2chで見つけた叙述トリック Part3

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872名無しのオプ
 昨日まで続いた取り調べは、早朝に始まり深夜まで続いた。その間、俺への質疑が永遠と続き、俺からの質問が許される雰囲気ではなかった。
だが捜査が一段落を迎え、俺への取り調べも今日で終わりとなり、最後に担当の刑事と少し話ができる時間ができたのだ。
「刑期はどのくらいになりそうですか?」
「短くて…三年ってとこだろうな」
ずっと気になっていたことだった。短くて三年というなら四、五年はかかるだろう。
「もし…正当防衛が立証されれば…」
「それについては今、二課が慎重に動いてる。」
間髪を容れずに刑事は答えた。
「正直、捜査本部の流れとしては正当防衛の立証を第一としている。」
ちらりと横を見た。
窓の外に垣間見るイチョウの木の葉が黄く染まっている。そのうちの淡く染まった一枚が風に揺られ、宙に舞い、視界から消えた。
「毎年、秋になると何故か胸騒ぎがするって人がいるんですよね。特にこうやって紅葉した広葉樹なんか見ると、これから起きることを自分に警告してるんじゃないかって。危険を示す信号なんじゃないかって。
実際、警告だったのかもしれませんね。」
自然と笑みが漏れた。
「大丈夫だ。被疑者死亡で終わる。正当防衛が立証するはずだ。」
「そう祈ってます。」
そう言って俺は時計を見た。
「もう時間だな。これから兄に会って来るんだろ?」
「はい。これから拘置所生活が始まりますから、その前に言葉を交わしたくて…」
「なら伝えておいてくれ。必ず正当防衛は立証されると。無実だと。」
「そのつもりです。今日まで事件に捜査協力できたことを誇りに思います。
これで少しでも兄の疑いが晴れ、兄の正当防衛が立証されるなら、弟として本望です。」