アルバム全曲レビュースレin邦楽板 7th

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821名無しのエリー
>>714
なんか好きすぎて絶賛っぽくなりそうだけどやってみます。(相対化のためにもう一人ぐらい
書いてくれるとありがたいです)長いですやだったらゴメンね。いってくれ。

坂本真綾/DIVE
01.I.D. ★★★★★ 4分音符でコードを押さえるだけのピアノと真綾の声だけで始まり(drなし)、
浮遊感あふれるリードギター、次にアコギとベースが入ってくる。この最初がアンプラグドな感じで、
だんだん盛り上げていく感じ、真綾の声を上手く立てていてとてもよい。
まだ声が細くて、のどを絞ってちょっと無理な発声をこの時代はしているが、それが逆に懸命な感じでとても魅力的。
特にサビのところ、声に空気を含んでいて、とくに真綾自身のバックコーラス(特に3:49以降、
バックコーラスとVoで三和音を形成)が心地好い。声を伸ばすとき、独特の浮遊感がある。
坂本に関してよく言われる強いブレス(例えば4:33)も、声が近い感じで僕は好きなのだが。
02.走る(ALBUM Ver.)★★★★★ 疾走感あふれる。1曲目に続きアコースティックな響き(Vo、
アコギ、軽い音のみのdr、ストリングス)おもいきったアクセントから始まるストリングスの勢いがよい。
ストリングスは少数人数の重録ではなく生録らしく、チェロもいるので心地いい感じ。
1曲目と同じく、真綾自身の2声のバックコーラスが綺麗な3和音を形成する部分の
羽根のような軽さは美しい(たとえば2:35)。鼻歌みたいな軽い歌い方がかわいらしい。
どうして「も」とか、ふたりき「り」の最後の音でくるりと装飾を点けるところがかなりキュート。
2:45の「「あ」なたをこんなに」の「あ」ですこし音程低目から入って上に押し上げるところとかの
懸命な感じも好。真綾以外の声のコーラスが入るところはちょっと攻殻機動隊臭く嫌。
真綾コーラスだと美しく昇化されるところが、大人の女声コーラスで聞かされると、重くて。
03.Baby Face ★★☆ 能天気お気楽英語ソング。シンコペーションでスキップってなかんじ。
正直、英語より日本語のほうがいい。感情のこもり方がちがう。声の変え方とかも。
smile and you will seeあたりの真綾バックコーラス(2声or3声?)のなにもかんがえてなさそうさは凄。
最後のつぶやきも好きな人はとても好きだろう。
822名無しのエリー:04/04/01 14:04 ID:03GlArcI
04.月曜の朝 ★★★☆ 
古いテクノみたいなシンセの音が特徴的な暗い曲。歌い方が前3曲とは打てかわって
すこしダルな感触(これもまたよし)「違うよただの月曜の朝」あたりのシニカルな発声。ビブラート少なめ、
空気が多くて、息が漏れている感じ、内密な雰囲気の発声。よい。曲調はむしろ夜って感じ。

05.パイロット ★★★☆ 
そら、とかとぶ、とか恥ずかしげもなくのびのびと歌う懐かしい感じのスローな曲。
真綾自身の作詞(初めて、のはず)の、「少しだけ飛ぼうか」、「飛ばそうか」っていう言葉の質感、
そこを歌う声の透き通った質感が素敵だ。全体的に長調なのに、仄かに悲しく、最後短調に転調してしまうのが美しい。
11曲目DIVE系の癒しだなあ。たたずんでしまう。ストリングスの使い方が好。

