ディクスン・カー(カーター・ディクスン) Part6

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631書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
ジョン(以下、ジョン本人の意思を尊重して、カートライト=カートと称する)が、
現役時に英国で人気を博し、日本ではヲタ中心とはいえ、
今に到るまで継続した人気を保っているという現象は面白いものがある。
英国と日本の共通点としては、
(1) 共に島国であること
(2) 超自然現象を主体とした怪談ないしは怪奇小説創作の長い伝統を有すること
すぐに、以上二点が思い浮かぶが、
「密室殺人を中心とした物理的に閉塞した状況下における不可能犯罪」という
カート十八番のテーマが、国そのものが「島」という大陸から切り離された、
言わば、国そのものが物理的に閉塞した状況下に置かれた英国と日本の読者にとって、
精神的に受容されやすいものであったということは十分に考えられることである。
さらには、(2)にあるとおり、両国のみが質・量共に怪奇・幻想文学という
ジャンルが伝統的に確立していた国である点も見落せない。
米国にも、アルジャーノンのような超自然現象を素材としたオーソドックスな怪奇談の
書き手もいたものの、ホラーの主流は、P・Hに代表される如く、ミステリ、怪奇、幻想、SF等が渾然一体化した作品群にある。
この事は、現代米国ホラーの第一人者たるS・Sの初期作を見てもわかる。
「呪われた町」は狙って書いたバンパイアものだが、「キャリー」は魔女ネタと超能力ネタ
の融合、「霧」はインベーダーネタと怪物ネタの融合、「デッドゾーン」「ファイヤースターター」は、超能力ネタそのものであること等によって明らかかと思う。

以上で見たとおり、両国における怪奇・幻想文学の伝統が、カート作品を広く受容するに
到る下地を成していたのは間違いが無いところである。