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書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :
ローリー・リン・ドラモンド「あなたに不利な証拠として」を読んだ。
今更ながらではあるが、昨年度のこのミス、文春の両ランキングのベスト1、
ダブルクラウンに輝いた警察小説(というか実態は婦人警官小説とでも称すべき内容)
の佳作である。
深夜の屋外捜査の緊張感、単独で死体を目前とした際の恐怖感、
犯人と対峙した緊迫感等々、警察官という職業上、当然対面するであろう状況が
作者の実体験(5年の警察勤務)を活かし、ヒラリー、ニコラス、エド、
ペール&マイ夫妻といった過去の警察小説の名手たちも書き得なかったほど
ビビッドに息詰るような迫力で描かれ、読む者に強烈な印象を残す。
ただし、警察小説をミステリの1分野と把握する以上、本作をミステリと言えないことも
ないが、最終話「わたしがいた場所」はどう見てもミステリとは言い得ない領域の作と
なっており、MWA探偵作家クラブ賞最優秀短篇賞受賞作の「傷痕」にしても、
最終話への布石となる女性警官グループが遭遇するアクシデントの顛末を描いた
「生きている死者」にしても、収録作品中では比較的ミステリ色が濃いものさえ、
意外性と言えるほどの展開は無い。