初心者のためのミステリ用語辞典

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164社会派
1950年代後半、松本清張の登場を嚆矢として日本ミステリ界を席巻したムーブメント。
以後、綾辻行人をはじめとする新本格の台頭までの長期にわたり主流として君臨する。

それまでのミステリの多くが特定の一族や村を舞台にした財産問題・愛憎のもつれなどの「個人的」な事情を
題材としていたのに替わり、汚職事件や政財界の癒着・横領など所謂「社会的」な問題を背景として
起こる事件を多く描いた。事件の解決に尽力するのは概ね叩き上げの頑固中年警察官であり、
天才肌の名探偵が鮮やかに謎を解くのは子供の読み物、現実味の強い社会派推理は大人の読み物、という
風潮すら生まれた。現実味を重視するあまり、ありがちな「上司が愛人である部下に結婚を迫られて殺した」
系まで社会派のラベルを貼られて売られている。
森村誠一や夏木静子などは、本格は売れないといわれた時代に、「社会派の皮を被った本格」と
後に評される作品をいくつか書いている。

現在では、宮部みゆきなど、特に汚職や政官財の問題だけでなく、現代社会の問題点や
暗部に一石を投じるような作風のミステリを社会派と呼ぶことが多い。