433 :
書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :
デヴィッド・イーリイ「ヨットクラブ」(晶文社)
収録作品各話講評
「理想の学校」
60年代に書かれた作品ながら、21世紀の異国で読んでも妙にリアリティを感じて
しまう作。オチが秀逸。
「貝殻を集める女」
ニューヨーカー誌にでもありそうな小品。ミステリもSFも期待しないこと。
「ヨットクラブ」
表題作足るにふさわしいはじけ方の作。
書き込めばもっと迫力に満ちた作になったかと思う。
クリフ・ロバートソン、アーネスト・ボーグナイン、ヘンリー・シルバ主演
(いいメンツだ!)の「銃撃」という映画(原作もあり)を想起した。
「慈悲の天使」
これも舞台設定(NY)といいニューヨーカー誌ぽい作。ある意味で現代奇談か?
「面接」
人間関係がクールなアメリカより日本人が読んだ方がよりリアリティを感じるように
思われる作。
「カウントダウン」
いかにも60年代らしい2線級のSF。オチも見え見えな感がある駄作。
発射直前の火星ロケット基地を舞台にした作とする解説の記述は誤りであり、
正確には、火星ロケット発射直前の基地である。
「タイムアウト」
歴史というものに対する作者のアイロニーを感じさせる力作中編だが、
米ソ冷戦下という背景はやはり古さを感じてしまう。
「隣人たち」
ちょっとS・キング風でもあるホラータッチの作。雰囲気のみ良し。
434 :
書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :04/07/02 19:31 ID:gKTtosAt
「G.O′D.の栄光」
キリスト教文化圏の人間が読めば面白いかと思われる寓話的な作。
邦訳ではカットしても良かったかと思う。
「大佐の災難」
これはダール風の作。まあ標準作といったところか。
「夜の客」
サイコ・ホラーともサイコ・スリラーとも読む得る作。
本書の解説では、超自然的な恐怖と断定してしまっているのは妥当ではない。
「ペルーのドリー・マディソン」
これも寓話的な作品。
ドリー夫人どころか、マディソン大統領(「憲法の父」としてアメリカ人には衆知)
自体の知名度が低い日本人にはピン来ない部分が多かろう。
これもカットしてもよかった作かと思う。
「夜の音色」
これも普通の都市小説。特筆すべきものは無い。
「日曜の礼拝がすんでから」
短めのサイコホラー。それだけのことである。
「オルガン弾き」
教会、礼拝に縁が無い者が大部分であり、従って専属のオルガン奏者という存在にも
馴染が無い日本人が、この物語のはじけ方をどこまで楽しめるかが問題。
総評
表題作「ヨットクラブ」と「理想の学校」の2編以外は、たいした作は収録されていない。
2600円+税ほどの価値は無い。