607 :
書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :
都筑氏(以下「ミッチー」と略す)自身が、ミステリ界のトップランナーとは思って
いなかったであろう。
時代小説というジャンルだけ見ても、捕物帳まがい(「もどき」もあるが(w )から
伝奇小説までと、出来栄えは別としても、これだけ多様性に富んだ作を書くことが出来た
だけでもたいしたものである。本人もこれで十分に納得していたであろうかと思う。
心残りがあるとすれば、作者自身の故郷であり、少年時代から生の空気を知る
昭和の東京を十分に書き込むシリーズを持ち得なかったことであろう。
長編「猫の舌に釘をうて」等を読むと、ミッチーが描く街中に都電が走っていた昭和30年代のグルーミーな東京像は独自の魅力に溢れている。
なめくじ長屋シリーズは時代がマッチせず、安楽椅子探偵である退職刑事や
ホテル・ディック等では、そのキャラ設定の制約ゆえ東京の街を徘徊させるわけには
いかない。新シリーズキャラが欲しいところだったのだが…