2ちゃんねる殺人事件を書き込むスレ

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129名無しのオプ:04/09/13 18:35:53 ID:gMhhP5t3
<7>
だが、やむなく男は合意書の作成に応じた。
このころ男は、素人モデルの撮影会の仕事はうまくいかず、
かといって収入のあてもない。公共料金や家賃の支払も滞納し、
闇金融業者への返済も滞っており、切羽詰まった状況に追い込まれていた。
ここに至って男は思い出す。
以前にYが言っていた。
銀行や郵便局に1,000万円近い預金がある、と。
130名無しのオプ:04/09/13 18:46:07 ID:gMhhP5t3
<8>

 58 :名無しのオプ :

 底(1)

 君 が そ う す る の は 当 然 分 か り 切 っ て い た よ
 僕が君にそれをするなと言ったのは
 君にそれをして欲しかったからだ
 (でなければあんなこと言ったりしない)
 要するに君はそんなに頭が良くなかったので
 僕の思惑通り、
 そう。死に至ったわけさ
 本 当 、最 初 の 最 初 か ら 僕 に 従 う べ き だ っ た の に ね え 。

とあるサイトのとある掲示板。
その中の寂びれかかったスレッドにひとつのレスが付く。
131名無しのオプ:04/09/13 18:55:42 ID:gMhhP5t3
<9>
Yは不思議な感覚に陥っていた。
出会い系サイトで知り合った男。
その男から過去を告白されたことで男を信頼するようになり、
両親から男との交際を止めるように強く説得されていたにも
かかわらず、両親の反対を押し切り、いつのまにか男の居住する
アパートに引っ越して男との同棲生活を始めてる自分。
132名無しのオプ:04/09/13 18:58:24 ID:gMhhP5t3
<10>
Yは、両親からこのまま男と一緒にいるのであれば親子の縁を切る
と言われており、男との同棲生活をいつまでつづけていけるかを
不安に思う一方で、この男と一緒にいると心が安らぐ、とも感じ、
なぜかしら男との生活そのものには満足していた。
133名無しのオプ:04/09/13 19:11:07 ID:gMhhP5t3
<11>
しかしYは男の子供を妊娠する。
両親から両親をとるか男をとるかの選択を厳しく迫られた。
最終的にYは、子供を堕ろして男との生活を続けていくことを選択する。
だがYは、両親を捨て男との同棲生活を続けていくことに一層の不安を
感じ始めており、実際に男との関係もぎくしゃくしたものになって
いった。
そして男に対し、別れるときには慰謝料を支払う旨の合意書を作成
するよう求めたが、差し迫った問題とまでは考えていなかったので、
直ちに合意書を作成することまでは求めないでいた。
134名無しのオプ:04/09/13 19:15:11 ID:gMhhP5t3
<12>
 59 :名無しのオプ :
 (2)

 嫌いだと口に出してみた。
 嫌いだと唄ってみた(誰の唄だったか覚えていないけど)。
 嫌いだと
 窓を開け放ち、カーテンをピッタリと合わせてから
 外に聞こえるように叫んでみた。
 窓の向こうから聞き慣れた大きな笑い声が、蠅の羽音みたいに鈍く飛んでくる。
 カーテンを閉めたのになんであたしだと分かるの?ねえ。

