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書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :
心して読め!
160 :書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :05/02/26 15:00:01 ID:T+IGqvk2
都筑道夫「神州魔法陣」を読む。
正直な感想、「つまらん」の一言に尽きる。
この手のものを書かせたら、やはり山田風太郎(以下「ぷうたろう」と略す)
には遠く及ばない。
78年に桃源社より刊行、81年の富士見時代小説文庫収録以来、
再刊されていないのも、「なるほどしかり」とうなずける拙い出来である。
捕物帖仕立ての第一部(八百八町しのび独楽)、
道中記仕立ての第二部(五十三次しのび独楽)に分れており、
捕物帖も旅ものの時代小説も好きな私としては期待したのだが、
偶然性と飛躍に頼り過ぎた展開は、到底、大人の読物足り得ない代物
と化している。長編ということもあって、
著者のヒット作である「なめくじ長屋シリーズ」以上に、
江戸の風物に関する描写は、丁寧に良く書けているだけに残念である。
本書と似たネタ(歴史上の有名人の復活と陰謀)を書き、その後何度も再刊されて、
ロングセラーとなった、ぷうたろうの「おぼろ忍法帖」の刊行が67年。
本書と同じ、生ける屍ネタを描いた「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」が
68年製作、続編である「ゾンビ」の公開が77年である。
本書の刊行が、78年であることを考えると、都筑氏(以下「ミッチー」と略す)は、
ヒット作「おぼろ忍法帖」から基本設定をパクリ、ゾンビ・ブームにも便乗せんとした
のではないであろうか。
脇役で登場する大礒の金五郎のキャラとエピも、木枯し紋次郎に代表される
笹沢左保の股旅もののエピゴーネンとも読み得るのだ。
果してこんな切り貼りのような仕事が許されて良いのだろうか。