エドワード・D・ホック

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374名無しのオプ
このシリーズにおける「探偵役」が誰なのか、は実際に本を読んでいれば
忘れようのないこと。


アガサ・クリスティには6人の探偵がいますが、クィン氏はそのなかでもひときわ異彩を放つ探偵です。
いつの間にか現れて、ふと気づけば立ち去っている黒尽くめの男性。
事件の核心を掴んでいるのに周囲にヒントを与えるだけで、自分はただ嘲るように、それでいてどこか哀しげに笑っているだけ。
そんなクィン氏と偶然出会った普通の人サタースウェイト氏が探偵役として活躍する短編集。


だから、クイン氏は自分では謎解きを行わない。そこで彼が自らのスポークスマンとして
白羽の矢を立てたのがサタースウェイト氏なのだ。
 芸術愛好者にして、人間観察を趣味とする永遠の傍観者。パーティの招待客リストの
最後に必ず名前が載っている人物。誰とでも親しくなるけれども決してある一線を越える
ことはない。とうとう他者と深い関わりを持たないまま老人の域に達してしまったこの
人は、言わば天下無敵の安全パイ。
 いささか女性的な性格も持ち合わせている彼は、他人の恋愛沙汰に対してとても敏感で、
またそういうものを見守るのが大好きときている。
 そこで、クイン氏はサタースウェイトにさりげない示唆を与える。実際に作中でクイン
氏が行うことはほとんどそれだけと言っていい。それを受け取って消化し、時には海外に
まで飛んで調べものまでしながら事件を解決するのはサタースウェイト氏の役割なのである。