寂びれかかったスレッドに復活のレスが付く。
135名無しのオプ:04/09/13 19:24:22 ID:gMhhP5t3
<13>
男は考えた。
Yを殺害してしまえば、その預金が自分のものになる。
借金の返済資金や当座の生活資金が手に入る上、
Yに差し入れてある合意書や借用書も意味のないものになり、
Yに対する借金を支払わなくてもよくなる。
136名無しのオプ:04/09/13 19:30:46 ID:gMhhP5t3
<14>
男は、合意書をYに差し出した後、毎日のように思案を巡らした。
Yを殺害するには、同棲相手の自分に嫌疑が向かないようにする必要がある。
男は水曜日がYの勤務先の休日であることを知っていたことから、
その休日にYが自分のマンションから出て行き、その後何らかの
事件に巻き込まれて殺され、家財道具などと一緒に山中に捨てられた
かのように装うよう考えた。
137名無しのオプ:04/09/13 19:37:09 ID:gMhhP5t3
<15>
そこで男は、Yの休日の前日に当たる火曜日に、勤務先から帰宅して
きたところを狙って自宅でYを殺害し、その夜のうちに死体を部屋に
あるタンスに入れて、衣類や家財道具と共にU県の山中へ遺棄するこ
とを決めた。
また、Yを殺害した後に、被害者の貯金通帳から払戻しを受けるには、
窓口に男性の自分ではなく、女性が行くほうがよいと考え、貯金払戻
請求を代行してくれる女性をあらかじめ確保しておくことを予定した。
138名無しのオプ:04/09/13 19:51:28 ID:gMhhP5t3
<16>
そして男は、Yがすぐにでも家を出ていきそうな気配を示していたことから、
Yの殺害を直近の火曜日の夜に実行することにし、それにあわせて、
インターネットの「やばい仕事引き受けます」などと題する掲示板を探し、
そこに犯罪行為を引き受けてくれそうな内容の投稿をしていたXに電子メールで
連絡をとった。
139名無しのオプ:04/09/13 20:13:34 ID:gMhhP5t3
<17>
 60 :名無しのオプ :
 (3)

 この敷地の建物というのはおかしなもので、二つのコンクリート剥き出しの小さな
 アパートのようなものが駐車場を挟んで向かい合わせに建っている。
 片方はもう片方の半分くらいの大きさで、底には男がひとり暮らしている。
 二階建ての二階分、全て彼の家だ。

 またもう一方は北を向いていて、陽はほとんど差し込まない。
 四階建てではあるものの、住人はその一階分の部屋のどれかにしか住めない。
 そこには一人の少女と、あと5人の誰かが住んでいた。
140名無しのオプ:04/09/13 20:18:06 ID:gMhhP5t3
<18>
 66 :名無しのオプ :
 (4)

