【謀略空路】大藪春彦の本を語る 5

このエントリーをはてなブックマークに追加
950書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
>>948
だから西城は組織からスピンオフしてしまう。
大藪氏の作家としての体質を考慮すれば、シリーズが長期化すれば当然の流れ
だったとも言える。
諜報員時代の伊達邦彦が精彩を欠くこと、矢吹シリーズ等宮仕えものが長期シリーズ
とはならなかったこと等を見ても、大藪作品には基本的に飼犬は不適と言える。
この辺は、スパイものブームに合わせて秘密諜報員ものを書いてみよう、
デビュー時からの秘蔵っ子ともいえる伊達に宮仕えをさせてみよう、
捜査官も書いてみるか、といった作家としてのチャレンジ、実験作的意味合いが
あったのかと思う。
「ワイルド7」があくまで警察官の物語であることを指摘したのみで、
他の望月作品の事がなぜ出て来るのか不可思議である。
それはともかく、一応、権力を利用して云々というのは大藪ワールド的ではない。

大藪フリークである芥川賞作家花村萬月なんかの場合だと、
反権力(大藪氏同様、ここには教会に象徴される宗教者も包含される)志向の作家
であっても、「皆月」のヤリマン女由美のように汚れた聖女的に存在感を持って
描かれている。
これは芥川賞受賞作「ゲルマニウムの夜」に始まる王国記シリーズに登場する
シスターやアスピラントにも見て取れることだ。
まあ、大藪氏の場合は、女を「書かない」ではなく、「書けない」でも一向に構わない
とは思うのだ。
女がガンやカーどころか食物にも及ばない小物程度の存在感しか持ち得ない世界、
これがあっても良いのである。
結局、女豹シリーズも実験作(大藪ワールドで女性主人公を投入)という意味のみで
終わったかに思う。