『読みました』報告・国内編Part.2

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177書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
佐伯一麦「鉄塔家族」を読む。
日経連載時から小津映画を想起させると評された作品。
ゆえにこの板の住人が最も苦手とする傾向の作だと言い得る。
作者には「ショートサーキット」でデビュー以来、注目はしていたのだが、
文学に対する生来の感性の良さは認めるとしても、若い時の作品には、
高卒と大卒の埋めきれぬ感覚差のようなものがあり、敬遠していた時期も
存在した。
本作にも、中卒の文学好きな喫茶店マスター(しかも舞台は東北である)という
およそ現実ではお目にかかりにくい人物が登場する。
(イメージ的には漫画家の石川淳だが、彼は明大漫研出身)
しかしながら、作家としての年輪を重ねたゆえか、物語全体に不自然さは無く、
かえって書斎派の作家には無い、極力、理に陥ることを排した素直な語りには
独自の爽快感さえ伴うものがある。
この辺が、ハイブラウが多い日経読者には逆にウケた因であろうかと思う。
ミステリとしての読み所は、主人公の過去をはじめとした一見平穏な日常に潜む
謎の解明である。
平成の小津ワールドは、鉄塔がある町の人々の生活をハートウオーミングに描く
だけでは済まない時代になっていたのだ。
178名無しのオプ:05/03/12 12:02:09 ID:h3N3sCT4
>>177
さすがですね。ミス板でその作者の名前を見るとは驚きだな。
読書の量と質がそんじょそこらのひよっことは大違いなんだろうなあ。
179書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :05/03/12 12:11:22 ID:ns/ea/O8
>>178
社交辞令はどうでもいいから、簡単に「鉄塔家族」の感想を書いてくれ。
>ミス板でその作者の名前を見るとは驚きだな。
このレスから見ると、君のおなじみの作家かと思う。