 少女は部屋の隅を見ている。
 ほとんど使用していないと思われる家具はほとんど使用されていないので
 埃は被っているものの部屋の中に整然と据えられている。
 しかし彼女が見つめる先の一角だけは、汚れで溢れていた。
 生ゴミ。
 青いビニールシートの上で増殖し続けたそれは只微かにブツブツと
 自己からなる分解を始めていた。
 充満した臭い。彼女は顔をしかめる素振りすら見せない。
 一ヶ月・・・そう、丁度この日で一ヶ月を数える時間、
 彼女は同じ臭気を吸い込み続けていたのだ。
 鼻など既に麻痺しきっているに違いない。
141名無しのオプ:04/09/13 21:06:08 ID:a7mS6OMK
<19>
麻痺しきった鼻。朦朧とする意識。少女は考える。
「実は、俺探偵なんだけどさ。お前の奥さんからの浮気調査の依頼を
受けているんだよ。あんたは,この女と肉体関係をもっただろう。
こっちは写真に収めて証拠もあるんだ。
奥さんには黙っててやろうか。そうじゃなきゃ謝っただけでは済まないよ。
俺たちもガキの使いじゃないんだ。最後は,金で解決するしかないんだ。
お前,いくらまでなら出せる。」
美人局。
出会い系サイトで知り合い、肉体関係をもった男から慰謝料名目で現金を喝取。
少女は同棲している男と共謀し、それを収入にしている。
142名無しのオプ:04/09/13 21:19:47 ID:a7mS6OMK
<20>
少女には定職がなく、美人局などの犯罪行為によって得た金を
生活費や遊興費に費やす。
犯行態様も綿密な計画と役割分担の下に、同棲している男を通じて
相手を呼び出し、ホテルから出てきた相手に対し男が暴力団を
装って脅しつけ,執ように金銭の要求をする。
手持ちがないと消費者金融業者から借入れをさせて現金50万円
卑劣なことはわかっている。
143名無しのオプ:04/09/13 21:49:18 ID:a7mS6OMK
<21>
少女らの犯行はそれだけではない。
美人局による恐喝のほか、自動車の盗み出し、身元を偽って消費者金融
業者から現金やキャッシングカードを騙し取っていた。
盗んだ自動車の売却名下に中古車買取業者から現金を騙し取る手口の
詐欺。
身元を偽るために勝手に他人の住民異動手続をする有印私文書偽造・
同行使,電磁的公正証書原本不実記録・同供用などの種々多数の犯行
を重ね,それらによって得た金で遊び暮らしていたのである。
144名無しのオプ:04/09/13 21:55:34 ID:a7mS6OMK
<22>
 67 :名無しのオプ :
 (5)
 少女は立ち上がり、生ゴミの山の前に屈む。表面を触る。
 乾いたパセリが山から落ちる。
 二週間前皮にヒビの割れた痕があって何となく食べずに山に重ねたトマトを見つける。
 茶色い液体状の中身が皮に透き通るため(ああなんて綺麗なんだろう)、
 今では何処に傷があったのかすらわからない。
 彼女はそれに人差し指を当てると、躊躇いもなくずぶずぶとその中へ沈めていった。
 冷たい。少女は更に押し進める。
 皮を破る感触がしてトマトを潰した時にはすでに彼女の手はすっぽりと生ゴミの中に埋まっていた。
145名無しのオプ:04/09/14 10:22:19 ID:QCUblSmV
<23>
少女は、N県J市内にある公団住宅に両親と暮らしていたが、父親の事業が失敗。
両親は一家の生活費に充てるために消費者金融数社から借金を重ね、
少女が高学年に進級するころには、一家全体で800万円近い借金を背負っていた。
公共料金はおろか、一家の住む公団住宅の家賃も滞納しており、
退去せざるを得ない状況になっていたため、父親は公団住宅の明渡期限まで、
不動産仲介業者を介して手頃な借家を探しまわった。
しかし結局、保証人を立てることができなかったため、引越先を確保することができず、
一家は住処を失うこととなったことから、前途を悲観して一家心中を決意する。
146名無しのオプ:04/09/14 11:50:04 ID:iT56Ljbc
<24>
少女と両親を乗せた普通乗用自動車は青木ヶ原樹海内に駐車した。
「住むところもない、お金のやりくりもできない、もうこれ以上生きていけん。
お父さんとお母さんはこれから死のうと思う。おまえも一緒に死んでくれる」
父親はそう言うと、母親の承諾を得て、所携のショルダーバッグ用の
肩紐を母親の頸部に巻き付けて強く締め付け、窒息死させて殺害した。
そしてその直後、
「ごめんな、やっぱりおまえはよう殺せん。堪忍したってな」
と多量の風邪薬を服用して自殺を図り、少女のみが生き残った。
147名無しのオプ:04/09/14 12:32:13 ID:iT56Ljbc
<25>
 68 :名無しのオプ :
 (6)

 片手で掻き分けるようにしてどんどん(そう更に深くだ)奥に進めると、
 手の周りが次第に温まってきた。
 形もどんどん無くなっていく。気持ちいい、と彼女は思った。
 そしてもう一方の手も山の中へ突っ込む。
 肩から流れる黒い髪が汚れる事には全く気を留めず、
 そのままずるずると肩まで沈んでいった。
 そこまで行って、彼女は躊躇した。
 これで、逃げることが出来るかしら・・・?
148名無しのオプ:04/09/14 12:34:47 ID:iT56Ljbc
<26>
 70 :名無しのオプ :
 (7)

