか? 新米弁護士ヘンリーは警察と共に真相を探り出そうとする。 表紙のインパクトが抜群。では中身の方はどうかと言えば…… はっきり言って退屈。私は弁護士作家は詰まらないという 偏見を持っているが、本作もその典型例で法的手続きに関するやり口とか 抜け穴漫画みたいな展開は興味沸かなくて困った。法廷劇ならともかく こういうのは勘弁して欲しい。ただ犯人についての伏線は良かった。
「前世療法」セバスチャン・フィツェック(柏書房) 産まれたばかりの息子を失ったトラウマから立ち直れない 弁護士シュテルンは元恋人の看護師カリーナからある子供に 引き合わされる。その子供ジーモンは自分がかつて人を殺したと言い、 実際に死体のある場所まで案内してみせた。ジーモンは前世で 殺人を行ったと主張する。その後謎の人物から脅迫めいた取引を 持ちかけられたシュテルンは、困惑しつつもジーモンの更なる 殺人の告白を検証する羽目になるのだが……。 男尊女卑の豚であるところの私は「ラジオ・キラー」を読む気が起きず、 こちらから。だが面白かった! 正直前半は (こんだけ色々やっちゃったら犯人絞れちゃうだろ! ヤレヤレ これだからミステリー後進国は……) とかため息混じりに読んでいたのだが、見事にスカされた。 フェアとは言えないが意外性を担保しつつ伏線を回収したのは凄い。 ドイツにもやっとこういう書き手が現れたかあ、とかつての同盟国として 嬉しく思ったよ。独ミスは他1冊しか読んでないけど。 こりゃ「ラジオ・キラー」も我慢して読むか。 それにしても本国刊行から半年足らずで翻訳出るって凄いね。 年末ベストじゃ票割れちゃうのに。2冊ランクインのが インパクトでかいという判断? 入らなきゃ狸なわけだけど。
812 :
名無しのオプ :2008/07/06(日) 19:17:52 ID:C87Xh3+f
>>808 解説で触れている部分を斜め読みして適当に感想つけたとおぼしきことも多々あったよ。
本当にその本を読んでいるならそんなふうに考えるはずはない
だってその何10ページか後の記載では違うように書かれているんだから
というパターンをよく見かけた。
>>809 実際読んだとしたら読書以外なにしてるんだ、と言いたくなるくらい感想を垂れ流しているからねこいつは。
813 :
名無しのオプ :2008/07/06(日) 19:57:16 ID:E8Vlf8/J
814 :
名無しのオプ :2008/07/06(日) 20:12:48 ID:C87Xh3+f
>>813 読後感はageちゃいないだろ。
レス先の文章も読めないのかよw
815 :
名無しのオプ :2008/07/06(日) 20:30:35 ID:wKU3hD1x
813はコピペ荒らしであり書斎の“支持者”(実は全て書斎本人w)だよ。 江戸川乱歩スレの281、ディクスン・カースレの567&570を参照すると分かるよ。
816 :
名無しのオプ :2008/07/06(日) 22:51:34 ID:pmYdMgNx
荒らしとその自演をスルーできないやつらは荒らしと一緒
817 :
名無しのオプ :2008/07/09(水) 03:44:29 ID:/jBQBx4c
SJローザン 冬と夜 米ナントカ受賞作。半日で一気読みした。 リディア&ビルシリーズの新作で、今回はビルが主人公。 【感想】 ・いつもは静かなビルの語り口が今回は荒れまくっててちょっと違う。 ・ラスト「自分の手でケリをつけない方式」で納得しづらい。 ・スクールカーストが主題の一部だが、日本のいじめ問題にも共通する陰湿さがじゅーーぶん感じられて気持ちがよくない。(そういうのがニガテ) ・ビルの生い立ちの陰の部分が明かされてるが、一瞬ドロドロな関係を予期した自分汚れてるorz…と思った ・前作からまったく進んでないリディア&ビルの関係はどーしたぁ(`Д´) ちょっといつもと違うので、今後読み返すのには気力がいる。
「ハリウッドで二度吊せ!」リチャード・S・プラザー(論創社) 私立探偵スコットはカワイコちゃんと炭火焼肉の最中に依頼の電話を 受ける。相手は出版会の大物で旧知のハリウッド女優も同席している様子。 相手のオフィスに向かったスコットだったが入れ違いになり 後を追うことに。しかし着いた先には撲殺された死体が転がり その側には依頼人が佇んでいた……。 このシリーズは「おあついフィルム」を読んだはずだが内容忘れた。 うーん、B級ハードボイルドは好きだし発掘作業は応援したいが 本作の出来はイマイチやなあ……。悪事のプロセスは面白かったけど、 真相に魅力が無いし、キャラ立ちも悪くドラマ性が薄いから 読み応えがない。セリフ回しが洒落てるわけでもないし、 軽を通り越して微ハードボイルドって感じ。
