アルバム全曲レビュースレin邦楽板 7th

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691名無しのエリー
くるり「ファンデリア」
1.Interlude ★★★★ 冒頭に相応しいピアノとギター2本だけのインスト、ピアノの使い方の趣味がいい
(とくに0:44-0:47のあたり)。美しい。坂道のインストだが坂道より叙情に満ちており私は好きだ。
2.モノノケ姫 ★★★ 全曲とは打って変わって突如激しい岸田のシャウトにて幕開け。ライブで盛り上がる曲。
CDでもその熱さは伝わる。後年2nd1曲目「マーチ」がこの雰囲気に似ている。マーチの方がコードの狂気やリズムの急激な転換等、より魅力的だと思う。「灯台守に隠れなさい」という歌詞が笑えて好き。
3.Old-fashioned ★★★★ ラジオの音声を曲に混ぜるというアイディア、
かつてビートルズが"I am the walrus"でBBCラジオの「リア王」を混ぜたことを思い出す。
2:38-2:42の辺りのコーラスのコード進行は凄い、ありえない。この部分だけのために
星4つあげてもいい。そのあとのドラムも淋しげでよい。で、演奏が消え、終わるかと思ったら、
ラジオで外人が"no""no!"と2回言う、そしてまた演奏が始まる。終わったかと思うほど沈黙をおいて
もう一度やりだす、この長い沈黙、溜めは初期くるりを聞く最大の魅力の一つだ。
4.続きのない夢の中 ★★★★★ くるり屈指の名曲。イントロのベースに歌がある。
岸田の声は内に籠めた情熱が熱い。「地下鉄の路線図」の地下鉄、「鉛の壁に書き連ねる」の壁、
「イエイ」の叫び、感情が溢れたすばらしいヴォーカル。後年のように音程を調整していないので、
アマチュア的に歌の音程は外れているが、それは決して欠点ではない!
逆にわたしは音程をきちんと当てた最近のシングルにこの湧き出る魂が感じられない。
この曲のあたかも一発録りの、ビシビシと感情がつたわる歌声を聴け。そこでは音程の不確かささえも
魅力となっている。そしてなによりも「抱き合って死ねたら」の岸田の声の裏返り方!
これ以上の歌い方は考えられない。凄い。indies1st「もしもし」の「蒼い涙」と似たやるせなさだが、
よりこちらのほうが結晶度が高いだろう。
692名無しのエリー:04/03/19 02:01 ID:MqFcGl7Q
5.雨 ★★★★★ 前曲に続きくるり屈指の名曲、最強の繋がりだと思う。まずイントロのギターアルペジョが非常に美しい。
そしてそのアルペジオの中を、ドラムがクレッシェンドで近付いてくる、ベースがどんどん上昇してくる、その盛り上がり方は
完璧だ。そしてその次の1拍半の休符!この溜めが素晴らしい。そしてその次に一斉にアクセントをつけて出してくるコードが
とんでもない!ありえない!なぞの動きのベース。これは転調なのか、それとも何なのか?そしてさらに例の1拍半の休符で楽器群が押し黙るなか、
岸田の「戻れない」という脱力ヴォーカル。「ど」の音程が少し外れている。むしろ素晴らしい。Aメロが終わるまでこのありえないコード
(おそらくE7)が変わらないでずっと居座っているのも凄い。Tomorrow never knowsかよ。Bメロ、急に優しいアルペジョが戻り(このあたりのコードも一筋縄でない美しさ)、
声も優しく、美しいコードが鳴り響いた後の例の溜め。そしてこの曲の最大のポイント、サビの前のギターアルペジョのコード進行の美しさ、ベースの奏でる半音階(レ→「ド→シ→シ♭」、この時代のくるりには伴奏に美しい歌がある!)、
ドラムのクレッシェンド、全てが有機的につながって盛り上げていく。まるでDear Prudence(ビートルズ)の0:11-0:17(一拍目レ→ド→シ→シ♭)のような展開で、あの曲に似て、実にしっとりとした美しさ。そしてサビのコーラスと詩の美しさは書き加えるまでもない。
6.Supper ★☆ インスト。特に美しい音のつながりがあるわけでもない。ならばこれを抜いて続きのない→雨→坂道という名曲を立続けにやると
どうなるか。息が詰まるかもしれない。あえて息抜きとして、雨と同調(Dメジャー)の軽い曲としてはさんだのかもしれない。1分程度の短さ。
7.坂道 ★★★★ 本人もファンも認める「名曲」。終始落ち着いた雰囲気で進んでいく。しかし3,4曲目のえげつない美しさのほうがわたしは好き、
この曲、多少名曲然とし過ぎている気もするので。(最後らーらーらー、と歌う部分が多少その嫌いがある)そうは言っても、岸田の若々しい声、
「いつも」のへなへな感、「ああ君を乗せて」のあたりの声のテンションと伴奏ギターのコード(これも美しい)のハーモニーは素晴らしいものがある。
693名無しのエリー:04/03/19 02:03 ID:MqFcGl7Q
8.Yes mom I'm so lonely ★★★ 奇曲。2ndの名曲「チアノーゼ」の気味悪さと通じるものがある。とんでもなく怪しいコード。
メロディーなしのヴォーカル。「ラ↑ラ↓シ♭」というシンコペーションリズムの怪しいベースライン。決してヘヴィーローテーションしようと
思わないが、くるりの幅広さを認識できる。3:59からボーナストラック?謎の曲が始まり、岸田の「僕の心はー」という実にメロウにモヤモヤと
した絶妙なヴォーカルが実にモヤモヤと聞こえこれもなにやら美しげだがなにしろぼやけているのである。
総評 ★★★★★ くるりの基礎的な要素をすべて兼ね備えていて、後のくるりが失ってしまった魂の叫びが一番生々しく響いている
貴重なアルバムだ。メジャーデビューをしないで、この方向性で突っ走って行くくるりもわたしは見てみたかった。
くるりに興味をもったらまずこれを聴いてほしい。ひょっとすると、その衝撃は一生忘れることはない、かもしれない。わたしは少なくとも、忘れない。