ロッキンオンジャパン9月号 scene.1 BUMP OF CHICKEN
文=山崎洋一郎
『バンプ・オブ・チキン、映像作品「人形劇ギルド」とは何か?』
バンプ関連のリリースとしては藤原基央が手がけたゲーム・ソフト「TALES OF THE ABYSS」
のサウンドトラック以来となる。今回はバンプ・オブ・チキン名義で、しかもなんと人形劇の
DVDである。原作・脚本を藤原が手がけ、バンプのPVのディレクターである番場秀一が映像を
担当、音楽は“ギルド”を含めてBGMもすべて藤原が作曲しバンプ自身が演奏している。また
人形のキャラクター設定やデザイン、台詞のディテールや演出に関してもバンプのメンバーが
大きく関わっており、「人形劇DVD」という異色の形ながらバンプ・オブ・チキンの作品であ
ると言い切れる、創造性とアイデアと時間と労力をしっかりと注いだものになっている。
「人形劇ギルド」は、その名の通り人形を使った物語劇の映像作品で、写真にあるような
人形を少しずつ動かして撮影するストップモーション・アニメ。台詞はすべて字幕で、音楽
だけがバックに流れる無声の静かな作品である。しかしその静かな映像とは裏腹に、そして
貧しい炭鉱夫の父とピアノを弾くのが好きな娘との小さな物語という設定とは裏腹に、藤原
はそこに大きな心のドラマを描き、人間の魂の聖性と強さを見せようとしている。
貧しい炭鉱夫の父親は不毛な日常と現実の絶望を知っているが、それと戦う勇気と強さを
隠し持っている。ピアノが大好きな慎ましい娘は日常を従順に受け入れながらも夢見る希望
を心に秘めている。あるとき、父親がひとつの行動を起こし、それがきっかけになって二人
は与えられた日常と現実を踏み越えていくのだが……。
ここでも、藤原が物語のテーマとしているのは「喪失」である。失うことで見えてくるも
の、失わなければ見えないもの、何かを見ようとして失ってしまうもの、見ようとしなけれ
ば失わなくても済んだもの ― 人が生きていく中で、内面ではいつも絶えず起きている劇
的な喪失と獲得の(死と誕生と言ってもいい)場面を、たった20分あまりのストーリーの中に
巧みに織り込んでドラマとしてポップに表現している。そして、バンプ・オブ・チキンの曲
を聴くといつも曲の背後から静かに語りかけてくる問いかけ ― 「やがてすべて失ったと
きには、何が見えるのだろう」「僕たちは何をこの手に獲得するために失い続けるのだろう
」 ― という問いかけが、この映像作品からも聞こえてくるのだ。
次号では久々に藤原基央にインタヴューして近況も含め深く訊こうと思う。
だってさ。
なにが人形劇だよ絶対買わねーーーーー
って思ってたけどやっぱ買うわ…。これ読んだら見なくちゃってきになってきた
バンプが演奏してんならバンプの新曲だって取っても別におかしくないよな
なんかすごい人形劇楽しみになってきた