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書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :
ヴァン・ダインの後期作品を再読し、その評価を決してみたく思っている。
第7作「ドラゴン殺人事件」は、S・Sには珍しい怪奇探偵小説で、
ミステリとしての欠陥は数々あれど、ファイロの竜に関する薀蓄も楽しく、
まずまず楽しめるものであった。(過去ログに論考あり)
第9作「ガーデン殺人事件」を読んだ。
ガーデン家と殺人の舞台となる屋上庭園を掛詞にしたタイトルである。
ミステリの肝となる2発の銃声のトリックが、あまりにお粗末かつ御都合主義に
過ぎるが、登場人物の証言を丁寧に読み込めば、ストレートに犯人を指摘出来る
構成は一応評価出来るレベルである。
探偵の恋愛という要素が投入されているが、ファイロほど恋愛が似合わないタイプの
名探偵はいないかに思う。全然盛り上がらずにストーリーの不純物にしかなっていない。
犯人をあぶり出すためとはいえ、柄にも無いファイロのアクロバットも「?」感が強い。
さすがに、第9作ともなると、S・Sは新趣向を盛り込んでみたのだろうが、
傑作グリーン家、僧正等の重厚なイメージを抱く読者には、いずれも違和感大なものと
なっている。