2002年4月8日 午後5時38分。
ミス板にこんなスレがたった。
「お前ら、全板人気トーナメント予選今夜からだぜ!! 」
それまでこんなトーナメントが2ちゃん内行われていることを知らなかった
住人も多かったであろう。
この日のSF板の奮闘に同じ書籍系として感動した1が立てたこの
スレ。
ここからミステリー板住人の戦いが始まった。
2の今となっては懐かしい表現である「よ〜し、お父さんがんばっちゃ
うぞ〜」の暢気なレスで、スレは動き始めるが、その直後住人たちは
自分たちが置かれた立場に愕然とするのである。
予選7組。
ラウンジ、ニュー速、少年漫画、そして同人コミケ。
まさにトーナメント予選最凶のカード。
祭好きラウンジ、2ちゃんの花形ニュー速、友情・努力・勝利!の少年漫画、
名スレの多い同人コミケ。
こんな強豪にはさまれ、言うなればミス板は「キャラが立ってない」状態。
連続殺人事件ならまっさきに殺されても仕方ない立場である。
それでもまず他板への宣伝作戦が行われた。
さっそく20が文芸創作板に赴くが、個人プレイを得意とする文芸創作、
故にあっさりかわされる。
他にも提携できそうな板を探し求める住人だが、板によっては盛り上がって
いなく、トーナメントスレすらない板すらある。
「シャーロックつながりで海外ドラマ板!」「古処ネタで自衛隊板はどうだ」
「少女漫画板ものってくれるかも?」等々、提案される。
頼りがいのありそうなのは、SF板とラノベ板だが、同人コミケ板と同時
エントリーということで、票が分かれてしまうのではないかといった推理も
披露された。
投票開始の時間が近づく。
ミス板住人は、好きな小説の一節と共に投票しようということになった。
4月9日午前0時。投票開始。
さて、同時にエントリーされた他板の状況であるが、
ラウンジ→ラウンジを最下位にしようスレが立つ
少年漫画→家ゲ板、シャア専板等と同盟
ニュー速→まだ盛り上がりはなし
同人コミケ→ヒカ碁繋がりで囲碁・将棋板が応援にかけつけ
ラウンジ・ニュー速は独自の立場を守っていたが、日頃から対立関係にある
少年漫画対同人板がヒートアップ。
投票スレでは、とにかく<<少年漫画>>の文字が目立つ。
そこにぽつり、ぽつりと<<ミステリー>>と、票がはいっていく。
投票が開始された後も、他板への宣伝活動は行われていった。
勢いあまってエロ小説板に宣伝にいくものも現れ、のちにラウンジャーの
笑いを誘った。
地道な宣伝活動のおかげか、他板からも当スレに応援にかけつけてくれる
人が現れた。
ネトゲー板、ラノベ板、そして予選第一位で通過したSF板……。
ミス板アピールのために、他板の方々にミステリー板の面白いスレを
紹介しようと、次々に名スレが発掘される。
が、しかしあまりコアだと他板の人には全く判らないという諸刃の剣。
スレの選考は慎重に行われた。
投票スレでは、若さの勢いかぶっちぎりで少年漫画が独走。
シャア専、家ゲ板の応援もすごいが、絶対人口が不利すぎる。
ジャンプにすばるが勝てるかーーー!という状態だ。
同人板にも、囲碁からの援護射撃が次々と入る。
そして、不気味な動きのラウンジ……。
ニュー速は住人の多さからか団結力はないながら、コンスタントに得票。
このままでは、このままでは……。
深夜。
投票スレでは異常な事態が起こっていた。
地理・人類学板の台頭である。
板自体にトーナメントスレすらないのに、この得票数。
どうやら、過去に文具板を予選一位で通過させたという実績を持つ
「多重じじい」と名乗る怪人物のせいだという情報が流れる。
ラウンジャーも「どうせネタなんだから、マイナー板に投票しようぜ」
となったとの噂もあり。
地理板なんて……思わぬ伏兵に住人たちの志気が下がる。
というか、もう夜中なんだから、寝なくては。
あーあー、おかげで今夜は一冊も読めなかったよ……という住人も
多かったことと推測される。
また少年漫画板でなぜか当板の名を騙った荒しらしきものが現れ、
少年漫画板住人が、当スレに現れるエピソードも。
