初心者のためのミステリ用語辞典

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31ノックスの十戒
ロナルド・A・ノックス(1888〜1957)が「1928年度傑作探偵小説集」の
序文の中で提唱 した、ミステリ作家が読者に対してフェアであるために
守らなければならないルール。

 1・犯人は小説の初めから登場している人物でなくてはならない。又、
   読者が疑うことの出来ないような人物が犯人であってはならない。
   (例・物語の記述者が犯人)

 2・探偵方法に超自然力を用いてはならない。(例・神託、読心術など)

 3・秘密の通路や秘密室を用いてはいけない。

 4・科学上未確定の毒物や、非常にむつかしい科学的説明を要する毒物を
   使ってはいけない。

 5・中華人(中国人≫16)を登場せしめてはいけない。

 6・偶然の発見や探偵の直感によって事件を解決してはいけない。

 7・探偵自身が犯人であってはならない。

 8・読者の知らない手がかりによって解決してはいけない。

 9・ワトスン役(探偵の助手)は彼自身の判断を全部読者に知らせるべき
   である。又、ワトスン役は一般読者よりごく僅か智力のにぶい人物が
   よろしい。

10・双生児や変装による二人一役は、予め読者に双生児の存在を知らせ、
   又は変装者が役者などの前歴を持っていることを知らせた上でなくて
   は、用いてはならない。

江戸川乱歩(別項)「幻影城」(別項) より

ノックス曰く、探偵小説(別項)とは、作家と読者という二人の競技者間のゲーム
にほかならないので「専門的なルールが必要」ということらしいが、どこまで
本気だったかは定かではない。

ノックスは、あまりにも有名な密室トリック(別項)が出て来る「密室の行者」(1925年)
という短編の作者でもある。