 目を瞑った。その瞬間、彼女の肩は生ゴミからずるりと生えてきた
 一本の腕にがっちりと捕らえられた。
 驚いて抜け出そうとする彼女の腕は、しかし中からの強い力によって
 ぐいぐいと底へ引きずられていく。
 底?
 そう、生ゴミに顔を押しつけられるほど腕を下へ伸ばしているならば、
 とっくにビニールシートに指が触れているはずだ。
 しかし指先は行けども行けども生暖かい、どろりとした感触だけを伝えてくる。
 抵抗も虚しくとうとう頭も山の中へめり込む。息が出来なくなる。
 ああ、でも・・・気持ちいい。これでいい。
 彼女は身体の力を抜いて、引っ張られるまま底へ底へと沈んでいった。
149名無しのオプ:04/09/14 15:52:09 ID:pSRrCqcB
<27>
火曜日。男は落ち着かない様子でタバコをふかす。
殺害方法については、Yが帰宅して着替えをしようとするときに、
背後からタオルで首を絞めて殺害しようと考え、洗面所内の手に取り
やすい位置に、あらかじめタオルを準備しておき、Yの帰宅を待った。
Yが帰宅する。
玄関で靴を脱いでいるYを確認しながら洗面所に移動し、着替えのために
部屋に入ったのを見届けてからタオルを手にし、Yに続いて部屋に入った。
150名無しのオプ:04/09/14 16:10:09 ID:pSRrCqcB
<28>
男は、タオルを両手で一文字に持ち、コートを脱ごうとしていた
Yの背後からその首に回し、手前に引くようにしながら同女の頸部を
力一杯強く絞め付けた。
が、Yの強い抵抗にあったため、右手拳で背後からYの頭部及び顔面の
右側を多数回殴打した。
そして部屋にあった白色レースのカーテンを力まかせにはずし、
両手を後ろ手に縛り上げ、さらに、再度タオルで首を締め付けたまま
Yをうつ伏せになるように倒し、その上に乗るような姿勢でその頸部
を強く絞め続けた。
151名無しのオプ:04/09/14 17:01:50 ID:pSRrCqcB
<29>
 71 :名無しのオプ :03/01/24 14:18
 (8)

 「何・・・寝てんだッ」
 頭を両脇からがっしと掴まれ、彼女は夢から戻ってきた。
 「あ・・おはよう・・・」
 「臭いなこの部屋は!なんだ、死体でも置いてンのか?」
 「違う、あれ」
 彼女の指さす先にはビニールシート。しかし生ゴミは夢で見た半分くらいの量
 だった。たとえてっぺんから手を突っ込んだとしても、拳位しか入らないだろう。
 「うん・・そうだな。ゴミ袋が必要だな」男が呟く。
 「よし、じゃあ次に来るとき買ってくるから、そしたらあの生ゴミ全部片づけん
 だぞ?」
 正面から少女の顔を覗き込む。少女は黙って頷いた。
 「さ、それじゃこんな場所早く出て俺の家行こう」
152名無しのオプ:04/09/14 17:43:58 ID:95tRHVG9
<30>
 72 :名無しのオプ :
 (9)

 そんな・・・
 また性懲りもなく繰り返して
 一体何になるんだろう。

 ・・・どうしよう。


 本当は嫌で仕方ない(のかしら?)ことを惰性でやってのけるのが日課。
 ほんとうは別に好きでも嫌いでもないのかもしれない。
 じゃあ、目の前のこの男は誰?
 何故あたしは此処にいるの?
153名無しのオプ:04/09/14 18:14:16 ID:95tRHVG9
<31>
少女とサラリーマン風の男がホテルから出てくる。
「こいつは俺の女だぜ」
二人を待ち構えていたチンピラ風の男はそう言うと
「俺はこの女のために金を使った。お前金を出せ」
と怒号し、いきなりサラリーマンを足蹴りして地べたに転倒させ、
その男が立ち上がるや頭部を手拳で数回殴打し、腕や大腿部を
靴覆きのまま数回蹴りつけるなどの暴行を加え、髪や肩を掴んで
引き起しては少女の方へ突きとばすなどの暴行を加えた。
男はサラリーマンの頭部より流血したのを見て、ひとまず暴行を止め、
「これぽっちのヤキで済むと思ったら大まちがいだ。
生爪をはがして、歯の5、6本ペンチで抜いてやる。」
と脅迫したうえ、サラリーマンの顔を覗き込み
「この女を探すには組の者を何百人も使って、300万円位使った。
お前は100万円出せ。100万円位はお前の体を張っても作れ」
と金を要求し、極度に畏怖させる。
154名無しのオプ:04/09/14 18:24:50 ID:95tRHVG9
<32>
73 :名無しのオプ :
(10)