「ミステリ講座の殺人」クリフォード・ナイト(原書房) 過去の人となりつつあるミステリーの女王が食い縁を稼ぐために 自宅でミステリ養成合宿を開いた。しかしろくに講義も行われない内に 殺人事件が発生してしまう。被害者は年老いた秘書で、犯行の後 食事の合図のドラが高らかに鳴り響いて凶事を知らせたのだった。 殺される前被害者と女主人は必死に何かを捜していたという。 無能な保安官に業を煮やした一同は犯人を見つけようとするが、 やがと第2の事件が起こることに……。 ロンギヌスが怖くて避けてたけど何となく読んでみた。プロットとしては 凡庸な出来で、何か目玉となるトリックがあるわけでもないし、 そもそもCCじゃないのに誰一人帰ろうとしないのもおかしい。 しかし一番の瑕疵は重要な謎の一つが解明されないこと。 いや、一応解明されるんだがもしそれが正解だとすると、 却ってマイナスになる可能性の方が強いと思う。あと巻末の 手がかり索引はちょっと無理くり感が漂っている。 良かった点は探偵のキャラ。超然としているわけではなく 感情の起伏もあるし、天才型ではなく皆と同じ目線で推理しているのが、 新鮮に感じられた。
820 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/07/12(土) 16:08:31 ID:KrwhaNFT
デイヴィッド・グーディス「ピアニストを撃て」を読んだ。 トリフォーの映画化作品で知られるとおり、フィラデルフィアを舞台にしたアメリカン・ミステリで ありながら、安酒場で働く失意のピアニスト、これまた失意のレスラー上がりの用心棒、 闇の仕事に従事しているらしいピアニストの兄たち、彼らを追う2人のヤクザ者、 これに用心棒を愛人とするピザな女酒場経営者、ピアニストを慕う若いウェートレス等の女性陣 が絡む、メーンキャラを見てもわかるとおり、雰囲気はまるでパリを舞台にしたフランスのノワール と言うてもおかしくないものであり、後にトリュフォーにより映画化されたのは判らないでもないが、 脚色は控えアンリ・ベルヌイユあたりに本格的なシネ・ノワールとして撮って欲しかった気がする。 裏町のいわゆる負け組の人々の姿がビビッドに描かれており、最近読んだポケミス中では 最も文学的テーストに富んでいる反面、謎解きや派手なアクションは皆無、 内面に秘めた凶暴性を持ちながらも、リベンジという言葉を忘れたかのような 主人公(2人の女性の運命に対する彼氏の行動で明瞭にわかる)の受身な生き方等、 強い人間ドラマの魅力で読ませる作と言い得る。 文学恐怖症のミスオタたちよ、心して読め!!
821 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/07/12(土) 16:09:07 ID:KrwhaNFT
ローレンス・トリート「被害者のV」を読んだ。 警察小説の古典でありながら、21世紀も数年過ぎてやっと邦訳紹介された作。 今、読むと地味過ぎて途中で退屈してしまうが、(これはヒラリー・ウオー作品等にも共通する ことだが)科学捜査が当時としては珍しかったのであろう。 完全な脇で他の刑事(上層部も含む)たちも登場するとはいえ、 分署の捜査課の中堅刑事と鑑識の若手刑事という異例なコンビがメーンキャラとなって、 轢き逃げ事件と関連がある殺人事件を追う展開であり、 まだ87分署シリーズ(後期はキャレラばかりクローズアップされている感はあったが)のような 本格的な集団捜査小説の面白さ、今はフロスト警部シリーズでおなじみ複数犯罪を追う モジュラー・タイプの魅力は見られない。 猫殺し(?)のトリックが本格ミステリ風で面白いものの、今となっては本格的警察小説の先駆という歴史的意義のみ評価すべき作という感がある。 もっと早く(70年代ぐらいまで)に紹介されていれば別だったかもしれぬが、 シリーズ作品でありながら、翻訳の後が続かなかったのは仕方なかろう。
822 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/07/13(日) 17:42:28 ID:H4jshV/z
リチャード・ドハティー「刑事マディガン」を読んだ。 ドン・シーゲル(以下「シゲル」と略す。水木ではない(w )の映画化作品(60年代)で 知られる作だが、原作が翻訳されたのは2003年と半世紀近くたってからになってしまった。 薄手のアクション主体のペーパーバックミステリを予想していたのだが、 (映画のタッチはむしろシリアスでシャープだが、シーゲルのタッチに脚色されているのではと 思うていた) 映画以上に、堂々、重厚感溢れ、読み応え十分(ポケミス400頁超)な警察小説の傑作であり、 翻訳がここまで遅れたのが不可思議な感がある。 現場の刑事・警察官の姿を綴った作は数多いが、警察トップ(NY市警本部長)の職を 公私に渡りここまでリアル、かつ、ビビッドに描いた作を寡聞にして知らない。 この主人公の本部長トニー・ラッセルをはじめとして、とにかく登場人物の様がリアル、 一例を挙げれば、孤高の人のようでありながら自宅と別にアパート暮らし、年下の愛人と 浮き浮きと密会を繰り返す主人公、浮気相手のおならに脱力してやる気(?)を無くしてしまう プライド高過ぎなマディガン夫人等々、枚挙に暇がない。 (原作評価に徹した場合には余談になるがマディガン本人は長身でハンサムという設定で、 映画版の強面風のリチャード・ウィドマークのイメージとは大分異なる。 だが、裏表紙に掲載されている原書ポケットブックス版表紙に描かれたマディガンは ウィドマーク風というのが面白い。映画を意識したものであろうか。 これに対してヘンリー・フォンダ演じるラッセル本部長は正に原作どおりのはまり役であった) ただし、そのプロファイルを詳細に描き過ぎてエンタメとしては読み難くなってしまっているのが 難か。
