『読みました』報告・国内編Part.3

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210書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
最近、中公文庫の潤一郎ラビリンス・シリーズに読み耽っている。
当然、全てがミステリの範疇に属する作ではないため、ミスヲタに詳しく
紹介出来かねるのが非常に残念ではあるが、文学に親しんでいると、
ミステリを読み漁っている輩が、たわいないアホに見えて来るのも否定出来ない事実
ではある。
今回紹介する「潤一郎ラビリンス] 分身物語」に収録された3編は「ミステリ」と
言い得る作だが、さすがに世紀の文豪の手になるものだけあって、テーマ性も強く出た
凝った読み応えがあるものとなっている。
大好評の全話講評行ってみよう!
「金と銀」
対照的なキャラの2人の画家の交流を描いた前半から、後半は一気に倒叙ミステリ的展開
となる。しかし、テーマは殺人計画の面白さにあるのではなく、「真なる美とは何か」
という芸術全般に共通する課題追求にあるようだ。
これが読み取れるか否かが、「ミステリも読む知識人」と「単なるミスヲタ」かの試金石
となろう。
「AとBの話」
一見、ミステリにあらず、ストーリーテラーとしても優れた大谷崎にしては、
延々と続く善悪論争は、やや読み難い感は受けるものの、
これは、ラストに到って「文学」におけるある種のリドルストーリーだとわかる次第。
心して読め!
「友田と松永の話」
登場人物の「そりゃ面白い!そりゃあ探偵小説になるぜ!」の台詞からもわかるとおり、
大谷崎のミステリ好きがわかる作。
ある意味で仰天のトリックなのだが、ミスヲタの中には不満の声も上がるやもしれぬ。
しかし、ブー足れる前に、ミスヲタ諸兄よ、西洋嗜好と東洋嗜好の挟間に悩んだ文豪
の姿を読み取るようにしたまえ。