日活が2012年に創立100年を迎える。戦前の時代劇に始まり、戦後のアクション、70〜80年代はロマンポルノと、
時代ごとに新たなジャンルを生み出してきた。その特異な作品群に、世界が注目している。
今秋、米ニューヨークのリンカーンセンターを皮切りに、フランスのナント三大陸映画祭、パリのシネマテーク・フランセーズで、
日活映画の大規模な回顧上映が催される。東京国立近代美術館フィルムセンターと国際交流基金の協力で実現した。
日活は、1912年に日本活動写真株式会社として設立された。戦前は、「目玉の松ちゃん」の愛称で親しまれた尾上松之助の
時代劇で人気を博し、溝口健二や山中貞雄といった、後に世界中から称賛される名監督が輩出した。
戦後は54年に製作再開。石原裕次郎や小林旭、吉永小百合ら若いスターと鈴木清順ら気鋭監督を擁してアクションや青春映画を
量産した。経営が傾いた71年、ロマンポルノ路線に転換。神代(くましろ)辰巳らが情感豊かな名作を発表したほか、
根岸吉太郎や森田芳光といった現代の日本映画を支える新たな才能が育った。
リンカーンセンターでは10月、日活の各時代の代表作約40本を上映する予定。
プログラム・ディレクターを務めるリチャード・ペーニャさんは「米国では今、監督ではなく製作会社から
映画史をとらえる動きが進んでいる」と話す。
ロマンポルノの成功に注目するのは、シネマテーク・フランセーズのプログラム・ディレクターのジャンフランソワ・ロジェさん。「性や暴力を描いたジャンルで、アバンギャルドな優れた作品が数多く作られ、新しい映画作家が生まれているのは大変興味深い」
今回の100周年記念事業では、川島雄三監督の代表作「幕末太陽伝」がデジタル修復される。これを含めて、世界を巡回した後、
来秋には日本でも上映会が開かれる。(石飛徳樹)
ソース
http://www.asahi.com/showbiz/movie/TKY201106110132.html