子供の頃、近所(東京世田谷)に何箇所か「朝鮮部落」と呼ばれる所があった。
廃品回収、その他、それこそ「地を這う」ような暮らしをしていた。
「あそこの子とは遊んではいけない」と親からも言われていた。
今思うと、そこの子供たちは学校にもろくに行っていなかったと思う。
ある日の夕暮れ、近くの中学校の校庭で犬を散歩させていた。
ふと、気がつくと、塀を乗り越えてやってきた少年たちに取り囲まれた。
一番年長の子は「朝鮮部落」の子で、見覚えがあった。
「俺たちと喧嘩しようぜ」、子供たちはそう言って、からんできた。
逃げたかったが、恐ろしくて足が動かない。
小柄だが、一番俊敏そうなやつに、襟をつかまれて一発殴られたところで、連れていた犬が
猛然とほえて相手に襲いかかり、彼らがひるんだ隙に逃げ出すことができた。
雑種のスピッツのお馬鹿な犬だったが、助けてくれたことには今でも感謝している。
ところで、不思議なことに、あの人たちは、昭和40年代のはじめ(だと思う)に煙のように消えてしまった。
今、その人たちが住んでいたところは、普通の家やマンションになっている。