【In Early Summer】佐野元春 #57【ON THE ROAD】
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NO MUSIC NO NAME:
上の吉本隆明の詩は『転位のための十篇』に入ってる「廃人の歌」だね。吉本と佐野は諏訪優でつな
がっている(会ったことはないと思うが)。諏訪優というのは『現代詩手帖』臨時増刊号でかつて
佐野と対談した詩人だが、諏訪と吉本隆明は1949年、同じ『聖家族』という詩の同人誌に所属して
いた。ただ、会ったことはなくとも佐野は詩はよく読むだろうから戦後の代表的詩人でもある吉
本の詩も読んではいるだろう。
『all flowers in time』見た。以前見たときよりもかなりvocalが回復してて、正直80年代
の楽曲を歌えるのか心配していたが、若干のかすれはあるものの、ほとんど大丈夫なようで安心
した。vocalがかなり戻ったことで、楽しめた。佐野自身も「歌う」が楽しいと感じていることが
伝わって良かった。こういう〇〇周年のコンサートで懐かしい曲をやるとよく観衆と合唱して、
本人の歌がほとんどない、というのがよくある。「someday」とか、佐野の歌が聴きたいので合唱
は止めてほしいと思っていた。わざわざ歌う前に「これは今や皆の歌。でもちょっと待って。やっぱ
り僕の歌だ(笑)」と言っている。そのせいかサビ以外は佐野がずっと一人で歌っていたので良か
った。
あと驚いたのは80-90年代の楽曲が、懐メロにも拘わらず、今的に聴こえる。それは「new age」
でも「99blues」でも、「君を連れていく」でも、古さがない。懐メロに聴こえない。2012年の歌に
なっている。というよりも、今の方が切実に響くものが多い。佐野の歌がむしろ今、切実に響く、
それは観衆の多くが感じたんじゃないだろうか。