823 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/07/13(日) 17:43:01 ID:H4jshV/z
さて、本作のような重量感ある警察小説の著者に関して知りたく思い解説を見ると、 映画評論家によるエッセイまがいの比較論があるのみで、原著者に関する記述は一切無し、 思わず、早川逝ってよし!という感を持った。 なお、直接に本筋には関係しない細かい点ではあるが、本編を読むと登場人物表の記載に 疑問が感じられるものあり、ある意味で事件のキーパーソンともなる可愛いラテン娘ロジータは 犯人バーニーの恋人ではなく娼婦、せいぜい一時的な愛人といった存在だし、 マディガンの愛人である優しいジョーンジはフレイムクラブの看板娘とあるが、 必ずしも間違いではないとはいえ、30近い(年齢は明記されていない)子持ち女、 ホステスぐらいの記述が妥当かと思う。
824 :
名無しのオプ :2008/07/14(月) 11:49:24 ID:kDMvEyYw
好レポ乙 そやけどネタバレにならんように頼みまっせ
825 :
名無しのオプ :2008/07/14(月) 14:49:12 ID:Df9FiJNW
書斎の書評はロハで読めるからね。 金出すよりはるかに価値があるにもかかわらず。
826 :
名無しのオプ :2008/07/15(火) 05:28:26 ID:kCYqkJEG
デイヴィッド・ハンドラー「ブルー・ブラッド」 ホーギーシリーズは大好きだったんだが、最後の2、3作は退屈で途中で読むの止めたから 今度の新シリーズにも大して期待してなくて、ふと目に留まって古書にて購入 しかし久しぶりにこういうキャラが立ってるミステリーシリーズ読んだので意外に面白かった 前シリーズ同様、ミステリー部分は弱いけどドラマや会話で読ませる オタクっぽいユダヤ人の映画評論家と黒人女性刑事のコンビはなかなかユニーク 恋の行方も気になるので次作以降も読んでみます
827 :
名無しのオプ :2008/07/15(火) 15:15:10 ID:DCVG2pBA
ジル・チャーチル「ゴミと罰」(創元社文庫) 隣家の掃除婦が殺されて容疑は近所の主婦一同に。 子供の送り迎えや集まりの為の料理の持ち寄りとか日本と変わりない 日常が楽しい。 外国でも姑問題はあるんだな。 持ち寄り料理がどれもおいしそうだった。
828 :
名無しのオプ :2008/07/15(火) 21:37:33 ID:ZtY2BMR2
"Transgressins"(Anthorogy) ウエストレイクとモズリーの中編が入ってた。 ・Waliking Around the Money (Donald.E.Westlake) ドートマンダーシリーズの中編。冴えない中年泥棒と組むことになった ドートマンダー&ケルプは完璧に見える犯罪計画に何か腑に落ちない ものを感じていたのだが、その行方は? 小味な読後感。スピード感がありけっこう面白かった。 ・Waling the Line (Walter Mosley) 書記のアルバイトに募集したジャーナリスト志望の黒人コロンビア大学生が 体験したものは・・・ 設定が突飛すぎて、観念の操作に終始しているような感が否めない。 中編のわりに登場人物が多すぎてまとまりがなく、とっちらかった印象。 好きな作家だけどイタダケません。 もうひとつエド・マクベインの中編が入っているけど未読。
829 :
名無しのオプ :2008/07/15(火) 21:42:00 ID:ZtY2BMR2
ああ、ミススペルしまくり Transgressins→Transgressions Waling the Line→Walking the Line です。すみません。
「Tバック探偵サマンサの事件簿 毒入りチョコはキスの味」 ジェニファー・アポダカ(ソニー・マガジンズ) 理想的だと思っていた夫の死後、彼が浮気と借金を重ねていた ろくでなしだったと判ったサマンサは心機一転、髪を染め、豊胸し、 ミニスカにTバックのセクシーウーマンに大変身。保険金で買い取った 恋人紹介所を何とか切り回していた。 そこに突如現れた謎の男。サマンサは「夫が奪った金を返せ」と 脅しをかけられスタンガン気絶させられてしまう。亡夫には一体 どんな秘密があるのか? 家族を守るためサマンサは立ち上がる! このタイトルで読まない奴は漢じゃない。 本作の設定――人生をやり直したいちょっぴりドジな三十路女性が、 ハンサムな刑事と探偵に助けら(翻弄さ)れながら事件を解決する――を みればピンとくる人も多いと思うが、イヴァノヴィッチの影響を 受けているみたい。もっともあれほどぶっ飛んだキャラクターは 今のところ出てきていないけれども。 しかし、勝っている点もある。それは一言で言うなら“潔い”点。 詳しくはここでは書かないが、この点は評価したい。使える。 あとミステリーとしては事件の結びつきが甘かったかな。 シリーズものということで邦訳が待たれると奥付みれば2年前……。 んもー、同じようなロマンス小説はバカスカ出す癖に こういうユニークなのは足止めてどゆこと!?