「ねえ、何考えてんの」
視界の端で男がさっきから同じ所をぐるぐると歩いている。
「・・何も」
少女は膝を抱く腕を組み直して小さく答えた。男は一度立ち止まり少女を見つめ、
おもむろにまた床に顔を落とし歩き始める。少女は床に座り陽の当たる壁に凭れて
いる。ざらざら滑る白塗りの感触は少女の部屋と変わらない。
でも、怠げな陽光がいつもは鋭い彼女の思考をひどく朧気に溶かす。
「何か考えてる・・?」
彼女が口の中で呟いた瞬間、思考は体の隅々へ散り散りになって消えた。
目を瞑る。強い光の中、男の影がちらちらと目の前を通り過ぎる。
何度も、何度も。・・・・・。
155名無しのオプ:04/09/14 18:38:33 ID:95tRHVG9
<33>
何時間締め付けたのだろう。

男は我にかえった。
ぐったりとなったYを確認した。
手提げ鞄から財布を抜き取り、現金約10万円とキャッシュカードの存在を確認する。
その後、金庫から2冊の通帳と印鑑、健康保険被保険者証を強取した。
さらにYの死体を、タオルケットに包んでガムテープを巻き付けた上、
部屋にあった木製の洋ダンスに収納した後、かねての計画に従い、
あらかじめ用意しておいたトラックに同女の家財道具などと共に
積み込んで部屋から運び去り、F県山中に家財道具などと共に投棄した。
156名無しのオプ:04/09/14 19:34:26 ID:95tRHVG9
<34>
翌日、男はインターネットの掲示板で仕事を依頼したXと
電子メールで連絡をとり、都内の喫茶店で落ちあった。
強取した郵便貯金通帳や印鑑を用いて、貯金払戻金受領書を偽造行使し、
貯金合計約700万円を引き出すためである。
残りの300万円は、Xと出会う前キャッシュカードを用いて銀行の
ATMからすでに引き出しておいた。
報酬は前金で50万円。成功したら残り150万円の合計200万円。
男は目の前の、まだ少女と呼んでも過言ではない女の前に50万円の
入った紙袋を差し出した。
157名無しのオプ:04/09/14 20:50:03 ID:95tRHVG9
<35>
男は700万円の入ったボストンバックを小脇にかかえ、
少女とともに郵便局を後にした。
男は闇金融業者の督促からの開放感と、隣にいる少女に密着している
Tシャツから想像できる身体を認めるや、にわかに性的興奮を感じ、
成功報酬の受け渡し場所に少女の住居を指定した。
少女は一瞬怪訝そうな顔をしたものの、意外にもあっさり要求に応じた。
158名無しのオプ:04/09/14 21:46:21 ID:fZjypq9G
<36>
 76 :名無しのオプ :
 (11)

 外に出てみたい、そう思ったのは1チャンネルしか入らない古い小さなテレビが
 壊れた時だった。
 金銭は彼女の手元には一切無かったが、
 ただ歩く目的のためだけに街へ行ってみたくなった。
 しかし彼女はおそらく出ることは出来ないだろうと思った。
 以前何度も男に頼んだが、許されることなど一度も無かったから。
 自分の腕は部屋の空気よりひんやりしている。

 窓は向かいの建物にしか向いていない。
159名無しのオプ:04/09/15 15:13:01 ID:l7UpKYil
<37>
少女が住むというアパートまで車を走らせる間、男はこれまでの自分の過去、
すなわちT県で暴力団に入っていたこと、5年間服役したことがあること、
暴力団を止めてT都に来たこと、T都でYと知り合い、そして殺害したことを告白した。
アパートに到着し駐車場に車を止める。
駐車場を挟んで向かい合わせに、コンクリート剥き出しの4階建てと
2階建ての建物がそれぞれ建っていた。
男は少女に促されるまま、4階建ての建物の中へ入る。悪臭が鼻をついた。
足元に散乱するゴミを足で掻き分けながら非常階段をのぼり、401号室
と書かれた表札が掛けられているドアのまえに2人は立った。
160名無しのオプ:04/09/15 18:18:22 ID:l7UpKYil
<38>
ドアを開け中へ入る。
外界からの光を厚手のカーテンで仕切られた薄暗い8畳間ぐらいの広さの部屋。
正面の奥のほうから放たれる青白い光。パソコンのものらしき2台のモニタ。
その光に照しだされた床に転がる物体。人型の物体。悪臭の根源。
腐乱死体!?
気が付いた時、脳内に火花が散った。
ドンという衝撃。そして暗黒。