朝がやってきた。
少年漫画板を担う青少年たちは新学期がはじまり学校に向かう頃。
そしてミス板住人の多くも仕事に向かったであろう。
この時点でミス板は7位、トップは少年漫画板。
政治思想は清々しいまでに、一票もはいっていなかった。
午後からがんばったのが、コテハン・羊バンター。
江戸川乱歩全集片手に、次々と投票スレにミス板名スレの紹介をしていく。
それにひかれて、ミス板に投票してくれる他板住人の姿もちらほら。
午後になっても少年漫画板のトップ独走は止まらない。
必死で追いかける同人板。同人板は、なにしろあの夏と冬のコミックマーケット
参加者が根城にする板。その潜在的パワーは計り知れない。
正直なところ、同人コミケ板と同日エントリーでなければ、こちらも
「京関萌え〜」なおねえさんたちにアピールしたかったところだ。
相変わらずマイペースだがしっかり二位のニュー速。
そして、少年漫画板の独走を快く思わないラウンジで不穏な計画が動きはじめた。
80度作戦。
予選が終わるたびに得票を線グラフにしたものが発表されるのだが、最後の
一時間でラウンジの線グラフを80度にしようという奇策だ。
これぞ大どんでん返し。
その作戦を遂行するため、ラウンジは沈黙にはいる…。
午後、ミス板6位。得票数は100を越えた。
途中、なぜか携帯ゲーム板が家ゲ板、アケ板と提携を結んだという
噂が流れた。
夕方。
このスレの動きが一時止まる。
みな上位5板とのあまりの差にあきらめモードなのか、それとも帰宅前に
古本屋をあさっているのか。
それでも投票スレに地道にミス板をアピールするものがいた。
常駐板でこっそりとミス板を宣伝するものもいた。
ミス板の地道な宣伝活動とあくまでもまったりした板の雰囲気に各板から好感を
よせられる。
密かに喜ぶミス板住人たち。
シャア専板が園芸板に片思いをしていることも知り、ほのぼのとした夕暮れと
なった。
そして、ラウンジャーたちが動き出した、午後10時。
投票スレに怒濤のように現れる<<ラウンジ>><<ラウンジ>><<ラウンジ>><<ラウンジ>>
繰り返される<<ラウンジ>><<ラウンジ>><<ラウンジ>><<ラウンジ>>
それに負けじと、ニュー速板も本気を出す。早打ちなら得意技だ。
ここまで一位だった少年漫画板がだまっている訳がない。
この戦いに食い込もうとする同人コミケ板。原稿ほっぽりだして投票だ。
そんな熱い戦いを、ミステリ板住人は眺めているしかなかった。
…俺たち、どうしてこの場にいるんだろうか…。
スレがどんどん消費され、投票スレが新規に移行したところで投票時間終了。
なお、のちに聞いたことだが、投票スレのあるガイドライン板住人はあまりの
スレの消費の早さに悲鳴をあげたと言う。
最終結果 ミス板6位146票。
トップはラウンジ 801票(801板のお姉さま方がうらやましがっているのでは
ないかと思われる票数だ)。
2位は少年漫画 622票、3位ニュー速、579票。
そして四位は同人コミケ板、476票だった。
実際、辛い戦いだったが、ここまでミス板がひとつになったことがあった
だろうか。
146。素晴らしい数字だ。
戦い終わって、当スレにねぎらいの言葉をかけにきてくれたSF板、ラノベ板、
ネトゲ板の各士。
宣伝レスを書込みにいった先にミス板住人がお礼にいいにいくと、「清潔感
あってよかったよ! ミス板!」と歓迎してくれる各板の人たち。
「僕もミステリを読みたくなりました」と投票スレに書いてくれた人。
各所で普段ふれ合うことのない住人たちがエールをかわす。
さて、予選7組がどんなに熾烈な争いだったか。
上記の数字だけで充分に推測されるであろうが、あるひとつのかたちになった。
投票板の誕生。
今後、投票板の誕生が語られる時は、この予選7組の戦いも一緒に語られる
であろう。
その7組にミス板がいたことを、誇りに思う。
それではおのおののスレに帰ろうではないか。
そして、これから戦う各板に栄光あれ。
ミステリー板はいつも君たちを応援している。