「ジャマイカの烈風」リチャード・ヒューズ(晶文社) ジャマイカに移住していたソーントン一家はある時ひどい暴風雨に 見舞われ甚大な被害に遭う。夫妻は子供達をイギリスへ帰すことを決める が、船が海賊に襲われ子供たちは拐われてしまう。果たして彼らの 運命は――? 十五少年漂流記みたいなものかと思ってたら違った。子供たち中心なのは 確かだが、どこか突き放した感じで淡々と進んでいく。ところどころ 危うい雰囲気も孕みつつ――。読後感は不気味でもあり普通でもあり。 後、107ページに名言あり。自分は今でもそう思ってるから困る。
832 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/07/19(土) 17:58:02 ID:fMK+NILj
ウィリアム・ゴールドマン「マジック」を読んだ。 前述した「殺しの接吻」の瀬名秀明のあとがきで高評価されていたので一読してみたが、 作者の趣味(マジック)に関する薀蓄(注 うんちではない(w )披露の作という感が強く、 正直言うて「外れ」であった。 売れっ子マジシャンと彼氏の小道具であるはずの腹話術人形を巡るサイコ・ミステリという 主展開なのだが、この作者にしては先が読めるストーリー。 最後の1頁に来てやっと「ミステリ」足り得たという感があるが、これも軽い短篇のオチ程度の インパクトしかない。
833 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/07/19(土) 17:58:53 ID:fMK+NILj
フランシス・ビーディング「白い恐怖」を読んだ。 これもはずれ。今週末は本に関する「ツキ」が無いようである。 長谷部友親氏の解説に詳しいが、ヒチコックの映画化作品とは人物設定、ストーリーは全くと 言うてよいほど異なるので注意が必要。 この点では、同じポケミス名画座シリーズの1冊でも前述した「刑事マディガン」の場合とは 大きく異なる。 山中にそびえ立つシャトーを利用した精神病院に赴任した若き女医(医大出たて)、 映画ではバーグマンが演じた(ただし新人ではない)ため、非常に知的でノーブルな美人という 印象があるが、原作ではそこそこの美形程度、医学校をぎりぎりで卒業し、 亡父のコネで就職というキャラ、結構、プライドが高いところは西川先生を想起させるような キャラである。 (へタレキャラではあるが薬剤師のギーディングがヒロインのキャラを結構正確に読み取っている のが面白い) このリアルなキャラ設定がややスローテンポな前半を興味深く読ませるものにはなっているが、 中盤以降は見え見えグダグダな展開に終始し、最後にもう一波乱、ドンデン返しを期待していると、 御都合主義とお約束な糞アニメ級のエンディングには失望大であった。
834 :
名無しのオプ :2008/07/19(土) 18:20:00 ID:h7naWTZu
読後感のウザ書評と書斎の見事な論考書評を比べれば 知性の程度がよくわかるサンプルになるな。
835 :
名無しのオプ :2008/07/19(土) 18:24:06 ID:Z83m2Hkz
確かにな
836 :
名無しのオプ :2008/07/19(土) 19:10:25 ID:xDKgDyNI
書斎のは初歩的な間違い多いしな。
837 :
名無しのオプ :2008/07/19(土) 19:55:00 ID:p+GU+tKU
>長谷部友親氏の解説に詳しいが もしかして長谷部史親のことか? ホントに固有名詞が覚えられないんだなw
838 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 12:47:32 ID:ypI6H4gV
たいした間違いじゃないよ。 活字になるときには校正が入るんだしな。
839 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 14:01:50 ID:Dkp1rsWg
活字にもならないし当然校正など入らない2ちゃんのレスで何をバカなことを言ってるんだか。 ネットの掲示板を下書きにして本を出しているんた、といってるつもりなら それはそいつがネットで色々文章をつまみ食いして原稿を仕上げているような 最底辺の書き手であることを遠まわしに主張していることになるんだけどなw
840 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 14:32:51 ID:ypI6H4gV
匿名掲示板など書き捨てで十分なんだよ。
841 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 15:27:50 ID:Dkp1rsWg
書斎のレスは書き捨てレベルのゴミか。 固有名詞がボロボロなんだからどうにも褒めようがないのはわかるが そこまで見下すとはね…
842 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 16:29:08 ID:PoBi31Sn
>>841 おまいのような単なる叩きレスがゴミなんだよ。
843 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 16:36:39 ID:b7CuqJz2
「書き捨てレベル」で「間違いだらけ」のレスは、とうてい「論考」などとは 言えないし、むしろ参照しない方がいいぐらいだよ。間違いなんだから。 「書き捨て」のレスをありがたがる必然性が、どこにもないね。
844 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 17:03:05 ID:PoBi31Sn
