エラリー・クイーン&バーナビィ・ロス〜PART2〜
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書斎魔神 ◆SMz4F/WzF2 :
講義を続けましょう。
「Xの悲劇」を「Yの悲劇」より評価するというのは、やはりうがち過ぎである。
共に細かな謎解きの伏線の巧みさ、犯人の意外性等ミステリとしての本来の面白さに
プラスして、Xは執筆当時のNYを描いた風俗小説、Yは怪奇探偵小説として
いずれも「小説」としての魅力も備えている。
しかし、今読んでもショッキングな感がある犯人の意外性、含みがあるラストシーン等、
の点で、やはりXはYには及ばないものがあるかと思う。
しかし、レーン4部作はいずれもテーストが異なる作品であり、ダイレクトな比較するには
問題があるやもしれぬ。
国名シリーズの例を見ると、第4作「ギリシャ棺の秘密」で後年における評価どおり
パズル小説としてこれ以上無いような極致を書き得たクイーンは、
第5作「エジプト十字架の秘密」においては、パズル小説(第4作まではこれ以外の
要素は皆無と言っても過言ではない)としての要素に、猟奇、追跡、性風俗等の
エンタメ的な要素を投入、謎解きの面白さとの融合を見事に成功させている。
しかしながら、以後の国名シリーズはパズル小説としての出来は芳しいものでは
なくなって行き、その魅力は本筋である謎解き以外の要素に負うものが大きくなって
行くのである。
アメリカ銃 最大の魅力はアメリカのミステリ作家にしか書けないこれぞ
アメリカン・ミステリという明るい雰囲気。
シャム双生児 シャム双生児を絡めたクローズドサークルもの。
クイーンには珍しい正調怪奇探偵小説。
チャイナオレンジ ヴァン・ダイン的なペダンティズムとカー的密室殺人ネタの投入。
スペイン岬 リゾート地を舞台にしたメルヘン風味の観光小説。
日本庭園 エキゾチックな東洋趣味。