『読みました』報告・国内編Part.3

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127書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
「潤一郎ラビリンスY 異国綺談」を読んだ。
2冊連続でつまらないミステリ(作者そのものはブランド付きの実力者なのだが…)
を読まされたためか、あらためて大谷崎の優れたストーリー・テリングと物語創りの
巧さを実感させられるものがあった。
「独探」
「若しも『独探』と云う表題を見て、何かexcitngな、活動写真的な小説を想像する人が
あったら、その読者は多分失望するであろう」とはあるが、きちんとオチもついた
谷崎版エスピオナージである。
このオチを知った後に再読すると、登場人物の行動が含みを持って見えて来るやに
思われる。
「玄奘三蔵」
おなじみ三蔵法師の目を通して描いたミステリアスなインド綺談。
ただし、わずか40頁弱の中に奇怪な行者たちが何人も登場するとはいえ、
いずれもスーパーナチュラルなものではなく、医学的・科学的説明が可能な
ように思える点がミソである。この辺に大谷崎も「近代人」であることを強く
感じさせる。
「ハッサン・カンの妖術」
作中でインド哲学の薀蓄が炸裂、極めて玄妙なストーリーではあるが、
大谷崎を模した主人公の「夢」と理解出来なくもない、実にミステリに富んだ作である。
「秦淮の夜」
結局、女買い目当てによる南京の夜の彷徨を描いた作とも読めるのだが、ミステリアスな
南京の色町の雰囲気が出色で、スリルに富んだ陽性な助平大谷崎の面目躍如の一編
「西湖の月」
収録作品中では一番淡々とした筆致の作。
西湖の情景が水彩画の如く浮かび上がって来るのが読ませどころか。
そこでは、死体さえ「情景」の一部に過ぎないかの如し。
「ビロードの夢」
極め付きの幻想犯罪談。怪奇・幻想の極致の世界を描いているようでありながら、
全て合理的な解釈が可能となっているのが、「独探」同様に大谷崎らしい。