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後期クイーン的問題:
作家エラリークイーン(別項)がぶつかった壁。
探偵小説(別項)空間内における”探偵の存在の根拠の希薄さ”に関する問題。
物語の最後に偉そうに自らの推理を披瀝することに、必然性はあるのか。また、
物語内で中立的立場、つまり、”事件の構成要素と足り得ない探偵”などは存在するのか。
クイーン自身がどこまでこの問題に自覚的だったかは定かでないが、現代の探偵小説
には必然的に関わってくるものである。
九八年刊行された笠井潔『探偵小説論I・U』も、『U』の第八章をその言及に費やし、
その発生を「探偵小説形式は避けることはできない」と定義付けして見せる。
「後期クイーン的問題」を最初に問題視したのは誰だったのか、判然としないけれど、
『探偵小説論』でも引用されるように、エラリィ・クイーンが『十日間の不思議』や『九尾の猫』
で直面した問題を、柄谷行人らのポストモダニズム的言説を用いて説明づけたのは、
法月綸太郎ではなかったろうか。法月自身もミステリ作家としておおいに悩んでいる(らしい)。