瞼を開く。見慣れない天井。
いつの間にか横たわっていた。なぜここにいるのか状況が飲み込めない。
刹那、少女の顔が視界に入る。
「心配しなくていいよ。お金は全部私が使ってあげる・・・」
少女はそう言うと、両手に持ったコンクリートブロックを高々と抱え上げた。
状況が飲み込めた。
衝撃。そして暗黒。
161名無しのオプ:04/09/15 18:45:47 ID:l7UpKYil
<39>
 77 :名無しのオプ :
 (12)

 「テレビ、壊れたよ」
 「そう。まだ要る?」
 「どうだろ。ねえ、シンプソンズしか観られないの?」
 「そんなことないけど。なに、何が観たいの」
 「うーん・・・なんだろ、ワイドショー?とかそういうの。しばらく観てない」
 「くだんねーよ?」
 「うん・・・」

 次の日、少女の部屋にはB級ホラーばかりが映し出されるテレビが届いた。
162名無しのオプ:04/09/15 18:49:51 ID:l7UpKYil
<40>
 78 :名無しのオプ :
 (13)

 「起きろッなあ、迎えに来たぞ」
 少女はうっすらと目を開ける。黒目の小さな鋭い目が彼女を覗き込んでいる。
 昨夜寝る前に観た映画の怪物にそっくりだ。
 「ねえ、あれしか映んないの?くだんないよ」
 「テレビ?」
 「そう」
 「くだんないのがいいんだろ?」
 「なんで・・・言ってないじゃんそんなこと。シンプソンズだって好い加減にくだんなかったし」
 「・・・わけわかんねー」
 「ワイドショーが観たいの」
 「要らないよ」
 「なんで」
 「五月蠅いし。嫌いだから」
 男にとってそれは本当のことだった。
 「観なくても生きていけるじゃん。な?」
163名無しのオプ:04/09/16 15:17:54 ID:zckc6Kg1
<41>
約3年前に少女はこの男と出会った。
少女がファッションヘルス嬢として、客である男とホテルに赴き、
ヘルスのサービス後に男が覚せい剤を注射しているのを目撃した。
その際、男から覚せい剤の使用を勧められ、タバコの銀紙の上に
覚せい剤をのせ、ライターの火であぶり、発生した気体を丸めた紙で
2、3回吸った。
初めての体験だった。
目が眩むような強烈な快感。やがてそれが、多幸感や高揚した気分に変わる。
気分が良く、自信が増し、これまでの疲労がとれた感覚になった。
この感覚が持続するなら、眠らなくても物を食べなくてもよかった。
そしてその際、男から覚せい剤入りのパケを3、4個見せられ、
約0.7gを1万5000円で購入した。
164名無しのオプ:04/09/16 16:58:13 ID:zckc6Kg1
<42>
少女はその後、頻繁に男に連絡するようになり、覚せい剤を購入した。
そのうち、少女は男のアパートに転がり込み、男の仕事を手伝うようになった。
仕事といってもまともなものではなく、ありとあらゆる犯罪に手を染めた。
暴力団や探偵と偽りあらゆる男を地獄に落とした。
ヘルスに勤めるより数倍も収入があったが、少女は報酬として覚せい剤を
譲り受けるだけでよかった。
165名無しのオプ:04/09/16 17:16:41 ID:zckc6Kg1
<43>
4階建てのアパートの1階の一室だけが彼女のオアシスだった。
白い結晶をビニール袋から取り出した。
嫌いだと口に出してみた。
銀紙の上にその結晶をのせた。
嫌いだと唄ってみた。
ライターであぶった。
煙を吸引することですべてを忘れられた。
皮膚はボロボロになり髪の毛は抜けたが、化粧とかつらでごまかした。
窓を開け放ち、カーテンをピッタリと合わせてから外に聞こえるように叫んでみた。
窓の向こうから聞き慣れた大きな笑い声が、蠅の羽音みたいに鈍く飛んできた。
生ゴミからずるりと生えてきた一本の腕にがっちりと捕らえられた。
強い力でぐいぐいと底へ引きずられていった。
外に出てみたかった。
テレビではホーマーシンプソンがマージをひたすら殴っていた。
ただひたすらワイドショーが観たかった。
166名無しのオプ:04/09/16 18:04:23 ID:zckc6Kg1
ハッ!(*゚Д゚)
>>165
4階建てのアパートの1階の一室 ×
4階建てのアパートの2階の一室 ○
167名無しのオプ:04/09/17 10:36:16 ID:ZxkRnxZ8
<44>
 86 :名無しのオプ :
 (14)

