『読みました』報告・国内編Part.3

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313書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
松本清張「梅雨と西洋風呂」を読んだが、予想外の面白さであった。
少し長めの中編というたボリュームのため、長大な作に見受けられがちな御都合主義
、偶然性等が目立たないのが良し、小規模な地方都市という舞台設定も不自然さ
を感じさせない点で効を上げている。
かってエロティックな表紙のカッパノベルス版を所持していたのだが、
ミステリを期待して読んだため、読破せぬままになっていた作である。
ミステリの展開になるのは終盤のみだが、
このトリックだけでも短編は成立し得る程度に面白いものではある。
清張作品には稀有と言えるエロティシズムを感じさせる作であると共に、
ピンクの浴槽中で体を回転させる40男(主人公の市会議員)には、
おぞましさを超えた、どこかユーモラスなものさえ感じさせるものがある。
そして、このエロやおかしみが、最後になってミステリとしてのトリックに
絡んで来るのが、さすが清張作品と言える。
ただし、トリックそのものは大乱歩であればこってりと書き込むであろう
鬼気迫る面もあるものながら、くどくは語らず、物語の締めはあっさりとしているのは、
いかにも清張先生らしいものがあると言い得る。