120 :
書斎魔神 ◆CMyVE4SVIw :
山田風太郎「明治断頭台」(ちくま文庫)を間もなく読み終えるところだ。
前に文春文庫で読んだので再読。
相変わらず奇をてらった鼻に付く風太郎節。
奇想天外も忍法帳の舞台になることが多い戦国時代や江戸時代ならともかく
明治時代になると司馬遼太郎や吉村昭を読み慣れた目から見ると
テーマ以前に滑稽感が先に立ってしまうのが難。
まともなガバナー、財界人、知識人等には風太郎の本は開いた目で見られていない
のが現実だが、これもまたむべなるかなという感がある。
この点で、讀賣新聞夕刊連載記事で北村薫が絶賛、文庫解説の日下三蔵も
ミステリファン必読の超傑作などと無責任な放言をしているのは、
まさに噴飯ものと言えよう。
121 :
書斎魔神 ◆CMyVE4SVIw :03/10/31 12:14
「怪奇探偵小説名作選―8日影丈吉集」(ちくま文庫)は読了。
簡単に収録作についてコメントしておくと、
「かなむぎうた」 ガイシュツだが、さほど面白くない。
「狐の鶏」 作品の効果を挙げる以前に方言が読みづらい。
普通に読んでいれば、婆さんが犯人というのも見え見え。
「奇妙な隊商」 典型的なアホ作品
「東天紅」「飾燈」「鵺の来歴」 この3作は乱歩先生が書いたとしたら、
もっと面白くなったであろう。
作者のストーリーテリングの拙さを感じさせる。
「旅愁」 タイトルからは想像出来ないようなSFホラー風の作品だが、
香山滋作品には遠く及ばない。柄にも無いことをしている感を否めない。
「吉備津の釜」 民話ネタを巧みに絡めじょじょにスリルを盛り上げ、
オチまで引っ張って行くスト―リーは一読巻を置かせないものがある
日影丈吉短編の最高傑作はこれである。
「月夜蟹」「ねずみ」「猫の泉」「写真仲間」 この辺も特にどうってことが無い作品が並ぶ。
ヲチが見えるものが多く選者のセンスを疑う。
122 :
書斎魔神 ◆CMyVE4SVIw :03/10/31 12:15
「饅頭軍談話」 これは情景描写も良く生きた佳作かと思う。
「王とのつきあい」 奇妙な味のミステリの傑作の名に値する。
「粉屋の猫」 作者のフランス遊学の経験が良く生きた好短編。
田園小説の趣さえある。
「吸血鬼」 台湾での従軍経験が生きたホラー。
日本人には難しいと言われる吸血鬼ものを巧く処理しているが、
物語にもうひとひねり欲しかった気もする。