今、読んでいるミステリ小説は?【5】

このエントリーをはてなブックマークに追加
497書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
メモを取りながら、谷崎潤一郎「鍵」を再読中。
「犯罪小説集」収録の解説は、あくまでひとつの見解に過ぎず、
各読書人を拘束するものではない点を、各人肝に銘じておけ。
谷崎作品は、特に情痴小説の類(「痴人の愛」「卍」等)は、
後一歩でミステリ足り得るシチュエーションなのだが、
「鍵」に関しては、変態(?)夫婦の密かなる(?)日記交換という乱歩的
シチューエーションにおいて、終盤における日記に隠されたトリックにこそ
作品の主眼のひとつが置かれており、十分にサスペンス・ミステリとしての評価にも
値し得るものである。
読み捨て本に過ぎないミステリも文豪の手になるものなれば、
人間を描いた「文学」足り得る例外があり得る。その実証の一例かと思う。