【夜の夢こそまこと】江戸川乱歩第四夜

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982書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
ホフマンの著作としては「黄金の壷・砂男他一編」(旺文社文庫)が手頃である。
(この点、十分に心しておけ)
大乱歩の代表作と言われながら、今日我々が「押絵と旅する男」を読んで物足りない感じ
を受けるとすれば、そこに乱歩十八番の猟奇、エロ、グロ等を欠いているからである。
怪奇はあるが幻想が優る。「押絵・・」という作は著名でありながら、乱歩作品の中で
異色な作とも言い得るのである。
乱歩は一時代を画した大作家だが、「乱歩文学」という言葉は無い。
乱歩ファンにとって慙愧に堪えない点である。
仮に乱歩が「押絵…」、成人向き作品では遺作となった「指」(この作は幻想よりは
怪奇が優っている)に見られるような、猟奇、エロ、グロ(ホフマン作品には無い要素)
を排した幻想文学と言い得る作のみ書いていたとすれば、日本文学史上に名を残す
幻想文学のマエストロとして名を残していたかと思う