書斎の論考はその対象ではないね。
845 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 17:28:50 ID:b7CuqJz2
書斎魔神の書き込み
>>833 に対して、「初歩的な間違いが多い」
というツッコミ(
>>836 )が入り、現に固有名詞の間違い(
>>837 )
が指摘された。
そしたら「本にする時に校正が入るから別にいいんだ」(
>>838 )
「2ちゃんへの書き込みなんか書き捨てで充分」(
>>840 )という
擁護レス(?)がついた。
書斎の書き込みは本にならないから間違いは永遠に間違いのままだし
書き捨てレベルならありがたがる必要もない、という結論が出たね。
>書斎の論考はその対象ではないね。
書斎の「論考」は「書き捨てレベル」で「間違いだらけ」だから
「ありがたがる対象」ではまったくない、ということだな。
846 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 19:06:52 ID:PoBi31Sn
書斎は連載批評の依頼が来るくらいのスゴ腕の書き手だよ。 それが2ちゃんのミステリ板ではロハで読めるんだから、ありがたく思って当然だろ。
847 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 19:38:07 ID:qzO6TpTq
初歩的な間違いだらけの書き捨てなんかで金を取ろうってか? タダだからってゴミをありがたがるほど俺たちはバカじゃない
848 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 20:19:36 ID:lUOEv0kd
849 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 20:49:47 ID:CgAX+DOJ
日下氏のように実際に本を書いているプロの有益な情報ならありがたいが どこで何を連載しているのかも分からない無名人の間違いだらけのレスを ありがたがる訳がない。 金もらっても読みたくない腐れた駄文だし、商業レベルにまったく達して いないのは、いつぞやの編集者氏の折り紙付きだもの。
850 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 21:03:42 ID:dXLEnKWr
もうさ、頼むからお前らも釣られるなよ 何レス浪費してんだよ 本当頼むからさ……
851 :
名無しのオプ :2008/07/20(日) 23:05:50 ID:IoGqKZ8s
もう釣られてるんじゃなくて書斎の相手をすることを楽しんでる愉快犯だろ。
852 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/07/21(月) 00:09:45 ID:Z6s9xfsc
J・M・クッツエー「恥辱」を読んだ。 駄目ミスを連続して読んだ後だと、さすがにブッカー賞受賞作品の凄みを感じさせる作である。 教え子のJDといい仲になり大学を追われた初老の男(大学教授)が娘が暮らす田舎の農場に ひきこもる。その地でクライムあり、色事あり、そして意外な「職」にもめぐり会う・・・ なんか現代日本でもありそうな、無さそうな話なのだが、意外に先が読めず、 犯罪も絡むところからコンパクトに纏まったサスペンス小説としても堪能出来る作に 仕上がっているのはさすがだ。 これならアホなミスオタにも読破可能なのではないかと思い、ここに謹んで紹介する次第である。 表面的には救いが無いものの、ドン引きの暗さにはならないこの作者独自と言い得るテーストに 富んだラストが読ませどころであり、このラストのシークエンスのみだけでも読む価値十分な これは「文学」であると言い得る。 一点気になったのは、鴻巣嬢の訳文は全体的にこなれており読み易くで良いのだが、 あまり使用しないような読み難い漢字がルビ無しのまま目につく部分があること、 これは「嵐が丘」(訳書として全体評価は新訳中でも高なのだが)でも感じたことであった。 この点につき、各人、十分に心しておけ!
853 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/07/21(月) 00:11:35 ID:Z6s9xfsc
チャールズ・ボーモント「夜の旅その他の旅」を読んだ。 意外に収穫があった作品集である。 「トワイライト・ゾーン」や「ヒッチコック劇場」のライターとして活躍した作家のわりには、 本書の収録作品には普通小説といったものが多く、人生の哀感や妙味、アイロニーを痛烈に 感じさせる文学性に富んだものが多いのが予想外であった。 大好評な全話講評逝ってみよう!! 「黄色い金管楽器の調べ」 今風に言えば負け組である主人公ファニー青年に訪れた好運とは・・・ 皮肉なオチが効いた好短篇である。 「古典的な事件」 これも意外性に富んだラストな一編、カー好きなら主人公ハンクの心理がわかるような わかないような、といったところか。 くどくどしたカーに関する因縁話に帰結させなかったのが成功している。 「越して来た夫婦」 これは先が見えるスリラー、それなりにサスペンスフルではあるがそれだけとも言い得る。 「鹿狩り」 ハンティングが広く趣味として定着していれば、日本の会社でもありそうなエピ。 キャラも展開もお約束と思いながらも、主人公の心情に共感してまうのは優れた語りの巧さゆえ であろうか。 「魔術師」 人の良さゆえ、マジシャンとしてタブーを犯してしまう老いた主人公に待つ残酷な展開・・・ 最後に一応な救いが用意され、後味は悪くないこれも好短篇である。 「お父さん、なつかしいお父さん」 タイム・パラドックスねたの短めの作、ねらーが大好きなビッチねた(ただし、ビッチは登場しない。 これはオチに関係する)でもある。途中で結末が見えるのが難。
