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名無しの歌姫:
絢香は、人としての倫理に反した形でプロ歌手への一歩を踏み出した。
絢香のアーティストとして、社会人としての大切な第一歩は穢れていた。
すべてはここに端を発している。その一歩を踏み出したときから、今の絢香の末路は決まっていた。
太陽の陽光と水がたっぷりあるところに木が生えても、根が腐っていたり地面の下で大きな石に踏みつけられていれば、まともに育たず大きくなるにつれ枯れていくだろう。
今の絢香はいわば瀕死の木だ。
根元を掘り返し、邪魔をしていた大きな石をどけ、腐った根を治し、土を入れ替えなければ枯れてしまう。
絢香は、まえちゃんを傷つけ西尾芳彦とともにプロへの道を踏み出した。
西尾こそが根についた病原菌であり、西尾は根を踏みつけていた大きな石だ。
太陽の陽光と水がたっぷりあるところ、それは検温であり罠である。