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書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :
ここで「八つ墓村」という作品に関して敷衍しておこう。
渥美清演じる金田一耕助がお遊びに過ぎず、原作支持者の顰蹙買っていることは、
ミステリ板では、最早基本通念足り得ている。
横溝先生は、原作と映像化作品は別物という考え方の持主(この旨はテレビのインタビュー
で明言している)であり、相当脚色された作品についても好意的である。
片岡千恵蔵の金田一シリーズを面白く見たと語り、ATG「本陣殺人事件」の初日の入りが
良かったのをとても喜んでいたそうである。
原作を熟読して金田一のキャラを押えておけば自明のことだが、渥美金田一評価というものが
あったとしても、横溝先生のネタあるいはリップサービスと判断して間違い無い。
前述したとおり、原作を忠実にトレースしていないゆえに、即駄作・失敗作ということは言えないが、松竹版「八つ墓村」は時代背景、登場キャラクター等物語の根幹に関わる部分を
脚色し、鬼女のイメージシーン等により原作が有する精緻な冒険ミステリという
本質を崩すような演出まで施しているため、ミステリファンからはそっぽを向かれるのも
致し方なかろう。
ミステリ映画という視点から離れ、単純に映像作品として見ても、最大限に評価して
怪作といったところかと思う。
これもガイシュツだが、念仏の鉄こと山崎努の要蔵役は鬼気迫る大熱演とする点は同感である。