『読みました』報告・国内編Part.2

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871書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
>>851
無事文庫化記念ということで、俺は「ミステリ・オペラ」を読んだ。
前回紹介した土屋隆夫の「物狂い」とは対照的に、第55回日本推理作家協会賞、
第2回本格ミステリ大賞、2001年このミス1位等、各賞を総なめにした大作である。
しかし、今読むと無駄に長く粗が目立つ逝ってよし状態の作という感が強い。
世紀末から新世紀にかけて、昭和という時代への挽歌(まさにミステリによるオペラ
という形を取る)として書かれ、その時に読んでこその作品だったのであろう。
ダイイングメッセージ、密室ネタ、消失ネタ、空中浮遊ネタ等、過去と現在をまたがり
ミステリが連続するものの、個々のトリックに見るべきものはなく、御都合主義と偶然性に頼ったものばかりであり、特にメーンなネタと言える空中浮遊ネタのトリックのアホ
らしさは噴飯ものである。かろうじて、列車消失トリックのみが、短編できちんと書けば
それなりに読めるものになったと思える程度か。
検閲図書館(と言うても実は・・なのだが)という、藤子不二雄Aの漫画に出て来る
ような面白いメーンテーマも十分に生きておらず、やはりミステリという枠内で南京事件といういまだに論争が絶えない歴史的事件を描き込むのは無理があったようである。
これでは、構想5年・執筆3年という鳴り物入りや作品中で登場人物が大言壮語する
「…この世には探偵小説でしか語れない真実というものがあるのも、
また事実であるんだぜ…」という言葉がむなしく聞ゆるのみである。
「善知鳥良一」=「うとうりょういち」、「黙忌一郎」=「もだしきいちろう」等
の無駄に凝った登場人物のネーミングも、作者の趣味の押し付けはいい加減にしろと
言いたい。読後、私は正紀の口絵写真に向かって言うた、「心して書け!」と。