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書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :
西澤保彦「パズラー Puzzler 謎と論理のエンタテインメント」を読む。
期待していなかった分、予想外に楽しめた作品集であった。
例によって全話講評行ってみよう!
・「蓮華の花」 評価D
阿刀田高の短編を想起させる過去ネタのストーリー、前半から中盤までは読ませるものが
あるが、最後に明かされるトリックは無理あり過ぎ。
増して性能が良いPCが一般へ普及するはるか前の時代設定である。
私が担当エディターであったら、駄目出しして、即書き直しを命じていたであろう作。
「甘ったれるな!」という感が強い作である。
・「卵が割れた後で」 評価B
アメリカ育ちの作者の持味が良く出ている一編。ちょっとE・D・ホック風な作でもある。
・「時計じかけの小鳥」 評価C
角川スニーカー文庫収録作品だけにジュブナイルまがいの設定は致し方ないものがあるが、
リドルストーリーという結末(思春期の妄想)にしたら面白かったと思われな一編。
・贋作「退職刑事」 評価B
原典を巧く模写しているが、ストーリーに凝り過ぎていささか煩雑になった感がある。
原典は光文社文庫のセレクションに収録された「真冬のビキニ」に典型的見られるように、
シンプルな設定と合理的な謎解きが特色でありもっと読み易いのだ。
・ チープ・トリック 評価A
エロとバイオレンス充満、ジェイムズ・エルロイが本格ミステリを書いてしまったかのような異色作。しかし、結構謎解きミステリとして読ませるものがある。
エロとバイオレスによるスパイスではなく、ユーモアとオカルティズムのスパイスで
真面目に書いていれば、J・Dを想起させるような傑作になったのではないか。
なぜか貫井徳郎の解説にも、作者のあとがきにも触れられていないが、
本作と同じ殺人のトリックを使用した事件が何年も前にあった(未解決)
・ アリバイ・ジ・アンビバレンス 評価A
これもジュブナイル風の設定だが、えぐいストーリーが2人の高校生により淡々と謎解きされてゆく点には面白いものがある。