854 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/07/21(月) 00:12:25 ID:Z6s9xfsc
「夢と偶然」 夢をネタにしたサイコ・ミステリだが、綺麗にまとまり過ぎたスレッサー風なオチが創り過ぎな感が 強く、この作者の持ち味である独自のリリシズムを欠くのが惜しまれる。 「淑女のための唄」 老朽化した客船と老人たちと来れば、これもオチは見えるし、少し甘過ぎで高評価は 出来かねる一編。 「引き金」 名探偵が登場する典型的な短篇ミステリだが、オチがわかり難い面があるのがマイナス。 「かりそめの客」 共作によるSF短篇。ゆえにボーモント風のリリシズムは皆無といってよいものとなっている。 プレジデントをはじめ芸術家が政務あたる世界、人間精神を動力とする宇宙船等、 面白そうなアイデアはあるので、長編として書き込めばそれなりに仕上がった作かとは思う。 「性愛教授」 セックスカウンセラーを主人公にしたエロねた。オチはまずまず面白いが、 副主人公である依頼主カビスンの声質が気になるところ、ここへ伏線を張って欲しかったもの である。 「人里離れた死」 中年ロードレーサーが主人公なこれもミステリとは言い難い作。 主人公の死を予想していると・・・哀愁に富んだラストが印象的。 「隣人たち」 Neighborsと言えば、ジョン・ランディスの不条理コメディの傑作が想起されるところだが、 同題の本作は、人種問題を背景に当時の社会状況を反映したかの如き作、 オチではなく作者の思想を反映したようなラストをエンタメの読者はいかに評価するかという ことであろう。 「叫ぶ男」 ドイツ(*これがミソ)の修道院を舞台にしたサスペンスフルなサイコ・ミステリ。 スケール感溢れるオチも面白い。 「夜の旅その他の旅」 これもミステリとは言い難い作だが、ズージャをやっている連中のビビッドな姿が鮮やかに描かれた表題作だけあって収録作品中随一の傑作である。 バンマスの「思い込み」がわかるような、わからないようなという微妙なところが 何とも巧さを感じさせるものがある。
855 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/07/21(月) 19:52:54 ID:bVGOsv/+
アントニー・バウチャー「タイムマシンの殺人」を読んだ。 日本ではミステリ評論家・アンソロジストとして著名な作者の作品集だが、 本書はダーク・ファンタジー・シリーズ中の1作として刊行されたためか、 ミステリよりもSFやファンタジー風の作が多いのが特色である。 USCとバークレーというカリフォルニア州を代表する、否、全米屈指の名門大学2校を優秀な 成績で卒業し、数ヶ国語に堪能であった名評論家の実作の方はどうかというと、 妙に理屈ぽく、あまり感心しなかったというのが正直なところである。 例によって、大好評な全話講評をいってみよう! 「先駆者」 冒頭に置かれたSSと言うてよいこの一編に関しては、スパイスねたで綺麗に決めている感じで まあまあの出来である。 「噛む」 ホラーだが、キングやクーンツを読んでいる現代の読者には古臭く面白みがないと判定されても 仕方なかろう。 「タイムマシンの殺人」 作者自身承知で書いたであろう掟破りのミステリ。 ドラえもん好きとかが読んだら面白い程度の出来かと思う。 やはり、タイムマシンの如きギミックのミステリへの導入は、やり過ぎで著しく謎解きの興を殺ぐ という感がある。 「悪魔の陥穽」 主人公が弁護士ということもあってか、結局、屁理屈なオチで解決というのも頂けない作。 古臭い三つのお願いネタを長々と読まされた感が強い。
856 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/07/21(月) 19:53:28 ID:bVGOsv/+
「わが家の秘密」 これも一応SFの装いはなされているものの、たわいないホームドラマを見せつけられた感がある。 「もうひとつの就任式」 インテリな作者らしい政治ねた、文学ねた、そしてカレッジ・フットの強豪USCのOBらしい フットボール好きを覗わせる理屈っぽいSFミステリ、凝り過ぎで読み難く、ゆえに推し難い感が ある。 「火星の預言者」 これは米作家らしい宗教ねた満載な作。オチもわかり難く、日本人にはフィットしない感あり。 「書評家を殺せ」 顔を影に隠した男の正体は何だったのか?これがミソでしょ。 理屈っぽい作が連続した後だと、気軽に楽しめる小品ではある。 「人間消失」 着衣だけ残して中身の人間消失、このトリックの解明(案)はジョン・スラディック風なバカミス として楽しめるが、肝心の本筋が今ひとつか。 「スナルバグ」 これも悪魔が登場するファンタジーだが、軽快な展開は買えるものの、 当時の新聞発行事情を知らないとオチそのものが楽しめないのが難、このマイナスポイントは大。 「星の花嫁」 読者の思い込みを狙ってオチへ持ってゆくことを狙ったと思われるSFショートショートや。 火星人=緑の肌という設定が時代を感じさせるものがある(バロウズの影響か) 「たぐいなき人狼」 収録作品中の最長作品。表題作にしてもよいくらいである。 魔法使いにより人狼に変身する術を会得した大学教授をめぐる奇想天外なストーリーで、 「有り得ねぇ」とか思いながら、語りの巧みさで一気に読ませはする。 他作に見られるような妙な理屈っぽさがない現代ファンタジーに徹しているのはグッド、 だが、「人狼」と「狼男」の概念は異なるのではないか? この点を才人バウチャーが混同している感がある点は気にかかった。
