【謀略空路】大藪春彦の本を語る 5

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16書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
西城シリーズは、最初の文庫化と新書版で全部読破しているはずだが、
「狼は罠に向かう」は全く記憶に残っていないな。
どちらにしろ、沖縄編まではハイウェイ・ハンター・シリーズでも可、
ヨーロッパ編の前に、東南アジア編もあっても良いという見解に
変わるところはない。

さて、ハードボイルド小説に関する俺の見解だが、
ヘミングウェイ、ハメット等の作を原型と考えた場合、
(1) 無駄な心理描写を排し行動面の描写に重きを置いた文体
(2)内容面からは抑制された不屈の精神性を描いた物語
と言い得るかと思う。
大藪作品は(1)はクリアしているのは議論が無いところだが、
問題は(2)である。大藪春彦を作家足らしめた「暗い情念」の迸り、
これが時には作品中に過剰なまでの性と暴力の描写となって表出(これは魅力でも
あるのだが)され、ストイックな不屈の精神性を描いた物語には、とかく違和感を
抱かせるものとなっていたのである。
この点、「ヘッドハンター」は、内在する暗い情念を物語中に見事に昇華させ、
(2) の条件をほぼパーフェクトに充足した作だと言い得る。
そして、「人狩り」は意図的に暗い情念を排し、大藪版「血の収穫」を意図した作
であると言い得る。

もし、大藪版情痴小説があったらの件は、ケイン未読のまま語っている見当外れで
意味不明なレスばかりである。
「郵便配達を二度ベルを鳴らす」を一読後、大藪作品との比較論考として書くこと。