『読みました』報告・国内編Part.3

このエントリーをはてなブックマークに追加
161書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
「潤一郎ラビリンスU マゾヒズム小説集」を読んだ。
「饒太郎」「蘿洞先生」「蘿洞先生続」「赤い屋根」「日本に於けるクリップン事件」
の5編を収録。
最後の「クリップン」は、本書解説でも「推理小説仕立ての物語」と評され、
雑誌「中央公論」誌上連載中の川本三郎氏の論考
「『細雪』とその時代 女が育てた阪神間文化」(第一回)では、ミステリと断言
されている作であり、文豪の手になる犯罪トリックを駆使した異色作、
テーマと思われるマゾヒズム私観以上に、犯罪者の心理がビビッドに描かれており
読ませるものがある。
他の4編はミステリ的題材を扱いながらも、残念ながらミステリとは言い難いものが
あるが、(ミスヲタはこの点は心して読め!)
初期代表作短編「刺青」、傑作「痴人の愛」等をモノにした文豪の手になるものだけあって、
どの作も単なる興味本位にとどまらずマゾヒズムというテーマの根源と本質を抉って
間断するところがない出来栄えである。