857 :
名無しのオプ :2008/07/21(月) 20:41:34 ID:IDS4Zuww
ミス住は速読法でもマスターしているんだろうな。たいしたものだ。
858 :
名無しのオプ :2008/07/25(金) 21:39:38 ID:xkBHetc4
Car Hiaasen "Nature Girl"(2005) 一般向けとしては「復讐はお好き?」に続く作品。ハイアセンの得意、というか ワンパターン?アホバカキャラが炸裂。もっともイカレ具合がいくぶん抑えられ 微妙な狂気みたいなのを感じさせる登場人物が多い。 例によってフロリダ物ではあるけれど、一応完結物みたいでアノ人物は登場せず。 関係なさそな登場人物が、徐々に交錯していくところは非常に面白いが、惜しいかな 後半ややダレた印象。自然保護の主張は露骨な形ではほとんどでてこないので 小説の進行としてはナチュラルなかんじでグッド。 アホキャラに見えた人物が実はdescentで調和の取れた人格だったという設定は 面白かった。
「高く危険な道」ジョン・クリアリー(角川書店) 第一次世界大戦で活躍したパイロット、オマリイはとある富豪令嬢から 依頼を受け、ロンドンから中国までの長距離飛行をすることになる。 彼女の父が将軍に人質にされており、期日までにある品物を届けないと 殺されてしまうのだ。オマリイは相棒を連れ彼女と共に遥か東方を目指し 飛び立った! 高速東遊記。面白い。 補給のために立ち寄る先々で一行にそれぞれ別個の苦難が襲いかかる。 その中でメンバーの増減もあり、歴史上の有名人とも出会う。 こういうの大好きだ。面白いに決まってるもの。 そんでまた一行のメンバーが、人目を引く美貌のアメリカ人、 人種差別するイギリス人、女たらしのドイツ人に寡黙な中国人と、 トラブルの匂いがプンプンの面子。内輪のゴタゴタも孕みつつ 旅をしていく。 ラストもお手軽ではなくきっちりしていて良い。 以前も言ったが良質な冒険小説を読む愉しさって言ったらないね。 ちなみにこれ映画化されてるみたいなのでそちらも観てみたい。 後他の作品も。
「ケンブリッジ大学の殺人」グリン・ダニエル(扶桑社) ケンブリッジ大学が長期休暇に入る朝、フィッシャー・カレッジ内で 守衛の射殺体が発見された。警察が被害者の身辺を洗う一方、 副学寮長サー・リチャードは違った観点から事件の調査に乗り出す。 そんな中、帰省した学生のトランクから第二の死体が現れた――。 扶桑社本格枠。評判はイマイチのようだったが、中々面白かった。 複数の探偵達が入れ替わり立ち代わり現れて独自の観点・手法で 捜査をし推理するという展開は読み応えがある。 ただ、大きなトリックや論理のアクロバットは無いので、 骨組みに対して肉付けが薄い印象を受けた。真相もふーんて感じ。 もう一つ言うと、ドラマが無い。こんだけ厚いんだからもうちょっと 小説味が欲しかった。ま、でも、アマのデビュー作にしちゃ良作です。 追伸 「奇術師の密室」は本格じゃないだろー。
リチャード・ノース・パタースン『最後の審判』 (2002、新潮社)【8点】 連邦判事の座が手に届くところまできたキャロライン。23年ぶりの故郷からの 連絡は、姪のブレットが殺人容疑で拘束されたという知らせだった。 家族との軋轢・昔の恋人との対立などに気後れしながら彼女が知った真相とは? いつもの三人称多視点が、今回はキャロラインの視点で固定されているので、 若干テンポが悪いところもある。とくに過去話は長すぎるなあと思った。 しかし終盤の裁判シーンでは畳み掛けるような展開で、軽いサプライズを織り交ぜる。 キャロラインという女判事のキャラはグンと深まったが、序盤〜中盤のもたつきと、 裁判シーンの短さがちょっと物足りない。またキャロラインのある行動にはさすがに 首を傾げたが、まあ、ああいう真相があったのなら仕方ないかな。
「ポドロ島」L・P・ハートリー(河出書房新社) ホラー短編集。以前「ロアルド・ダールの幽霊物語」を読んだ時、 一発目の「W・S」という短編にいきなり◎を付けた覚えがあるが、 その作者がハートリーだった。無論その話も入ってる。 が、んー全体としては微妙かも。話の持って行き方に違和感を覚える ことが多かった。後訳者の解題にも違和感が。表題作が「藪の中」って ことは無いと思うんだ。あのままで怖いよ。 ベストは「足から先に」。これぞホラーって感じ。 この叢書の短編集は今のところトゥーイと本書以外は◎。
「キーストン警官」ピーター・ラヴゼイ(早川書房) ドサ回りの芸人一座を抜けてハリウッドにやって来たイギリス人 イーストンは直談判ののち首尾よく撮影所に雇われ、映画の脇役の 仕事を得る。職場の連中たちとも打ち解けたイーストンはやがて 駆け出しの女優アンバーと割りない仲になるのだが、ある日突然 彼女は殺人事件の容疑者になってしまう。 初ラヴゼイ。だがイマイチ。何つーか事件が背景みたいになってて、 中盤ぐらいまで映画撮影の話がダラダラ続く感じ。しかもヒロインに 魅力がないから主人公に感情移入も出来ない。ミステリー部分にしても どうも道具立てが単純というか……。 「偽のデュー警部」に期待。
864 :
名無しのオプ :2008/08/01(金) 18:35:02 ID:2aIj4jMD
ラブゼイなら、個人的には「ダイヤモンド警視シリーズ」がおすすめ。 「最後の刑事」からどうぞ。
情報多謝!
