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書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :
ジェームズ・アンダースン「血染めのエッグ・コージイ事件」を読んだ。
俺が敬愛する宇野利泰氏(以下「うの」と略す)の訳書ではあるが、
初刊の時はノーマークでスルーしてしまった作。
(解説でも指摘されているが、ミステリ界でも全くと言うてよいほど話題に
ならなかった)
タイトルだけ見ると、まがまがしい感さえ受けるが、
内容的には、館ものの一類型であるカントリー・ハウスもの、
時代は第2次大戦勃発直前、英国の伯爵が所有するカントリーハウスに集う
多彩な人物たち(英国外交官、諜報員、欧州小国の外交官、ガンマニアの米国の富豪、
遊び人の貴族、謎めいた男爵夫人等々)、これにルパンまがいの怪盗が絡み、
殺人事件が発生、コロンボ風の飄々とした名探偵(警部)の登場と相成る。
こう俺が書くと面白そうだが、
ジョン作品を想起させるトンデモなトリックはまずまずながら、
事件発生までの筆の運びが遅い感があるうえに、
極端な偶然性と御都合主義に頼った後半の展開は頂けないものがあり、
なぜ、今頃になって復刊されたのか理解に苦しむ出来と言わざるを得ないものがある。
宝石を狙う怪盗のエピは蛇足であるし、カントリーハウスを舞台にしながら、
本格ミステリの禁じ手とも言われる抜け穴は登場するにもかかわらず、
怪奇も密室等の不可能犯罪が登場しないのも寂しい限り、
せっかくの舞台が効果的に活かされていないのである。