06.Heavenly Blue ★★★☆ 
若い生意気系の歌詞と歌い方。「だって」とか「とても」んとこの歌い方のほうりだすようなうたい方が
若さ溢れてる感じで好い。しかし、ほかの人のコーラス(男声女声ともに)、いらないのではないか。
823名無しのエリー:04/04/01 14:10 ID:03GlArcI
07.ピース ★★★★★ 
スピード、そんなに速くないのに、なんとも打ちはなされた勢いがある。
最後に向かってどんどん勢いづいていく。最初聞いたとき鼻に付いた曲なのだけれど、
この曲だけは100回ぐらい聴きこむ価値あるですよ。いろんな仕掛けがあるおもちゃ箱みたい。
半音階下降型のモチーフ(冒頭ベース)、ホーンセクションのごりおしっぷり(そこまでするかよという感じが最初したが)、
裏でへんなコードを形成するオルガン、生意気風味な歌詞。最初鼻に付いたが繰り返し聞くとかなりやばい。
まずのっけからヴォーカルがこの時期の坂本にしかないとんでもない魅力。細かいヴィヴラート
(「暗い未来」のあたりとか)、無理した感じの発声、思春期特有な不安定さ。
Bメロ(?)に入って1:27のあたりのオルガン+ホーンセクションの半音階上昇
(サイケ期ビートルズっぽい)といい、そのあとのオルガンの変なコード2つ打ちはなすような感じといい
(同じ和音を2回打つが2つ目が解決してない!)、2:59以降ずっとトリッキーな動きで走り続けるベースといい、
サビ入ってからのテケテケやってるギターのコードといい(自分勝手に撃ちまくってる感じ、
とくに3:22、3:25以降の進行)、菅野よう子の才能(彼女だけでもないか)をこれでもかと見せ付けられる。
824名無しのエリー:04/04/01 14:12 ID:03GlArcI
さらに坂本のヴォーカル(バックコーラスも含め)の魅力は筆舌尽くしがたい、とんでもなくって、
この曲でしか味わえないものがあるんじゃないか。
「ジグザグな足跡を残しましょう」の「しょう」の息の抜き方。
「損はないでしょう」の「お」の押しかた、WOとWを混ぜてすこし喉を締めた発音。若々しい。
「人の不幸になんて興味はない」ってところの、「の」の2段階ずりあげ(低速→高速)、
「愛してる」の声のだるーい抜き方。「退屈が驚くほど」の「ろ」のへんな発音(oとaが混じってちょっと生意気感UP)、
「生意気な子供だといわれても」の「わ」の回転する装飾音型に「も」(半音下げてまた上げる、
そのあげたあとの細かいビブラートがやばい)。「そのわけを」の「わ」で例の声裏返りがあって、
「証明したくって」の「て」でtとeの間にすこしずれがあって、eで喉を締めてかすれさせ、
そのつぎの「幸せな」の「な」の次のブレス(吐息、息を抜く感じ)。
しかしまだ曲は止まらない。3:40以降のシンコペーションリズム、とくに「あ」の発音
(これはこの曲全体にわたってその傾向あり)と「い」の発音で、喉をきつく絞めたあとで勢いよく
開放するアクセントの強さが好い。「ひみつの「あ」ま「い」ゆめに きたいしても そんはな「い」でしょう」
の叩きつけるアクセント。なんていうか、おなか一杯。


08.ユッカ ★★★★★ 
名曲。7曲目ほど毒はないが、少し似た雰囲気、より元気で幸せで7曲目よりすこしスロー。
「走る」を少し遅くして、もっとのびのびした感じ。でも「ど」思春期ソング。ヴォーカルの魅力もとびぬけてる。
「おもいでは」のあたりの飛び込んでいくような思い切った発音、
「ほしいもの」のあたりの声の細さ、
「2つの目を」のあたりの坂本バックコーラスのこの透明度はなんだ。
このに生き生きしたヴォーカルはなんだ。
細かいヴィヴラートかけた音と、かかってない音とがあって、そのかかってない音の発声がときにものすごくまっすぐな感じ。
この声の魅力はなんだ。本当に2つの手を空に伸ばしているこのかんじはなんだ。
825名無しのエリー:04/04/01 14:13 ID:03GlArcI
09.ねこといぬ ★★★★★ 非常にじゃじー。夜。シンバルが静かに鳴り、
ホテル最上階レストラン的ストリングスが伸びやかに鳴り、その中で、マイクが非常に近く空気の混じった坂本の声が、
飛翔する。dullで、美しくて、ピアノがよくて、0:37以降のストリングスのコードも心地よくて、
「ふたりじゃなきゃ」のあたりの、この声の空気はどうだ。ぶっ倒れろというのか。空でも歩けというのか。
10.孤独 ★★★ アコースティックでスローな曲。歌詞はちょっとがんばりすぎてる感じ。
特にサビのメロディがきれいなわけでもない。だけれど、全体に広がるダルい、
延ばされていく感じ(チェロの使用とか)はいい。
11.DIVE ★★★★★ 水の音に満ちた癒し系の名曲。この沈んでいく感じ、ブレス(吸うほう)が近くきれいに聞こえて、
それも魅力を足し算していて。控えめなビブラートがきれいで。まるで泳ぐようなこの声の伸び方はいったいなんなんだろう。
「あいせたことがうれしい」→「のぼってゆけるよ」のあたりの伴奏がものすごくきれい。
総評★★★★★ 名盤、奇跡。無邪気で楽しそうで技巧臭くなくてまっすぐ出てきている感じで
変に作ってなくて自然でどこまでも幸せなアルバム。坂本真綾の、空気を含んだ、ちょっとのどを絞めた感じの、
でもなんだか耳元に近い感じの美しい声と、菅野よう子のこれまた美しい和声とメロディーの最高の結びつき。
この雰囲気をもう聞けなくなってしまったのかと思うと悲し。戻ってきてほしいなあ、と思うが
年齢的にも歌手キャリア的にも(発声が上手くなってしまった)その願いはかないそうにない。