『読みました』報告・海外編Part.3

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24書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
J・D・カー「ヴードゥーの悪魔」を読んだ。
ジョンの力量が劣化した最後期の長編とはいえ、一言で評すれば、
たわいない凡作であった。
本格ミステリを読み慣れた私などには犯人は早期にわかってしまうし、
ミステリとしては、密室ネタと並んでジョン十八番の人間消失ねたと人間転落ねた
のトリック解明が中心となるが、前者(馬車ねた)は、「漫画を活字で書くな!」
と言うた感じの手品まがいのトリックに過ぎず、後者は歴史ミステリ以外の過去作品
(ヘンリーもの)のトリック使い回しに過ぎない。
探偵役を務めるベンジャミン上院議員(実在の人物)の推理も、「そんなのは作中人物で
あるお前にしかわからんわ」という強引な展開であり、初期エル作品あたりが好きな
ミスヲタは非常に萎えるものがあるであろう。
ストーリー的にも全体的に描写が薄く、特に仮面舞踏会、深夜の幽霊屋敷の冒険
ヴードゥー教の教祖宅への侵入等のシーンは、いかにもジョンらしいお膳立てにも
かかわらず、あっさり流されている感が強いのは残念である。
解説(森英俊)では、ニュー・オーリンズ三部作中では、最もミステリとしての
興趣に富むかの如く書かれているが、セールストークとしか思えないものがある。
トリックの面白さと犯人の意外性では「亡霊たちの真昼」、
ロマン性溢れるニュー・オーリンズ風俗小説としては「死の館の謎」をそれぞれ推す。