>>204 佐藤友哉「水没ピアノ−鏡創士がひきもどす犯罪−」(講談社ノベルス ¥1000)読了。
メル友の女子高生との交流を唯一のなぐさめにする引きこもりの青年。
精神に異常をきたした長女によって屋敷に閉じ込められ、一人づつ処刑される家族。
少女を世界の悪意から守るため絶望的な戦いを続ける小学生の男の子。
救いのない三つの物語はやがて鏡七兄弟のひとり鏡創士によってひとつに結び付けられ、悲しい愛の結末を紡ぎだす。
西尾維新、北山猛邦と並んで最近のメフィスト賞作家の特徴たるライトノベル的な雰囲気を醸し出す佐藤友哉。
しかも、その物語は先の二人以上に沈痛で救いがない。
最後に独立したストーリーがひとつに結び付けられていくというミステリ的展開があるが、そこでも意外性に対する驚きよりもさらに厚みを増す沈痛感に心が重くなる。
とにかく現実離れした日常を舞台に心の底の傷をひたすら舐め続けているような独特の作風は、はまる人ははまるのだろうけど、受け付けない人はとことん受け付けないものだと思う。
個人的には読み続けるのがひどく疲れた作品。
このミス予想順位
水没ピアノ−鏡創士がひきもどす犯罪−:ランク外