 床の上で氷が溶け掛かっていた。
 彼の部屋は彼自身が片付けるだろう。だから彼女は何も言わなかった。
 男はうろうろと歩き回る。
 それをじっと見つめている少女。
 「ぁィテッ!」
 男の声に少女は驚いて立ち上がる。苦痛に顔を歪めた男が左足を床から浮かせて
 いた。男の左足の裏から血が滲んでいる。その中でキラリと小さく何かが光った。
 慌てて少女が何かを、何かを求めて辺りを見回すと、白い丸テーブルの下に割れた
 グラスを見つけた。
 下半分はまだ器の形を保っていて、その中に沢山の破片が煌めいている。
 彼女の中で何かが渦巻いた。
168名無しのオプ:04/09/17 12:22:48 ID:ZxkRnxZ8
<45>
少女はわかっていた。
一日ごとに自分が壊れていくのがわかっていた。
激しい抑うつ、疲労倦怠感、焦燥感が少女を蝕んでいた。
以前より幻聴や幻覚が激しくなっていた。
最近では吸引しているときでさえ、頭が痛くなっていた。
だが、少女にはわかっていた。
それが薬物の依存症からくるものではなく、
男から粗悪な覚せい剤を渡されているからだということを。
良質のものはあの男が密かに隠し持っているのだ。
あのキラキラと光る宝石のような結晶を独り占めしているのだ。
耳鳴りのように交差する雑音。
瞼の奥で一筋の光が破裂し、そしてゆがんでいく。
らせん状の光の帯はなおもその動きを止めず、ゆっくりと
円を描きながら渦巻いていた
パッ、と目の前が明るくなった。
「この男も殺すしかない」
169名無しのオプ:04/09/17 12:29:49 ID:ZxkRnxZ8
<46>
 87 :名無しのオプ :
 (15)

 そう。
 ここから出てどうなるかなんて
 考えられない。
 でもここから出た所には
 この人はいない。


 男はぶつぶつ言いながら少女の脇をすり抜けて救急箱を取り出し、自分で手当てを
 していた。長く巻き取られた包帯の端がちらりちらりと白く揺れる。
 少女は床に目を落とした。
 ところどころ光る床の上で自尊心の欠片のような氷はもう溶けようとしていた。
170名無しのオプ:04/09/20 16:34:38 ID:FH25sN0m
<47>
氷は透明の液体へと姿を変え、ゆっくりと床を這い、チロチロと少女のつま先を舐めた。
「そろそろ仕事だ。今からデカい仕事がある」
男は少女に背を向ける形で救急箱をしまうと、そう声を掛けた。

「・・・嫌だ。本当に何もかも嫌・・・私にだってわかる。こんなどん底の生活・・・
・・・ここから出たいの。鳥になって空を飛んでみたいの・・・
・・・ねえ、私は、何を生き甲斐に生きていけばいいの・・・
・・・クスリ・・・。ねえ、クスリちょうだい・・・
さっきね、あなたに内緒でお金作ったの・・・
その人死んじゃったけど、いっぱいあるよ・・・
全部あげる・・・全部あげるからクスリちょうだい・・・」

