『読みました』報告・海外編Part.2

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703書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
エド・マクベイン「魔術」を読む。
これもおなじみ87分署シリーズ、88年発表の第40作、シリーズ後期に属する作品
である。本作は、ハロウィンの仮装強盗、魔術師の失踪とバラバラ死体の発見、
娼婦連続殺人犯への囮捜査という3つの事件を核として、
あの愛すべきリチャード・ジェネロの大捕物、同じく愛すべき(?)怪漢アンディ・
パーカーの単独行(?)等が絡むこのシリーズ名物の典型的なモジュラー・タイプの
警察小説である。
しかし、文庫解説者の絶賛にもかかわらず、残念ながら出来は良くない。
メーンの事件のトリックが、ミステリ読みにとってはあまりに見え見えであること、
事件の解決が御都合主義な偶然に頼り過ぎていること、
差別的な表現、露骨な性的会話等が目立ち不快感があること(この点についても、
池上冬樹の解説には疑問が残る点がある)等々、作品としての不満点は数多い。
キャレラ、マイヤー、クリングが活躍出来ず、ホース&ブラウンが肝心の場面を
地味な印象があるウィリス&オブライエンのコンビにさらわれてしまう。
そして、パーカーがおいしい所を取り、ジェネロが警官として男になるという異色の
展開が面白い程度か。