『読みました』報告・海外編Part.3

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288書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
むしろ「傷痕」などは、こういった作品にありがちな悪徳警官や無能な捜査官ではなく、
むしろ腕利きゆえの捜査の誤びょうの可能性を抉ったものとして、
ひとつの小説として読んだ場合は非常に面白いものがあるのだ。
こういった点で言えば、本作はネタばれを恐れさせない、ネタばれされても十分に
読み応えがある(反面、ミステリとしては、ばらすほどのネタが無いとも言えるのだが)
単なる読み捨てミステリを越えた「ホンモノの小説」だとも言い得るのだ。
ただし、一点だけ不満点を挙げれば、まえがきを部分成す作者の謝辞にもあるとおり、
12年のにわたって書かれた作品を集成したもののためか、前半の作と後半の作では
作風の変遷が際立っており、やや調和を欠く感があることである。
3つの短篇連作により敏腕女性警官の波瀾の一代記をクールに描き切った
キャサリン・シリーズと比較した場合、
前述した最終話「わたしがいた場所」は心の癒しの世界を描いたヒーリング小説
とでも称すべきものへと転じているのである。
各個別の作品の出来は悪くないだけに、編集にもう一工夫が欲しかったところである。
本作を読むことにより、ミスヲタが安手の謎解きに傾斜したミステリを焚書するだけの
良識を持ち得るか否か、これはひとつ試金石ともなる作である。
各人、心して読め!