少女は血走った眼で、ほとんど唇を動かさず恨めしげに男に言った。
頼ることのできる人間。信じることのできる人間。
少女の目の前で両親はこの世を去った
すべて失った。
尽きることのない孤独と絶望。
男を殺して自分も死のう。
少女の手には割れたグラスの破片が握り締められていた。
171名無しのオプ:04/09/20 16:52:59 ID:FH25sN0m
<48>
「そうか・・・、ほら、これが最後のクスリだ」
そう言ってゆっくりと振り向いた男の手には拳銃が握り締められていた。
「君は勝手に動きすぎた・・・」
唖然とする少女を尻目に、ゆっくりと少女の眉間に照準が定められる。
「君がそうするのは当然分かり切っていたよ。
僕が君にそれをするなと言ったのは君にそれをして欲しかったからだ。
あの男・・・そう君が殺したあの男は1億の価値があったんだ」
淡々と男の唇は語った。
172名無しのオプ:04/09/21 21:31:17 ID:Efeopg98
<49>
「あの男は、闇金から借金していてな。莫大な借金があったみたいだ。
素人モデルの撮影会で儲けようと思ってたみたいで、僕のホームページ
にその広告を依頼したきたんだ。
だがそれも収入にならずに、逆に広告代金の支払を待ってもらえないか
と言ってきた。
逆さに振っても小銭も落ちてこないようなヤツだ。
そこで、僕はあいつに話を持ちかけた。
広告代を支払わなくてもいいから、代わりにお前の戸籍を僕にくれ、
そうじゃなければ、このままお前の身柄を闇金業者に引き渡すと。
あいつはそれだけは勘弁してくれと泣きついてきた。
そしてこう続けた。自分は大病院の院長の娘のYと言う女と同棲している。
近いうちにYの親に借りて必ず返す、と。
俄かに信じられない話だったので、僕は男の身辺調査を始めた」
173名無しのオプ:04/09/21 21:53:37 ID:Efeopg98
<50>
「半信半疑だったが、あの男の言っていたことは本当だった。
だが、問題点があった。Yが勘当同然で家を飛び出し、男と同棲していたことだ。
娘を奪った男に金を出す親などどこにもいない。
そこで僕はYの親である院長と取引をした。
『お宅の娘と同棲している男を自殺に見せかけて消す』
男を借金苦からの自殺に見せかけて殺害し、娘を親元へ返す。
見返りとして1億の取引だった。
だが途中で計画が狂った。
あの男はYを殺してしまったんだ」
174名無しのオプ:04/09/21 22:21:35 ID:glmWadj3
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男は少女の眉間に銃口を押し当てながらゆっくりとタバコに火をつけた。
「なんでも屋のホームページに別名義人の預金払戻代行の依頼があったことは知っていたが、
それがあの男だとは、その時点では気が付かなかった。
依頼の内容が、『殺した女の貯金を払い戻したいので、若い女を差し向けてほしい』
とのことだったので、何の迷いもなく君を行かせたんだが、その後依頼人の情報を抜き、
相手があの男だと知ったときは愕然としたよ。
必然的に殺された女はYということになるからな。」
175名無しのオプ:04/09/22 21:24:29 ID:AvDhXxJr
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「Yが殺されたということは、Yの親である院長からもう金は取れない。
今回も美人局の手口で依頼人から金を巻き上げる計画だったんだが、
相手があの男だったと分かった以上、へたに首をつっこむのは危険だ。
1億が手に入らないどころか、院長との繋がりから警察に目をつけられる可能性もないわけでもない。
僕はすぐに君の跡を追ったが、指定された待ち合わせの場所には君達はいなかった。
砂漠で針を拾うような確率で、急いで近くの銀行や郵便局を探した。
そして偶然にも近くの郵便局から君たちが一緒に出てくるのを見つけた。
だが、男が持っていたボストンバックの膨らみから、もう仕事は終わった後だろう
と感じた僕は、計画を変えることにした」
176名無しのオプ:2005/08/14(日) 23:47:28 ID:fLJLYQ3h
犯人はツツガムシだった。
177名無しのオプ:2006/04/27(木) 21:33:53 ID:T/CtWWBy
・・・かどうかは分からない。
178名無しのオプ
そこで背中が熱くなったのを感じたんだ。でもその後はわからない。だって心臓は動いてないんだもの。