「黄金の島」バーナード・コーンウェル(早川書房) 偉大な父親に反発し雇われ船長をしているニックは、ある時知り合いの 政治家から麻薬中毒の子供2人を更生させるためのクルーズを依頼される。 渋々引き受けたニックだったが、航海の途中麻薬の売人達が乱入し 船が破壊され船員が殺されてしまう。辛くも逃げ延びたニックに 更なる魔の手が襲いかかる! これはコーンウェルらしさが無かったなぁ。主人公のディスられ具合が 甘い。冒険小説としては佳作だと思うけど期待してたものとは違った。 ただ、作中のアメリカ富裕層の親バカに対する批判はGJだった。 たかが高校卒業ぐらいで高価なプレゼントするとか、生意気な子供を ひっぱたけないとか。物語の本筋でもそれが表れている。 もっとも現在ではこういう親は我が国含む世界中にいるだろうだけどね。
867 :
名無しのオプ :2008/08/02(土) 15:27:13 ID:n28MWnmi
コテハン占有スレとして削除対象だな、こりゃ。
868 :
名無しのオプ :2008/08/02(土) 22:24:24 ID:BLzsasZZ
エリー・クラインの収穫 エラリー・クイーンと間違えたという、しょうもない理由で手に取り、 最初のページでの、被害者が段々と死んでいく描写に引き込まれて買ったんだが 650Pも費やすほどの内容じゃなかったな いちいちうんこ出した描写まで入れんでも。 250Pぐらいで十分描ききれるもんだと思う。
869 :
名無しのオプ :2008/08/03(日) 08:31:52 ID:WbjHbmTo
ミッチェル・スミス好きなんだけど、ここ10年ばかり全然出ませんね。
870 :
名無しのオプ :2008/08/03(日) 10:14:32 ID:Z7+QpBYt
「聞いてないとは言わせない」ジェイムズ・リーズナー(早川書房) 田舎の農場を一人で切り盛りしている女性グレースと、農場へやってきた 青年トビーは周囲に何も無い状況の中やがて親密な仲になっていくが、 トビーには隠された目的があり、さらに謎の男達の乱入で事態は 一気に彼方へと動き始める……。 勘違いしないで下さい。僕は熟女が好きなわけではありません。 美熟女が好きなだけです。それが本作の粗筋を知り期待したわけ ですが……空かされた気分です。僕はてっきり寿行チックなストーリー かと思ったのにそんなんじゃなく、B級アクションの王道 と言った感じでした。読んだ内ではジェイムズ・カルロス・ブレイクに似てるかな? 向こうの方がより洗練されてますけど。 単純なプロットの末に意外な幕切れを迎えますが、これはちょっと 違和感を覚えます。これ今更問題視することなのかな? と。 それにどさくさ紛れに(メル欄)のは酷いと思います。 全く関係ないですし。
R・D・ウィングフィールド『フロスト日和』(創元推理文庫、1997)【8点】 退職パーティーに出席しようと勇んでいたフロストは、突如捜査に狩り出される。 公衆トイレで発見された浮浪者の死体。女性を狙う連続強姦犯。窃盗事件にひき逃げ事件。 数々の事件に振り回されながらも、フロストは着実に事件の真相に迫っていく・・。 フロスト第2弾。新刊が出たので積読本に手をつけてみた。 大小の事件を次々と発生させながら、過度に複雑化させずに物語を 組み立てていく構成は上手い。ただ、ちょっと間延びしたかなあ。 ユーモラスなフロスト警部の言動はもちろんんこと、 暴力事件で左遷されてきた元警部のウェブスター巡査が最初はフロストに 反感を抱きながらも徐々にその手腕を認めていく様がおもしろい。
873 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :
2008/08/09(土) 10:41:02 ID:Ou6IH+ss 「フロスト気質」を読んだ。 待ちに待った邦訳新刊である。 このシリーズでは初の上・下巻2分冊(各巻450頁前後)というボリュームであり、 じっくり味わって読むつもりが、面白さゆえ2日で読破してしまった。 以下に目に付いた点を記しておく、 ・フロスト警部にとってマレット署長と並ぶ天敵(?)アレン警部は 序盤に少し登場するのみなのが残念。(前作でも未登場であった) 過去の事件との絡みの関連もあって、代打的なキャラとして登場するのが 元デントン署勤務のキャシディ警部代行なのだが、おなじみアレンに比較して 存在感が弱い。 初期作では妻に先立たれたフロストの心情を慮るような人間的な面もかいま見せていたマレットが 前作あたりから、完全な敵役(メガネザル)として、嫌な奴キャラになってしまったのも、 エンタメとしての明解さはあるものの、小説としての「厚み」は落ちた感があるのも残念ではある。 ・これも前作から見られる傾向だが、複数の事件が終盤に来て一気に解決へとなだれ込んでゆく という展開ではなく、1件ごとに解決されてゆく展開、わかり易く読み易いが、ややカタルシスを 欠く感がある。 ・前から思うのだが、フロストはあんなだが、きちんとすれば「デントンのコロンボ」になれるタレント の持主なのではと思わせるシーン多し。 腐敗した死体にもかかわらず身元(前科者)を正確に割り出したり、 容疑者が玄関に出てくるまでの少しの間に着目し、これが最終的に誘拐事件の解決の 端緒となったり等々 確かに見込み違い、見当外れも多いが、これはあと少しの慎重さで回避し得るものではないか? ただし、フロストの下品、大胆なキャラを修整してしまうと、あのなんとも魅力的なフロストでは なくなってしまうわけだが。