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書斎魔神 ◆CMyVE4SVIw :
「七十五羽の烏」講評(修整稿その2)をお届けしましょう。
「七十五羽の烏」を読んだ。
この作品の構成の巧いところは、ミスディレクションの使い方である。
そして探偵役物部太郎の浮世離れしたキャラクターは、凄惨な事件をあくまで絵空事の推理
ゲームの世界であると読者に認識させる点で、十分な効果を上げている。
しかしながら、最後に探偵が事件の関係者一同を集めて、
全ての謎を快刀乱麻に解決し、犯人を指摘する展開こそ、
本格ミステリの醍醐味だと思うのだが、この点で、物語中盤で第2の事件の謎解きだけ先行してなされてしまい、さらには探偵とその助手が謎解き後にコソーリと退場してしまうことは、
カタルシスを欠き、不満が残るものとなっている。
地方の旧家(と言っても茨城県だが)を舞台にした怪談仕立てでありながら、
横溝正史作品のようなサスペンスを盛り上げる効果が出ていないこと。
作者の歴史に関する薀蓄がくど過ぎてかったるい感を受けること。
この辺も、本作の主たる欠点になるかと思う。