『読みました』報告・国内編Part.2

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658書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
富田常雄「姿三四郎」文庫全3巻を読破した。
青春冒険小説といった風な作であり、冒険小説のジャンルをカバーするこの板にとっては、
守備範囲ぎりぎりといったところか。
柔術(柔道の古形態)の強豪、唐手使いの兄弟、外人ボクサー、外人レスラー、要人暗殺を狙う殺し屋、忍者まがいの間諜、終いには、美女をストーキングするフリークス
(蜘蛛男)とまで対決してゆく主人公姿三四郎、これだけ書くと面白そうなのだが、
吉川栄治の「宮本武蔵」と同様な御都合主義と過剰な求道感に代表される時代錯誤を
実感させるものがある。
物語の舞台は明治開化期とはいえ、内容は時代小説(剣豪もの)そのものであり、
「刀」を「柔道」という技に置換えただけなのが本作の本質ゆえであろう。
まあ、当時の読者にはこれで十分に面白いものであったのであろうが。
本作に影響され、高校時代に使用した青黴が生えた柔道着を持ち出し、
「とおっー」とか奇声を上げながら、アキバやジュクを闊歩せんとするミスヲタが
出ないかが懸念されるところである。