ディクスン・カー(カーター・ディクスン) Part6

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289書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
主観を排した読むべきジョン作品(長編)この10作。
1 夜歩く
  本格ミステリとしてだけの評価は今ひとつの感があるアンリ・シリーズだが、
  ジョンの特色が顕著なこのデビュー作を外すことは出来ない。
  このシリーズ独自のムーディな暗い魅力に溢れる。
  個人的には「髑髏城」の方が好きだが、客観的な評価を優先してみた。

2 マッドハッター
  オカルティズム無き怪奇。ロンドン塔とその周辺という舞台設定が出色である。
  強引な物語展開ではあるが、終盤の謎解き(犯人の語り)はクライムノヴェル風
  で意外にリアルな迫力に富む。この点では遊び心が多く作り物の感が強いジョン
  にしては異色作とも言い得るものがある。

3 プレーグコートの殺人
  再読するとそのバカバカしさに唖然とさせられる作だが、
  オカルティズム、密室殺人、あざといユーモア、バカミスなトリックと物語展開等々、
  初期ジョンの特色が十分に発揮された作ではあり落とせない。

4 修道院殺人事件
  オカルティズム無きスマートな不可能犯罪もの。
  雪の中の密室殺人という謎の設定は魅力満点。
  折角探偵役もヘンリーであることだし、ジョンらしいあざとい作風を求める向き
  には不満が残るだろうが、「緑のカプセルの謎」や「貴婦人として死す」を外さざる
  を得ない関係もあって、ジョン作品中、あっさり・すっきりの謎解き系の代表作
  としてこの作を推す。
290書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :05/01/23 17:15:05 ID:2PWDI1iM
5 三つの棺
  これも再読するとバカバカしい作品だが、ピカレスクロマンとしての魅力もある作。
  トリック無理有り過ぎだが、ギディオンの密室講義というおまけも付いており、
  必読の作である。「うの」の訳で読みたかった典型的な本格怪奇探偵小説。

6 アラビアンナイトの殺人
  論者により評価が分れる作だが、トリック等によるミステリとしての魅力は
  薄いものの、アラビアンナイトに材を取った神秘的な雰囲気と「もの」の見方の
  違いの妙味の面白さ等、小説としての魅力を感じさせる異色作。

 7 火刑法廷
   トリックは手品的であり、最後のオチだけが売りのような過大評価された作。

 8 曲った蝶番
   怪奇性・不可能性が強調され、ジョン得意のバカミスモードが炸裂する作。
   欠点・疑問点は多いが、ジョンには珍しくドタバタもユーモアも排した重厚な作
   である。
291書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :05/01/23 17:16:13 ID:2PWDI1iM
 9 ユダの窓
   トリックはジョンにしては丁寧に書いているが小技に過ぎない。
   手品的、曲芸的バカミスを期待すると不満が残る。
   ジョン作品にしては堅苦しい感がある法廷小説という構成と古典的な密室殺人
   というネタにミスマッチ感が強く、また法廷小説として読んでもファース化して
   おり緊迫感を欠く。過大評価された作と言い得る。

10 皇帝の嗅ぎ煙草入れ
   トリックの関係もあるが、ジョン作品にしてフェアに書かれた稀有な作。
   丁寧に読み込めば必ず犯人がわかるように書かれている。(井上一夫訳)
   ただし、いわゆるジョンらしさがこれほど皆無な作も珍しい。

* 「アラビアンナイトの殺人」の代わりに
歴史ミステリ(「喉切り隊長」か「ビロードの悪魔」)又は
典型的バカミス(「笑う後家」か「墓場貸します」)を入れる手もあるかとは思う。